「ご指摘を受ける」について意味と敬語での正しい使い方、メール返信方法をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まずは結論として、
「ご指摘を受ける」の意味は文字どおり「なにか不備や欠点、過失のあったことに対する指導をうける」です。
ただしこのままでは丁寧レベルは低く、社内で上司や先輩に使えるていどの敬語。
- 「指摘」の意味:欠点、過失のあったことを具体的に取り上げ指し示すこと
- 「受ける」の意味:うけいれる
これをもっと丁寧な敬語にすると「ご指摘(を)いただく」となり目上の人(上司・先輩)に対してはもちろんのこと、社外のビジネスメール(就活・転職メールもふくむ)にも使える、すばらしい表現になります。
使い方としては例えば、
- 例文「ご指摘(を)いただき、ありがとうございます」ビジネスメール
- 例文「ご指摘いただいた件・・・」メール
- 例文「ご指摘いただいた通り・・・」メール
※「ご指摘(を)いただき」の部分は「を」を省略しても、つけても差し支えありません。めんどくさいので「ご指摘いただき」とするビジネスメールが多いです。
※「ご指摘くださり・・・」という敬語をみることがあります。これは間違いではありませんが何か違和感のあることば。くわしくは本文中にて。
などがあり、
上司や目上のヒト・取引先からなにか問題を指摘されたときに感謝をこめてつかう敬語。ビジネスメールではシーンをとわず活躍する表現です。
ちなみに実際には問題を指摘されてイラッとしたとしても「ご指摘ありがとうございます」とするとなんとな~く上手く収まります。
間違っても「それくらいわかってますよ!!」みたいな、ぶっきらぼうな返事をしないようにしましょう。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、くわしくは本文中にて解説していきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
「ご指摘を受ける」を敬語にして目上の人に使う
「ご指摘を受ける」をみていくと…
「指摘」に尊敬語「ご」をつけているので、いちおうは敬語としてなりたちます。
さらに「受ける」には丁寧語「ます」をつかって「ご指摘を受けます・ご指摘を受けました」とするとまぁ、許容範囲の敬語にはなりますね。
ところが社内社外とわず、こんなビジネス敬語の使い方をしているヒトをわたしは知りません。
丁寧語ではなく謙譲語をつかうほうが、より丁寧な表現になります。
※ 謙譲語は自分の行為を下にして(へりくだって)相手をたてる敬語のこと。尊敬語は相手の行為をうやまって使う敬語のこと。(どちらもホントはもっとややこしい)
「受ける」をまずは「もらう」と考える
ところで「受ける」をシンプルに謙譲語にすると「お受けいたす・お受けする」となります。でもこれだと「受ける=引き受ける」みたいな意味にとれてしまうのでイマイチ。
たとえば「仕事を引き受ける」を敬語にすると「お受けする」でもよいのですが、「ご指摘をお受けいたす」とはつかいません。
理由は正直なところよくわかりません。
そこでまずは「受ける」を「もらう」と言い換えて考えましょう。
ホントは指摘はもらうものではなく受けるものですが、これがビジネスメールの不思議なところ。
より丁寧というか丁重というか、謙っているというか…
- 指摘を(ありがたく)もらう
という言葉をビジネスではつかうのです。
日本語としてはかなりオカシイ。
そうすると「もらう」を謙譲語にすればよい、ということになります。
指摘をもらう、を「ご指摘をいただく」とすれば敬語完成!
それでは「受ける」を「もらう」と言い換えして謙譲語にしましょう。
「もらう」の謙譲語は「いただく」なので、
「ご指摘をいただく」という敬語の完成です。
これを基本形として応用すると…
- 例文「ご指摘(を)いただき、ありがとうございます」
- 例文「ご指摘いただいた件・・・」
- 例文「ご指摘いただいた通り・・・」
- 例文「ご指摘いただきました通り」
というような敬語として使えます。
こうすると社内の目上の人(上司など)にはもちろん、社外にたいするビジネスメールにも使える、とても丁寧な表現になります。
【補足】謙譲語「いただく」に、さらに丁寧語「ます・ました」をくみあわせて「いただきました通り・いただきました件」より丁寧な敬語になります。丁寧すぎる気もするので、相手のポジションを考えた上でつかいましょう。
【シーン別】ご指摘いただく・いただき~の使い方
「ご指摘いただく」が使えるのは、上司や取引先からなにか問題や欠点をいわれたシーン。
- 指摘をしてくれてありがとう!
- 指摘をもらった~の件に関して
- 指摘をもらったとおり
というニュアンスをふくむ言葉ですので、とくにクレーム対応などのメール返信に冒頭の挨拶として使います。
それではビジネスシーンごとに例文をみていきましょう。
【使い方】クレームメールに返信する
「クレームメール」のなかには、商品に欠陥があったクレーム、納期が遅延しているクレーム、商品が間違ってとどいたクレーム・・・などがあります。
このようなビジネスメール(就活・転職メールふくむ)では、メール返信の冒頭に「ご指摘いただきました件~」として書き始めると好感がもてます。
▼「ご指摘いただく」をつかった例文
- このたびはご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。さてご指摘いただきました件、弊社内で調査をいたしましたところ○○に過失がございました。~後略
- さてご指摘を頂きましたとおり、弊社内にて物流トラブルによる納期遅延を確認いたしました。ご連絡もれがありましたこと深くお詫び申し上げます。
※ビジネスメールの冒頭に使うことを想定しています。
【使い方】上司や取引先から誤りを指摘された
上司(取引)からなにかしらの誤りを指摘されたメールの中には、仕事での誤り、メール内容の誤り、資料の誤りなどがあります。
そんなとき「ご指摘いただきありがとうございます」をメール返信の冒頭に使うと、自分の誤りをすなおに認めていることになり好感が持てます。
「指摘」ってネガティブなイメージをもつヒトも多いのですが、あなたの指導も兼ねていると考えると「指摘=指導」との解釈ができます。
指摘されることは決して悪いことではありません。
だからこそ「指導してくれてありがとう」というニュアンスで「ご指摘いただきありがとうございます」をつかいます。
▼「ご指摘いただきありがとうございます」メール例文
- ○○様 お世話になっております。
ご指摘いただき誠にありがとうございます。
ご指摘の件につき以下のとおりに訂正いたしたく存じます。~後略 - ○○部長
お疲れさまです。
ご指摘いただき誠にありがとうございます。
会議資料のほう、ご指摘いただいた事項を訂正いたしました。ご査収のほど何卒宜しくお願いいたします。~後略
【使い方】商談・電話(ビジネス会話)
ところで「ご指摘いただく(ご指摘を受ける)」は電話対応や商談にも使えます。ビジネスメールならではの表現「ご査収ください」といった言葉とは違いますね。
使い方はメールとおなじように指摘を受けたことにたいする返事に使うと丁寧です。
▼「ご指摘いただく」電話対応例
~前略(問い合わせ電話)~
あなた:
承知いたしました、それではご依頼のサンプルを手配いたします。
お届けには2週間ほどいただいておりますが、あらかじめご了承ください。
取引先:
ホームページには納期1週間と書いてありましたが…もう少し納期を早めていただけないでしょうか?
あなた:
大変失礼いたしました。
ご指摘のとおりホームページには納期1週間と記載しているのですが…
あいにく在庫を切らしておりまして。
入荷までに1週間必要なため、2週間ほど要してしまいます。
できるかぎり迅速な手配につとめて参ります!
取引先:
わかりました。
あなた:
大変恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします。
【注意点】ご指摘を受ける(いただく)はこう使う
つづいて「ご指摘いただく(ご指摘を受ける)」を使うときの注意点を解説します。
【注意】ご指摘くださいは使わず「お申し付けください」とする
「ご指摘」のよくある間違いとして「内容に不備がございましたらご指摘ください・ご指摘お願いします」みたいな使い方をするヒトがいます。
これは間違いではないのですがイマイチな表現です。
「なにか誤りがあったら指摘してほしいよ」っていうことなのでしょうが…指摘することを強要されているような気になるのですよねぇ。
ということで、もっと素晴らしい敬語に言い換えしましょう。
言い換えの表現としては「何なりとお申し付けください(ませ)」があります。意味は「何なりとわたしに言いつけてください」ということになり、相手に強制しないすばらしい敬語。
ちなみに「内容に誤りなどがあれば指摘してほしい!」という言葉を丁寧な敬語にすると…
- 例文「内容には万全を期しておりますが、不備等がございましたら何なりとお申し付けください。どうぞ宜しくお願いいたします」
みたいな使い方が丁寧ですばらしいです。
なんでもかんでも「ご指摘」をつかうのがよい、といわけじゃないので相応しいビジネスシーンを考えて使いましょう。
【注意】ご指摘いただき申し訳ありません~とは言わない
こちらも「ご指摘いただく(ご指摘を受ける)」にありがちな間違い。
「ご指摘いただき」の原型は「指摘をもらう」です。
もらうの意味を考えるとその後には感謝の言葉が続きます。「お土産をもらってありがとう」とは言っても「お土産をもらってスミマセン…」とは言いませんよね。
ということですので、ご指摘いただき申し訳ありませんは使わず「ご指摘いただきありがとうございます」を使います。
※補足:謝罪の言葉と「ご指摘」はひとつの文章で使わない。かならずご指摘と謝罪はわける。正しい例文「ご指摘のとおり○○に不備がございました。誠に申し訳ありません」
【注意】クレーム対応では「ご指摘ありがとう」ではなく、ちゃんとした謝罪をする
「ご指摘いただきありがとうございます」は地雷を踏んでしまうシーンもあるため要注意。
とくに社外を相手にするビジネスシーンで裁判になりかねない重大なクレーム。
たとえば
商品の欠陥によってケガしたとか、
商品規格をはずれていたとか、
納期におくれて相手の工場をとめたとか…
こんなときに「ご指摘いただきありがとうございます」をつかってしまうと、相手をもっと怒らせてしまいます。あきらかに感謝の言葉をつかうには不適切なシーンです。
クレームのときには「このたびはご迷惑をおかけし深くお詫び申し上げます」などとちゃんとしたお詫びをして「さてご指摘の件~」とつづけます。
【注意】指摘を受けるのは悪いことじゃない
よく新入社員にありがちな勘違いとして「上司から指摘を受ける=仕事ができないヤツ」というのがあります。
でも間違いは誰にでもあること。
むしろ間違いを指摘してもらえることはありがたいことです。
わたしなど、おっさん管理職になっても取引先や上司からいろいろとありがたいご指導(指摘)をいただきます。
ですから、指摘を受けることをもっとポジティブにとらえましょう。そう考えると「ご指摘いただきありがとうございます」となるのですね。
【言い換えOK】指摘を受ける、の類語例
つづいて「指摘を受ける(ご指摘いただく)」の類語を例文でまとめます。ビジネスメールではこれらの表現に言い換えすることもできますので、お好みの表現を用いてください。
もちろん目上の人(上司・先輩)にも使えます。
- 言い換え「ご指導をたまわり(ご指導いただき)、誠にありがとうございます」
・指摘をうける=指導を受ける、と考える - 言い換え「ご指摘の件、大変失礼いたしました」
・ご指摘いただきありがとうございます、の代わりに謝罪をつかう - 言い換え「内容に不備等がございましたら何なりとお申し付けください」
・「ご指摘ください・ご指摘お願いします」の代わりに、お申し付けくださいを使う