「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
訪問する の謙譲語は
①ご訪問する
②ご訪問いたす
③伺う・参る・参上する
④お訪ねする
⑤お訪ねいたす
※「伺う・参る・参上する」は「行く」の謙譲語であるが、「訪問する」を「行く」と考えれば成り立つ。④⑤は訪問するを「訪ねる」と考えたときの謙譲語。
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、
- (自分が)明日にお訪ねします
- (自分が)明日にお訪ねいたします
- (自分が)明日に伺います
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「ご訪問します・ご訪問いたします・お訪ねする・お訪ねいたします・伺います」とするのが一般的。
また、
「お訪ねする・いたす」は「お尋ねする=聞く」と同音意義語でありややこしいため、謙譲語としてもっともよく使うのは「③伺う」ですね。「①ご訪問する」「②ご訪問いたす」としても差し支えありませんが、あまり見たことのない敬語フレーズです。
訪問する の尊敬語は
①訪問される
②訪問なさる
③訪ねられる
④お訪ねになる
※「お訪ねになられる」は間違い敬語
※③④は「訪ねる」の尊敬語であるが「訪問する」を「訪ねる」と考えれば成り立つ
いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 展示会には部長も訪問されますか?
- 展示会には部長も訪問なさいますか?
- 展示会には部長もお訪ねになりますか?
として使います。
ただし、
尊敬語の「~れる・られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なる」を使うほうが無難。そうすると尊敬語は「②訪問なさる」「④お訪ねになる」を使うのがベター。
訪問する の丁寧語は「訪問します」
さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「訪問します」とすればOKです。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。
訪問する の謙譲語「ご訪問する・ご訪問いたす・伺う」使い方と例文
まずは「訪問する」の謙譲語「ご訪問する・ご訪問いたす・伺う」「お訪ねする・お訪ねいたす」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
いたす は「する」の謙譲語
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
使い方
「訪問する」の謙譲語「ご訪問する・ご訪問いたす・伺う」「お訪ねする・お訪ねいたす」の使い方は先にのべたとおり、
「自分が誰か対象となる目上のヒトのところへご訪問する」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。
そうすると、
- 正しい例文「明日に伺います」
- 正しい例文「明日に参ります」
- 正しい例文「明日にご訪問します」
- 正しい例文「明日に(ご)訪問いたします」
のような感じで「自分が行く」ときにつかいます。ちなみに「お・ご〜いたす」の「お・ご」はあってもなくても謙譲語としてなりたちます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「取引先が当社に伺いました」
のような例文はダメ。
目上のヒトなり社外の相手が「来る」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「取引先が当社にいらっしゃいました」とします。
お伺いいたします・お伺いする は二重敬語だから間違い!
謙譲語「伺う」にさらに謙譲語「お~いたす」「お~する」をつかうと「お伺いいたす」「お伺いする」という謙譲語になります。
ここでひとつ問題が…
おなじように以下の謙譲語も二重敬語となりNG。
- 間違い敬語「お伺いしたい」
→ 正しくは「伺いたい」 - 間違い敬語「お伺い」
→ 正しくは「伺い」
でも、これらの敬語はビジネスシーンではどの表現もフツーに使われます。ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。
ということで、
間違っていても突っ込まれることは少ないとは思いますがお気をつけください。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「訪問する」の謙譲語「ご訪問する・ご訪問いたす・伺う」「お訪ねする・お訪ねいたす」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「伺います」「参ります」「ご訪問します」「ご訪問いたします」「お訪ねします」「お訪ねいたします」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。
「ご訪問する・お訪ねする」よりも「伺う」をよく使う
「訪問する」の謙譲語「ご訪問する・ご訪問いたす・伺う」「お訪ねする・お訪ねいたす」は一体どれを使うべきかについて少し。
ご訪問する・お訪ねする は「訪問する」「訪ねる」の謙譲語。
伺う は「行く」の謙譲語。
ということで違いは「行く」なのか「訪問する・訪ねる」なのか、ということになります。
意味の違いを考えてみても…とくにありません。
なぜだか知らないのですけど「伺う」をよく使います。単に「伺う=行く」のほうが意味の幅もひろくて使い勝手がいいというだけの理由じゃないかと。
例文
「行く」の謙譲語「伺う・参る・参上する」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。
ホントに色々と使えます。
- ビジネスメールで「自分が行く」とするシーン
・例文「よろしければ10月10日に貴社へ伺いたく存じます」
・例文「よろしければご挨拶かたがた伺いたく存じます」
・例文「承知しました。それでは明日14時に伺います」
・例文「一度ご挨拶かたがたご訪問いたしたく存じます」 - 疑問形「行ってもいい?」とするシーン
・例文「明日に伺ってもよろしいでしょうか?」
・使い方はアポイントなどのビジネスメール、会話
・意味はどれを使ってもおなじく「いきます」
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語。
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている
訪問する の尊敬語「ご訪問なさる・訪問される」使い方と例文
つづいて「訪問する」の尊敬語「ご訪問なさる・訪問される」「訪ねられる・お訪ねになる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
される・なさる は「する」の尊敬語。「お・ご~なさる」とする場合が多い。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
使い方
「訪問する」の尊敬語「ご訪問なさる・訪問される」「訪ねられる・お訪ねになる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手がどこかに訪問される」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 正しい例文「部長が金閣寺をご訪問なさいました」
- 正しい例文「部長が金閣寺を訪問されました」
- 正しい例文「部長は本日、取引先にご訪問なさいますか?」
のような感じで誰か対象となる「相手が訪問する」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長は本日、取引先に伺いますか?」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「訪問する」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。
訪問なさる・訪問される・他 どれを使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「訪問する」の尊敬語には、
- ご訪問なさる
- 訪問される
と2パターンあります。くわえて「訪問する」を「訪ねる」と考えると以下も尊敬語として使えます。
- お訪ねになる
- 訪ねられる
どれも正しい敬語なのですが「訪問される・訪ねられる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまいます。
ということで「ご訪問なさる」「お訪ねになる」が無難な尊敬語フレーズ。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「訪問する」の尊敬語「ご訪問なさる・訪問される」「訪ねられる・お訪ねになる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「ご訪問なさいます」「お訪ねになります」として使うとより丁寧です。
例文
「訪問する」の尊敬語「ご訪問なさる・訪問される」「訪ねられる・お訪ねになる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- 目上のヒトが「行く」とするビジネスシーン
・例文「部長が取引先にご訪問なさいました」
・例文「部長が取引先にお訪ねになりました」
・例文「取引先が弊社へご訪問なさいました」 - 目上のヒトに「訪問しますか?」と質問するビジネスシーン
・例文「部長、取引先の工場にはご訪問なさいますか?」
・例文「ついでに北海道へもご訪問なさいますか?」 - 目上のヒトに「訪問してください」とお願いするビジネスメール
・例文「ご訪問くださいますようお願い申し上げます」
・例文「ご訪問いただきますようお願い申し上げます」
・例文「一度、弊社オフィスにご訪問いただければと存じます」
「来る」の尊敬語「いらっしゃる・お越しになる・お見えになる・来られる」を使う。
他にもよく使う敬語の変換表
「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
来る | 伺う 参る 参上する |
いらっしゃる 来られる お見えになる お越しになる |
来ます |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
訪問する | ご訪問する ご訪問いたす |
ご訪問なさる 訪問される |
訪問します |
行く | 伺う 参る 参上する |
行かれる お行きになる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
訪問する の謙譲語・尊敬語はこう使う!
つづいて「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
×部長、A社にご訪問しましたか?
「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、A社にご訪問しましたか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトが行くのであれば
- 正しい例文「部長、A社にご訪問なさいましたか?」
- 正しい例文「部長、A社にお訪ねになりましたか?」
- 正しい例文「部長、A社に行かれましたか?」
とするのが正解。
×(私が)A社にご訪問なさる
「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)A社にご訪問なさる
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが行くのであれば、
- 正しい例文(私が)A社に伺いました
- 正しい例文(私が)A社にご訪問しました
- 正しい例文(私が)A社にご訪問いたしました
とするのが正解。
×社外のヒトにたいして「上司が以前 御社の工場へご訪問なさいました」
「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
- NG例文(社外に対して)上司が以前 工場へご訪問なさいました
だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。
ということで、
上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。
- 正しい例文(社外に対して)上司の○○が以前 御社の工場へご訪問いたしました
- 正しい例文(社外に対して)上司の○○が以前 御社の工場へ伺いました
とするのが正しい敬語。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「訪問する」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 訪問する の謙譲語「ご訪問する・いたす・伺う」は「ご訪問します・ご訪問いたします」「伺います・伺いました」
- 訪問する の尊敬語「ご訪問なさる・お訪ねになる」は「ご訪問になります・お訪ねになります」
のようにするとより丁寧な敬語となります。