「至らない・至らぬ(読み方:いたらない・いたらぬ)」の意味と使い方、類語について、ビジネスメールの例文つきで誰よりも親切に解説する記事。
まずは基本として「至らない(至らぬ)」の意味は「配慮が足りていない、未熟である」で挨拶やメールの結びとして使われます。
使い方には例えば、
- 例文「至らない点も多々あるかと存じますが、今後ともよろしくお願い申し上げます」メール結び
- 例文「至らないばかりに、大変失礼をいたしました。心よりお詫びを申し上げます」お詫び・謝罪
- 例文「至らない点ばかりで申し訳ございません」お詫び・謝罪
などがあり、どの例文も社内メールで目上の人(上司や先輩)に使っても、社外のビジネスメールに使ってもよい、丁寧な敬語表現です。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
この記事の目次
【意味】「至らない・至らぬ」は「配慮が足りていない、未熟」
「至らない・至らぬ」の読み方は「いたらない・いたらぬ」。
「至らない・至る」の意味は「配慮が足りていない、未熟である」。
細かく単語を分解すると「至る」に否定の助動詞「ない・ぬ」をつけた言葉です。
意味を辞書で調べると分かったような気になるのですが、実際には解釈の仕方が色々とあり、難しいです。①ビジネスシーン or ②その他シーンに分け、それぞれ意味と使い方をまとめます。
【意味】ビジネスシーンでは「仕事において未熟である」
当然といえば当然ですが、ビジネスシーンで使う「至らない・至らぬ」は仕事での意味合いが強くなります。そうすると意味は「仕事での配慮が足りていない、仕事が未熟」となり、以下のように使います。
本当に「仕事が未熟である」かどうかは別として、自分を謙遜(けんそん)して使う場合が多いですね。したがって、目上の人(上司)に対して使っても、目下の人(部下など)に対しても使える表現です。
◎「至らない・至らぬ」の例文:
- 例文「至らない点も多々あるかと存じますが、今後ともご指導を賜りますようお願い申し上げます」ビジネスメール結び
- 例文「至らない点ばかりで申し訳ございません」ビジネス会話・謝罪
◎「至らない・至らぬ」の解釈:
- 上司なり先輩の期待する通りの仕事をこなせない
- 先輩や上司への気遣い、配慮がたりていない
- 仕事を進める上で能力が足りていない
【意味】その他のシーンでは「未熟である」
また、結婚式の締めのスピーチなどで使われる「至らない」は、辞書的な意味をそのまま適用し「未熟である」として使います。
以下の例文のような使い方があります。
◎「至らない・至らぬ」の例文:
- 例文「至らない私どもですが、今後ともご指導を賜りますようお願い申し上げます」結婚式の新郎スピーチ
- 例文「至らぬ点も多い私どもですが、 今後ともご指導を賜りますようお願い申し上げます」結婚式の新郎スピーチ
◎「至らない・至らぬ」の解釈:
- 未熟である
- 礼儀を知らない
- 世間を知らない
というように考えることができます。
【シーン別】「至らない・至らぬ」の使い方
これまでの解説で、基本的な部分は終了です。
ただ、これまでの説明だけでは実用的ではありません。もっとビジネスの場面で使えるよう、ビジネスシーンごとに例文つきで使い方を解説していきます。
【使い方】新任・新卒配属・年賀状の挨拶
まずよく使うのは、新任の挨拶、新卒の配属挨拶、年賀状の挨拶など。
新しい仕事をスタートするわけなので、相手が目上(上司)であろうと目下(部下)であろうと、全員があなたにとっての先輩になります。
そこで「至らぬ・至らない」で「(新しい仕事に対して)未熟者の私ですが…」と自分を謙遜して使います。これは自分のポジションが役員であろうと、部長であろうと、新卒の社員であろうと使えます。
ここでの「至らぬ・至らない」は「人生において未熟」という意味ではなく「仕事において未熟」との意味です。
◎「至らない・至らぬ」の例文:
- 例文「至らぬ点もあることと存じますが、今後ともよろしくお願い申し上げます」スピーチ・ビジネスメール
- 例文「至らない点もあるかと思いますが、今後ともご指導ご鞭撻のほど、何卒よろしくお願い致します」上司への年賀状、結び
【使い方】謝罪・お詫びメール、電話
つづいて謝罪・お詫びメールや電話でもよく登場するのが「至らぬ・至らない」です。
ここでは相手に迷惑をかけたことに対して「自分が至らなかったばっかりに…」つまり、「自分が未熟者であったばっかりに…相手に迷惑をかけてしまった、申し訳ない」という意味で使います。
自分が「至らなかった」結果、相手に迷惑をかけてしまった。
自分が「至らなかった」ことを詫びる。
のようにして使うとよいでしょう。例文でご確認ください。
◎「至らない・至らぬ」の例文:
- 例文「至らぬ点が多くご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」メール
- 例文「至らぬ結果となりましたこと、深くお詫びを申し上げます」メール
- 例文「至らないばかりに大変失礼いたしました。心よりお詫びを申し上げます」会話・電話
- 例文「至らない点ばかりで申し訳ございません」会話・電話
- 例文「至らない点が多々あり、皆様にご心配やご迷惑をおかけしたこと、この場をお借りしてお詫び申し上げます」謝罪会見
【使い方】結婚式などスピーチ
結婚式など、お祝いのシーンでもよく使われるのが「至らない・至らぬ」。とくに新郎・新婦がスピーチをする時に「至らない私どもではございますが、〜」などと使います。
ここで使われる時の意味は、「自分たちは世間的にまだまだ未熟者であり、〜」として自分を謙遜(けんそん)し、そのあとに「指導をお願いしたい、支援をお願いしたい」と続きます。
自分を謙遜する目的で使うため、相手が目上・目下どちらであろうと関係ありません。
◎「至らない・至らぬ」の例文:
- 例文「至らぬ点が多々あったかと存じますが、めでたい席に免じて何卒ご容赦いただければ幸いです」結婚式のスピーチ
- 例文「至らない私どもですが、今後ともご指導を賜りますようお願い申し上げます」結婚式の新郎挨拶
【使い分け】「至らぬ/至らない」は使い分けない!
「至らぬ」「至らない」は意味も同じですし、使い方もまったく同じです。
その根拠をまとめると、
- 「至らない」は「至る」に否定の助動詞「ない」をつけた言葉
- 「至らぬ」は「至る」に否定の助動詞「ぬ」をつけた言葉
- 否定の助動詞「ない・ぬ」はどちらを使ってもよい
否定の助動詞に「ない」を使って「至らない」にしたか、「ぬ」を使って「至らぬ」にしたか、という違いです。日本語の用法において「ない・ぬ」はどちらを使っても良いことになっています。
つまり、「至らぬ」を使うか「至らない」を使うかは、あなたの好み次第ということですね。
なんとな〜くですが、手紙など文章で使うときには「至らぬ」を使う人が多く、スピーチなどでの口語では「至らない」を使うことが多い気がします。私は、心底どちらでも良いと思います…。
【敬語解説】「至らない点も多々あるかと存じますが」
話は逸れますが、先ほどまでの例文で使った「至らない点も多々あるかと存じますが」について解説します。
まず意味は「仕事での配慮が足りず、未熟な部分も多くあると思いますが、〜」です。
次に敬語としてみていくと、
「あるかと存じますが」の部分は「思う」の謙譲語「存じる」、丁寧語「ます」を合わせています。したがって、とても丁寧な表現であり、目上の方(上司)に対してはもちろん、ビジネスメールにも使える敬語です。
使い方について、詳しくはこちらの記事(「至らない点も多々あるかと思いますが」意味と敬語での正しい使い方)で解説をしています。
【言い換え】「至らない・至らぬ」の類語
つづいて「至らない・至らぬ」の類語や、言い換え表現についてまとめます。
- まだまだ未熟者ではございますが、
▼「未熟な点」は一般的な使い方ではなく、「未熟な私どもではございますが」などとする。 - まだまだ若輩者ではございますが、
- 配慮に欠ける点もあったかと存じますが、
- 思慮に欠ける点もであったかと存じますが、
- 配慮が足りておらず、
- 気配りが足りておらず、
- 気が利かず、
参考となる記事:
【例文】「至らない・至らぬ」ビジネスメール
最後に「至らない・至らぬ」を使ったビジネスメールの例文を挙げていきます。
どんなメールであれ、文末の締めくくりとして使える、とても便利な表現です。目上の方にはもちろんのこと、社外に対しても使える文章にしていますので、ご参にどうぞ。
【例文】新しい配属先へ異動の挨拶
メール件名:異動のご挨拶
人事部
転職 部長
突然の連絡にて大変失礼いたします。
この度、人事部・人材育成課・課長へ
人事異動を命ぜられました就活太郎です。
4月1日よりお世話になる予定ですので、
何卒よろしくお願い致します。
これまで東京本社・営業部で10年勤務しており、
人事部への勤務は初めての経験となります。
至らぬ点も多々あるかと存じますが、
ご指導・ご鞭撻、ならびにご協力のほどお願い申し上げます。
メール署名
【例文】新卒・配属の挨拶(関係する部署へメール)
メール件名:配属のご挨拶(営業部・就活太郎)
生産課
転職 課長
突然の連絡にて大変失礼いたします。
この度、4月1日付にて営業部・営業課へ配属を命ぜられました
就活太郎と申します。
営業課では生産管理を担当することとなりましたので、
ご挨拶申し上げます。
大学を卒業したばかりではありますが、
一日も早く事業に貢献できるよう、仕事に邁進して参ります。
至らぬ点も多々あるかと存じますが、
ご指導・ご鞭撻、ならびにご協力のほどお願い申し上げます。
メール署名
まとめ
今回はこれでもかというくらい「至らない・至らぬ」について語ってみました。
これはとても便利な表現で、さまざまなビジネスシーンで活躍します。
ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い倒してください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。