「行う」の敬語変換:謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方

「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

~行う(おこなう) の謙譲語は「~いたす」

※「行う=する」と変換して謙譲語にしています。謙譲語「開催いたします」「実施いたします」などでも言い換えできるケースあり。

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

  1. 例文「新商品のデモをいたします」
    原文「デモを行う」
  2. 例文「お手荷物の検査をいたします」
    原文「検査を行う」
  3. 例文「予選会を開催いたします」
    原文「予選会を行う」

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「~いたします」とするのが一般的。

また、

「~いたす」の「~」にはホントにいろいろな語がはいります。上記はほんの一例です。

~行う(おこなう) の尊敬語は

①~される
②~なさる

※「行う=する」と変換して尊敬語にしています

いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、

  1. 例文「お客さまが新商品のデモをなさいます」
    原文「デモを行う」
  2. 例文「部長がお手荷物の検査をなさいます」
    原文「検査を行う」

として使います。

また、もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「~なさいます」「~されます」とするのが一般的。

ただし、

尊敬語の「~される」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なさる」「~なさいます」を使うほうが無難。まぁ使い方にもよるのですけど…

行う の丁寧語は「行います」

さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「行います」とすればOKです。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。

行う の謙譲語「いたす」使い方と例文

まずは「行う(おこなう)」の謙譲語「いたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも謙譲語とは?

念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

使い方

「行う(おこなう)」の謙譲語「いたす」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が~いたす」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  1. 例文「展示会をいたします」
    原文「展示会を行う」
  2. 例文「ワークショップをいたします」
    原文「ワークショップを行う」
  3. 例文「社員研修を実施いたします」
    原文「社員研修を行う」

のような感じで「自分が行う」ときにつかいます。例文③のように「実施いたす」「開催いたす」のような謙譲語に言い換えできるときもあります。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「○○部長が社員研修をいたします」

のような例文はダメ。

目上のヒトなり社外の相手が「行う」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「○○部長が社員研修をなさいました」とします。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「行う(おこなう)」の謙譲語「いたす」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「いたします」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

させていただく は「させてもらう」の謙譲語

ここで一つ注意点を。

「行う(おこなう)」の謙譲語を「させていただく」としているウェブサイトを見かけますが、これは100%間違いです。「させていただく」は「させてもらう」の謙譲語ですのでご注意を。

「させていただく」は敬語としては正しいです。

ただ、

「行う(おこなう)」の謙譲語だと思って多用していると相手に不快感を与えます。

たとえば何かの資料を相手に送りたいとき。

  • ×送付させていただきます
  • ×お送りさせていただきます

のような敬語フレーズを見かけることがありますが…間違い敬語ではないものの、あまりオススメしません。

させていただきます は「させてもらう」の謙譲語です。

ということは、

  • ×送付させていただきます=送付させてもらいます
  • ×お送りさせていただきます=送らせてもらいます

という意味になります。

で、

なぜダメかということですが…
「させてもらいます」には自分の意思を感じられないことが問題。

「資料などを送付する」のはあなたの意思で行っているハズ。それなのに「資料を送付させてもらいます」ではまるで資料を送るのに相手の許可がいるみたいでオカシイ。

この場合、ビジネスシーンにふさわしい敬語は…

  • 適切な謙譲語「送付いたします」
  • 適切な謙譲語「お送りいたします」
  • 適切な謙譲語「お送りします」

となります。

「させていただく」をビジネスシーンで多用するのはヤメておきましょう

例文

「行う(おこなう)」の謙譲語「いたす」「お・ご~する」「お・ご~いたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。

ホントに色々と使えます。

  1. ビジネスメールで「~を行う」とするシーン
    ・例文「入荷時、製品の受け入れ検査をいたします」
    ・例文「来る10月15日、新商品の展示会を開催いたします」
    ・例文「○○部長の送別会を開催いたしたく、以下、日程等の仔細につきご案内いたします」
    ・例文「来る10月15日、新商品の展示会を開催いたします」
  2. 疑問形「~行いましょうか?」とするシーン
    ・例文「お荷物、お持ちいたしましょうか?」
    ・例文「空港までお届けいたしましょうか?」
【補足】
・使い方は「~を行う(おこなう)」としたいときのビジネスメール、会話
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語。
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている

行う の尊敬語「~なさる」「お~なさる」「~される」使い方と例文

つづいて「行う(おこなう)」の尊敬語「~なさる」「お・ご~なさる」「~される」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも尊敬語とは?

念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。

注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。

使い方

「行う(おこなう)」の尊敬語「~なさる」「お・ご~なさる」「~される」の使い方は先にのべたとおり、

「目上の相手が~なさる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。

相手を立てる・うやまう・高める敬語が尊敬語であるため、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

そうすると、

  • 例文「部長が業績評価をなさいました」
    原文「業績評価を行う」
  • 例文「○○医師が手術をなさいました」
    原文「手術を行う」

のような感じで誰か対象となる「相手が行う」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「○○医師が手術をいたしました」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「~を行う」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。

「なさいます」「されます」どれを使う?

ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。

「行う(おこなう)」の尊敬語には、

  • ~なさる
  • ~される

と2パターンあります。

どれも正しい敬語なのですが「~される」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまいます。

ということで「~なさる」が無難な尊敬語フレーズ。ただしホントに文脈や組み合わせる言葉によります。違和感のあるフレーズは使わないこと。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

繰り返しにはなりますが、

「行う(おこなう)」の尊敬語「~なさる」「~される」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「~なさいます」「~されます」として使うとより丁寧です。

例文

「行う(おこなう)」の尊敬語「~なさる」「~される」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。

  1. 目上のヒトが「~を行う」としたいビジネスシーン
    ・例文「部長がゴルフコンペをなさいました」
    ・例文「部長が会議をなさいました」
  2. 目上のヒトに「~しますか?」と質問するビジネスシーン
    ・例文「部長、取引先の工場にはご訪問なさいますか?」
    ・例文「お食事になさいますか?それとも私になさいますか?」
  3. 目上のヒトに「~してください」とお願いするビジネスメール
    ・例文「ご連絡くださいますようお願い申し上げます」
    ・例文「ご案内いただきますようお願い申し上げます」
    ・例文「一度、弊社オフィスにご訪問いただければと存じます」
    ※「する」の尊敬語ではないものの、よく使うお願いの敬語フレーズ
【補足】
・使い方は「~を行う」としたいときのビジネスメール、会話
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語。
・ください は尊敬語「くださる」の命令形

他にもよく使う敬語の変換表

「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

謙譲語 尊敬語 丁寧語
受け取る  拝受する
拝受いたす
 お受け取りになる  受け取ります
来る  伺う
参る
参上する
 いらっしゃる
来られる
お見えになる
お越しになる
来ます
言う  申す
申し上げる
 おっしゃる
言われる
 言います
会う  お会いする
お目にかかる
 お会いになる
会われる
 会います
する  致す
(いたす)
 なさる  します
伝える  お伝えする
申し伝える
 お伝えになる
伝えられる
 伝えます
思う  存じる  お思いになる
思われる
 思います
訪問する  ご訪問する
ご訪問いたす
 ご訪問なさる
訪問される
 訪問します
行く  伺う
参る
参上する
 行かれる
お行きになる
 行きます
もらう  いただく  くださる  もらいます
「~れる」という尊敬語は受身や可能の「れる・られる」と混同しやすいため「お~なる」「お~なさる」を使うほうがベター。

行う の謙譲語・尊敬語はこう使う!

つづいて「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

×健康診断をいたしましたか?

「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

きわめて初歩的ではありますが…

謙譲語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「いたす」は謙譲語であるため、自分の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「健康診断をいたしましたか?」

は間違い敬語です。

上司や目上のヒトが行うのであれば

  • 正しい例文「健康診断をなさいましたか?」
  • 正しい例文「健康診断をされましたか?」

とするのが正解。

×私が検査をなさいますか?

「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

尊敬語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「なさる」は尊敬語であるため、相手の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「私が検査をなさいますか?」

は間違い敬語です。

こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。荷物を持ちましょうか?とするのであれば、

  • 正しい例文「私が検査をいたしましょうか?」

とするのが正解。

×社外のヒトにたいして「弊社の上司がプレゼンをなさいます」

「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

ウチ・ソトが逆転している敬語はダメ。社内のヒトのことを社外に伝えるときには、たとえ上司であっても高めてはいけません。ウチを低める謙譲語を使います。
  • NG例文(社外に対して)弊社の上司がプレゼンをなさいます

だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。

ということで、

上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。

  • 正しい例文(社外に対して)弊社の○○がプレゼンをいたします

とするのが正しい敬語。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「行う(おこなう)」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

何度もしつこいですが…

丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。

たとえば、

  • 行う の謙譲語「いたす」は「いたします」
  • 行う の尊敬語「〜なさる」「〜される」は「〜なさいます」「〜されます」

のようにするとより丁寧な敬語となります。

行う の謙譲語・尊敬語を使ったビジネスメール全文