「教える」の敬語|謙譲語と尊敬語、目上・ビジネスメールでの使い方

「教える・教えます」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

教える の謙譲語は

①お教えする
②お教えいたす

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

  1. 例文「部長、エクセルの使い方をお教えします」
    原文「部長にエクセルの使い方を教える」
  2. 例文「部長、エクセルの使い方をお教えしましょうか?」
    原文「エクセルの使い方を教えようか?」

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「お教えします」「お教えいたします」とするのが一般的。

ただ、

「教える」という行為はそもそもが上から下への行為であるため、ビジネスメールや目上のヒトに使うときには注意が必要。すばらしく丁寧に使うための方法は本文で解説します。

教える の尊敬語は

①お教えになる
②教えられる

※ あるいは類語として「ご教示くださる」も使える。

いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、

  • 例文「部長がゴルフをお教えになります」
    原文「部長がゴルフを教える」
  • 例文「部長がゴルフを教えられます」
  • 例文「部長がゴルフをご教示くださいます」

として使います。

ただし、

尊敬語の「~られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なる」を使うほうが無難。そうすると尊敬語は「お教えになる」「ご教示くださる」を使うのがベター。

またビジネスシーンでは「ご教示」を使うと素晴らしい敬語になるため、その点についてもふれておきます。

教える の丁寧語は「教えます」

さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「教えます」とすればOKです。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。

教える の謙譲語「お教えする・お教えいたす使い方と例文

まずは「教える」の謙譲語「お教えする・お教えいたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも謙譲語とは?

念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

使い方

「教える」の謙譲語「お教えする・お教えいたす」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が誰か対象となる目上のヒトにお教えします」のようにして自分の考え・行為・行動に使う謙譲語です。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して相手の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  • 例文「部長、パソコンの使い方をお教えします/いたします」
    原文「部長にパソコンの使い方を教える」
  • 例文「部長、パソコンの使い方をお教えしましょうか?/いたしましょうか?」
    原文「パソコンの使い方を教えようか?」

のような感じで「自分が教える」「自分が相手に教えようか?」というときにつかいます。

いっぽうでNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「部長がパソコンの使い方をお教えしました」

のような例文はダメ。

目上のひとなり第三者が「教える」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使います。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「教える」の謙譲語「お教えする・お教えいたす」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「お教えします」「お教えいたします」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

お教えします・いたします は目上の人に失礼?

繰り返しにはなりますが、

「教える」という行為はそもそもが上から下への行為であるため、ビジネスメールや目上のヒトに使うときには注意が必要。

だからと言って、

「お教えします」「お教えいたします」という謙譲語が目上のヒトやビジネスシーンで失礼にあたるかといえば、まったくそんなことはありません。

とはいえ、
敬語は相手が失礼だと感じたらそこでアウト。

疑わしきは罰する文化であるため、目上のヒトに不快感を与えないように丁寧なクッション敬語をつかうとよいでしょう。

「お教えします」を素晴らしく丁寧にするクッション敬語

謙譲語「お教えします」「お教えいたします」をもっと丁寧にするにはたとえば、

  • 例文「僭越(せんえつ)ながら、私がパソコンの使い方をお教えいたしましょうか?」
    意味「地位や立場をわきまえずでしゃばりますが、〜」
  • 例文「恐れながら、私がパソコンの使い方をお教えいたしましょうか?」
    意味「恐れ多いのですが、〜」
  • 例文「出過ぎた真似とは思いますが、私がパソコンの使い方をお教えしましょうか?」
    意味「でしゃばりとは思いますが、〜」

こんな感じで「自分の地位をわきまえずホントにでしゃばりなんだけど…私が教えようか?」というような表現にすると、すばらしく丁寧な敬語となります。

とくにビジネスメール・手紙・文書などのかしこまった敬語が好まれるシーンでは、かならず上記例文のようにクッション敬語を使いましょう。

【敬語の補足】
・「お教えする」よりも「お教えいたします」の方が丁寧。
・「いたしましょうか?」は「しましょうか?」で言い換えOK。
・「思う」は謙譲語「存じる」で言い換えするとより丁寧。

例文

「教える」の謙譲語「お教えする・お教えいたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。

  1. ビジネスメールで「目上・取引先・上司に何かを教える」としたい
    ・例文「誠に僭越(せんえつ)ながら、部長に変わりまして私が敬語の使い方をお教えいたします」
    ・例文「恐れながら、私が部長に新システムの使い方をお教えいたします。よろしければ、以下日程でそちらへ伺いますがご都合のほどいかがでしょうか」
    ・例文「出過ぎた真似とは存じますが、私がパソコンの使い方をお教えします。部長のデスクへ伺いたく、ご都合のよろしい日時をご連絡いただければと存じます」
  2. ビジネス会話で「目上・取引先・上司に何かを教えましょうか?」としたい
    ・例文「僭越(せんえつ)ながら、私がパソコンの使い方をお教えいたしましょうか?」
    ・例文「恐れながら、私がパソコンの使い方をお教えいたしましょうか?」
    ・例文「出過ぎた真似とは思いますが、私がパソコンの使い方をお教えしましょうか?」

※ ビジネスシーンによっては「説明いたします」「ご説明します・いたします」という謙譲語に言い換えできます。

【敬語の補足】
・使い方は「教える」とするときのビジネスメールや会話
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くしメールの受け手を高めている
・いただく は「もらう」の謙譲語
・存じる は「思う」の謙譲語
・伺う は「行く・聞く」の謙譲語。どちらの意味でも使う。

教える の尊敬語「お教えになる・教えられる」使い方と例文

つづいて「教える」の尊敬語「お教えになる」「教えられる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも尊敬語とは?

念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。

注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。

使い方

「教える」の尊敬語「お教えになる」「教えられる」の使い方は先にのべたとおり、

「目上の相手が誰かにお教えになる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。

相手を立てる・うやまう・高める敬語が尊敬語であるため、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

そうすると、

  • 例文「部長がゴルフをお教えになりました」
    原文「部長がゴルフを教える」
  • 例文「部長が新人にゴルフを教えられます」

のような感じで「目上の相手が教える」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「部長がエクセルの使い方をお教えいたします」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「教える」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。

「お教えになる」「教えられる」はどれを使う?

ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。

「教える」の尊敬語には、

①お教えになる
②教えられる

と2パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが「教えられる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため「①お教えになる」をつかうのが無難。

たとえば

「部長が私に手紙を送られました」

だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。

そこで

「部長が私に手紙をお送りになりました」

のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。まぁ組み合わせる語によっては「れる・られる」のほうが適切なシーンもありますが…

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

繰り返しにはなりますが、

「教える」の尊敬語「お教えになる」「教えられる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「お教えになります」「お教えになりました」として使うとより丁寧です。

ビジネスでは「ご教示」を使うのがGood

これまでの説明の全てをくつがえします。

「教える」の尊敬語は「お教えになる・教えられる」なのですが…じつはもっと素晴らしい「ご教示(ごきょうじ)」というフレーズがあります。

「ご教示」の意味は「教えること」であり、敬語は尊敬語「相手がご教示くださる」、謙譲語「自分がご教示いただく」として使います。ここで「くださる」は「くれる」の尊敬語。「いただく」は「もらう」の謙譲語です。

ということで、
先ほどの例文を「ご教示」を使って言い換えしてみると…

  • 例文「部長がゴルフをお教えになります」
  • 言い換え「部長がゴルフをご教示くださいます」

このように「ご教示」をつかえるようになると、ビジネス敬語上級者の仲間入りです。

→ 「ご教示ください」「ご教示願います」目上の人への正しい使い方

お教えになります は「お」ばっかりで聞き苦しい

「ゴルフをお教えになります」の問題は「をおお」と「お」の発音が3つも続いて、しゃべりにくい言葉になっているところにあります。

なんだか「お」ばかりになって見苦しいし、聞き苦しいのですよね。「ご教示」をつかったほうがスムーズに発音できますしカッコイイです。

積極的に使いましょう。

例文

「教える」の尊敬語「お教えになる」「教えられる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。

  1. ビジネスメールや会話で「相手が教える」として使う
    例文「部長がゴルフスウィングをお教えになります」
    例文「部長がとっておきの英語学習法をお教えになります」
    例文「部長がゴルフスウィングをご教示くださいます」
    例文「部長がとっておきの英語学習法をご教示くださいます」
  2. ビジネスメールや会話で「教えてください」として使う
    例文「ご教示のほど、何卒よろしくお願い申し上げます」
    例文「ご教示いただければ幸いです」
    例文「ご教示いただきたく存じます」
【敬語の補足】
・使い方は「相手が教える」とするときのビジネスメールや会話
・ご教示 は「教えること」の意味
・いただく は「もらう」の謙譲語
・存じる は「思う」の謙譲語
・伺う は「行く・聞く」の謙譲語。どちらの意味でも使う。

教える の丁寧語「教えます」使い方と例文

最後に「教える」の丁寧語「教えます」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

丁寧語はとても簡単で「です・ます」をつけるだけで完成します。

したがって使い方を例文でみていくと、

  • 例文「ゴルフのルールを教えます」
  • 例文「ゴルフクラブの使い方を教えます
  • 例文「海外ホテル予約の方法を教えます」

のように使います。

ビジネス会話であれば、これくらいの敬語レベルで差し支えありません。

ただし、

ビジネスメールや文書・手紙ではかしこまった敬語が好まれるため謙譲語「お教えします・いたします」あるいは類語としても使える「ご説明します・いたします」としましょう。

他にもよく使う敬語のまとめ表

「教える」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

謙譲語 尊敬語 丁寧語
受け取る  拝受する
拝受いたす
 お受け取りになる  受け取ります
見る  拝見する  ご覧になる
見られる
見ます
言う  申す
申し上げる
 おっしゃる
言われる
 言います
会う  お会いする
お目にかかる
 お会いになる
会われる
 会います
する  致す
(いたす)
 なさる  します
伝える  お伝えする
申し伝える
 お伝えになる
伝えられる
 伝えます
思う  存じる  お思いになる
思われる
 思います
行く  伺う
参る
参上する
 お行きになる
行かれる
 行きます
もらう  いただく  くださる  もらいます
いる  おる  いらっしゃる  います
読む  拝読する  お読みになる
読まれる
 読みます
考える  該当なし  お考えになる
考えられる
 考えます
送る  お送りする
お送りいたす
送付いたす
 お送りになる
送られる
 送ります
「~れる」という尊敬語は受身や可能の「れる・られる」と混同しやすいため「お~なる」を使うほうがベター。

教える の謙譲語・尊敬語はこう使う!

つづいて「教える」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

×部長がお教えいたします

「教える」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

きわめて初歩的ではありますが…

謙譲語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「お教えいたします」は謙譲語であるため、自分の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「部長がお教えいたします」

は間違い敬語です。

上司や目上のヒトが何かを教えるのであれば、

  • 正しい例文「部長がお教えになります」
  • 正しい例文「部長がご教示くださいます」

とするのが正解。

×私がお教えになりますか?

「教える」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

尊敬語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「お教えになります」は尊敬語であるため、相手の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「私がお教えになりますか?」

は間違い敬語です。

こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが「教える」であれば、

  • 正しい例文「私がお教えしましょうか?」
  • 正しい例文「私がお教えいたしましょうか?」

とするのが正解。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「教える」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

何度もしつこいですが…

丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。

たとえば、

  • 教える の謙譲語「お教えする・お教えいたす」は「お教えします・お教えいたします」
  • 教える の尊敬語「お教えになる」「ご教示くださる」は「お教えになります」「ご教示くださいます」

のようにするとより丁寧な敬語となります。

教える の謙譲語・尊敬語を使ったビジネスメール全文