「聞く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
聞く の謙譲語は…
① 伺う
② お聞きする
③ 拝聴する・お尋ねする
※「拝聴する」「お尋ねする」は厳密には類語
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、
- (自分が)つかぬことを伺いますが…
- (自分が)一点、お聞きしてもよろしいでしょうか
- (自分が)お尋ねしてもよろしいでしょうか
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「伺います・お聞きします・お尋ねします」とするのが一般的。
聞く の尊敬語は…
① お聞きになる
② 聞かれる
③ お耳に入る・お尋ねになる
※「お耳に入る・お尋ねになる」は類語
※「お聞きになられる・お尋ねになられる」は間違い敬語
いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 人事異動について(上司が)お聞きになりましたか?
- 会食の場所は聞かれましたか?
として使います。
ただし、
尊敬語の「~れる・られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なる」を使うほうが無難。そうすると尊敬語は「お聞きになる」を使うのがベター。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。
聞く の謙譲語「伺う・お聞きする・拝聴する」使い方と例文
まずは「聞く」の謙譲語「伺う」「お聞きする」「拝聴する」「お尋ねする」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
使い方
「聞く」の謙譲語「伺う」「お聞きする」「拝聴する」「お尋ねする」の使い方は先にのべたとおり、
「自分が誰か対象となる目上のヒトからなにかを聞く・尋ねる」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。相手に質問するときによくつかうフレーズですね。
そうすると、
- 正しい例文「つかぬことを伺いますが…トイレに紙は備え付けされていますか?」
- 正しい例文「東京駅までの道をお尋ねしたいのですが…」
のような感じで「自分が聞く・尋ねる」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長が東京駅までの行きかたを伺った」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「聞く」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長が東京駅までの道をお尋ねになった・お聞きになった」とします。
拝聴いたす は二重敬語だから間違い?
「聞く」の謙譲語というか類語には「拝聴する」「拝聴いたす」も使えます。
ここでひとつ問題が…
ただ、
わたしは「拝聴いたす」を使っても間違いではないと考えます。
なぜなら、
「拝聴」は謙譲表現ではあるものの謙譲語とまでは言えないから。
「拝聴いたす」を二重敬語で間違いだとするのであれば、おなじく謙譲表現をふくむ以下の表現もすべて二重敬語ですね…
- 承知いたしました
- 拝見いたしました
- 拝読いたしました
- 拝受いたしました
でも、これらの敬語はビジネスシーンではどの表現もフツーに使われます。
ということで、
「拝聴いたします」を使うか使わないかはご自身でお考えください。無責任ですみません…
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「聞く」の謙譲語「伺う」「お聞きする」「拝聴する」「お尋ねする」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「伺います」「お聞きします」「拝聴します」「お尋ねします」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。
お伺いする・お伺いいたす は間違い敬語
ここでひとつ注意点を。
「お伺いする」という間違い敬語はサラリーマンの50%くらいは使っているイメージなので、別に誰も突っ込んだりしませんけどね…
ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。
例文
「聞く」の謙譲語「伺う」「お聞きする」「拝聴する」「お尋ねする」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。
ホントに色々と使えます。
- 例文「一点、伺いたいことがございます」
例文「一点、お聞きしたいことがございます」
例文「一点、お尋ねしたいことがございます」
・使い方は質問のビジネスシーン
・意味はどれを使ってもおなじく「一点、聞きたいことがあります」
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている - 例文「つかぬことを伺いますが…こちらの商品は防水ですか?」
例文「つかぬことをお尋ねしますが…こちらの商品は防水ですか?」
例文「つかぬことをお聞きしますが…こちらの商品は防水ですか?」
・使い方は質問のビジネスシーン
・意味はどれを使ってもおなじく「つまらないことを聞きますが…」
・「つかぬこと」は自分の質問に対して「つまらない質問」とすることで謙る
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている - 例文「部長のご意見を伺いたく存じます」
例文「部長のご意見をお尋ねしたく存じます」
例文「部長のご意見をお聞きしたく存じます」
・使い方は質問のビジネスメール
・意味はどれを使ってもおなじく「部長の意見を聞きたいとおもう」
・思う の謙譲語「存じる」というフレーズをつかい、かしこまった表現にしている。ビジネスメールによく使う敬語フレーズ。
- 例文「部長のすばらしいスピーチを拝聴し、敬服いたしました」
・スピーチなどかしこまったビジネスシーンで使う
・敬服 の意味は「ひれ伏すほどに感動する」
聞く の尊敬語「お聞きになる・お尋ねになる・お耳に入る」使い方と例文
つづいて「聞く」の尊敬語「お聞きになる」「お尋ねになる」「お耳に入る」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
使い方
「聞く」の尊敬語「お聞きになる」「お尋ねになる」「お耳に入る」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手が何かをお聞きになる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 正しい例文「○○社長がお亡くなりになったとのこと、お聞きになりましたか?」
- 正しい例文「すでにお聞きになったかとは存じますが、わたしの友人が交通事故にあいまして…」
- 正しい例文「部長が東京駅までの行きかたをお聞きになった」
のような感じで「自分が聞く・尋ねる」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「一点、お聞きになりたいことがございます」
のような例文はダメ。
自分が目上のヒトに「聞く」としたいときには尊敬語ではなく、自分の行為を低めて相手を高める敬語(謙譲語)を使い「一点、伺いたいことがございます」とします。
お聞きになる・聞かれる どっち使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「聞く」の尊敬語には、
①お聞きになる
②聞かれる
と2パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが「聞かれる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため①お聞きになる をつかうのが無難。
たとえば
「交通事故の件、聞かれましたか?」
だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。
そこで
「交通事故の件、お聞きになりましたか?」
のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「聞く」の尊敬語「お聞きになる」「聞かれる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「お聞きになります」「お聞きになりました」として使うとより丁寧です。
例文
「聞く」の尊敬語「お聞きになる」「お尋ねになる」「お耳に入る」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- 例文「結婚の件、お聞きになりましたか?」
例文「○○部長の昇進の件、お聞きになりましたか?」
例文「○○部長のご不幸の件、お聞きになりましたか?」
・使い方はビジネス会話やメールで「目上のヒトが何かを聞く」というようにして使えるフレーズ。 - 例文「お聞きになったかとは存じますが、念のため仔細につきご連絡いたします」
・意味は「聞いたかとは思いますが、念のため詳細について連絡する」
・ビジネスシーンでは報告のために使えるフレーズ。
・ビジネスメールで使うとしたら、かしこまった文章が好まれる
他にもよく使う敬語の変換表
「聞く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
いらっしゃる おいでになる お越しになる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
聞く の類語と言い換え
聞く の類語と言い換えについて。
ビジネスシーンでも使える言い換え表現をざっくりまとめておきます。
尋ねる
聞く の類語・言い換え「尋ねる」
尋ねる の意味は「聞く」
謙譲語は「お尋ねする」、尊敬語は「お尋ねになる」。使い方など細かくはすでに登場しているため省略します。
質問する
聞く の類語と言い換え「質問する」。
謙譲語は「質問いたす」、尊敬語は「ご質問になる」
- 例文「質問いたします」
- 例文「部長がご質問になりました」
拝聴する
聞く の類語と言い換え「拝聴する」。
拝聴する の意味は「つつしんで聞く」
謙譲語は「拝聴いたす(二重敬語との説もあり)」、謙譲表現をふくむ語であるため尊敬語は該当なし。
- 例文「講演を拝聴する」
聞く の謙譲語・尊敬語はこう使う!
つづいて「聞く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
×部長、結婚の件につき伺いましたか?
「聞く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、結婚の件につき伺いましたか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトが何かを受け取ったのであれば、
- 正しい例文「部長、結婚の件につきお聞きになりましたか?」
とするのが正解。
×(私が)行きかたをお聞きになりたいのですが?
「聞く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)東京駅までの行き方をお聞きになりたいのですが?
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが道を尋ねたのであれば、
- 正しい例文(私が)東京駅までの行きかたを伺いたいのですが?
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「聞く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 聞く の謙譲語「伺う・お聞きする・拝聴する」は「伺います・お聞きします・拝聴します」
- 聞く の尊敬語「お聞きになる」は「お聞きになります・お聞きになりました」
のようにするとより丁寧な敬語となります。