「お見送りさせていただきます」は間違い敬語?二重敬語?
とご心配のあなたへ。
「お見送りさせていただきます」は敬語として正しく、ビジネスでは断りのフレーズとしてよく使われます。
使い方はたとえば、
- 【例文】誠に遺憾ではございますが、想定予算を超過しており今回は購入をお見送りさせていただきます
- 【例文】参加したいのはやまやまですが、あいにく先約があり今回はお見送りさせていただきます
こんな感じで使います。
ただこのような断りのビジネスシーンでは、
- 【例文】見送らせていただきます
- 【例文】見送りとさせていただきます
- 【例文】遠慮させていただきます
のほうがより一般的に使われます。「お見送りさせていただきます」という表現がどうにも気に入らないかたは言い換えしましょう。
それでは、
「お見送りさせていただきます」が正しい敬語である理由とビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、例文を紹介します。
「お見送りさせていただきます」の意味・敬語の解説
まずは基本となる「お見送りさせていただきます」の意味と敬語について。
順をおって解説していきます。
「お見送りさせていただきます」の意味は「お見送りさせてもらう」
意味としては「お見送りさせてもらいます」つまり「恐れ多くもお見送りさせてもらうよ、許してね」のようなニュアンスとなります。
元になる形「お見送りさせてもらう」は日本語としても正しいため、使っても差し支えありません。
ちなみに「見送り」のそもそもの意味は…
- 実行をさしひかえてようすを見ること。「出張が見送りとなる」「購入を見送りとする」
- 見送ること。また、その人。「見送りを受ける」
- 野球で、打者が投球に対してバットを振らずにいること。「見送りの三振」
- 相場のようすを眺めるだけで売買を手控えること。
たくさんありますが「お見送りさせていただきます」とするときは意味①の使い方をすることが多いですね。
もちろん「空港までお見送りさせていただきます」としても使い方としては問題ありません。
断りの「お見送り」と、人を「お見送り」
「お見送りさせていただきます」の意味について少し補足を。
先ほど示したように「見送り」にはいろいろな意味があります。
ビジネスシーンで「お見送りさせていただきます」としたときには、
- 購入や誘いにたいして断りの「お見送り」なのか…
- 上司・目上・取引先など人を「お見送り」なのか…
- 亡くなった人を「お見送り」なのか…
おおきく3パターンあり。
日本語ネイティブの私たちであれば、さすがに文脈や空気でわかるかとは思いますが…
いずれにせよ「お見送りさせていただきます」としたときには色んな意味がありますので、相手にわかるようにする配慮が必要です。
「お見送りさせていただきます」は間違い敬語ではない
「お見送りさせていただきます」は二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。正しい敬語です。
敬語の成り立ちをこまかく見ていくと以下のとおり。
- もとになる単語「見送り」
- 「させてもらう」の謙譲語「お(ご)~させていただく」で「お見送りさせていただく」
- さらに丁寧語「ます」で「お見送りさせていただきます」
「させてもらう」という単語に謙譲語をつかって敬語にしており、正しい敬語の使い方をしています。
二重敬語でもなく間違い敬語でもありません。
「見送り」に謙譲語の「お(ご)」で「お見送り」とし、
「させてもらう」の謙譲語「させていただく」をくっつけて、
「お見送りさせていただく」
さらに丁寧語「ます」をくっつけて「お見送りさせていただきます」
と考えるのが本来の解釈です。説明はシンプル化しています
【補足】敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
ここまでの解説ですべてを物語っているのですが説明不足かもしれませんので、
- なぜ「お見送りさせていただきます」が正しい敬語なのか?
- 「お見送りさせていただきます」のビジネスシーンにおける正しい使い方・メール例文
- そもそも謙譲語って何?
という部分についてもくわしく解説していきます。
「お見送りさせていただきます」は日本語としておかしい?
これまでの解説から「お見送りさせていただきます」は敬語としては正しいということが分かりました。
ところが敬語うんぬんの前に…
「お見送りさせていただきます」が正しいかどうかをみるためには、そもそも日本語としておかしい表現じゃないの?というポイントに注意する必要があります。
日本語としても正しい「お見送りさせてもらう」
結論としては「お見送りさせていただきます」は日本語として正しいです。
なぜこう考えるのかというと…
もとの形「お見送りさせてもらう」で考えてみると分かりやすいです。
「させてもらう」の意味は辞書によると「相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す」です。
つまり、
許しや許可が必要なときにつかう言葉です。
で、
「お見送りさせてもらう」だと「見送るために相手からの許しを得たい」という感じのニュアンスになります。
恐れ多くもお見送りさせてもらうよ、許してね
なにかを見送る、つまり断るとき相手からの許し・許可が必要でしょうか?
答えは「No、とくに必要はありません」
ただし「恐れ多くもお見送りさせてもらうよ、許してね」というニュアンスで使うため、ビジネスシーンでやんわりと誘いを断るときに活躍する敬語フレーズです。
したがって例えば「あいにく先約があり、今回はお見送りさせていただきます」というようなフレーズは正しいということになりますね。
ただしこれは受け手の感情次第であるため、なにが正解とは言えません…
気持ち悪く感じるかたは「お見送りいたします」「お見送りします」と言い換えすればOK。
「お見送りさせていただきます」がふさわしいビジネスシーン
とくに誘いを丁寧に断るときに「お見送りさせていただきます」というフレーズをよく使いますね。
ビジネスシーンでは、たとえば上司からの飲み会の誘いを断るとき「恐れ多くもお見送りさせてもらいますよ、許してね」というニュアンスだと考えれば自然な流れです。
具体的にはたとえば、
ビジネス取引先から「懇親会いかがでしょうか?」とメールで飲み会の誘いを受けたとき。
あるいは
上司から「今夜どう?」と飲み会の誘いを受けたとき。
「申し訳ありません。今回はお見送りさせていただきます。」「~のためお見送りさせていただきます」みたいに使うのもOKです。
堅苦しいビジネスシーンで「見送る」ようなときには「恐れ多くもお見送りさせてもらいます」みたいなニュアンスで「お見送りさせていただきます」を使うと丁寧です。
「お見送りさせていただきます」使い方・ビジネスメール例文
つづいて「お見送りさせていただきます」の使い方をビジネスメール例文でご紹介します。
文字どおり目上や上司・社外取引先に「お見送りさせてほしい」と言いたいときに使えます。
上司・目上など社内メールにかぎらず社外取引先にも使える丁寧な敬語フレーズにしていますのでご参考にどうぞ。
使い方・例文①メルカリなどで購入を断る
【社内外・文例】
メルカリなど通販で購入を断るときの丁寧な断り方の例文。理由は細かく伝える必要なし。
メール件名:購入見送りのお詫び
○○ 様
お世話になっております。
早速のご回答ありがとうございます。
さて、ご提案の商品につき検討いたしましたが、探していたデザインと違う点がやはり気になりましたので、今回は購入をお見送りさせていただきます。
せっかくのご提案にも関わらず、このような返事となりましたことをお詫び申し上げます。
また機会がございましたら、その際にはどうぞ宜しくお願いいたします。
***********
メール署名
***********
「見送りとさせていただきます」
「遠慮させていただきます」のほうが一般的です。
使い方・例文②飲み会・接待・食事の誘いを断る
【社外・文例】
社外の相手から食事/飲み会/接待の誘いがあったとき。丁寧な断り方のメール例文。
【メール件名】返信Re: 会食のお誘い
ビジネス会社
営業部 ○○ 様
お世話になっております。株式会社転職・ノマドでございます。
このたびはお誘いくださいまして誠にありがとうございます。
さて、せっかくのお誘いにも関わらず心苦しい限りではございますが、どうしても外せないプライベートの予定があり、不本意ながら今回はお見送りさせて頂きます。
大変申し訳ありません。
よろしければ、また別の機会にご一緒させていただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます。
———————————-
メール署名
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ただし、このような断りのビジネスシーンでは…
「見送らせていただきます」
「見送りとさせていただきます」
「遠慮させていただきます」
のほうが一般的です。
使い方・例文③上司からの誘いを断る
【メール件名】返信Re: 飲み会のお誘い
○○部長(社内上司)
お疲れ様です。
このたびはお誘いくださいまして、誠にありがとうございます。
さて、せっかくのお誘いにも関わらず心苦しい限りではございますが、あいにく先約があり、今回はお見送りさせて頂きます。
お心遣いを頂いておきながら大変申し訳ありません。
また別の機会にご一緒させて頂ければと存じます。宜しくお願いいたします。
ノマド
➡︎上司からの「飲み会の誘いを断る」ときの理由20選、メール例文
ただし、このような断りのビジネスシーンでは…
「見送らせていただきます」
「見送りとさせていただきます」
「遠慮させていただきます」
のほうが一般的です。
「お見送りさせていただきます」の言い換え敬語
ここまでの解説で「お見送りさせていただきます」が正しい敬語であること・そもそもの意味・使い方・ビジネスメール例文を紹介してきました。
ここからは、
「お見送りさせていただきます」だけでなく、断りのビジネスシーンで活躍する敬語フレーズを紹介します。
どんなシーンにも使える「見送らせていただきます」
上司・目上・社外取引先からの何かしらを断るとき。
もっともオーソドックスに使えるのが「見送らせていただきます」
意味は「見送らせてもらいます」
「見送らせてください」と何ら変わらないように感じる方もいらっしゃることでしょうが…
命令形「ください」よりも「いただく」を使った敬語フレーズのほうがやんわ〜りとした印象になるためGoodです。
たとえば、
- 飲み会の誘いを断るときであれば…
例文「あいにく先約があり、今回は見送らせていただきます」 - 仕事の依頼を断るときには…
例文「下記の理由によりご要望にお応えすることが非常に困難であるため、今回は見送らせていただきます」 - 購入を断るときには…
例文「弊社で精査いたしましたが目的に合致しなかったため、今回は見送らせていただきます」
などのように使うと丁寧です。
敬語の成り立ちをこまかく見ていくと以下のとおり。
- もとになる単語「見送る」
- 「させてもらう」の謙譲語「させていただく」で「見送らせていただく」
- さらに丁寧語「ます」で「見送らせていただきます」
もちろんこれまで紹介したように…「見送りとさせていただきます」
「お見送りさせていただきます」
としてもなんら問題はありません。
あとはビジネスシーンごとに、他にも使える言い換え敬語を紹介していきます。
「仕事の依頼を見送らせてください」と言う時の敬語フレーズ
「お見送りさせていただきます」だけじゃない断りの敬語フレーズ
- 例文「お受けいたしかねます」
- 例文「ご要望にそいかねます」
- 例文「ご要望にそうことが非常に困難な状況でございます」
- 例文「ご要望にお応えすることが叶いません」
- 例文「ご要望にお応えいたしかねます」
- 例文「ご要望にお応えすることが難しい状況でございます」
- 例文「ご対応いたしかねます」
- 例文「辞退させて頂きます「辞退いたします」
- 「お見送りいたします」「見送らせて頂きます」「お見送りさせて頂きます」
「申し出・提案・購入を断る」ときの丁寧なお断り敬語
「お見送りさせていただきます」だけじゃない断りの敬語フレーズ
- 断りの敬語「お見送りいたします」
- 断りの敬語「見送らせて頂きます」
- 断りの敬語「お見送りさせて頂きます」
- 断りの敬語「今回はお見送りいたしたく存じます」
※「申し出」は謙譲表現であるため「「ご提案」「お誘い」「お気遣い」などとシーンごとにふさわしい語に言い換える
「誘いを断る」ときのお断り敬語
「お見送りさせていただきます」だけじゃない断りの敬語フレーズ
- 断りの敬語「お気持ちだけ頂戴します」
- 断りの敬語「お気持ちだけ頂戴いたします」
- 断りの敬語「遠慮いたします」「ご遠慮いたします」
- 断りの敬語「遠慮させて頂きます」
- 断りの敬語「辞退させて頂きます」「辞退いたします」
- 断りの敬語「見送らせて頂きます」「お見送りいたします」
※「都合が悪い」とは言わず、違う敬語フレーズを使います。
参考記事
➡︎「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
➡︎「ご教示」「ご教授」の意味と違い、使い方・メール例文
➡︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
➡︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた
➡︎【完全版】ビジネスメール締め・結びの例文50選
➡︎︎ビジネスシーンでの「お願い・依頼」敬語フレーズのすべて
➡︎︎ビジネスシーンでの『お礼・感謝』敬語フレーズのすべて
➡︎︎ビジネスメールにおける断り方のすべて