「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」どっち使う?違いと使い分け

「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」どっちを使うべき?
という就活やビジネス文書での疑問を解決するための記事。

まずは結論として
就活のインターンシップお礼状にかぎらずビジネス文書において「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」を使い分けする必要はありません。

どちらを用いても違いはなく丁寧な表現であり、おなじように使えます。

その根拠を知るために
基本となる意味、使い方を復習しておきましょう。

▼ 拝啓・敬具の意味と使い方

  • 拝啓(読み:はいけい)の意味は「うやまって申し上げます」
    ・使い方はビジネス文書や手紙の挨拶で冒頭につかう
    ・拝啓 (文章) 敬具 でひとつのセットとなる
  • 敬具(読み:けいぐ)の意味は「うやまって(最後に)添え申します」
    ・ビジネス文書や手紙の挨拶で結びにつかう
    ・拝啓 (文章) 敬具 でひとつのセット

▼ 拝啓・敬具の意味と使い方

  • 謹啓(読み:きんけい)の意味は「つつしんで申し上げます」
    ・使い方はビジネス文書や手紙の挨拶で冒頭につかう
    ・謹啓 (文章) 謹白 でひとつのセットとなる
  • 謹白(読み:きんぱく)の意味は「つつしんで申し上げます」
    ・ビジネス文書や手紙の挨拶で結びにつかう
    ・謹啓 (文章) 謹白 でひとつのセット

こんな感じの意味であるため、
「どちらを使ったとしても丁寧な表現である」ということが言えます。

また言葉で説明するとややこしいため、
よく使われるビジネス文書の例文で見るとこんな感じ。

▼例文「ビジネス文書での拝啓&敬具・謹白&謹啓」

本社移転のお知らせ

拝啓(または謹啓) 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
さて このたび弊社は業務拡大に伴い 9月1日より本社を下記に移転することになりましたので 謹んでご案内を申し上げます
これを機に 皆様の信頼にお応えできるよう倍旧の努力をしてまいる所存でございます
今度とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます
まずは略儀ながら 書中をもちましてご挨拶申し上げます

敬 具
または 謹 白 

 平成29年8月吉日

株式会社就活
代表取締役 就 活 一 郎

  1. 業務開始日   平成29年9月1日(金)
  2. 新 住 所   〒123-4567 東京都ー
  3. T E L   03-xxxx-xxxx
  4. F A X   03-xxxx-xxxx
  5. ア ク セ ス   JR東京駅・八重洲北口より徒歩5分

以 上 

こんな感じでつかうと素晴らしいビジネス文書となります。

ここで使い方のポイントは大きく以下6つ。

  1. 正式なビジネス文書には句読点を使わないが…
    ・よこ書きの場合にはどちらでもよい
    ・たて書きでは句読点を使わないのが一般的
  2. 拝啓 or 謹啓 のあとは改行しないのが普通
    ・たて書き、よこ書きともに改行しないのが普通
    ・位置は縦書き=上寄せ、横書き=左寄せ
  3. 拝啓 or 謹啓 の後ろは1文字スペース
    ・改行をせず、1文字全角スペースを入れて書き始める
  4. 「敬 具 」「謹 白 」として空白をつかうが…
    ・たて書き、よこ書きともに空白はなくてもよい
    ・位置は縦書き=下寄せ、横書き=右寄せ
  5. 「拝啓・敬具」はセットでつかう
    ・拝啓(文章)謹白 のような使い方はしない
  6. 「謹啓・謹白」はセットでつかう
    ・謹啓(文章)敬具 のような使い方はしない

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、くわしくは本文中にて解説していきます。

※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。

拝啓・敬具よりも謹啓・謹白のほうが丁寧?なぜ?

ビジネスマナーを解説するウェブサイトにありがちな間違いについて。

要約すると以下のように拝啓・敬具と謹啓・謹白の違いが解説されています。

【よくある間違った解説】
謹啓は拝啓よりも丁寧な表現であり、目上の人に送る手紙・改まった手紙に用いる。

わたしもふくめて
ビジネスマナーを解説するウェブサイトがうさん臭く感じるのは…

なんでその結論になるの?
という点がまったく省略されているから…

で、
ウェブサイトを隅々まで読んでも、例のごとくなにひとつ根拠らしいものが書かれていない。

これって詐欺に近いような…
結論を導きだした根拠とか理由って、どんなときにも必要だと思うのですよね。

就活にかぎらず、どんなときにも「なぜ?」を考えよう

「AよりBの方が丁寧だ!」

って言われても

「なぜ?」

っておおかたの人は感じることでしょう。
就活であればより一層「なぜ?」の部分を考えることが重要。

「なぜ当社を志望しているのですか?」

「なぜそう考えるのですか?」

という質問が就活・転職の面接ではおおく飛んできます。ここで「なぜ?」を考えられない人は内定を得ることがとても難しくなるでしょう。

したがって
就活生にかぎらずビジネスパーソンは、どんなときにも「なぜ?」を考えヒトにわかりやすく説明するスキルをみがくことが必要。

  • なぜ?を考える勉強 >> 覚えるだけの勉強
    ・なぜ?を考えると周辺分野に応用できる。
    ・覚えるだけの学習では似たような質問がきたときに対応できない、周辺分野への応用ができない。

応用に強いヒト vs. 記憶するだけのヒト

どちらが社会人にとって必要なスキルか?
明白ですね。

偉そうに語っちゃいましたが…
ホントに重要なことなので実践しましょう。

「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」の違い、使い分け方

さて前置きが長くなりましたが…

「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」の違いは?

使い分け方はどうする?
という疑問にたいする考察をしていきましょう。

拝啓と謹啓の違いは「拝む」「謹む」のニュアンス

拝啓と謹啓で違いがあるとすれば…

「拝(はい・おがむ)」

「謹(きん・つつしむ)」

のニュアンスの違いだけなのですよね。

じゃあ具体的にどう違うのか?をみていくと…

  • 拝は「①おじぎ」「②神仏をおがむ、敬意をもって見る」の意味
    例:礼拝、拝金主義、拝受
  • 謹は「①細かく気を配る」「②相手に対して敬意を表す語。つつしんで」の意味
    例:謹慎、謹賀新年、謹呈

ということで
「拝」「謹」のどちらとも相手に対して敬意をあらわす語だということが言えます。

つまりニュアンスの違いはあれど、
敬意という点においてはどちらも大した違いはありません。

ちなみに
「啓」の部分はどちらも同じ。

「啓」という言葉は今でこそ「啓発・啓蒙」などのような熟語に使われますが、もともとの由来には「言う」の謙譲語「啓す(もうす)」という意味もあります。

昔ばなしですが
「申す・白す・啓す」はすべて同じく「もうす」として使われていたようです。

敬具と謹白の違いは「敬う」「謹む」のニュアンス

つづいて敬具と謹白の違いについて。

違いがあるとすれば…

「敬(けい・うやまう)」

「謹(きん・つつしむ)」

のニュアンスの違いだけなのですよね。

じゃあ具体的にどう違うのか?をみていくと…

  • 敬は「①うやまい尊ぶ」「②相手に対して敬意を表す語」の意味
    例:尊敬、敬服、敬意
  • 謹は「①細かく気を配る」「②相手に対して敬意を表す語。つつしんで」の意味
    例:謹慎、謹賀新年、謹呈

ということで
「敬」「謹」のどちらとも相手に対して敬意をあらわす語だということが言えます。

つまりニュアンスの違いはあれど、
敬意という点においてはどちらも大した違いはありません。

ちなみに…

敬具 につかわれている「具」という言葉は今でこそ「家具・道具・寝具」などのような熟語に使われますが、もともとの由来には「具す(ぐす)= 添える」という意味もあります。

謹白 につかわれている「白」という言葉は今でこそ「潔白・白い」などのような色をあらわす熟語に使われますが、もともとの由来には「白す(もうす)= 言う の謙譲語」という意味もあります。

「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」に違いは無い

これまでの考察から言えるのは…

「拝啓・敬具」

「謹啓・謹白」

それぞれの違いは言葉のもつニュアンスの違い。

敬意の度合いというか、丁寧度の違いはなにも無い。

ということが分かります。

それなのになぜ、
謹啓・謹白のほうが拝啓・敬具よりも丁寧だと言えるのか?

間違った解説をしているヒトに教えてもらいたいものですね。
(問い合わせフォームすらも無いとは思いますけど…)

【就活】インターンシップのお礼状には「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」どちらを使ってもよい

とくに就活において。
インターンシップやOB訪問のお礼状を出すとき。

「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」のどちらを使うべきか、悩む就活生もいらっしゃることと思います。

わたしの結論としてはながながと解説してきたとおりで
「どちらを使ってもよい」となります。

ただ一般的によく使われるのは「拝啓・敬具」のほうですね。

そもそも営業経験の長いわたしですら
「謹啓・謹白」という表現はつかったことがありません。

就活生のあなたが営業マンの私よりも気をつかわなければならない、ってことは絶対にあり得ないでしょう。

ですから
ふつうに「拝啓(文章)敬具」としてください。

正しい使い方はココでは長くなるため省略します。
キッチリまとめていますので、よろしければ別の記事をご参照ください。

【参考】「拝啓・敬具」「記」の意味とビジネス文書での使い方・例文

そもそもインターンシップでお礼状をだす必要はない、お礼メールで十分

そもそもインターンシップにお礼状は必要ない、という話。

おそらく大学の就活科とかで「お礼状」を書くように指導されているのかとは思いますが、時間のムダなので「お礼メール」だけで構いません。

このように語る理由はざっくり以下3つ。

  1. お礼状を出したからといって選考には何も関係しないから
    ・お礼状は確かに「お礼メール」よりも丁寧だし、貰ったらすこしは嬉しい
    ・でも丁寧だからといって選考に有利となるのか?と聞かれると答えは「No」
    ・就活生みんながお礼状を出すなら「お礼メール」にしたほうが目立つ
    ・就活ではヒトと違うことをするほうが評価されやすい
  2. お礼状を出すのにはとても時間かかる
    ・封筒、便箋えらびとか
    ・間違えたらやり直しとか
    ・本文の書き方とか
    ・切手の貼り方とか
    ・宛名の書き方とか
  3. インターンシップでは「使えるか・使えないか」を見られている
    ・たとえ立派なお礼状を送ったとしても、あなたの評価がひっくり返ることはない
    ・なぜならインターンシップ中に品定めは終わっているから

それでもインターンシップのお礼状をどうしても出したい!!

というのでしたら否定はしません。
でも就活生のみんながやることを同じようにやっても、評価は得られないでしょう。

おっさん営業マンですら、お礼状を自筆で書いたことは一度もない

むしろ
おっさん営業マンですらお礼状を自筆で書くなんて、今までやったことありません。

すべて「お礼メール」で済まされます。

それでも公式なビジネス文書が必要なとき、たとえば「就任挨拶」「退任挨拶」もあります。でもそれって実はぜ〜〜んぶ、外注化されているのです。

ビジネス文書作成を専門としている会社に丸投げして「はい終わり」。

社会人ですらこんな感じです。

なのになぜ社会人でもない就活生が、
お礼状をわざわざ自筆で書く必要あるのでしょうか?

わたしは絶対に必要ないと思いますねぇ〜。

ということで、
お礼メールになびいてしまった就活生はコチラをご参照ください。

【参考】「インターンシップお礼メール」を完璧にする書き方 – 例文