「利用させてください」は間違い敬語?意味と正しい使い方・例文

「利用させてください」は間違い敬語?

とご心配のあなたへ。

「利用させてください」が正しい敬語である理由と、そもそもの意味、ビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、例文を紹介します。

「利用させてください」は間違い敬語ではない

まずは結論から。

「利用させてください」は二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。正しい敬語です。

なぜなら、

もとになる単語「利用」に命令形「●●させてくれ!」の尊敬語「●●させてください」を使って敬語にしているからです。

そして元になる形「利用させてくださる」は日本語としても正しいため、使っても差し支えありません。

「利用させてください」の意味

利用の意味は「使うこと」ですので、

「利用させてください」の意味としては「利用させてくれ!」つまり、「つかわせてください」と解釈できます。

ここまでの解説ですべてを物語っているのですが説明不足かもしれませんので、

  • なぜ「利用させてください」が正しい敬語なのか?
  • 「利用させてください」のビジネスシーンにおける正しい使い方
  • ビジネスメール例文
  • そもそも謙譲語や尊敬語って何?

という部分についてもくわしく解説していきます。

「利用」に「させてくれ!」の尊敬語を使っているから正しい

繰り返しにはなりますが「利用させてください」を敬語としてみると、以下のように成り立ちます。

  1. もとになる単語「利用」
  2. 「くれる」の尊敬語「くださる」を使い、命令形「ください」にした敬語

「させてくれ!」という単語に尊敬語をつかって敬語にしており、正しい敬語の使い方をしています。

二重敬語でもなく間違い敬語でもありません。

「利用させてください」のビジネスメール例文

例文をみたほうが分かりやすいので、ビジネスメールやその他のシーンで使える「利用させてください」の例文をご紹介。

  • 貴社のサービスを利用させてください。
  • Facebookを利用させてください。

【補足】そもそも尊敬語とは?

そもそも尊敬語とは…

敬語の一種であり、相手を立てる・うやまう・高める敬語のこと。

相手の行為につかい、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

ビジネスシーンで尊敬語をつかうときの注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

「利用させてください」は日本語としておかしい?

これまでの解説から「利用させてください」は敬語としては正しいということが分かりました。

ところが敬語うんぬんの前に…

「利用させてください」が正しいかどうかをみるためには、そもそも日本語としておかしい表現じゃないの?というポイントに注意する必要があります。

日本語としても正しい「利用させてくれ!」

結論としては「利用させてください」は日本語として正しいです。

なぜこう考えるのかというと…

もとの形「利用させてくれ!」で考えてみると分かりやすいです。

「させてくれ!」の意味は「相手方の許しを求めて行動する意をこめた語」です。

つまり、

許しや許可が必要なときにつかう言葉です。

で、

「利用させてくれ!」だと「利用させて欲しい」という感じのニュアンスになります。

なにかを利用するとき相手からの許し・許可が必要でしょうか?

答えは「Yes、場合によっては必要です」

したがって例えば「無料サービスを利用させていただきます」というようなフレーズは正しいということになりますね。

ただしこれは受け手の感情次第であるため、なにが正解とは言えません…

「利用させてください」がふさわしいビジネスシーン

とくに目上・年配の方は「利用させてください」というフレーズをよく使いますね。

ビジネスシーンでは、たとえば何かの利用の許可をえるとき「恐れ多くも利用させてもらいますよ、許してね」というニュアンスだと考えれば自然な流れです。

具体的にはたとえば、

ビジネス取引先から「無料SNSサービスFacebookを立ち上げましたが、これを機に導入いかがでしょうか?」とメール提案があったとき。

あるいは

店のオーナーから「2号店を東京にオープンしました、ぜひご利用ください」とメール案内があったとき。

「はい、ぜひ利用させてください」みたいに使うのもOKです。

ただし次項で説明しますが「利用させてください」はとくに会話シーンで使いビジネスメールでは「利用させていただきます」を使う方が丁寧です。

目上・上司には「利用させて頂きます」をつかうのが無難

ところで目上の人や上司・社外の相手に「利用させてください」をつかうのもいいのですが…

引っかかるのは「●●ください」という、命令形「●●してくれ」の尊敬語をつかっている点。

命令形は敬語であれ命令形であるため、もっと丁寧な敬語フレーズをつかった方が無難と言えます。

そういった意味で「利用させてください」よりも「利用させて頂きます」を使います。

堅苦しい敬語の必要ない会話シーンであれば「利用させてください」でもよいのですが…かしこまった敬語の好まれるビジネスメールや文書では「利用させていただきます」を使いましょう。

「利用させていただきます」敬語の補足

「利用させていただきます」を敬語としてみると以下のように成り立ちます。

  1. もとになる単語「利用」
  2. 「させてもらう」の謙譲語「させていただく」を使い、
  3. 丁寧語「ます」をくっつけた敬語

「させてもらう」という単語に謙譲語をつかって敬語にしており、正しい敬語の使い方をしています。

「利用させて頂きます」のビジネスメール例文

例文をみたほうが分かりやすいので、ビジネスメールやその他のシーンで使える「利用させていただきます」の例文をご紹介。

  • はい、ぜひ利用させていただきます。(現在形)
  • 先日、貴社のサービスを利用させて頂きました。(過去形)
  • いつも御社の製品を利用させて頂いております。(現在進行形)
  • 貴社の製品●●を利用させて頂きたく存じます。(願望)
    ※存じますは「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」

【補足】そもそも謙譲語とは?

そもそも謙譲語とは…

敬語の一種であり、自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語。

自分の行為につかい、対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません(例外もあり)。

ただし細かくは謙譲語にも2種類あります。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

ややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

「●●させていただきます」の正しい使い方

ついでに「●●させていただきます」の正しい使い方についても少し。

何かしらの許可・許しを相手に期待して「●●させていただきます」として使うのが一般的です。

正しい使い方にはたとえば、

  • 例文「ご一緒させていただきます」
  • 例文「出席させていただきます」
  • 例文「コメントは差し控えさせていただきます」

などがあります。これらはよくビジネスメールに使われる表現。

相手の許しがなければ「ご一緒させてもらう=同行させてもらう、仕事を一緒にさせてもらう」あるいは「出席する」ことはできないため、正しいと言えます。

まぁOKな「●●させていただきます」の使い方

あとはまぁOKな「させて頂く」の使い方としては、以下例文のようなものがあります。

  • 例文「本日は休業とさせていただきます」
    原文「休業させてもらう」
  • 例文「誠に勝手を申し上げますが、製品を10%値上げさせていただきます」
    原文「値上げさせてもらう」
  • 例文「弊社の新商品を紹介させていただきます」
    原文「紹介させてもらう」
  • 例文「貴社の求人に応募させていただきます」
    原文「応募させてもらう」
  • 例文「選考を辞退させていただきます」
    原文「応募させてもらう」

例文「本日は休業させてもらう」は、果たして休業するのに相手の許可が要るのかという議論はありますが、「使い方②自分が何かしらの恩恵をうけ、相手が不利益をこうむるとき」に該当するため許容範囲です。

例文「誠に勝手を申し上げますが、製品を10%値上げさせていただきます」は値上げするには相手の許可がいるわけで、これもまぁOKな使い方といえます。

例文「本日は新商品を紹介させていただきます」も、いちおうは相手の許可がいるわけですからまぁOKな使い方。

例文「貴社の求人に応募させていただきます」も、いちおうは相手の許可がいるわけですからまぁOKな使い方。

ただ、おっさん営業である私はどれも決して使いません。必要以上にかしこまるのが嫌いだからです。客は神でもなんでもなくってただのヒトなのですから。

➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!

とはいえ「利用いたします」でも十分に丁寧な敬語

ここまでの解説で「利用させてください」は正しい敬語であり、ビジネスシーンでも使える丁寧な敬語フレーズであることがわかりました。

ここからは、

「利用させてください」のほかにも使える言い換え敬語を紹介します。

さきに答えですが「(ご)利用いたします」とすればよいだけ。

「(ご)利用いたします」敬語の補足

「(ご)利用いたします」はもとになる単語「利用」に「~する」の謙譲語「~いたす」をつかい、さらに丁寧語「ます」をくっつけて敬語にしています。

謙譲語には他にも「お・ご〜する」「お・ご〜いたす」という使い方があります。

たとえば、

「ご連絡する」「(ご)連絡いたす」
「ご報告する」「(ご)報告いたす」
「ご挨拶する」「(ご)挨拶いたす」
「お願いする」「お願いいたす」

こんな感じでつかう敬語です。ちなみに丁寧語「ます」をくっつけて「(お・ご)〜します」「(お・ご)〜いたします」とするのが一般的。

➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方

➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!

ビジネスメール例文

使い方というか例文を念のため紹介しておきます。

  • ご案内ありがとうございます。機会がありましたら利用いたします。(未来)
  • 先日、貴社のサービスを利用いたしました。(過去形)
  • いつも御社の製品を利用いたしております。(現在進行形)
  • 貴社の製品●●を利用いたしたく存じます。(願望)
    ※存じますは「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」

参考記事

➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方
➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!
➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた
➡︎ ビジネスメールにおける断り方のすべて