念のため「お・ご~いたす」の成り立ちをまとめると、
- 「する」の謙譲語「いたす」
+ - 謙譲語「お(ご)」
のハズであり、上記のように解釈すると確かに二重敬語となります…。
「お(ご)~いたす」は謙譲語の一般形でありOK
ただし結論としては「お・ご~する」「お・ご~いたす」「お・ご~申し上げる」は謙譲語の一般形として正しい使い方です。たとえ自分の行動や行為であっても「ご連絡いたします」「ご報告いたします」としてOK。
これは文化庁の「敬語の指針」にて解説されていますが、謙譲語の一般形だという以上の説明はなされていませんでした。
ということなので、よく使われるビジネスメール例文で考えます。
- 例文「まずはお礼かたがたご挨拶申し上げます」
- 例文「ご挨拶する」
- 例文「お詫び申し上げます」
- 例文「お詫びする」
- 例文「ご報告いたします・ご連絡いたします」
これらの使い方は間違いではなく、正しい謙譲語の一般形「お・ご~いたす」「お・ご~申し上げる」であり正しいです。
謙譲語は2つの用法を押さえればOK!
何かとややこしい謙譲語の使い方を復習します。
まずは文化庁の「敬語の指針」より、彼らの主張を要約します。
謙譲語には2種類あり「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ」とする。それぞれの用法は以下のとおり。
- 謙譲語Ⅰ:動作・行為のむかう先を立てる敬語
- 謙譲語Ⅱ:話の相手(聞き手や読み手)を立てる敬語
はい、これでは意味不明ですね(私の頭が悪いだけかも)。
ということで私が「謙譲語」について整理するとこんな感じになります。
- 謙譲語①:「伺う」「いたす」などの、へりくだる表現。自分の行為・行動に使う。
→ 例文「伺います」「報告いたします」「連絡いたします」「対応いたします」 - 謙譲語②:謙譲語の一般形「お(ご)~する」「お(ご)~いたす」「お(ご)~申し上げる」を使う。自分の行為や行動であっても使える。
→ 例文「ご連絡(報告・対応)」「ご連絡(報告・対応)いたします」「お願いいたします・お願い申し上げます」「ご挨拶いたします・ご挨拶申し上げます」「お詫び申し上げます」
※文化庁の謙譲語ⅠⅡとはリンクしません。
「お伺いいたします」は間違い敬語なのにOK?
ところで敬語というか、言葉全体にいえることですが、たとえ間違った敬語でもそれが普通に使われていたらOK。という気持ちの悪いルールがあります。
言葉や敬語というのは、時代とともに代わっていくのです。
間違い敬語だけど「慣例でOK」
たとえば「慣例でOK=間違いだけど普通に使われているから問題ないよ!」とされている敬語には、以下のようなものがあります。
- お伺いいたします
- お伺いします
- お伺いする
こんな敬語の使い方は本来、二重敬語でありNGとなるのですが・・・。ビジネスシーンで普通に使われる表現だからOK!という解釈になっているのです(by 文化庁「敬語の指針」)。
日本語学者がなんと言おうと、よく使われている言葉は正しいと認識してよいと思います。でも「お伺いいたします」はちょっとねぇ…、と思うのって私だけでしょうか?
使ってはいけない!「お伺いさせて頂きます」
いくら「お伺いいたします」が「慣例でOK」となっていても、気持ち悪い表現もあります。それが「お伺いさせて頂きます」「お伺いさせて頂きたく存じます」。
私が取引先から受けるビジネスメールで
「お伺いさせていただきます」
「お伺いさせて頂きたく存じます」
のような表現を使う人がいます。驚くことに、私よりも年配の方でも平気で使っています(汗)。
間違い敬語である理由は「お伺いいたします」と同じで、謙譲語「伺う」+「お~させていただく」という謙譲語を併用しているからです。二重敬語になっていますね。
これも「慣例だからOK」なんてことにしたらもう、収拾がつかないことになります(泣)。
「お伺いします」も安易に使わない!
一貫して述べていることですが、
訪問したり、尋ねたり、聞いたりするときの謙譲語は用法的に正しい「伺います」を使ったほうがベター。ビジネスメールで使ったり、目上の人に使うのであれば、なおさらです。
私のようなおっさんからすると「お伺いします」って絶対に変だからです。まぁ20年も経てば日本のビジネスパーソンはみんな「お伺いします!!」って言ってるのでしょうけど…。
ノリ的には「お願いします!!」と同じで、しっくりとくる人もいらっしゃるでしょうから…。
「お伺いする」「お伺いします」も安易に使わない!
一貫して述べていることですが、
訪問したり、尋ねたりするときの謙譲語は用法的に正しい「伺います」を使ったほうがベター。ビジネスメールで使ったり、目上の人に使うのであれば、なおさらです。「お伺いいたします」だけでなく、「お伺いする」「お伺いします」も使いません。
私のようなおっさんからすると「お伺いします」「お伺いする」って絶対に変だからです。まぁ20年も経てば日本のビジネスパーソンはみんな「お伺いします!!」って言ってるのでしょうけど…。
ノリ的には「お願いします!!」と同じで、しっくりとくる人もいらっしゃるでしょうから…。
「お伺いしたい/したいです」「お伺いしたく存じます」も安易に使わない!
「お伺いいたします」と同様、「お伺いしたい・お伺いしたいです」「お伺いしたく存じます」も間違い敬語です。「慣例でOK」ではあるものの、こちらも使わないようにしましょう。
訪問したい、聞きたいときには「伺いたいです」「伺いたく存じます」が正しい用法。ビジネスメールで使ったり、目上の人に使うのであれば、こちらを使いましょう。
また念のため「お伺いしたい」「お伺いしたく存じます」が間違い敬語である理由を示しておきます。
「お伺いしたい」は分解してみると、以下のような構成です。
- 「行く・聞く」の謙譲語「伺う」
- 謙譲語「お〜する」
- 願望「~たい」
「お伺いしたく存じます」は細かく分けると、以下のような構成です。
- 「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」
- 謙譲語「お〜する」
- 願望「~たい」
- 「思う」の謙譲語「存じる」
- 丁寧語「です・ます」
ということで、どちらの表現も謙譲語を1単語に2回つかっており、二重敬語に相当します。正しい敬語は「伺いたい」「伺いたく存じます」となります。
「伺いたい・伺いたく存じます」の違い
ちなみに、「伺いたいです」と「伺いたく存じます」では丁寧レベルが違います。
以下のようなイメージで使いましょう。
- 丁寧レベル普通「訪問したいです」
▼社内外の先輩に使う丁寧レベル - 丁寧レベル中「伺いたいです」
▼「部下→上司」「自分→親しい取引先」「就活」で使う丁寧レベル - 丁寧レベルMax「伺いたく存じます」
▼「自分→新規顧客」「あまり知らない相手」「社内でもかなり偉い人」「転職」で使う丁寧レベル
お伺いしてもよろしいでしょうか?も間違い敬語
ここまでは、普通の文章としての「伺う」をみてきました。
疑問文としても「お伺いしてもよろしいでしょうか?」という間違った使い方をされることがあるため注意点として書いておきます。こちらも結論としては「お伺いいたします」と同様に二重敬語になります。ご留意ください。
お伺いできますでしょうか?も間違い敬語
同じく疑問文の「お伺いできますでしょうか?」も間違い敬語です。「お伺い」としている時点でダメですが、「~できますでしょうか?」という表現も気にくわない。
「~できますか?」という可能形を使うと、相手にとっては「訪問すること」を押し付けられているような気分になるのですよね…。驚くことに、このような間違い敬語を使うビジネスパーソンが多くいます。
こちらも「お伺いいたします」と同様に間違い敬語ですので、ご注意ください。
伺えますか?伺ってもよろしいでしょうか?はOK
「伺う」を「訪問できますか?質問できますか?」という疑問形にするにはどうしたらよいでしょうか。もちろん、丁寧語よりも謙譲語を使ったほうが丁寧な敬語となりますので、これらの疑問文を謙譲語に直しましょう。
すると「伺えますか」「伺ってもよろしいでしょうか」というようになります。ここで「よろしいでしょうか」は「よい」の丁寧表現です。
ビジネスシーンで使うときには、以下例文のような使い方をします。
- 例文「5月10日に伺ってもよろしいでしょうか?」
→意味は「訪問してもよいでしょうか?」 - 例文「ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
→意味は「質問してもよいでしょうか?」
より一般的な使い方
ただ、「伺えますか?伺ってもよろしいでしょうか?」よりも一般的な表現としては、以下を使います。
- 例文「5月10日に伺いたく存じます。ご都合いかがでしょうか?」
→意味は「訪問したいと思うのだけど、都合はどう?」 - 例文「ひとつ伺いたいことがございます」
→意味は「ひとつ聞きたいことがある」
でもやっぱり気にくわない「お伺いいたします」
個人的な意見ばかりで恐縮ですが、やはり私のようなおっさん世代には「お伺いいたします」は慣例でOK!!とする意見には納得できません。
敬語の使い方に「慣例としてOK = 習慣として使われている表現」もクソもない、と思うのです。
正しいものは正しいし、間違っているものは間違っている!
といいたいのですが…。
実はそうでもありません。敬語に限らず言葉の難しいところは「何が合っていて、何が間違っているかは時代が決める!!」という点。
敬語や言葉は時代とともに変わる
たとえば「全然OK」という言葉。今でこそ普通に使われていますが、若者が使い始めたときには「おかしい日本語」として世間を騒がせていました。全然OK、という言葉がでてくるまで「全然」はたとえば、「全然ダメ」「全然できなかった」のように、ネガティブなことに使われる言葉だったのです。
それが時代とともに変わり、今では普通に使われています。
「これと同じで敬語表現も時代と共に変わっていくべきだ」
ということなのでしょう。
そのうち「お伺いします」「お伺いさせて頂きます」「お伺いいたします」という敬語を使う人がもっともっと増えてくれば、さすがにもう誰も文句は言わないでしょうね。
私はそれを阻止するべく、文化庁がなんと言おうと「おかしいものはおかしい!!」と言い続けますけど…。少なくともこの記事を読んでいただいたあなたは、何が正しくて何が間違っているか、ということだけ理解しておいてください。
ビジネスメールでは丁寧語よりも尊敬語・謙譲語を使う!
ビジネスメールでは丁寧語はあまり使わず、尊敬語・謙譲語を使います。
これは丁寧レベルの問題で、
丁寧語 < 尊敬語・謙譲語 となるからです。
丁寧語は「です・ます」のことですが、ビジネスメールで使うとかっこ悪くなるのでご注意ください。たとえばメールの締めに丁寧語「よろしくお願いします」ではおかしいわけで、謙譲語「よろしくお願い致します」「よろしくお願い申し上げます」とします。
ちなみに「いたします」は「する」の謙譲語+丁寧語「ます」、
「申し上げます」は「言う」の謙譲語+丁寧語「ます」です。
他にもたとえば丁寧語「お礼します」はおかしい訳で、謙譲語「お礼申し上げます」とか、
丁寧語「訪問したいです」ではなく、謙譲語「伺いたいです」「伺いたく存じます」を使いますね。
ビジネス会話では丁寧語でもまぁOK
ところがビジネスメールではなく、ビジネス会話や電話であれば、丁寧語でもまぁ大丈夫です。それは謙譲語や尊敬語の表現が、あまりに発音しにくいから。普段の会話で「お願いいたします」をあまり使わないように、ビジネス会話でも「お願いいたします」よりも「お願いします」を多く使います。
このあたりは相手のポジション(どれくらい敬意を表するべきか?)に応じて変わるため、一概には何とも申し上げにくい部分です。
敬語って、自分のポジション、相手のポジション、場の雰囲気、相手との関わり度合い…などなど、いろいろなことを考えながら丁寧レベルを考えて使うべきものなのです。
「このときは絶対にこうだ!!」という答えはありません。あくまでも「状況に応じて、相手に失礼にならないように敬語を使う」、これが答えです。
就活・転職メールではどのくらい丁寧であるべき?
相手によって敬語の丁寧レベルを変えるのは、礼儀として心得ておきたいところですが、悩ましいのは就活・転職メールの丁寧レベル。
丁寧すぎれば「慇懃無礼(いんぎんぶれい)=丁寧すぎて、逆に無礼だと感じてしまうこと」になってしまいます。
たとえば、私はメーカー営業ですがルート営業がほとんど。したがって、ほとんどの客先で顔なじみの相手としかやりとりしません。こういう場合、かしこまり過ぎると相手との距離感が開いてしまいます。ところが、近すぎると「親しき仲にも礼儀あり」に反してしまいます。
そこで、社内で上司に使うくらい~ややオフィシャルな丁寧レベルを心がけます。
就活生の場合は、まだ若いですから人事担当も「ビジネス敬語を使えない」のが前提でメールなり会話をしています。したがって、あまりにかしこまり過ぎたり、あまりに謙りすぎるのはどうかなぁ…と思います。
転職の場合は、もうビジネスパーソンとして認められているわけですから、もっとも丁寧な対応・ビジネス敬語を心がけたいところですね。
そう考えると、就活生の場合は「受領いたしました」でも十分に丁寧な対応と言えますし、転職者はもう少し気をつかって「拝受いたしました」とするのがベターかと思われます。
敬語の復習(尊敬語、謙譲語、丁寧語)
最後に簡単に、敬語の復習をしておきましょう!
敬語には、尊敬語、謙譲語、丁寧語と3通りあり、それぞれ以下の用法を使います。
- 尊敬語
目上の人に対して、相手を立てたいときに使用する。相手の行動や持ち物に主に使い、自分には使わない。
→「行く」の丁寧語:いらっしゃる - 謙譲語
目上の人の動作に関係なく、自分がへりくだることで相手を立てるときに使用する。自分の行動や動作に使い、相手の行動には使わない。ただし謙譲語の一般形「お~いたす」「お~する」「お~申し上げる」はこの限りではない
→「行く」の謙譲語:伺う - 丁寧語
聞き手の人に対して、丁寧にしゃべる言葉。万能
→「行く」の丁寧語:参ります
同じ「行く」というのでも、敬語の種類を変えれば言い方も変わるのですよ。めんどくさいですね~。
まとめ
私がブログで使用しているのは丁寧語ですね。これは、上なのかも下なのかも分からない、不特定多数のあなたへ向けて情報発信をしているからです。
敬語が難しいと思われるのは、相手の立場や自分の立場に応じて、使う表現を変えなければいけないところですね…。
「行く」ときは絶対に「伺います」だ!!
と決まっているものではなく、相手の立場と自分の立場、状況に応じて、この3つの敬語を使い分けするのです。あるときは「参ります」を使い、あるときは「伺います」を使うといった感じ。
これはもう、ありとあらゆる場面を経験し、分からなかったら都度確認して慣れていくしかないです。一番悪いのは、調べないで適当に敬語を使ってしまうことです。私の上司みたいに「~~させて頂きます」の人になってしまうので要注意。
頭でどうこうなるものではないので是非、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。