生命保険会社の法人営業に就職・転職をお考えのあなたへ。
- 「法人営業ってそもそも何?」
- 「リテール営業(個人むけ)となにが違う?」
- 「どんな仕事内容?」
- 「キャリアパスは?」
などなどについて。
現役大手生保マンが分かりやすく、かつ、ありのままを赤裸々に語っていきます。
就活・転職のご参考にどうぞ。
この記事の目次
生保会社における法人営業職とは?
生保業界における法人営業職とは、実際のいわゆる法人営業と違うため注意が必要です。
一般的な法人営業は「企業にたいして商品を売る仕事」
一般的に「法人営業」といえば。
化学メーカーや自動車部品メーカーの営業のように、企業にたいして商品なりサービスを売り込む営業のことを言います。
身近なところではたとえば。
トヨタは消費者にクルマを売っています。
そのクルマはデンソーなどの部品メーカーから供給される部品でできています。
- ここで法人営業職とはデンソーの営業マンのことを指します。
トヨタという会社にたいして部品を売る仕事だからですね。
さらに。
デンソーの部品はもとはと言えば、新日鉄のつくった鉄を買い、旭硝子のつくったガラスを買い、というようにできています。
したがって。
- 新日鉄も旭硝子の営業マンも法人営業という仕事をしていることになります。
生保の法人営業は名ばかりで、実際にはサラリーマンを相手にしたリテール営業のこと
ところが。
生保の法人営業とは、上記のようなガチな法人営業とはまったく違います。
生保会社における「法人営業職」とは…
- 企業のオフィスなり工場に行って、しがないサラリーマンを相手に、生命保険や金融商品を売り込む営業のことを指します。
これを果たして「法人営業」と呼べるのでしょうか?
実際に生命保険を買うのはサラリーマンなり中小企業の経営者なりの、個人です。
たとえば上記の例であれば。
- トヨタ自動車のサラリーマンが生命保険を買うわけであって、トヨタ自動車が生命保険を買うわけではないのですよね。
したがって「リテール営業(個人営業)」という名前にするのが本来あるべき姿でしょう。
「リテール●●」だと人が集まらないから仕方ない
なぜ「リテール=個人むけ」という名称にしないかというと…
世間では、
- 「リテール営業(個人むけ営業)=激務ブラック」
- 「法人営業=ホワイトで比較的ラクな仕事」
というイメージが強いから。
「リテール」という名称をつかうと人が集まらないから、生命保険各社は「法人●●」というような職種にしているのでしょうね。
まったくミスリードもいい加減にしろ!と言いたいのですが…
おなじように不動産営業なんかでは「ソリューション営業」とは言いつつも実際にはリテール営業のことだったり…
とにかく皆さん、営業に対するイメージを良くしようと必死なのですよね。
結果うさん臭さ満点のネーミングになっているのに、採用担当はどうやら気づいてないようです…
そこで本ブログでは。
実際にはリテール営業であるのを誤魔化している場合「なんちゃって法人営業」と名付けることにします。
ところで。
こういうガチな法人営業と、生保のような「なんちゃって法人営業」を区別するために。「ガチな法人営業=BtoBの営業」と言ったりもします。
大手生保会社における法人営業
生保会社におけるこの「なんちゃって法人営業職」は、会社によって名称が違います。
そこで。
2020卒新卒採用の募集情報から、どんな職種の説明がなされているのか抜粋しておきますね。
▼日本生命の法人営業(法人職域FC)
大企業を中心とした法人・職域マーケットにて、高度な専門知識を駆使したコンサルティング営業を行い、その後、営業のみならず企画・執行・支援領域など、幅広い職務にチャレンジできる職種です。ー法人職域フィナンシャルコーディネーター(法人職域FC)ー
▼第一生命の法人営業(ライフプロフェッショナル職)
企業や官公庁で働くお客さまを対象に、保険のスペシャリストとして最適な生涯設計を行い、「確かな安心」と「充実した健康サポート」をご提供します。一口に保険といっても、種類や保障内容は多岐にわたり、ライフステージやニーズ、お勤め先の福利厚生制度によってカタチはさまざま。お客さまと深い信頼関係を築き、「一生涯のパートナー」として寄り添う責任ある仕事です。ーライフプロフェッショナル職ー
▼明治安田生命の法人営業(法人総合営業職)
法人・個人それぞれのお客さまに対し、お客さまのニーズを把握し、お客さまにあったご提案を行なうスペシャリストとして、お客さまに寄り添ったコンサルティング活動を展開します。ー法人総合営業職(地域型)ー
▼住友生命の法人営業職(総合営業職)
住友生命の総合営業職は、入社後3年間は、主に官公庁や企業にお勤めの方を対象に保険のコンサルティング営業をおこない、その後は、営業経験をいかして、それぞれの目指す未来に合ったキャリアを歩むことができる職種です。ー総合営業職ー
生保レディや一般職、総合職との違い
採用項目だけみていると、なんだか意味不明な感じがするので法人営業と、その他の職種の違いをザックリと説明すると以下のとおり(会社によって若干違いますが…)。
▼仕事における違い
- 生保レディ(営業)との違いは…
①個人宅を訪問したりせず、企業の職場を訪問する営業に特化していること。
②学歴「法人営業(四大卒)>>生保レディ(誰でもOK)」 - 一般職との違いは、内勤(営業サポート)か営業か
- エリア総合職との違いは業務テリトリーの広さ「エリア総合職 > 法人営業」
▼年収における違い
- 生保レディ(営業)のように歩合制ではなく、固定給であること。いくら頑張っても給料に反映されないためノルマもそこまでは厳しくない。
- 年収は「総合職 > エリア総合職 > 一般職 ≒ 法人営業」。生保レディはピンからキリまで。
▼勤務地おける違い
- 総合職は海外ふくむ全国に転勤あり。
- エリア総合職・一般職・法人営業・生保レディは原則、決められたエリアのみ。転勤がほとんどない。
転勤がなく、固定給部分がおおいためノルマもそこまで厳しくありません。
※もちろんノルマによる年収変動はそれなりにあります。生保レディ(ガチなリテール営業)よりは…という話。
とくに女性がおおい職種
生保業界における法人営業はほとんどが女性です。
99%女性といっても差し支えありません。
おそらく採用段階で男女差別、ならびにルックス重視の採用が行われています。
だって。
職場にむさくるしい男が生保の営業に来たって、誰も見向きもしないでしょうからね…。
法人営業の仕事内容と、ありがちなキャリアパス
概要をザックリ学んだので。
生保会社における法人営業の仕事内容と、ありがちなキャリアパスを紹介しておきます。
ここでは日本生命での例をだしますが、どこの会社もあまり大きな違いはないものと思われます。あくまでも参考程度にお考えください。
新卒:対サラリーマンへの営業+資格の勉強
エリア総合職といってもまずは営業からキャリアがはじまる。
最初はリーダーに付き添われ、企業の昼休みに職場を訪問していく。
学生上がりではじめての営業経験であるため、そもそも他人に声をかけることに慣れていない中、昼休みで静まり返っている現場で「こんにちは!日本生命の新人の○○です!」などとあいさつをしなければならない。
リーダーは厳しく指導をするため、新人がいくら恥ずかしがってもそれを許さず、できるようになるまでやらせる。「恥ずかしくてできません」なんて言おうものなら営業拠点に帰って長時間の説教をくらう。
法人営業とは名ばかりで、実際には個人を相手にして営業するため思い描いていたキャリアと違う!とギャップを感じて辞める人は多く、1年目で大半は辞めていく。
また生保営業に必要な資格を取らされるので、勉強しなければいけない。
ただし法人営業は生保レディと違って全員大卒なので、やる気さえあれば普通に合格できる。
入社2~3年目24~25歳:普通に営業をつづける
さらに1年目とおなじようなことを続ける。
大半辞めてしまった同期を補うようにして新卒が大量にはいってくるため「なんだかなぁ」と感じる。
ただし成績に関係なく安定した収入があり、生活の心配はない。
営業にかかる交通費、通信費、顧客との面談でカフェを利用した際の飲食費は2万円まで支給される。
逆に2万円を超えた分は支払われないため、職場や住まいが遠方にある顧客への訪問が多くなった月などは自己負担がかなり多くなる。
そして。
ノルマがないといううたい文句に惹かれて入社したにもかかわらず、毎日のように上司から成果を求められるケースも少なくない。
成果が挙がらないと、自分で生命保険に入って毎月保険料を支払ってでも契約数を増やすよう命令されることもある。
仕事が大変で、体力的、精神的に若いときにしかできないといわれているものの、厳しい環境で仕事をする分、社会人として、また、人としての成長は自分でも実感できるほどになる。
こうして1年目よりもさらに過酷な環境におかれることに、多くの職員が嫌気をさして辞めていく。
入社3~5年目25~27歳:優秀な社員には役職がつく
この年次から業績によって同期でも大きく年収に差が出る。
秀な業績を挙げていれば「エキスパートファイナンシャルコーディネーター」や「サブリーダー」「リーダー」などの役職に就き、月給も賞与もかなり上がる。
逆に役職につかないと月給はずっと上がらないため、年収をあげるには賞与で稼ぐしかない。
優秀な業績を挙げた場合に、会社主催のご褒美ランチやディナーに招待してもらえるなど、施策はかなり頻繁にある。施策の内容もかなり豪勢なので、モチベーションにつながる。
「とりあえず3年はがんばる」と歯を食いしばって頑張ってきた職員が結婚、出産を機に退職するケースもちらほら出てくる。
入社6~8年目28~30歳:キャリア節目の年
「アシスタントリーダー」、「サブリーダー」、「リーダー」などの役職に就いていないと見栄えのする収入にならない。
ただし。
役職に就くとチーム員の管理もしなければならないため、残業がとても多くなってくる。
しかし20:00には営業拠点から退出しなければならず、土日に活動した場合は振替休日の取得が義務づけられているため、歯止めは効く。
結婚、出産を機に退職するのもここがピーク。
逆に辞めない人はこのままずっと続けていく人が多いため、キャリアの節目の年になる。
入社10~13年目32~35歳:エリート女性は管理職になる
営業拠点の管理職に就いている場合は、総合職や営業総合職の拠点長の業務とほぼ同じく、自身の業務の量の多さや重さはピークを迎える。
目が回るほど忙しいうえに、自分と同じような女性中心の法人営業を束ねる営業部の管理職を任されることから、肉体的・精神的なタフさが求められる。
朝は6:00台に出勤、日中は同行訪問や職員との面談、支社での会議出席等、目が回るほど忙しくなり、ようやく落ち着いて仕事ができるようになるのはチーム員が帰る20:00頃からといった状況も良くある。
仕事が平日だけでは片づけられなかったり、平日に会えない顧客を訪問する職員が土日に出勤することもあるため、土日は休まずに出勤することも多い。
独身で営業拠点の管理職に就いてしまうと結婚相手を探す暇がなく、どんどん仕事にのめり込んでいってしまう。
本社・支社勤務になれたら完全に勝ち組
これまで見てきたように、法人営業の主な仕事は個人顧客向けの営業ですが…
本社・支社勤務になれる可能性もあります。
その場合は年収も高く、さらにワークライフバランスにも優れます。
完全に勝ち組と言えるでしょう。
たとえば日本生命だと、
その後、営業のみならず企画・執行・支援領域など、幅広い職務にチャレンジできる。ー日本生命 法人職域FCー
というように募集要項に書いてありましたね。
これは決してウソではありません。
内勤のおおい本社にも営業上がりの人材は不可欠なのです。
本社・支社は総合職がおおいが、法人営業でもチャンスあり
基本的に本社・支社勤務は総合職がおおく。
あとは実務を担当する一般職・派遣がいるだけです。
しかし本社にも現場を知る営業あがりの人材は、不可欠なのです。
なぜかというと…
生命保険会社の総合職というのは、営業拠点の拠点長の仕事をしない限り、個人向けの生命保険営業を行うことはほとんどありません。
そこで。
生命保険商品を開発したり、営業用教材やチラシを作ったり、広告やキャンペーンを打ったりするのは総合職の仕事なので…
言ってしまえば現場が分かっていない、生命保険を売ったこともないような人たちが、こうした仕事をすることになるのです。
そのため、これではさすがにまずいということで。
法人営業のように営業経験を積んだ人にずっと営業の仕事をさせるのではなく、その営業経験や顧客目線、現場目線を活かして実行的な販売戦略を遂行するために、本社や支社の企画・執行・支援領域の仕事もさせています。
法人営業の激務ブラック度
つづいて法人営業の激務ブラック度について。
ここでは残業時間や仕事のきつさという意味での「労力(激務度)」と、「給与水準」の2つの組み合わせから、ホワイト度合い(あるいはブラック度合い)を解説します。
やや独断的ではあるが取材した生保マンを含め、他業界で働く知人・友人からヒアリングした情報をもとに各業界の「労力」と「給与水準」を1~10の10段階でランク付けし、20点満点でホワイト度をまとめてみました。
※スコアが高い=ホワイト、スコアが低い=ブラック
業界 | 労力(激務度)
1がきつく10が楽 |
給与水準
1が低く10が高い |
ホワイト度
合計 |
マスコミ | 1 | 10 | 11 |
生保 営業総合職 | 2 | 6~10 ※成果による |
8~12 |
総合商社 | 3 | 11 | 14 |
専門商社 | 5 | 7 | 12 |
金融(銀行) | 3 | 9 | 12 |
金融(証券) | 5 | 7 | 12 |
生保 総合職 | 8 | 8 | 16 |
生保 内勤 | 8 | 6 | 14 |
生保 一般職 | 10 | 6 | 16 |
生保 法人営業 | 5 | 6 | 11 |
金融(損保) | 7 | 7 | 14 |
メーカー | 8 | 6 | 14 |
公務員 | 10 | 1 | 11 |
このようにざっくりまとめてはみたものの。
当然おなじ業界でも、たとえば他社では作ることのできない製品を作っている会社と、大手の下請け的な仕事をメインに行う会社とでは評価は全く異なります。
さらに。
証券会社の中でも営業であれば徹夜で働くこともあるため労力が1~3、給与水準は成果報酬の場合が多く1~10と幅が大きくなるため、状況によってはブラックにもホワイトにもなり得ます。
内勤になれば勝ち組、営業を続けるのは辛い
ということで。
これまで再三のべてますが…
内勤になれれば年収も高く、仕事まったりで、さらには結婚・出産を経てもぜんぜん仕事に戻れます。
営業を続けるのは正直シンドイですね…
生命保険会社の職種別ブラック度
なお生保の中でも職種別のブラック、ホワイト度合いを示すと…
下記のようなイメージとなります。
(最もホワイト)
一般職の内勤 ≧≧≧≧≧≧ 営業職から内勤へ ≧≧≧≧ 総合職の内勤 ≧≧≧ 法人営業/エリア総合職 ≧≧≧ 生保レディ ≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧ 総合職の拠点長 ≧≧≧≧≧≧≧≧≧≧ 営業総合職の拠点長
(最もブラック)
拠点長というのは生保レディを束ねる営業拠点のトップのこと。総合職が拠点長になるときは経験を積ませる的な要素がつよく、長くて3年。そんなにキツく成果も求められない。拠点長にはほとんどの場合、営業総合職がなります。
自身が営業をして保険を販売するというものではなく、生保レディが保険を売れるようにマネジメントをすることが求められるポジション。
ある法人営業の一日のスケジュール例
より具体的にイメージするため。
法人営業として入社したある職員の一日のスケジュール例をご紹介します。
担当企業の昼休みの時間や就業時間外に訪問し、生命保険や損害保険の提案、給付金の手続きなどを行うのが毎日の活動です。
提案の際には顧客のライフプランやニーズを聞いて、目の前の顧客にとって本当に必要な保障は何か、保障は足りているのか、などを考えて顧客一人ひとりにオーダーメイドのプランニングを行います。
9:15 出勤
勤務地が首都圏になった場合、通勤ラッシュを避けるため就業時間が一般の会社に比べて遅いので、この時間までに出社すればOK。出社後は、一日のスケジュールやメール、誕生日を迎える顧客がいないか、などのチェックを行う。
10:00 朝礼
拠点長による全体朝礼が終わった後は、チームごとにミーティングを行う。
リーダーから連絡事項や活動指示を受けたり、一日の活動予定や提案する顧客の状況を報告する。また、チームだけではなく課全体でロールプレイング(提案の練習)を行い、知識の習得や提案スキルの向上を図る。
10:30 電話・訪問準備・事務処理
当日の約束の確認や、後日のアポイント取得に向け、電話がけを行う(いわゆるテレアポ)。
また、営業活動に必要な資料を用意したり、顧客のプランニングを行ったりして、訪問準備をする。
12:00 訪問先で活動
訪問先の企業の昼休みに様々な提案や情報提供をする。昼に受けた要望をもとにプランニングをして、夕方に再度訪問し説明することもある。
「保険の相談がしたい」「保険金・給付金などの請求をしたい」など、顧客からの要望にいつでも対応できるよう、頻繁に顔を出すことが重要になる。
13:00 昼食
訪問活動を終えてから、同期と一緒にランチをしたり、会社に戻ってデスクで弁当を食べる。ピークの時間を外すのでお店も混んでいなくてゆっくりできる。
15:00 リーダーとの打ち合わせ
営業拠点に戻ったら、昼の活動を振返り、リーダーに報告する。
顧客に提案したプランの修正について相談をし、今後の活動スケジュールなどに関する打合せを行う。
15:30 デスクワーク
リーダーからもらったアドバイスをもとに、顧客のニーズに合ったプランを作り直したり、夕方や翌日以降の訪問のための準備などをする。お昼よりも夕方のほうが時間を取ってもらいやすいので気合が入る。
17:00 顧客とのアポ
すでに生命保険に加入してもらっている顧客への訪問アポイントでは、契約内容の確認や、必要な事務手続き、給付金請求の対応などを行う。
ゆっくり相談したい顧客との面談も夕方のアポイントになる事が多い。
18:00 退社
仕事帰りにチーム員や友人と食事に行ったり、金曜日は合コンに行ってストレス解消することもある。
残業をする場合は原則20:00までしかできない。
このように法人職域FCの仕事は、内勤とは違って外に出る仕事で自由に活動できるので、時間の融通は結構ききます。
結果さえ出していれば、営業活動の合間におしゃれなカフェでのんびりしても、街に買い物に出かけても、マッサージに行っても、周りから文句を言われることはありません。
当然定時に退社してもまったく問題ありません。