「ご報告いたします」は間違い敬語?二重敬語?
とご心配のあなたへ。
「ご報告いたします」は完璧に正しい敬語でありビジネスシーンではよく使われます。
たとえば、
- 【例文】販売状況につきご報告いたします
- 【例文】来期の予算案につきご報告いたします
などとして使われます。
「ご報告」の「ご」はあっても無くても丁寧な敬語です。
くわしい解説は本文にて。
「ご報告いたします」が正しい敬語である理由と、ビジネスシーン(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)での使い方、例文を紹介します。
「ご報告いたします」は間違い敬語・二重敬語ではない
まずは結論から。
「ご報告いたします」は二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。正しい敬語です。
なぜなら、
もとになる単語「報告」に「(お・ご)〜いたす」という謙譲語の基本形をつかっているから。
「ご報告いたします」の意味
「ご報告いたします」のそもそもの意味は敬語にする前のもとになる語「報告」の意味を考えるとわかります。
辞書によると「報告」の意味はざっくり以下のとおり。
- 告げ知らせること。特に、ある任務を与えられた者が、その経過や結果などを述べること。また、その内容。
【例】2018年度の予算を策定いたしましたので、(ご)報告いたします
【例】3月どの営業実績につき下記のとおり(ご)報告いたします
ここで(ご)というように( )書きにしたのは、「ご」はあっても無くても敬語として正しいからです。
ちなみに敬語「ご報告いたします」は自分が「報告する」ときにつかいます。
相手に「報告してもらう」としたいときには…
「ご報告いただく=報告してもらう」
「ご報告くださる=報告してくれる」
という敬語をつかいます。
これだけですべてを物語っているのですが説明不足かもしれませんので、
- なぜ「ご報告いたします」を間違い敬語とおもってしまうのか?
- なぜ正しい敬語なのか?
- そもそも謙譲語とか尊敬語って何?
- そもそも二重敬語って何?
という部分についてもくわしく解説していきます。
間違い敬語と感じる理由は「尊敬語」と判断しているから
なぜ「ご報告いたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…
「ご報告」の「ご」の部分にあります。
この「ご報告」は尊敬語「ご」をつかって敬語にしているかのように見えます。
尊敬語は相手の行為につかうため「ご報告」が尊敬語であればたしかに「ご報告いたします」は間違い敬語です。
尊敬語とはたとえば、
「お客様、お忘れものはございませんか?」
「部長はお戻りになりましたか?」
などとしてつかう「お・ご」のこと。これらはいずれも尊敬語であり、目上の行為をうやまってつかう敬語。
ところが「ご報告いたします」は自分が「報告する」という意味であるハズ。したがって尊敬語ではおかしいのです。
でも実際には「ご報告いたします」は尊敬語ではなく、謙譲語をつかっています。
【補足】そもそも尊敬語とは?
そもそも尊敬語とは…
敬語の一種であり、相手を立てる・うやまう・高める敬語のこと。
相手の行為につかい、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。
ビジネスシーンで尊敬語をつかうときの注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
謙譲語「(お・ご)〜いたす」を使っているから正しい
「ご報告いたします」はもとになる単語「報告」に「(お・ご)〜いたす」という謙譲語の基本形をつかっています。
ここで(お・ご)と( )書きにしたのは、あってもなくても敬語としてOKだから。
謙譲語をつかって敬語にしており、正しい敬語の使い方をしています。二重敬語でもなく間違い敬語でもありません。
謙譲語には「お・ご〜する」「お・ご〜いたす」という使い方があります。
たとえば、
「ご連絡する」「(ご)連絡いたす」
「ご確認する」「(ご)確認いたす」
「ご挨拶する」「(ご)挨拶いたす」
「お願いする」「お願いいたす」
こんな感じでつかう敬語です。ちなみに丁寧語「ます」をくっつけて「お・ご〜します」「お・ご〜いたします」とするのが一般的。
【補足】そもそも謙譲語とは?
そもそも謙譲語とは…
敬語の一種であり、自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語。
自分の行為につかい、対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。
ただし細かくは謙譲語にも2種類あります。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
ややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
「ご報告いたします」は二重敬語ではない
「ご報告いたします」は二重敬語だという意見があります。
「ご報告する」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「ご報告いたす」としているから…
「ご報告する=謙譲語」×「いたす=謙譲語」
「ご報告いたす」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??
このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。
ただし答えは「二重敬語ではない」です。
二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。
たとえば「お伺いいたします」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。
ところが、
「ご報告いたします」は「報告」+「する」という2つの単語から成り立ちます。「報告」を謙譲語には変換せず「お・ご〜いたす」という謙譲語を適用しているため、謙譲語は一回しかつかっていません。
したがって二重敬語ではありません。
よくよく考えてみると…
「ご報告いたします」が二重敬語になるのでしたら、ビジネスメールの結びで必ずといっていいほど使う「お願いいたします」も二重敬語になるはずですよね。
ただし「報告いたします」で十分に丁寧な敬語
じつは「ご報告いたします」という謙譲語は「ご」を省いて「報告いたします」としても謙譲語として成り立ちます。
なぜなら「報告いたします」は、
もとになる単語「報告」に「する」の謙譲語「いたす」をつかい丁寧語「ます」をくっつけた敬語だから。
ビジネスメールでは「(お・ご)〜いたします」といった謙譲語をほんとうによく使います。さらには尊敬語の「お・ご」もたくさん使います。
でこれの何が問題かというと、
「お・ご」だらけのビジネスメールになって読みにくくなってしまうこと。
気持ち悪いメールになってしまいます。
尊敬語「お・ご」とも混同しやすいため「報告いたします」推奨
そもそも「お・ご〜いたします」という謙譲語は尊敬語の「お・ご」と混同しやすいです。間違い敬語と思われても仕方ないのですね。
で、
「ご報告いたします」「報告いたします」どっちを使うべきかの結論としては、文章のバランスを考えて「報告いたします」をメインに使うことをオススメします。
ちなみに私はビジネスメールであろうと電話であろうと「報告いたします」しか使いません。理由は上述したとおり。
謙譲語「お・ご〜します」「(お・ご)〜いたします」
「お・ご〜します」あるいは「(お・ご)〜いたします」はそれぞれセットで覚えておくとよいでしょう。
正確には「お・ご〜する」「(お・ご)〜いたす」が謙譲語なのですが、フツーは丁寧語「ます」をくっつけてさらに丁寧な敬語にします。
結果として
「お・ご〜します」
「(お・ご)〜いたします」
というように謙譲語として使います。(お・ご)と( )にしたのは、あってもなくてもどちらでも敬語としてOKだからです。
※ 二重敬語になる語もありますので十分にご注意ください。
➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方
➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!
“ご報告させていただきます”使い方は合ってるけど…
「(ご)報告させていただきます」という表現を使うビジネスパーソンをよく見かけます。「〜させていただく」は「させてもらう」の謙譲語なので、敬語の使い方としては合っています。
でも「報告させてもらう」って、あまりにもへりくだり過ぎているような…。
シンプルに「報告する」を謙譲語「いたします」を使って「報告いたします」とすればいいものを。他にも丁寧な表現があるので、私は「報告させていただきます」を使いません。
ですが実際によく使われているのは事実。使うかどうかは、あなたの考えにお任せいたします。
➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた
これにて全ての疑問を解決しました。
あとは「ご報告いたします」のビジネスシーンにおける使い方について、メール例文とともにくわしく見ていきます。
使い方「何かしらの報告をする」
「ご報告いたします」は目上や取引先に、あなたがなにかしらの「報告をします!」と言いたいきに使います。
使い方は簡単で、ビジネスシーンでは「8月度の販売状況につき、下記のとおりご報告いたします」などとして使います。
ご報告いたします を使ったビジネスメール例文(全文)
つづいて「ご報告いたします」を使ったビジネスメールの例文を挙げていきます。
文字通り、何かの報告をするビジネスメールにおいて活躍する表現です。目上の方や取引先に対して使える文章にしていますので、ご参にどうぞ。
※ さきに解説したとおり「ご報告いたします」「報告いたします」のどちらを用いても丁寧です
【社内上司あて】出産報告・挨拶メール例文
【社内上司・基本テンプレート】
・社内の上司あて出産報告、挨拶ビジネスメール例文
・出産した本人が上司に送るケース
・上司にだけ連絡しておけばよく、そのあと誰にシェアするかは上司の仕事になる。あちこちに報告する必要はない(いろいろな人に報告しても無害ではあるが…)
メール件名①出産のご挨拶
メール件名②出産のご報告
●● 部長
大変ご無沙汰しております。
営業部 野間子です。
さて、私事で恐縮ではございますが、○月○日に長男を出産しましたことを、ご報告いたします。誕生した長男には「野窓(のまど)」と命名いたしました。
勤務中は、温かいお言葉とお心遣いを頂きまして、誠にありがとうございました。
お陰さまで母子ともに健康に過ごしております。
なお後日、皆様への出産のご報告をかねまして、ご挨拶かたがた●●オフィスへ伺います。日程につきましては改めてご相談いたしたく存じます。
しばらく休暇のため、部署の皆様にはご迷惑をお掛けしますこと、どうかご容赦いただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
甚だ略儀ではございますが、
まずはメールをもちましてご挨拶申し上げます。
——————————-
営業部 野間子
——————————-
・私事で恐縮ではございますが は「自分のことで恐れ入りますが、申し訳ありませんが」の意味。「私事ではございますが」としてもよい。
・いたします は「する」の謙譲語「いたす」に丁寧語「ます」をくっつけた敬語
・いただく/賜る はどちらも「もらう」の謙譲語。かしこまった文章では「賜る(たまわる)」を使う
・おります は「いる」の謙譲語「おる」に丁寧語「ます」をくっつけた敬語
・存じます は「思う」の謙譲語「存じる」に丁寧語「ます」をくっつけた敬語
・ご容赦 は「許すこと」の意味。謝罪やお詫びによく使われる
・~していただければ幸いです は「~してもらえたら嬉しいなぁ」の意味。かしこまった表現には「幸甚(こうじん)に存じます」がある
・略儀ながら/ございますが~ は「礼儀を省略しますが」の意味。「甚だ(はなはだ)」は「とても、大変」の意味
・お(ご)~いたす は謙譲語の基本となる形。丁寧語「ます」をくっつけて「お(ご)~いたします」として使うのが一般的
【社内上司あて】妊娠報告・挨拶メール例文
【社内上司・基本テンプレート】
・社内の上司あて妊娠報告、挨拶ビジネスメール例文
・妊娠した本人が上司に送るケース
・上司にだけ連絡しておけばよく、そのあと誰にシェアするかは上司の仕事になる。あちこちに報告する必要はない(とくに女性ばかりの職場では注意が必要)
メール件名①ご報告
メール件名②妊娠のご報告
●● 部長 (社内上司)
お疲れ様です。
さて、私事で恐縮ではございますが、このたび新しい命を授かりましたことを、ご報告いたします。現在安定期に入り、出産は来年の4月上旬ころを予定しております。
突然のご報告となり、誠に申し訳ございません。
出産に際しましては何かとご迷惑をお掛けすることと存じますが、どうかご容赦いただければ幸いです。何卒よろしくお願いいたします。
甚だ略儀ではございますが、
まずはメールをもちましてご報告申し上げます。
——————————-
営業部 野間子
——————————-
参考記事
➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方
➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!
➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた