「不徳の致すところです」意味と正しい使い方・やりがちなNG謝罪例文

「不徳の致すところ(読み:ふとくのいたすところ)」について、意味と敬語での正しい使い方をビジネスメールの例文つきで誰よりもわかりやすく解説していく記事。

まずは結論として、

「不徳の致すところ」の意味は「自分の徳が足りなくて起こしたこと」「自分のミスや過失で起こしたこと」です。

「すべて私の不徳の致すところです」として謝罪文・謝罪メール・謝罪会見など、かしこまった場面で使われます。

使い方としては例えば、

  • 例文「今回の事件については、すべて私の不徳の致すところでございます」
  • 例文「浮気について報じられていることは事実であり、すべて私の不徳の致すところでございます」謝罪文および会見
  • 例文「ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。このたびの製品不良に関しましては、すべて私どもの不徳の致すところでございます」クレーム対応メール

※使うシーン:謝罪会見、謝罪文、クレーム対応

というような具合に使います。

謝罪するときの丁寧な表現として政治家とかタレント、コメンテーター、企業のオーナー、責任者がよく使いますね。

ただしひとつ注意点を。

「不徳の致すところ」は特殊なシーンでしか使われず、普段のビジネスで使うにはあまりに大げさ。丁寧すぎる敬語はバカ丁寧となってしまい相手から嫌われるリスクがあります。

「不徳」の本来の意味は「①徳が足りていないこと、②道徳に反すること」です。

よくよく考えると世の中で道徳に反することをするのって、犯罪者かコンプライアンス違反したヒトだけなのですよね。

ということで使うビジネスシーンはよく考えましょう(注意点は本文で)。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、くわしくは本文中にて解説していきます。

※長文になりますので時間の無いかたは「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。

「不徳の致すところです」の意味と敬語の解説

「(私の)不徳の致すところです」の意味と敬語について少し…

結論としては

  • (私の)不道徳によるところです
  • (私の)徳が足りてないせいです

みたいな意味となりますが、こまかく見ていきます。

【補足】「不徳の致すところです」をウェブ辞書で調べると「自分のミスや過失で起こしたことを詫びる表現」とありますが間違いだと思います。

「不徳」の意味は「ヒトの道に反すること、行為」

不徳の意味はおおきく以下2つ。

  1. 徳が足りていないこと
  2. ヒトの道に反すること、行為

どちらも同じような意味ですが謝罪でつかわれるときは、どちらとも考えられます。

「私の不徳の致すところ」だと「私の徳が足りていないところ」という意味になります。

何かの犯罪をして「私の不徳によりご迷惑をおかけし~」みたいな使い方をするなら「②ヒトの道に反する行為で迷惑かけてスミマセン」とも考えられます。←こんな表現は聞いたことありませんが…

「致す」の意味は「ひきおこす・もらたす」

「致す(よみ:いたす)」の意味はおおきく以下2つ。

  1. 引き起こす、もらたす
  2. 「する」の謙譲語
    ・丁寧語「ます」をつけて「~いたします」として使うのが一般的
    ・性行為を「する」という意味で「いたす」と使われるときもある

これを「不徳」といっしょに謝罪やクレーム対応につかうと「①(わたしの)不徳のもたらした結果です」というような意味にとれます。

あとは簡単で、よく使われる敬語のひとつである丁寧語「です・ます調」をつかって「不徳の致すところです」とすれば敬語としてなりたちます。

意味は「道徳に反する行為がもたらした結果です」

「不徳」と「致すところです」をあわせると意味は…

  • (私の)道徳に反する行為がもたらした結果です
  • (私の)不道徳によるところです
  • (私の)徳が足りてないせいです

ということになります。

「不徳の致すところです」の使い方

「(私の)不徳の致すところです」が使えるのは、ホントにかしこまった謝罪文や謝罪会見など記録にのこるような謝罪シーン。

自分の徳が足りなくって何かよからぬことが起こるなんて…ふつうに考えたら犯罪くらいしか思いつきません。

つまり犯罪とか、犯罪じゃなくてもコンプライアンス(法令・規則をまもること)に違反するような何かをやらかした場合に使うのがふつう。

ということで繰り返しになりますが、

「コンプライアンス違反・犯罪を犯したときの謝罪文またはメール」として使いましょう。

ふつうのクレームは自分が100%わるいなんてことは少なくて、顧客にも少しは非があったり、どうにもできない不可抗力もあるのです。

それでは例文でみていきましょう。

【使い方】コンプライアンス違反の謝罪文・メール

「コンプライアンス違反の謝罪」のなかには、製品の欠陥による重大事故(たとえばリチウムイオン電池が爆発したなど)、ヤミ献金問題や裏金にたいする謝罪、談合などをして書類送検されたときの謝罪・・・などがあります。

このようなビジネスメールや謝罪文、謝罪会見では「すべて私どもの不徳の致すところです」として謝ると多少は好感がもてます。

▼「不徳の致すところ」の例文

  • このたびの談合事件に関しましては、すべて私どもの不徳の致すところです。関係者の皆さまには甚大なるご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます
  • このたびの情報漏えい問題に関しましては、すべて私どもの不徳の致すところです~後略
  • このたびの一連の報道にかんする事項につきましては、すべて私どもの不徳の致すところです~後略
  • このたびの過労死事件につきましては、すべて私どもの不徳のいたすところです。

※謝罪文・謝罪会見の冒頭に使うことを想定しています。

【注意点】不徳の致すところです、はこう使う!

つづいて「(私の)不徳の致すところです」を使うときの注意点を解説します。

クレームがあったからといって謝罪メールにホイホイと使ってしまわないよう、十分にご注意ください。

【注意】不徳の致すところです、はクレームメールには使わない!

「(私の)不徳の致すところです」の本来の意味は「私の道徳不足で引き起こしたこと、事件、事故」です。

今でこそ謝罪のビジネスメールでかる~く使われる表現ですが、これって私のようなおっさんからすると「おいおい、キミは何か犯罪になるようなことでもしたのかね?」と思ってしまいます。

それもこれも、間違った解説をしているウェブサイトが多いせいですかね!?

まぁそんなことはほっといて…

とにかく、あなたが犯罪者やコンプライアンス違反者でなければ使う必要のない表現。ふつうに「ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます」などの敬語で十分に丁寧です。

使うシーンを間違えると犯罪者よばわりされるので、ふさわしいビジネスシーかどうかいま一度お考えください。

【注意】ホントに「不徳=道徳に反する行為」だったときだけ使う

いい加減しつこいのですが、どうしても言わなければ気がすまないので…

「不徳の致すところです」をクレーム対応に使え!というのは間違い。

ホントにあなたの行為が「不徳=道徳に反する行為」だったときにだけ使ってください。政治家やタレントが使うときのケースを考えてみましょう。

覚せい剤をやったり、浮気したり、ヤミ献金をもらったり、事件や事故をおこしたり…

というような犯罪者もしくは道徳的に考えて「?」という行為をしたヒトだけが謝罪するときに使ってます。

で、ビジネスシーンでのクレーム対応を考えてみましょう。

私たちは法律や規則を守りながら一生懸命働いているのです。それでもミスや過失はどうしても起こります。

たとえクレームの原因があなたにあったとしても「不徳=道徳に反すること」ではないハズ。

道徳的にやってて発生したクレームであれば謝罪メールには「大変申し訳ありません」だけで問題ありません。

もちろんワザと法律のぎりぎりをねらったグレーの仕事で起こした問題は「私の不徳の致すところです」となりますが…

やってはいけない!不徳の致すところです~のNG謝罪例

もうホントにくどいのですが…

「不徳の致すところです」をあきらかにおかしい場面で使っている謝罪文をよく目にします。

そんな中からひとつNG謝罪例文として紹介しておきます。

※ これは実際にあった事例ですが特定できないようにボヤかしてます

NG×となる謝罪例文

皆様

本日発売となりました「○○」において、
△△が未収録となっておりますことを、
ここに深くお詫び申し上げます。

今回の事態に関しましては、全て作者である私の不徳の致すところであり、
今後はこのような事が起こらないよう、十分な注意を払って参ります。

~中略~

繰り返しになりますが、今回のことで、読者の皆様に多大な不快感を与えたことを、
重ねてお詫び申し上げ、以上を謝罪文とさせて頂きます。

メール署名

▼▼▼▼▼▼

軽々しく「不徳」という言葉をつかうんじゃない!

とツッコミをいれたくなる謝罪文ですね…

正しく言い換えるとしたらこんな感じ。

  • すべて作者である私の至らない部分が招いた結果であり…
  • すべて作者である私の責任であり…

【参考】「至らない点も多々あるかと思いますが」意味と敬語での正しい使い方

【言い換え】不徳のいたすところ、よりも相応しい謝罪の表現・類語例

つづいて「不徳の致すところです」よりもふさわしい謝罪に使える表現・類語を例文でまとめます。

これまで解説したように謝罪が発生するビジネスメールでは、「不徳の致すところです」よりも使えるのでこれらの表現に言い換えしましょう。

もちろん目上の人(上司・先輩)にも使えますし、取引先など社外メールにも使えます。

言い換え例文まとめ

  • 言い換え「今回の事故については、すべて私どもの責任でございます」
    ・不徳を「責任」と言い換えした
    ・ホントは違う意味だけど謝罪としては分かりやすくてしっくりくる表現
  • 言い換え「浮気について報じられていることは事実であり、私の至らない部分に責任があります」
    ・不徳を「至らない=未熟な」に言い換えした
    ・ホントは違う意味だけど謝罪としては分かりやすくてしっくりくる表現
  • 言い換え「大変申し訳ありません、大変申し訳ございません」
    ・謝罪のてっぱんフレーズ
  • 言い換え「ご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます」
    ・謝罪のてっぱんフレーズ
  • 言い換え「日ごろの管理体制に問題があったことと猛省しております」
    ・猛省=ものすごく反省する
    ・おります=「いる」の謙譲語
  • 言い換え「このたびの一連の品質問題に関しまして、お客さまには甚大なるご迷惑をおかけしましたこと深くお詫び申し上げます」

▼参考になる記事:

【例文】不徳の致すところです、を使った謝罪文・メール全文

『「不徳の致すところです」意味と正しい使い方・やりがちなNG謝罪例文』へのコメント

  1. 名前:菅野真一 投稿日:2018/10/30(火) 18:03:43 ID:0f3c966a2 返信

    不徳の致すところの使い方は、武士が切腹するくらいの事をした時くらいに使用するんじゃ無いんですかっ?