謙譲語「伺う」の使い方:敬語フレーズとビジネスメール例文

「①行く・訪問する」「②聞く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかった敬語フレーズと、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

「伺う」は「①行く・訪問する」「②聞く・尋ねる」の謙譲語

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

  • 例文①明日に伺います
    原文「明日に訪問します」
  • 例文②よろしければ10月10日に貴社へ伺いたく存じます
    原文「訪問したいと思います」
  • 例文③ひとつ伺いたく存じます
    原文「聞きたく思う」
  • 例文④ひとつ伺いたいことがございます
    原文「尋ねたいことがあります」
  • 例文⑤ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?
    原文「聞いてもいいですか?」

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「伺います・参ります・参上します」とするのが一般的。

例文①②は「行く・訪問する」の謙譲語として「伺う」を使い、

例文③④⑤では「聞く・尋ねる」の謙譲語として「伺う」を使っています。

また、

ここでは「訪問する」「尋ねる」の謙譲語も「伺う」としましたが、正しくは…

  • 「訪問する」の謙譲語は「(ご)訪問いたす」
  • 「尋ねる」の謙譲語は「お尋ねする」「お尋ねいたす」

というようになります。
が、ビジネスシーンでは「伺う」を敬語フレーズとしてよく使います。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながらビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について説明していきます。

そもそも謙譲語とは?

念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

行く・訪問する の謙譲語「伺う」使い方と例文

まずは「行く・訪問する」の意味で使う謙譲語「伺う」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

「聞く・尋ねる」の謙譲語も「伺う」であり、どちらの意味で使っているかは文脈で判断するしかありません。

使い方

「行く・訪問する」の意味で使う謙譲語「伺う」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が誰か対象となる目上のヒトのところへ行く・訪問する」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  • 例文「明日に伺います」
    原文「明日に行く・訪問する」
  • 例文「貴社へ伺い、新製品の紹介をいたしたく存じます」
    原文「相手の会社へ行く・訪問する」
  • 例文「貴社へ伺いたく存じます」
    原文「相手の会社へ行きたい・訪問したいと思う」

のような感じで「自分が行く」ときにつかいます。ここで「存じる」は思うの謙譲語であり、丁寧語「ます」とくっつけて「存じます」という敬語フレーズで使います。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「取引先が当社に伺いました」

のような例文はダメ。

目上のヒトなり社外の相手が「来る」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語「いらっしゃる」「お越しになる」「お見えになる」を使い、たとえば「取引先が当社にいらっしゃいました」とします。

お伺いいたします・お伺いする は二重敬語だから間違い!

「行く・訪問する」の意味で使う謙譲語「伺う」にさらに謙譲語「お~いたす」「お~する」をつかうと「お伺いいたす」「お伺いする」という謙譲語になります。

ここでひとつ問題が…

お伺いいたす・お伺いする はおなじ「行く」という語に謙譲語を2回つかっているため二重敬語にあたりNGです。

おなじように以下の謙譲語も二重敬語となりNG。

  • 間違い敬語「お伺いしたい」
    → 正しくは「伺いたい」
  • 間違い敬語「お伺い」
    → 正しくは「伺い」

でも、これらの敬語はビジネスシーンではどの表現もフツーに使われます。ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。

ということで、
間違っていても突っ込まれることは少ないとは思いますがお気をつけください。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「行く・訪問する」の意味で使う謙譲語「伺う」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「伺います」「伺いました」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

「参る・参上する」よりも「伺う」をよく使う

ここでひとつ雑学を。

「行く・訪問する」の謙譲語には「伺う」のほかにも「参る・参上する」があります。

ただ「参る・参上する」のほうがよりかしこまったというか、古めかしい敬語フレーズとなります。

のヒトは「明日に参ります」というような表現を好みますが最近は「明日に伺います」というようにすることが一般的。

まぁ、あくまでも感覚的な話とはなりますが…

例文

「行く・訪問する」の意味で使う謙譲語「伺う」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。

ホントに色々と使えます。

  1. アポイントの「ビジネスメール」
    例文「よろしければ10月10日に貴社へ伺いたく存じます」
    例文「よろしければご挨拶かたがた伺いたく存じます」
    例文「承知しました。それでは明日14時に伺います」
  2. 疑問形にして「行ってもいい?」と聞く
    例文「明日に伺ってもよろしいでしょうか?」
【敬語の補足】
・使い方はアポイントなどのビジネスメール、会話
・意味はどれを使ってもおなじく「行く・訪問する」
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語

聞く・尋ねる の謙譲語「伺う」使い方と例文

つづいて「聞く・尋ねる」の意味で使う謙譲語「伺う」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

「行く・訪問する」の謙譲語も「伺う」であり、どちらの意味で使っているかは文脈で判断するしかありません。

使い方

「聞く・尋ねる」の意味で使う謙譲語「伺う」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が誰か対象となる目上のヒトになにかを聞く・尋ねる」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。相手に質問するときによくつかうフレーズですね。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  • 例文「つかぬことを伺いますが…トイレに紙は備え付けされていますか?」
    原文「関係ないことを聞くのだけど…」
  • 例文「東京駅までの道を伺いたいのですが…」
    原文「東京駅までの道を聞きたいのだけど…」
  • 例文「ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?」
    原文「聞いてもいいですか?」

のような感じで「自分が聞く・尋ねる」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「部長が東京駅までの行きかたを伺った」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「聞く」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長が東京駅までの道をお尋ねになった・お聞きになった」とします。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「聞く・尋ねる」の意味で使う謙譲語「伺う」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「伺います」「伺いました」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

お伺いする・お伺いいたす は間違い敬語

繰り返しにはなりますが、重要なのでもう一度。

伺う のよくある間違った敬語の使い方として「お伺いする」「お伺いいたす」というのがあります。「伺う」という謙譲語にさらに「お~する」「お~いたす」という謙譲語をつかっているため二重敬語にあたるためです。

「お伺いする」という間違い敬語はサラリーマンの50%くらいは使っているイメージなので、別に誰も突っ込んだりしませんけどね…

ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。

他にもある「聞く・尋ねる」の謙譲語

聞く・尋ねる の謙譲語は「伺う」だけではありません。

①伺う
②お聞きする
③拝聴する・お尋ねする

はいずれも謙譲語として使えます

※「拝聴する」「お尋ねする」は厳密には類語

たとえば、

  • 例文①ひとつ伺ってもよろしいでしょうか?
  • 例文②ひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?
  • 例文③ひとつお尋ねしてもよろしいでしょうか?

これらの例文はどれをとっても同じ意味となります。

もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「伺います・お聞きします・お尋ねします」とするのが一般的。

使い分けする必要はありませんが、ビジネスメールで「伺う」ばかりになってしまうと気持ち悪いため、重複するときには違う敬語フレーズを使いましょう。

例文

「聞く・尋ねる」の意味で使う謙譲語「伺う」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。

ホントに色々と使えます。

  1. ビジネスシーンで相手に質問する
    例文「一点、伺いたいことがございます」
    例文「つかぬことを伺いますが…こちらの商品は防水ですか?」
  2. ビジネスメールで相手に質問する
    例文「部長のご意見を伺いたく存じます」
    例文「部長のご意見をお尋ねしたく存じます」
    例文「部長のご意見をお聞きしたく存じます」
  3. 純粋に「音楽やスピーチを聴く」とする
    例文「部長のすばらしいスピーチを拝聴しました」
    ※「伺う」ではおかしいのでご注意を。
【敬語の補足】
・使い方は相手に質問するときのビジネスメール、会話
・意味はどれを使ってもおなじく「聞く・尋ねる」
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語
・つかぬこと は「関係ないこと」つまり「つまらないこと」の意味で使う

他にもよく使う敬語の変換表

「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

謙譲語 尊敬語 丁寧語
受け取る  拝受する
拝受いたす
 お受け取りになる  受け取ります
来る  伺う
参る
参上する
 いらっしゃる
来られる
お見えになる
お越しになる
来ます
言う  申す
申し上げる
 おっしゃる
言われる
 言います
会う  お会いする
お目にかかる
 お会いになる
会われる
 会います
する  致す
(いたす)
 なさる  します
伝える  お伝えする
申し伝える
 お伝えになる
伝えられる
 伝えます
思う  存じる  お思いになる
思われる
 思います
行く  伺う
参る
参上する
 行かれる
お行きになる
 行きます
もらう  いただく  くださる  もらいます
「~れる」という尊敬語は受身や可能の「れる・られる」と混同しやすいため「お~なる」を使うほうがベター。

謙譲語「伺う」はこう使う!

つづいて謙譲語「伺う」を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

×部長、A社に伺いましたか?

謙譲語「伺う」を使うときの注意点。

きわめて初歩的ではありますが…

謙譲語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「伺う」は謙譲語であるため、自分の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「部長、A社に伺いましたか?」

は間違い敬語です。

上司や目上のヒトが行くのであれば

  • 正しい例文「部長、A社に訪問なさいましたか?」
  • 正しい例文「部長、A社に行かれましたか?」

とするのが正解。

×(私が)A社に行かれた

謙譲語「伺う」を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

尊敬語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「行かれる」は尊敬語であるため、相手の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文(私が)A社に行かれた

は間違い敬語です。

こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが行くのであれば、

  • 正しい例文(私が)A社に伺った

とするのが正解。

×社外のヒトにたいして「上司は出張に行かれて ご不在です」

謙譲語「伺う」を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

ウチ・ソトが逆転している敬語はダメ。社内のヒトのことを社外に伝えるときには、たとえ上司であっても高めてはいけません。ウチを低める謙譲語を使います。
  • NG例文(社外に対して)上司は出張に行かれて ご不在です

だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。

ということで、

上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。

  • 正しい例文(社外に対して)上司は出張のため不在にしております

とするのが正解。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

謙譲語「伺う」を使うときの注意点。

何度もしつこいですが…

丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。

たとえば、

  • 謙譲語「伺う」は「伺います」「伺いました」

のようにするとより丁寧な敬語となります。

謙譲語「伺う」を使ったビジネスメール全文