「お引き取りくださいませ」の意味、ビジネスシーンにふさわしい使い方(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)、注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味・敬語の解説
「お引き取りください」は「引き取ってほしい」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
引き取るの意味は”立ち去ること・退くこと”
“引き取る”のそもそもの意味は…
- 立ち去ること。退くこと
- 引き受けて手もとに置くこと
たとえば、
【例文】この場は私に任せてお引き取りください →「立ち去る」の意味
【例文】まったく興味がありません。今すぐお引き取りください →「立ち去る」の意味
【例文】粗大ゴミの引き取り →「引き受けて手元に置くこと」の意味
のようにして使います。
ちなみに敬語は「引き取る」に尊敬語or謙譲語「お(ご)」で「お引き取り」というようになります。
「自分がお引き取りする」のであれば謙譲語としての使い方。
上司・目上・取引先などの「相手がお引き取りくださる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
“お引き取りくださいませ”の意味は「引き取ってください」
「お引き取りくださいませ」の意味は直訳すると「引き取ってくれ」となります。
つまり「①立ち去ってくれ」「②引き受けて手元に置いててくれ」のどちらかの意味に解釈できます。
ただし敬語をつかっているため実際にはもっと丁寧なニュアンス。
結局のところ、
「引き取ってほしい」「引き取ってください」ということが言いたいのですね。
「ませ」ってどんな意味?
“お引き取りくださいませ”の「ませ」に深い意味はなく、丁寧語「ます」の命令形です。
ほとんどの場合は「お(ご)〜くださいませ」のワンセットで使われ、
「〜してください」「〜してほしい」の意味になります。
敬語の種類
まとめとして「お引き取りくださいませ」の敬語の成り立ちを整理しておきます。
- もとになる単語「引き取る」
- 「〜してくれる」の尊敬語”お(ご)〜くださる”で「お引き取りくださる」
- 丁寧語”ます”の命令形「ませ」をくっつけて「お引き取りくださりませ」
- 楽に発音するため「り→い」にして「お引き取りくださいませ」
※ 漢字表記「下さい」vs ひらがな表記「ください」はどちらもOK
※「くださりませ → くださいませ」への変化を「イ音便」といいます
※ “引き取る”の意味は「①立ち去ること。退くこと」「②引き受けて手もとに置くこと」のどちらか
このようにして元になる語「引き取る」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
「自分がお引き取りする」のであれば謙譲語としての使い方。
上司・目上・取引先などの「相手がお引き取りくださる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
“お引き取りください vs くださいませ”の違い
“お引き取りください vs くださいませ”の違い
もともと”お引き取りくださいませ”は「お引き取りください」という命令形。
ただ、
「お引き取りください」だとシーンによっては強い口調に感じられることがあり、目上・上司などに不快感をあたえる恐れがあります。
(実際には敬語なので決して失礼ということはないのですけど…)
そこで、
「〜ください」に丁寧語の命令形「ませ」を添えることで、やんわ〜りとした依頼・お願いの敬語フレーズにしています。
“お引き取りくださいませ”のほうが丁寧
“お引き取りください vs くださいませ”の違い
命令形である点において「お引き取りください」とたいして違いはありませんが、「ませ」を添えることで、よりやわらかい印象となりますね。
ちなみに「〜くださいませ」は女性がよくつかうフレーズであるため、女性敬語だと言われることもあります。
ただ実際には男性であろうと女性であろうと違和感なくつかえます。
【使い方】引き取ってほしい!と伝えるビジネスシーン
つづいて「お引き取りくださいませ」の使い方について。
意味のとおりで何かしら「引き取ってほしい!」「引き取ってください!」と言いたいビジネスシーンに使います。
①電話対応・ビジネスメールどちらにも使える
「お引き取りくださいませ」の使い方
上司や社内の目上・社外取引先になにかしら「引き取ってほしい」とき。
電話対応・商談などの会話シーンでもつかえますし、ビジネスメールなど文章にもつかえる丁寧な敬語フレーズです。
お願いごとや依頼事項のたくさんあるビジネスメールではとかく「いただく」ばかりつかってしまい、文章や言い回しが気持ち悪くなるケースあり。
そんなとき、
「お引き取りくださいませ」にかぎらず「〜くださいませ」というフレーズはサラッとつかえてかつ、やわらかい印象になるので重宝しますね。
②例文
「お引き取りくださいませ」はたとえば、
- 【例文】どうかお引き取りくださいませ
- 【例文】この場は何卒お引き取りくださいませ
- 【例文】大変恐れ入りますが、17時までにお引き取りくださいませ
※ “引き取る”の意味は「①立ち去ること。退くこと」「②引き受けて手もとに置くこと」のどちらか
のようにして依頼・お願いをともなうビジネスシーン(会話・電話対応・メール)に使われます。
ようするに「引き取ってほしい!」という意味なのですが丁寧な敬語にすると、こんな風にややこしい文章になります。
“お引き取りいただく”に言い換えても丁寧
ビジネスシーンでは「お引き取りくださいませ」でも十分に丁寧ではありますが…
敬語「お引き取りいただく」をつかったフレーズに言い換えても丁寧です。
たとえば、
- 【例文】お引き取りいただければと存じます
- 【例文】お引き取りいただければ幸いです
などあり。
例文は後ろでまとめて紹介します。
違いと使い分け
「お引き取りいただく vs お引き取りくださる」の違いについて簡単に。
どちらも結局のところ言いたいことは同じ。
「引き取ってもらう・引き取ってくれる」
と言いたいわけですが…
- “お引き取りいただく“だと意味は「引き取ってもらう」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」
vs.
- “お引き取りくださる“だと意味は「引き取ってくれる」
→敬語は尊敬語「お(ご)〜くださる」
というように意味と敬語の使い方が違います。
が、言いたいことは全く同じなわけです。
したがって、
敬語の使い方には違いはあれど、どちらもひとしく丁寧な敬語であり目上・上司・社外取引先につかえるフレーズです。
ただ少しニュアンスの違いというか敬語の使い方が違うよ、ということですね。
ちなみに「お引き取りいただく」をつかったほうが、やんわ~りとしたニュアンスになります。
が、だからといって「いただく」ばかり使っていては気持ち悪い文章になります。バランスを考えてつかいましょう。
【補足】敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
ビジネスメールによく使う丁寧な言い換え
「引き取ってほしい」ときにつかえるビジネス敬語。
じつは…
「お引き取りくださいませ」だけではなく、もっと丁寧な(というか堅苦しい)敬語フレーズというのはたくさんあります。
ということで、
ここではとくにビジネスメールにおいて活躍する丁寧な敬語フレーズを紹介します。
①お引き取りいただければと存じます
「引き取ってほしい」ときにつかえる丁寧なビジネス敬語
- 例文「お引き取りいただければと存じます」
意味は『引き取ってもらえたらと思います』
「~してもらえたらと思う」としているため相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「れば」
「存じます」は「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」
②お引き取りいただきたく存じます
「引き取ってほしい」ときにつかえる丁寧なビジネス敬語
- 例文「お引き取りいただきたく存じます」
意味は『引き取ってもらいたいと思います』
「~してもらいたいと思う」としているため相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
「いただきたく」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+願望の「~たい」
「存じます」は「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
③お引き取りいただければ幸いです
「引き取ってほしい」ときにつかえる丁寧なビジネス敬語
- 例文「お引き取りいただければ幸いです」
意味は『引き取ってもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『引き取ってもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
「~いただければ幸いです」という敬語フレーズはお願い・依頼のビジネスメールでよく使います。以下の例文もご参考にどうぞ。
ほかにも似たような敬語には以下のようなフレーズもあります。
- 例文「お引き取りいただけましたら幸いです」
- 例文「お引き取りいただけましたら幸甚に存じます」
- 例文「お引き取りいただければ幸甚に存じます」
- 例文「お引き取りいただけますと幸いです」
- 例文「お引き取りいただけますと幸甚に存じます」
補)幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
④お引き取りくださいますようお願い申し上げます
「引き取ってほしい」ときにつかえる丁寧なビジネス敬語
- 例文「お引き取りくださいますようお願い申し上げます」
- 例文「お引き取りくださいますようお願い致します」
意味は『引き取ってくれるようお願いします』
とくにビジネスメールの結び・締めによくつかうフレーズですね。
「ください」単体としての意味は「〜してくれ」「〜して欲しい」の丁寧な言いまわしと考えることができます。
が、
「ください」は敬語ではあるものの、結局のところ命令形であるために強い口調となります。
そこで「ますようにお願い」と続けることで「お願い」とすり替え、やんわ〜りとした表現にしています。とても丁寧な敬語フレーズと言えますね。
たとえば、
- ご査収くださいますようお願い申し上げます
意味「よく中身を確認して受け取ってくれるようお願い!」 - ご検討くださいますようお願い申し上げます
意味「検討してくれるようお願い!」 - ご確認くださいますようお願い申し上げます
意味「確認してくれるようお願い!」 - ご了承くださいますようお願い申し上げます
意味「納得してくれるようお願い!」
などのようにして使います。
これらはもともと「●●してください」という命令形なのですが、「●●くださいますようお願い〜」を使うことによって相手に強制しないやんわ〜りとした表現となっています。
ビジネスでは下手(したて)に出ることが基本ですので、強い口調を避けるためにこのような使い方をするようになったのだと推測します。
⑤お引き取りいただきますようお願い致します
「引き取ってほしい」ときにつかえる丁寧なビジネス敬語
- 例文①お引き取りいただきますようお願い申し上げます
- 例文②お引き取りいただけますようお願い致します
意味は『①引き取ってもらうようお願いします』『②引き取ってもらえるようお願いします』
とくにビジネスメールの結び・締めによくつかうフレーズですね。
「いただきますよう」は”〜してもらう”の謙譲語「お(ご)〜いただく」+丁寧語”ます”+”ように”
「いただけますよう」は”〜してもらう”の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+丁寧語”ます”+”ように”
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
「くださいますよう」「いただきますよう・いただけますよう」はニュアンスが違うものの、どれも結局のところ「~してほしい」と言いたいので同じです。
⑥~その他いろいろな言い換え敬語
敬語の種類というのは本当にいろいろあります。
ほんの一例ですが他にもある使い方を例文にまとめておきます。なお下にある例文ほど丁寧なフレーズになります。
- 例文「お引き取りいただきたく、お願い致します」
意味は「引き取ってほしい、お願いします」 - 例文「お引き取りいただけますか?」
※意味は「引き取ってもらえるか?」でとくに会話シーンで使われるフレーズ - 例文「お引き取りいただけますでしょうか?」
※意味は「引き取ってもらえるだろうか?」でとくに会話シーンで使われるフレーズ - 例文「お引き取りいただけますと幸いです」
※意味は「引き取ってもらえると嬉しいです」 - 例文「お引き取りいただけましたら幸いです」
※意味は「引き取ってもらえたら嬉しいです」 - 例文「お引き取りいただければ幸甚に存じます」
※意味は「引き取ってもらえれば、大変嬉しく思います」 - 例文「お引き取りいただけますと幸甚に存じます」
※意味は「引き取ってもらると、大変嬉しく思います」 - 例文「お引き取りいただけましたら幸甚に存じます」
※意味は「引き取ってもらえれば、大変嬉しく思います」
・「存じる」は「思う」の謙譲語
・「いただきたく」は謙譲語「いただく」+願望「~たい」
・「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」・幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
ビジネスメール例文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お引き取りくださいませ」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
なおビジネスメールにおいて「お引き取りくださいませ」としてもいいのですが、
「お引き取りいただきたく存じます」
「お引き取りいただければと存じます」
「お引き取りいただければ幸いです」
などの敬語もオススメです。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文:時間までに引き取ってほしい
メール件名: ヒルトンホテル ご予約確定のご案内
株式会社ビジネス
営業部 xx 様(社外取引先)
いつも弊社サービスをご利用いただき誠にありがとうございます。
カスタマーサポート担当のノマドでございます。
さて、このたびご予約いただきました当ホテルの会議室の設備等につき、下記のとおりご案内申し上げます。
記
①ご利用日:4月23日(火)9:00-17:00
②ご予約内容:会議室xx
③ご利用人数:10名様
④その他設備:
なお、会議室のご利用は17:00までとなっております。次にご利用になるお客さまがいらっしゃいますので、時間どおりにお引き取りいただけますと幸いです。
以上
追加で必要な備品等がございましたらお気軽にお申し付けください。
何卒よろしくお願い致します。
***************
営業部 ノマド
***************
ビジネス会話・電話対応では”お引き取りください”で十分
ビジネスメールではなく会話や電話対応シーンであれば…
「お引き取りくださいますようお願い申し上げます」などは絶対につかいません。
長いうえに丁寧すぎて気持ち悪いですからね。
ビジネス会話・電話対応では「お引き取りください」だけでも十分に丁寧です。
あるいは、
- 【例文】お引き取りいただけますか?
- 【例文】お引き取りいただけますでしょうか?
- 【例文】お引き取り願えますでしょうか?
といった質問フレーズをつかっても丁寧。
これらの意味としては「引き取ってもらえますか?」であり、敬語をつかって丁寧な表現にしています。
「〜いただけますか?」サラッと言えるためビジネスシーンで重宝するフレーズです。
敬語の解説
「お引き取りいただけますか?」「お引き取りいただけますでしょうか?」
の敬語の成り立ちとしては…
- “引き取る”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「お引き取りいただく」
- 可能形にして「お引き取りいただける」
- さらに丁寧語”ます”で「お引き取りいただけます」
- 疑問形にして「お引き取りいただけますか?」
“〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」を使うと「お引き取りいただけますでしょうか?」
どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。
どちらかというと「〜いただけますでしょうか?」のほうが丁寧なのですが…バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけますか?」を使うのをオススメします。