キーエンス営業マンは激務・ブラック企業って本当!?
一昔前まで「20代で家が建ち、30代で墓が建つ」と激務・年収高い企業の代表各として言われていましたが…現在はだいぶマシになっています。
- キーエンスって何してる会社?
- キーエンスの平均年収ってなんで高いの?
- キーエンスが激務・ブラック企業って本当なの?
今回は「3.キーエンスが激務・ブラック企業って本当なの?」に関する記事。キーエンス営業マンの仕事内容・特徴を見ていきます。
先に結論。
キーエンスは間違いなく激務ではありますが…年収も高い(平均年収1700万円)のでブラック企業とは言えないかと。
※情報ソースはメーカー資材・機材部担当。
7:30出勤、21:00完全退社。土日祝は年2回だけ強制出社
すべての営業マンがこれに従う。完全退社の意味は資料、パソコン、携帯電話などすべて置いて退社すること。ただし忙しい人(管理職を中心に)はルール無視しているのが実態。
退社後の社内付き合い・社外接待(飲み会)は禁止されているため、若手は21:00過ぎると完全にオフできる。仕事量がとんでもなく多いため21:00前に退社する人はほとんどいない。
期初めだったか期末だったかの土曜日は強制出社。加えて営業は新商品発表のタイミングで「勉強会」が土曜日に開かれる。他の土日祝は完全オフ。
とはいっても管理職を中心に多忙な人は出社する。営業マンはクレームなどで呼び出される場合もある。
また、休める人も平日のプレッシャー過多が原因で土日祝は寝るだけになる。キーエンスは若手も当然忙しいが、出世すればもっと忙しくなるシステム。他の大企業と逆。
残業は月90時間+α
先ほどの出社・退社時間から残業時間を計算する。通常の企業が定時9:00-18:00とするとキーエンスは、
1日あたり4.5時間の残業 x 20営業日 + ルール無視の残業 + 土日出勤
計算すると月の残業時間は90時間 + アルファ。これを多いと見るか少ないと見るか?個人の考え方次第なので何とも言えない…でも私は月100時間の残業をしたら死にそうになりました。
有給休暇は消化できず買い取り
病欠以外での休暇は取得できません。取得してもいいですが、人事評価に響くでしょう。ただし余った年休は会社が買い取ります。
なので公平といえば公平なシステム!?
分刻みの報告書を提出、営業マンの全行動を記録
たとえばこんな感じで、分刻みの報告書を毎日作成・提出する義務があります。
10:03 ○○社へ到着
10:10 商談開始(商談内容を細かく報告)
10:41 商談終了
10:46 営業車へ乗る
10:50 「新宿→青海」車移動
11:30 △△社へ到着
11:33 商談開始(商談内容を細かく報告)
・・・・・・・
これは自己申告。でも虚偽の申請をしていてバレたら、重罰。内容は…ご想像にお任せします。社内監査役がまるで奴隷を監視するかのように見張ってます(苦笑)。
この他にも電話○件/日、訪問○件/日、電話内容はすべて録音、メール内容もすべて上司閲覧、などなど…とにかく営業マンの行動をすべて記録・管理して、ノルマが達成できなかった場合にはこれらの記録を基に是正処置をする。
営業マン=人間味のない営業マシーン。
これがキーエンス営業の特徴。
営業ノルマは毎月厳しく管理。達成できないと…
営業ノルマに甘えは許されません。毎月数字が足りていないと営業〆日がとんでもなく大変。電話しまくって何とか達成できるかできないか…
ノルマはトップダウンなので上司、その上の上司が勝手に決めます。達成できるであろうMAXの数字をノルマとして課せられるので、優秀な営業マンでもかなりしんどいかと。
営業マンがノルマを達成できないと、分刻みの報告資料を基に是正処置が入ります。
ノルマ達成できない → 営業プロセスが悪い → プロセス是正 → 再度チャレンジ
という繰り返し。ノルマを達成できない月が多くなると会社に居ずらくなります。クビにはされませんが、辺境の営業所に飛ばされプレッシャー過多になり、辞めるしか道は残されていない。
ちなみに営業マンの評価は「営業ノルマ+プロセスノルマ」で決定されます。プロセスノルマとは行動目標のこと。月に○件テレアポするとか、月に○件の商談をするとか…
なんとなく野村證券のリテール営業と同じ臭いがします…
営業マニュアルに従うだけでよい
テレアポの仕方、商談の進め方、商品プレゼン方法、価格の決め方などなど。
営業マンに必要なマニュアルはすべて揃っていて、マニュアルに沿ってハードに働けば誰でも実績が出せるという仕組み。
全てがあいまいな化学メーカーと全然違いますね。←私は「あいまい=自由放任」が好きですが…
テレアポ → 押し売りの繰り返し
装置を売っている会社なので、1台売れたら案件終了。また次の売り先を考えます。
テレアポ → 押しかけ → 買うか買わないか、(高値で)即決を迫る → 売れたらOK、売れなければ次
図式化するとキーエンスの営業手法はこんな感じ。マニュアルに沿って永遠にこれを繰り返す。野村證券のリテール営業と同じ臭いがします…
人間関係もクソもないという営業手法なので、お客さんとの関係とかビジネス上の人脈拡大とかは皆無。営業スキルだけは磨かれますが人脈はいつまでも学生のまま。狭い世界です。
社内の不要な付き合いゼロ
キーエンスは、社内・社外飲み会が会社規則で禁止されています。
《ノルマ達成会・月1を除く》
だから仕事の後、上司に飲みに誘われたりは絶対にない。というか、平日は仕事で疲弊していてそれどころではない。私は良い社風だと思います。
直販体制のみ、代理店を使わない
キーエンスはメーカー直販のみ、代理店(商社)を一切使わないことで有名な会社。
利益を稼ぐことだけに特化した会社。利益至上主義。効率至上主義。
商社を使ったほうがメーカー営業マンはラクできるのに甘えを許さないのが凄いですね…
福利厚生ゼロ、退職金なし、労働組合なし
独身寮も社宅もありません。退職金もない。
ただし家賃補助は給与に上乗せされ、現金で支給されています。会社名義でマンションを契約する借り上げ社宅制度(所得税計算で年収とカウントされない)と違い、すべての福利厚生を現金化している。
そうすると所得税がとんでもない額になります…実際の手取り金額を見てガッカリするかも。
たとえば仮に年収1500万円もらっても、年200万円くらいが家の関係で消えていきます。さらに退職金もゼロなので引いて考える必要あり。
(一般的な大企業は退職金が60歳時4000万円くらい、年で割ると100万円くらい)
性悪説に則った社内規則
「性悪説=人は悪いことをするものだ」
という社風・風土を基に作られた異様に細かい社内規則。そして違反者を監視する社内監査役。奴隷を奴隷に監視させるシステム、秀逸ですね。
労働時間以上に、この細かい規則と分刻みの報告書による束縛のほうがツライかも。
常にプレッシャーを受ける環境で高い集中力を維持しながら月100時間の残業をするのと、出張・飲み会ばっかりで月100時間の残業をするのとでは、疲労感が全然ちがうような…
その他いろいろ
- 費用対効果を最も重視なので、無駄な会議はしない。会議に掛かる費用(人件費、その間に働けば得られる利益) < 得られる利益の場合だけ会議する
- 営業マンはエリア担当(決められたエリアの中で営業活動)
- 良い提案があれば若手でも発言力あり
- フラットな人間関係
- 仕事が頭を使わないため単調
まとめ
これが「キーエンス営業マン=営業マシーン」と呼ばれる理由ですね。
営業って「どろどろした世界」のイメージありますが、キーエンスは人間的な部分を徹底的に排除。利益だけを追い求めるには理想的な営業システムと言えます。
誰がやっても変わらないマニュアル人間になることが重要で、頭を使う必要がないので楽といえば楽ですかね!?
蛇足ですが、この営業システムは機械メーカーの営業だからできる手法であって化学メーカーには適用できない。
その理由は機械メーカーと化学メーカーのビジネスにおける違いにあります。
- 機械メーカー = 1台売ったら終わり、案件ごとの単発ビジネス
- 化学メーカー = 継続的な供給、長期ビジネス
案件ごとの単発ビジネスだと、どれくらい多くの見込み客にアプローチするか、どのくらい効率的にそれをこなすか、というのが重要になります。
要は、質より量。
機械メーカーの営業は頭を使う必要がなく、完全に体力勝負ですね。
一方で化学メーカー営業の場合、より長期的な視野にたって営業することが求められます。短期の案件に集中的に取り組んでも全く無意味。具体的には化学メーカー営業の魅力の記事で語っています。
短期集中、3年で転職する前提で勤めるならキーエンスは良い会社かもしれません。
《激務だし仕事が単調なので10年も20年も勤められません…》
興味深い内容でした。
ただ、一点だけ付け加えると、キーエンス流の機械的な営業に+αで異なるエッセンスを加えられる人がスーパー営業マンと呼ばれる方々だったように思います。