総合化学メーカーとは?基本~強み・弱みまでが3分でわかるブログ

総合化学メーカーの強みと課題(弱み)をまとめますが、本題の前に「総合化学メーカーとは何?」から入ります。就職活動・転職のお役に立てましたら幸いです。

総合化学メーカーとは?

総合化学メーカーというのは日本の新聞記者が作り出した言葉に過ぎず、世界ではどの化学素材メーカーも英語にするとPetrochemical Industry(石油化学業界)のPetrochemical Manufacturer(石油化学メーカー)。

つまり化学メーカーに「総合」もくそもないのです。

「総合化学メーカーの定義」が存在しないのですから、化学メーカー勤務の私ですらこれについて説明できません。

原料の上流から末端製品に近い下流までのビジネスを全て手がける化学メーカーのことを言うらしいのですが、上流って何?下流って何?という問題が残ります。

結局、化学の最も基礎となる原料(エチレン)を作っている化学メーカー6社のことを指す、と誰かがなんとなく決めています。

日本の総合化学メーカーは何社?

2016年現在、エチレンを作っている化学素材メーカーは以下の6社。上述の定義を適用するのであれば、この6社が総合化学メーカーの枠に入ります。

  1. 三菱ケミカルホールディングス
  2. 住友化学
  3. 三井化学
  4. 旭化成
  5. 東ソー
  6. 昭和電工

総合化学メーカーの強み・弱み

あくまでも個別企業ごとに企業分析する必要がありますが、一般論として以下のようにまとめておきます。

総合化学メーカーの強み;

  1. 上流から下流まで一貫して生産しているため、製品のコスト競争力に多少は優れる(実際はそうでもない)
  2. 分野が基礎化学品~高機能化学品~医薬・製薬まで多岐にわたり、ビジネスの多様性があるため安定性に優れる
  3. 昔から培ってきた基礎技術や特許の蓄積があるため、応用して新たな高機能化学品を生み出せる。←化学の分野では基礎技術と特許は最も重要。基礎があるから応用して高機能化学品を作れるのであって、基礎技術のない中国・台湾メーカーにはマネできない。
  4. 使い古された商品でもR&D(研究開発)をまじめにやり、何かを生み出す。欧米の会社と違い、稼げなくなったビジネスは人を減らしてすぐに売却、ということをしない。
  5. R&D(研究開発)の人材が豊富で優秀。外資系メーカーの使えないDr.(博士号)よりも日本の大学院卒(マスター)のほうが、ちゃんとしている。

▼自社の安い原料を使って、安く製品を作れる。加えて商品の分野も幅広く、何かがダメでも何かで立て直せるということですね。

総合化学メーカーの弱み;

  1. 基礎化学品(PE、PP、PVC、PS、ABS、POなど)は輸入品との争いもあり、大きく儲かるビジネスではない。営業利益率3%程度の低マージンビジネス。
  2. 基礎化学品はバブル期に生産能力を拡大しまくったせいで、国内需要以上の生産能力を持ってしまっている。各社、輸出で工場の稼働率を埋めていたが、グローバルでの競争が激しく採算が合わない。汎用品を日本で作って輸出していては確実に営業赤字になる。
  3. 外部環境(原油高、為替円高)ですぐに業績が悪化する。逆も然り。
  4. 基礎化学品の生産拠点を日本に持っている時点で稼げない。
  5. ビジネス領域の重複するメーカーが多すぎる、集約が必要
  6. 上流〜下流まで一貫して生産しているため、儲からない基礎化学品も止められない。何かを止めればどこかに影響が及ぶという構図。例えばエチレンの製造を止めると、ポリエチレンも塩ビもその他ポリオレフィンも作れなくなる。

▼化学素材メーカーは課題が多すぎてまとめきれないのですが、とりあえず単純化してみました。ただし大事なのは各社がどのようにこの弱みを克服しようとしているか、というところ。事項より各社の中期経営計画から特に重要な部分を抜粋していきます。

つづく;総合化学メーカー比較。違いを解説していきます

総合化学メーカー6社について、何が違うのか分からないという質問を目にしますが、実は結構違います。詳しくは次の記事でご確認ください。