① お待ちいただく
vs.
② お待ちくださる
の敬語、意味と違い、目上・上司・取引先への使い方、注意点についてビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説していく記事。
まずは基本。
「お待ちいただく vs お待ちくださる」の意味はそれぞれ
- お待ちいただく → 待ってもらう
- お待ちくださる → 待ってくれる
どちらも正しい敬語であり使い方はたとえば…
- 【例文】お待ちいただきますようお願い致します
- 【例文】お待ちいただきありがとうございます
- 【例文】お待ちくださいますようお願い申し上げます
- 【例文】お待ちください
- 【例文】お待ちくださいましてありがとうございます
※「ますよう」は丁寧語”ます”+「ように」
のようにしてメールに使うと、上司・目上やビジネスパートナーに使えるすばらしい敬語フレーズになります。
使い方はおもにビジネスシーンでなにかしら待ってほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです(ほかにもお礼シーンなどいろいろ使えます)。
どちらをつかっても丁寧な敬語であり使い分けの必要はありません。
その根拠については本文にて。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではメール例文をまじえながらくわしく進めていきます。
※長文になりますので時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
この記事の目次
意味・敬語の違い
まずは「お待ちいただく vs お待ちくださる」の意味と敬語における違いについて簡単に。
ようは「待ってもらう vs 待ってくれる」ということなのですが、あまりに乱暴なのでもう少しくわしく解説します。
“お待ちいただく”の意味・敬語
「お待ちいただく vs お待ちくださる」の違い
まず
「お待ちいただく」の辞書的な意味は…
「待ってもらう」であり、おもにビジネスシーンでなにかしら待ってほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです。もちろんお礼などにも使えます。
「お待ちいただく」の敬語を細かくみていくと、以下のような成り立ちです。
- 元になる語は“待つ”
- “〜してもらう”の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「お待ちいただく」
謙譲語をつかい、この上なく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
こうすると「ありがたくも待ってもらう」というようなニュアンスになります。
したがって上司・目上やビジネスメールで使うのにふさわしい表現、と言えるでしょう。
ちなみに「お待ち」の「お(ご)」は謙譲語と尊敬語の使い方があります。ここでは「自分が〜してもらう」というように自分を主語にしているため謙譲語としての使い方です。
“お待ちくださる”の意味・敬語
「お待ちいただく vs お待ちくださる」の違い
つづいて
「お待ちくださる」の辞書的な意味は…
「待ってくれる」であり、ビジネスシーンでなにかしら待ってほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです。もちろんお礼などにも使えます。
「お待ちくださる」の敬語を細かくみていくと、以下のような成り立ちです。
- 元になる語は“待つ”
- “〜してくれる”の尊敬語「お(ご)〜くださる」で「お待ちくださる」
尊敬語をうまくつかい、この上なく丁寧な敬語表現となっていることがわかります。
こうすると「ありがたくも待ってくれる」というようなニュアンスになります。
ちなみに「お待ち」の「お(ご)」は謙譲語と尊敬語の使い方があります。ここでは「相手が〜してくれる」というように相手を主語にしているため尊敬語としての使い方です。
違いと使い分け
ここまで意味と敬語についてみてきました。
さて「お待ちいただく vs お待ちくださる」の違いにお気づきでしょうか?
どちらも結局のところ言いたいことは同じ。
「待ってほしい」
と言いたいわけですが…
- “お待ちいただく“だと意味は「待ってもらう」
→敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」
vs.
- “お待ちくださる“だと意味は「待ってくれる」
→敬語は尊敬語「お(ご)〜くださる」
というように意味と敬語の使い方が違います。
いい加減しつこいのですが、だからといって言いたいことは全く同じなわけです。
したがって、
敬語の使い方には違いはあれど、どちらもひとしく丁寧な敬語であり目上・上司・社外取引先につかえるフレーズです。
ただ少しニュアンスの違いというか敬語の使い方が違うよ、ということですね。
敬語”~いただく vs くださる”の違いをもっと!
せっかくですので「~いただく」「~くださる」の違いをもっと考えてみます。
たとえば結び・締めに使う「お願い」するときのシーンを考えましょう
すると…
「ご容赦くださいますようお願い申し上げます」
「ご容赦いただきますようお願い申し上げます」
「ご了承くださいますようお願い申し上げます」
「ご了承いただきますようお願い申し上げます」
「ご確認くださいますようお願い申し上げます」
「ご確認いただきますようお願い申し上げます」
こんな敬語フレーズをよく使います。
実はこれらは「くださる」を使うのが一般的です…
「いただく」としても丁寧ではありますが…
ところが、たとえば何かをもらった時のお礼のシーンを考えます。
「たいそうなお品をくださりありがとうございました」
「たいそうなお品をいただきありがとうございました」
もうひとつ、
「いつもご利用くださりありがとうございます」
「いつもご利用いただきありがとうございます」
上記の例文はどれも敬語としては正しい使い方。
ただ圧倒的に「いただき〜」とするほうが多いですね。
結び・締めに使うフレーズとしては「くださる」のほうが一般的で、お礼に使うフレーズとしては「いただきありがとう」を使うのが一般的です。
ただし何度もしつこいのですが…
本来であればどれも丁寧な敬語であり、使い分けする必要はありません。
【補足】敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
“お待ちいただく”は間違い敬語?
少し話はそれますが「いただく」が謙譲語として誤りだという指摘があります。
間違いだという指摘の根拠は、
- “いただく”は「もらう」の謙譲語
- 謙譲語は自分の動作を低めて相手を敬うため、基本は自分の行為にしか使えない
- “お待ちする”のは相手だから…
- “お待ちいただく”は相手の行為に謙譲語を使うことになり、おかしい?
ということです。
正しい敬語である根拠
まずは結論だけ述べますが「お待ちいただく」は間違った謙譲語ではありません。
「お待ちいただく」は 「私が相手に待ってもらう」という意味。
もっとかみ砕くと
「ありがたくも私が相手に待ってもらう」というようなニュアンスになります。
自分が上司・目上・取引先など相手に「〜してもらう」の主語は自分であるハズ。したがって自分を低めて上司・目上・取引先をたてる謙譲語「いただく」をつかいます。
ちなみに尊敬語をつかって相手の行為をたてるのであれば…
「お待ちくださる=相手が待ってくださる」をつかえばOK。
謙譲語にも”お(ご)”という使い方がある
ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。
じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お(ご)」の使い方があります。
謙譲語としての「お(ご)」の使い方はたとえば、
- 会議日程のご連絡
- 忘年会開催のお知らせ
- 販売状況のご報告
- 転勤のご挨拶
- 貴社ご訪問のお願い
こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。
ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お(ご)」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。
これは、
謙譲語「お(ご)」の使い方を知らないためにくる勘違いです。
尊敬語の「お(ご)」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。
いっぽうで尊敬語の「お(ご)」は、「部長がお戻りになりました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。
謙譲語の一般形まとめ
謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。
他にもセットで謙譲語として覚えておくと役に立つフレーズを以下にまとめます。
- お(ご)〜する
お(ご)〜します - お(ご)〜いたす
お(ご)〜いたします - お(ご)〜いただく
お(ご)〜いただきます - お(ご)〜差し上げる
お(ご)〜差し上げます - お(ご)〜申し上げる
お(ご)〜申し上げます - お(ご)〜させていただく
お(ご)〜させていただきます
※「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない
「〜」の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「確認」「連絡」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。
また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。
ちなみに、これは文化庁の「敬語の指針」においても解説されています。私のような頭の悪い人には難しいのですが、ご興味ありましたら以下のリンクよりどうぞ。
使い方・ビジネスメール例文【全文】
つづいて「お待ちくださる vs お待ちいただく」の使い方をビジネスメール例文で紹介します。
目上・上司にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。
基本の使い方
例文に行くまえに…
もっとも基本となる「お待ちくださる・お待ちいただく」の使い方をビジネスシーンごとに簡単に解説しておきます。
① 相手に「待ってほしい・待ってもらいたい」ときは…
- 【例文】お待ちいただきたく存じます
- 【例文】お待ちいただきますようお願い申し上げます
- 【例文】お待ちくださいますようお願い申し上げます
- 【例文】お待ちいただければ幸いです
- 【例文】お待ちいただけますか/ますでしょうか?
※ 「存じます」は「思います」の意味の謙譲語
※「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
② 相手に「待ってくれてありがとう!」とお礼するときは…
- 【例文】お待ちいただきありがとうございます
- 【例文】お待ちくださいましてありがとうございます
③ 自分が「待ちます!」と言いたいときには…
- 【現在形】お待ちします/お待ちいたします
- 【過去形】お待ちしました/お待ちいたしました
- 【進行形】お待ちしております/お待ちいたしております
- 【希望①】お待ちしたく思います/お待ちいたしたく思います
- 【希望②】お待ちしたく存じます/お待ちいたしたく存じます
※ 「存じます」は「思います」の意味の謙譲語
おもにはこんな感じの使い方があります。
それぞれの意味や敬語の使い方など、くわしい解説は本文の一番最後にあります。
すべての使い方を例文で紹介しているとそれだけで日が暮れるため、少しだけにしておきます。
例文①回答保留の返信ビジネスメール
メール件名: 製品Aに関するお問い合わせ
◯◯株式会社
資材部 △△ 様(社外取引先)
いつもお世話になっております。
(株)ビジネス・ノマドでございます。
このたびはお問い合わせいただき誠にありがとうございます。
さてご質問の件、あいにく弊社では製品Aの自動車用途にかんする知見を持ち合わせておりません。
つきまして研究開発担当に確認の上、あらためてご報告いたします。
確認に少々お時間を頂戴いたしますが、
どうかお待ちくださいますようお願い申し上げます。
*********
メール署名
*********
こんなときには「了解すること=ご了承」をつかうのが一般的です。
-言い換え-
確認に少々お時間を頂戴いたしますが、
どうかご了承くださいますようお願い申し上げます。
例文②飲み会の出欠回答を保留する(社内メール)
メール件名:返信Re:懇親会・出欠のご確認
●●課長(上司) お疲れ様です。
このたびは懇親会にお誘い頂き誠にありがとうございます。
さて出欠の件、現在顧客Aとのアポイントを調整しており、現時点ではお答えが難しい状況でございます。
つきまして回答を少々お待ちいただきたく存じます。
大変ご迷惑をお掛けいたしますが、 ご了承のほどお願いいたします。
*********
メール署名
*********
こんなときには「時間をもらう=お時間をいただく」をつかうのが一般的です。
-言い換え-
つきまして回答に少々お時間をいただきたく存じます。
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お待ちいただく vs お待ちくださる」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
+前置きに添えるフレーズを!
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お待ち」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうかお待ち〜
「どうかお待ちのほどお願い申し上げます」
「どうかお待ちくださいますようお願い致します」
「どうかお待ちいただきますようお願い申し上げます」
「どうかお待ち賜りますようお願い申し上げます」 - 何卒お待ち〜
「何卒お待ちのほどお願い申し上げます」
「何卒お待ちくださいますようお願い致します」
「何卒お待ちいただきますようお願い申し上げます」
「何卒お待ち賜りますようお願い申し上げます」
+気づかいの敬語フレーズもGood
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お待ち」の前置きには添えるフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお待ち〜」
「お忙しいところ大変恐縮ではございますがお待ち〜」
「たびたび恐縮ではございますがお待ち〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお待ち〜」
「お忙しいところ大変恐れ入りますがお待ち〜」
「たびたび恐れ入りますがお待ち〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお待ち〜」
「お忙しいところ大変お手数ではございますがお待ち〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお待ち〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お待ちのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお待ち〜」
ビジネス会話・電話では”お待ちいただけますか?”
ビジネスメールではなく会話や電話シーンであれば…
「お待ちくださいますようお願い申し上げます」などは絶対につかいません。
長いうえに丁寧すぎて気持ち悪いですからね。
そこでビジネス会話・電話では…
- 【例文】お待ちいただけますか?
- 【例文】お待ちいただけますでしょうか?
- 【例文】お待ち願えますでしょうか?
※もちろん「お待ちください」「お待ちくださいませ」としてもOK
といった質問フレーズをつかいましょう。
意味としては「待ってもらえますか?」であり、敬語をつかって丁寧な表現にしています。
「〜いただけますか?」サラッと言えるためビジネスシーンで重宝するフレーズです。
敬語の解説
「お待ちいただけますか?」「お待ちいただけますでしょうか?」
の敬語の成り立ちとしては…
- “待つ”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「お待ちいただく」
- 可能形にして「お待ちいただける」
- さらに丁寧語”ます”で「お待ちいただけます」
- 疑問形にして「お待ちいただけますか?」
“〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」を使うと「お待ちいただけますでしょうか?」
どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。
したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。
どちらかというと「〜いただけますでしょうか?」のほうが丁寧なのですが…バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけますか?」を使うのをオススメします。
“お時間いただく”に言い換えOK
ここでひとつ追記。
「お待ちいただく・くださる」は「お時間いただく」として言い換えることもできます。
相手に「待ってもらう」ということはつまり相手の時間をもらうことなので、どちらも結局のところおなじことを言っている訳です。
そこで以下のような例文もビジネスシーンに使える丁寧な敬語フレーズとなります。
“お時間いただく”をつかった言い換え例文
- 例文「お時間をいただきたく存じます」
- 例文「お時間をいただければと存じます」
- 例文「お時間をいただけましたら幸いです」
- 例文「お時間をいただければ幸いです」
- 例文「お時間をいただければ幸甚に存じます」
- 例文「お時間をいただけましたら幸甚に存じます」
補)幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
“お時間を頂戴する”をつかった言い換え例文
あるいは「お時間をいただく」だけでなく…
「お時間を頂戴する」をつかった言い換えもできます。
以下の例文もご参考にどうぞ。
- 例文「お時間を頂戴したく存じます」
- 例文「お時間を頂戴できばと存じます」
- 例文「お時間を頂戴できましたら幸いです」
- 例文「お時間を頂戴できれば幸いです」
- 例文「お時間を頂戴できれば幸甚に存じます」
- 例文「お時間を頂戴できましたら幸甚に存じます」
補)幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
参考記事
- 「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
- 上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
- 「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方
- 【完全版】ビジネスメール締め・結びの例文50選
- ︎︎ビジネスシーンでの「お願い・依頼」敬語フレーズのすべて
- ︎︎ビジネスシーンでの『お礼・感謝』敬語フレーズのすべて
- ︎︎ビジネスメールにおける断り方のすべて
お待ちいただきますようお願い申し上げます。
は、相手にお願いするのだから、いただきますよう、ではなく、くださいますよう
が正しいと思います。