熊本地震で被災された皆様には、心よりお悔やみ申し上げます。また一日も早い復旧を海外からお祈りしております。
さて熊本地震情報のニュースによると、企業にもその影響が広がっているそうです。
しかし新聞記者やテレビ局のニュースは表面しか捉えられていないので、ソニーやパナソニック、トヨタといった日本を代表するCtoCの会社ばかりにスポットを当てがち。
これはこれで既存メディアの宿命なのでしょうが、本当にヤバイ事態は別のところにあります。
それは「日本の化学素材メーカーや部材メーカーの工場が停止する」という事態です。そこで、なぜ熊本地震で化学メーカーが被災するとヤバイのかを解説していきます。
なぜ化学・部材メーカーが熊本地震で被災するとヤバイの?
化学メーカーの素材は世界オンリーワン商品が数多くある
化学メーカーの工場停止というのは、重大な損害が発生します。
その理由は化学メーカーの素材が使われている分野の広さ。自動車や電気製品は言うまでも無く、住宅、紙おむつ、服、食品包装材…果てはレシートに至るまで、ほとんど全ての業界で化学メーカーの原料が使われています。
そして世界中の原料供給を一社、一工場のみに頼っている材料・部材が数多くあります。このようなオンリーワンの工場が被災してストップした場合、世界のモノつくりが停止します。
小麦や牛肉がなければ世界のマクドナルドが停止する、というのと同じ理由です。
部材メーカーも同じく製造業を支えているが、影響は国内のみ
トヨタのティアワンサプライヤー(最重要サプライヤー)の一つであるアイシン精機。工場が停止すると全国のトヨタの工場に影響があります。もちろんトヨタもアホではないので、東日本大震災後、既にリスクを分散していることでしょう。
しかも部材メーカーの場合は現地生産が進み輸出をほとんどしていないので、日本国内の製造業に影響があるという程度で、世界的に見ると大した問題ではありません。
たった0.001gしか使わない化学素材。でも無いと商品が作れない
化学メーカーの材料というのは、製品の重量全体に占める割合などたかだかしれています。0.001gとか、もっと少ない使用量しかないのが普通。
でもその材料がないと商品全体が成り立たないという、とっても重要な役割を果たしているのです。
ソニーやトヨタ、ホンダの工場が被災しても問題ではない
一方でソニーやトヨタの工場など、CtoCのビジネスを基本とする会社の工場は被災しても大した損害にはなりません。単に車や電気製品を組み立てているだけの工場なのですから、替わりにバックアップする工場は世界中にいくつも存在するからです。
残酷な表現ですが、マクドナルドが一個なくなったからといって世界的には何も影響が無いのと一緒です。
しかし原料や部材が入ってこないというのは、被災した工場の比較にならないほどの大損害に発展する可能性があります。
企業は東日本大震災で被災した教訓を生かしていない
2011年の東日本大震災の教訓から、企業は原料を一社に頼ることの恐怖を十分に味わい、2社購買や原料のリスク分散を進めました。しかしオンリーワンの原料を切り替えるというのは数年単位で出来るものではなく、莫大な労力とコストを必要とします。たかが0.001g、されど0.001gの化学素材。
分かりやすく、自動車部品とその原料を例に出します。1台の自動車ができるまでに自動車部品2万点、さらにその上流の原料までさかのぼると数え切れない種類の原材料を必要とします。その一つ一つの原料に対して、2社購買を検討することなど不可能。
さらには年数が経てばその痛みは和らぎ結局、原料オンリーワン供給の体制は何も変わっていないのです。
また、化学メーカーがそれだけ代えの効かないオンリーワン素材を提供しているという見方もできます。
熊本地震における化学工場の被害状況は?
熊本の被災地近くにある化学工場といえば、以下のようなメーカーがあります。どの工場が被災しているという情報は既に入ってきていますが、社外秘なので非公開とします。
被災地付近にある化学工場
●日本合成化学工業・熊本工場(三菱化学グループ)
●ブリジストン・熊本工場
●興人・八代工場(三菱製紙グループ)
●トキワ化学・八代工場
大きいのはこのくらいでしょうか・・・
この中で、もし被災していたとしたら世界的に一番インパクトが大きそうなのは、日本合成化学工業の熊本工場でしょうね…理由は…長くなるので止めておきます。
おそらく、被災していなくても原料が入らなくて生産停止しないといけない世界のモノつくりメーカーが今後、続出することでしょう。予言しておきます。←偉そうに予言してみましたが、はずれたらごめんなさい。