現役営業マンによる化粧品業界研究2017年版。化粧品業界の市場規模、世界・国内メーカーランキング、現状と課題、今後の動向、将来性まとめです。
ここでいう化粧品業界には「スキンケア(洗顔・化粧水など)」「ヘアケア(シャンプーなど)」「コスメ(化粧品)」「フレグランス(香水など)」「オーラルケア(歯磨き粉など)」を含みます。
就活・転職の農薬業界研究のご参考にどうぞ。
化粧品業界の現状
まずは化粧品業界の現状について、把握しておこう。
化粧品業界の市場規模|世界26兆円(対14年+3.9%)
※2015年度の世界市場規模実績
※出所:ロレアルパリのannual reportより。為替は1USD=120円とした。
化粧品業界の市場規模|日本2兆円(頭打ち)
※日系メーカーの売上+外資系メーカー。完全に筆者の推測。
化粧品メーカーの売上ランキング2016年(日本)
化粧品メーカーの2017年時点での売上ランキングをまとめる。資生堂やコーセーのような、化粧品専業のメーカー以外にも、花王、P&G、富士フィルムなどがある。
- 資生堂|売上7630億円
- 花王|売上1兆4718億円(うちビューティーケア事業6077億円)
- コーセー|売上2433億円
- ポーラ・オルビス|売上2147億円
- 富士フィルム|売上2兆4916億円(化粧品の内訳不明)
- 参考)Procter & Gamble (P&G)|日本の売上不明
- 参考)ユニ・チャーム|売上7387億円(日用品)
- 参考)ライオン|売上3786億円(日用品)
- 参考)化粧品の中間体メーカー(把握できない)
化粧品メーカーの世界ランキングTOP10社(2015年)
- ロレアルパリ/L’Oréal(仏)売上276億ドル
- ユニリーバ/Unilever(蘭/英)223億ドル
- P&G/Procter & Gamble(米)180億ドル
- エスティ・ローダー/Estée Lauder(米)113億ドル
- コルゲート/Colgate-Palmolive(米) 107億ドル
- Johnson & Johnson(米) 71億ドル
- 資生堂 63億ドル
- バイヤスドルフ/Beiersdorf(独) 60億ドル
- 花王 50億ドル
- モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン/LVMH(仏) 50億ドル
詳しくは下の記事にしている。
化粧品業界の流通(川下)
つづいて、化粧品が消費者に届くまでに、どのようなバリューチェーンになっているか、簡単に図式化する。なお、川上メーカー(化粧品の中間体)まで含めると数が膨大になるため、最終製品ができてからの流れだけを解説する。
- メーカー
↓ - メーカー商社(代理店①)
↓ - 必要に応じて特約店を経由
↓ - デパート・ドラッグストア他(代理店②)
↓ - 顧客
花王のような化粧品・日用品メーカーは子会社にマーケティングと販売を行う代理店を持っている。花王の場合は「花王カスタマーマーケティング」という会社がある。業界用語では「メーカー商社」といい、たいていの大手メーカーは子会社に商社を持っている。
あなたの手元に化粧品が届くまでに、実はメーカー商社と、特約店、さらにはデパートなど、3つの代理店にお金が落ちている。※特約店は必要な場合だけ使うため通常は無し
商社にはそれぞれ機能があり、メーカー商社は商品のマーケティングをし、特約店が営業をし、最後にデパートやドラッグストアが商品を店頭に置く、ということで成り立つ(本当はもっとややこしい)。特約店が要らないときはメーカー&メーカー商社が営業もやる。
※メーカー商社について、詳しくは参考記事で述べている。
化粧品業界の動向(日本)
つづいて化粧品業界の動向、市場の動向を述べていく。
動向①メーカー ⇔ 顧客の情報格差が縮小
ほんの10年前まで、ネット上で化粧品の細かい情報やレビューを得ようとしても、ゴミのような情報しか存在しなかった。でもスマホが普及しネット社会が浸透すると、情報の質がどんどん向上した。
今ではメーカーが持つ情報と客が得られる情報の格差は、縮小している。だから、客は多くの情報から自分にあった化粧品を選べる時代になっている。
動向②客のニーズが多様化している
上述したようにネットメディアの発達で、より多くの情報が手軽に手に入るようにり、お客さんのニーズは変わってきている。昔はテレビCMでどか~んと、不特定多数の女性にPRすれば「みんなが使っている=いい商品」となって、それで売れていた。
でも今は違う。
より細やかなサポートが必要で、売り方が「提案型営業」にシフトしているように感じる。客は「みんなが使うものよりも、自分にあうものを」求めている、ということだ。
化粧品業界の課題(日系メーカー)
日系メーカーの課題について述べていく。
課題①グローバルブランドvs.国内メーカーの競争激化
P&G、ロレアルパリなど、グローバルブランドが日本で浸透し、もはや日本国内ではカネさえ払えば何でも手に入る市場になった。そして、なぜか富士フィルムのようなメーカーも参入しており、明らかに競争過多になっている。
客にとって選択肢が増えるのはいいことだけど、国内メーカーにとってはしんどい状況。
課題②世界で通用するブランド力の不足
日本の市場は飽和しており、大きな伸びは期待できない。ということで日系各社は海外、特にアジア市場を拡大していきたいのだけど、ここでも立ちはだかる、グローバルブランドたち。
もともと化粧品は西洋文化から入ってきたものであり、アメリカ、フランス、イギリス系のブランドが強い(ハリウッド女優やセレブの起用もすごい)。
そこでどう太刀打ちしていくのか?
安売りしていくのか?中級~高級路線なのか?
正直いって「はっきりしない」というのが今の印象。安売り路線ではローカルメーカー&韓国メーカーに勝てないし、中級~高級路線は欧米系のメーカーに勝てない。どうも差別化できてないよなぁ…、と感じる。
※海外売上比率が50%を超えている資生堂もブランディングに無理やり感がある。
化粧品業界の今後と将来性
課題を踏まえた上で最後にまとめとして、化粧品メーカー(特に日系)の今後と将来性について述べていく。
まず日系メーカーが生き残るには「グローバル展開」の成功が必須。世界的には人口が増えるのだから、グローバル市場はどんどん成長する。だから市場の将来性はとても明るい。
ところがどの企業もグローバル展開がイマイチ。
何が理由かは正直、よくわからない。
価格競争力では負けようがないから、日系はマーケティング力・ブランド力が間違いなく弱い。P&G、ユニリーバの商品は実際、日系メーカーと何も変わらないけどブランド力が違う。
ざっくりまとめ
国内メインだけど今後は海外拡大したい花王、
中国失速、国内失速のダブルパンチで低迷中の資生堂、
「アスタリフト」で迷走している富士フィルム、
「雪肌精」「アルビオン」の2ブランドが絶好調のコーセー。
化粧品や洗顔料、シャンプーって誰でも作れるので結局のところ、ブランディングで全て決まる(元も子もないことを言ってしまった)。消費者には違いがイマイチ理解できない、すべて気のせいである。
結局のところ…わからない!
消費者相手のビジネスって、いつ何時、何が起こるかわからないから面白い。いま好調のコーセーや花王だって、10年後には富士フィルムに抜かれているかもしれない(苦笑)。
もしかしたら、コーセーが世界No.1コスメブランドになっているかもしれないww
だから将来性を考えるだけ時間のムダで、どんな企業に就職・転職しても同じである。年収の高い順に選んだらいいんじゃないかと思う。
そして、たまたま運が強くて成功することを祈るだけだ。