民間企業と公務員ってどっちがいい?
というご質問を大学生から頂きましたので、年収・仕事のやりがい・激務度といった観点から考えていきます。
私は民間企業に勤める一介のサラリーマンですが、身内には公務員も多く、実は祖父が外務省のキャリア官僚だったりします(もう亡くなりましたけど)。
そんな私から見た世界観を語っていきます。大学生で進路にお悩みのあなたへ、ご参考にどうぞ。
内定した民間企業のランクと公務員資格のランクによって、どっちがいいか決まる
まずは結論。内定した民間企業と、あなたが持つ公務員資格を天秤にかけて選ぶべき。
「民間企業vs.公務員どっちがいい?」みたいな議論は不毛であり、無意味です。
なぜなら公務員とひとくくりにしても、
- 国家公務員(総合職・大卒一般職・高卒一般職)
- 地方公務員(上級・中級・初級)
- その他(教員など)
このようにザックリとはカテゴリー分けできますが、さらにその枝葉の警察官、自衛官なども考えていくと、その数は膨大になります。教員とキャリア官僚をひとくくりに「公務員」としてしまっては、キャリア官僚に対してあまりにも失礼です。
いっぽうで民間企業にしても、
- 業界トップ企業
- 業界大手企業
- 大企業
- 中小企業(ベンチャー企業を含む)
このように、ざっくりとは5つにカテゴリー分けできます。さらに業界トップ企業の中でも、金融なのか、メーカーなのか、コンサルなのか、といった具合で細分化されます。
「DeNA」のようなゴミベンチャーと、「味の素」のような一流企業をひとくくりに「民間企業」とするのは乱暴すぎ、あまりに失礼です。
基本をおさらいしたところで、次項よりどっちがいいかを比較していきましょう。
「年収+福利厚生」で選ぶなら民間企業
まずは最も気になる「年収+福利厚生」を考えると、民間企業の勝利。
これは企業によりますので、公務員のトップに君臨するキャリア官僚に年収で匹敵する企業がどれだけあるか、見ていきましょうか。
キャリア官僚 < 業界大手企業の年収
キャリア官僚は国家公務員・総合職のこと。外務省、財務省、経済産業省、国土交通省…などにキャリア組として就職する人たちですね。
すでにご存知かとは思いますが「年収+福利厚生」だけを考えたとき、キャリア官僚クラスをうわまわる民間企業って、探せば実はたくさんあります。
たとえば、メーカートップクラス(JT、JXエネルギー、トヨタ、味の素、旭化成、デンソー、旭硝子、住友金属鉱山など多数)、政府系金融(日本銀行、政策投資銀行など多数)などの企業です。
これらの企業はキャリア官僚よりも年収は高く、少なくとも30年くらいは安定的に経営できます。しかも仕事はまったり(トヨタの若手は激務)。
なんと私の勤める大手化学メーカーですら、同期のキャリア官僚よりも「年収+福利厚生」の合算は高いです(汗)。少なくとも私の祖父の時代であれば考えられないことです。
テレビ・新聞が公務員(官僚)を批判しすぎ
本当に批判されるべき存在は、長時間労働させられているテレビ局や新聞社であるべきなのに、なぜか公務員ばかり批判される、という狂った世の中。
その結果、公務員の福利厚生はどんどん削られていき、天下り先もどんどん無くなり、キャリア組でも出世が難しくなり、過剰接待も少なくなり…。
もともと官僚の年収は仕事に見合わなかったのに、おいしい部分を削られては正に「泣きっ面に蜂」です。
少なくともキャリア官僚は年収以上に仕事してますし、日本に貢献しているのですから、年収だって民間企業の倍もらわないと割に合わない。
まぁ私が言っても何も変わらないんですけどね…。
親を安心させるなら「公務員」
これも公務員のランクによりますが…。
今の就活生のご両親は「バブル〜バブル崩壊〜失われた20年」を経験した世代が多いのではないでしょうか?この世代は日本経済の最もいい時期と、その後の落ち込みを経験しています。
したがって一般的に、子供を公務員にさせたがります。
ご両親に相談したら確実に
「民間企業は安定してない、公務員を選ぶ方がいい」というアドバイスを受けるでしょう。
ということでご両親を安心させるには「公務員」がベストだと思われます。
実際には民間企業も安定している
でも実際のところ民間企業は安定してない、なんて真っ赤な嘘で
「企業や業界による」です。
だって化学素材メーカーは、100年以上も前に創業し成長してきた企業ばっかりなのですよ…一流食品メーカーだってそうです。商社だって何だかんだ言って、江戸時代・明治時代からあるような企業ばかりです。
これを安定している、と言わずになんと言いましょうか?
確かにソニー、シャープ、東芝などの大企業が落ち込んでいるから、そういうイメージになるも仕方ないのですけどね。
ワーク・ライフバランスで選ぶならどっち?
激務度も仕事を選ぶ上で重要です。
ワーク・ライフバランスで選ぶなら民間企業と公務員のどっちがいいでしょうか?
平準化するのであれば「公務員vs.民間企業の平均残業時間」を比べればいいのですが、無意味なのでやめておきます。
ざっくりとした肌感覚でまとめると結局のところ、公務員も民間企業も部署や上司、時期によります(苦笑)。月100Hの残業をする省庁もありますし、官僚もいます。もちろん、そうでない人もいます。地方公務員だって同じこと。
「公務員=定時退社、民間企業=激務」は間違った認識ですので、ご注意ください。
※蛇足:残業時間の比較
- 過労死ライン(残業月80H~)
▼公務員:キャリア官僚クラス
▼民間企業:外資証券、外資銀行、外資コンサル、テレビ局、広告代理店、キーエンス - 激務(残業月45~80H):
▼公務員:教員、保育士
▼民間企業:メガバンク、国内証券、国内民間金融、生保業界、ベンチャー - それなり(残業月30~45H):
▼公務員:教員、保育士、地方公務員(部署による)
▼民間企業:メーカーの一部、損保業界 - まったり(~残業月30H):
▼公務員:自衛官、地方公務員(部署による)
▼民間企業:メーカーまったり業界
仕事のやりがいで選ぶなら?
「仕事のやりがい」で選ぶなら民間企業と公務員のどっちがいいでしょうか?
こちらも何とも言えません。
一般論としては、
「公務員=やりがい無し、民間企業=やりがい有り」
みたいに言われていますが、これも全くの間違いですので気を付けましょう。
キャリア官僚には「日本を動している」というやりがいを持つ人もいますし、
「若手のうちは雑務ばかりでやりがいを感じない」という人もいます。
いっぽうの民間企業でも、
「公務員みたいでやりがい無い(化学メーカー社員)」という人がいる一方で
「お客さんに感謝されることが生きがいです(営業職)」という人もいます。
結局のところ仕事のやりがいなんて、完全に「主観」なのです。
私にとって、あなたにとって、面白い仕事かどうかということ。仕事のやりがいは他人が決めるようなことではありません。
少なくとも私は、仮にやりがいのない仕事であっても、それが面白くなるように色々と工夫します。特に化学素材メーカーの仕事なんて一般的に見たら公務員みたいで、面白くも何ともありません。
「どんな下らない仕事にしろ、やりがいをどう見つけるか?」
っていう姿勢で仕事をするのが30年間働き続けるコツです(まだ模索中ですけど)。
公務員の唯一のメリットと言えば「勤務地」
これは地方公務員に限った話ですが唯一にして最大のメリットといえば、
「転勤が少ない、あったとしても地元を離れなくていい」
ということだけでしょうね。民間企業で大卒・総合職だといつどこに転勤するか、先がまったく読めません。グローバル企業であれば海外転勤だってあります。
その点、勤務地が安定しているというのは地方公務員の最も素晴らしいメリットだと思います(人の考え方による)。
私の大学の同級生で地方公務員になった人たちは、ほとんどこの理由。その他の理由で地方公務員を志望する人って、ほぼゼロでした。
ただこれは民間企業でも、地域限定の総合職っていう働き方を選べばいいだけですけどね。
>政府系金融(日本銀行、政策投資銀行など多数)
日本銀行は、政府系金融機関(政策金融機関)ではありませんよ 中央銀行である日本銀行が政府から独立しているのは常識ですよ
また、政策投資銀行ではなく、日本政策投資銀行です
政策金融機関は、日本政策投資銀行、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、国際協力銀行の4つのみです