嫌というほどネガティブな現状を見てきたので、課題については明白だが、念のため以下にまとめておく。
課題①国内市場の縮小
どんな業界でも当てはまる事項ではあるが、人口減少による市場の縮小からは逃げられない。
国内事業がメインだったゼネコン(鹿島、清水建設、大林組、大成建設、竹中工務店)は国内市場の縮小を必ず受ける。
そしてディベロッパー(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東京建物など多数)も少なからず影響を受ける。特に中堅以下のクラス。
さらには住宅メーカー(積水ハウス、旭化成ホームズ、大和ハウス、他)も必ず影響を受ける。
オリンピック需要で足元はそれなりに回復基調ではあるものの、その後どうするの?
と聞かれると答えに困ってしまうだろう。
課題②海外展開が難しい
ということで、活路を見出すとしたら海外展開を強化していくしかない状況。
ではあるもののグローバル展開は多くの人が言うほど甘くない。
建設業界の大手は、すでに伸びている「東南アジア」、まだまだ伸びる「インド」「アフリカ」などの地域を攻めていくことになるだろう。
もちろん、こんなことは中国・韓国勢も考えているし世界中の誰もが同じことを考えている。
その中で、
日系ゼネコンの強みって何?
ディベロッパーの強みって何?
と聞かれると「?」が残る。ゼネコンが力を持つ国って実は日本だけだ、という話。
海外では建築事務所やデザイン事務所が最も強く、ゼネコンは本当に建設するだけの会社でなければならない。※書くと長くなるため省略
ゼネコンが強い日本、建築事務所が弱い日本とは正反対なのだ。結局、ゼネコンが海外で稼げるとしたら日系のディベロッパーから仕事をもらうしかないだろう。
そして、そのディベロッパーについても途上国の海外展開には課題あり。
なぜなら、途上国では政府が土地を持っていて買えないから(借地権を発行される)。そして、いい土地はローカルの人たちに既に抑えられている。このような状況下では、土地を高値づかみされる可能性が高く、基本的に儲からない…。
課題③景気の影響をモロに受ける
建設業界は証券会社などと同じく、国内景気の影響を最も受けやすい。
政府の税収が減り公共事業が減れば、ゼネコンと下請けは仕事が減る。
サラリーマンの給料が減れば、住宅を買う人も減る。
人口が減れば、住宅・マンション・オフィスは必要なくなる。
首都圏は今後20年くらい何も心配ないだろう。それでもやはり、景気の上下だけはどうしょうもない。「良い時にはとことん良いが、悪い時には何をやってもしょうがない業界である」と認識しておこう。
課題④その他
よく新聞などで報道されており、いまさら詳しく書く必要もないため「その他の課題」として、箇条書きだけにする。
- 労働者不足
- 熟練労働者の引退
- 技術継承不足
- 業界全体が不景気
- 企業数が多すぎて競争激しい。誰も稼いでない。
建設業界の今後の動向
今後①グローバル展開を加速
この記事を書くために建設大手各社の中期経営計画に目を通した。
するとやはり、海外展開を加速するしかない状況のようだ。
正直なところ建設業界はみんな、自分で死ぬことがわかっている。だから建設大手は「とにかく海外、何としてでも海外」。と必死になって頑張っているのである。
ただ、そう簡単でないことは「課題②」の部分で詳しく解説しているため、省略する。
今後②あとは運まかせ
はい、あとは日本国内の景気回復を祈るだけ、という状況。
建設業界の将来性
最後に、将来性をまとめる。
将来性①スーパーゼネコンは生き残る
正直なところ、スーパーゼネコン(鹿島建設、清水建設、大林組、大成建設、竹中工務店)は30年後も潰れないで生き残っている。ただしM&Aにより集約される可能性は十分にある。
彼らのビジネスのやり方を知りすぎているため、ブログでは詳しくは書けない。書くと私が東京湾に沈む可能性がある。
将来性②ゼネコン準大手〜中堅以下クラスは集約必要
会社数が多すぎて競争が激しすぎる。結果、みんな稼いでいない。ほっておいても、オリンピック後に苦しくなる準大手〜中堅以下クラスは集約されていくだろう。
- 準大手〜中堅ゼネコン
→ 長谷工コーポレーション、戸田建設、五洋建設、前田建設工業、三井住友建設、フジタ、西松建設、東急建設、熊谷組、奥村組、ほか多数 - その他
→ ナカノフドー建設、福田組、大豊建設、ほか多数
将来性③大手ディベロッパー・住宅メーカー大手はOK、あとは運任せ
住宅メーカーやディペロッパーは正直のところ、自分ではどうにもできない部分が多すぎる。頑張れるとしたら営業努力と広告宣伝か…。
消費税増税のときにも、ただ見てるだけ。
リーマンショックで景気が落ち込んでも、ただ見てるだけ。
という、不確実な部分が多すぎて将来性を読むことができない。大手はそれなりにやる、という一般的なコメントにしておこう(完全に逃げ)。
- 財閥系(三井不動産、三菱地所、住友不動産、東京建物)
- 私鉄系(東急不動産、京王不動産、小田急不動産、名鉄不動産、阪急不動産)
- 金融系(野村不動産、ヒューリック)
- ゼネコン系(清水総合開発、大成有楽不動産)
- メーカー系(トヨタホーム、旭化成ホームズ)
- 商社系(三菱、物産、住商、伊藤忠、丸紅、双日の一部門)
- 独立系(森ビル、イオンモール)
建設業界の平均年収ランキングTOP20
有価証券報告書(2016年3月期)の建設業界の平均年収ランキングをまとめておく。
※HD=ホールディングスの略
- 985万円/47.8歳|ショーボンドHD
- 969万円/43.3歳|日揮
- 932万円/40.8歳|千代田化工建設
- 926万円/42.0歳|大東建託
- 916万円/42.8歳|大成建設
- 915万円/42.3歳|大林組
- 915万円/43.8歳|NIPPO
- 906万円/43.3歳|清水建設
- 901万円/48.5歳|コムシスHD
- 896万円/45.3歳|福田組
- 896万円/43.7歳|大気社
- 892万円/43.7歳|鹿島建設
- 874万円/46.3歳|OSJB HD
- 866万円/41.6歳|東鉄工業
- 863万円/38.5歳|大和ハウス工業
- 858万円/43.8歳|明豊ファシリティワークス
- 850万円/43.9歳|日本道路
- 848万円/41.5歳|住友林業
- 841万円/41.6歳|長谷工コーポレーション
- 840万円/44.8歳|東芝プラントシステム
建設業界の年収にまつわる裏話
上述したように、建設業界は平均年収の高い企業が多い(ゼネコン大手、プラントエンジ大手は平均年収で900万円前後ある)。ただしこれには裏があるため要注意。
なぜ、ゼネコンやプラントエンジの平均年収が高いか?理由は以下のとおり。
- 高卒の採用数が少ない、大卒の総合職が多い(≒高学歴)
- 残業がおそろしく多い
- 現場手当など、ゼネコン特有の手当が多い
- 平均年齢が高い
結論としてゼネコン大手5社・プラントエンジ大手の年収は低くないが、突出して高いわけでもない。この点についてもっとくわしく知りたい、という就活生は以下の記事をご参照のこと。
また、大卒総合職の年収についても別の記事にまとめている。
●鹿島建設の年収は高い?低い?総合職の年収まとめ
●大林組の年収・福利厚生
●清水建設の年収・福利厚生
●大成建設の年収・福利厚生
●竹中工務店の年収・福利厚生
●NIPPOの年収・福利厚生
●福田組の年収・福利厚生
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