就職活動生と転職者のために化学業界の動向と将来性について、一般的な見解の誤りを正します。
自分の考えが100%正しいとは思いませんがそれにしても既存メディアは無責任。無知なのをいいことに書きたい放題、言いたい放題ですね。
現場を見たことのないテレビのコメンテーターも大学教授も新聞記者も「こいつら何も分かってねぇ…」というレベル。
化学業界の動向と将来性を語る前に営業現場で10年ほど鍛えて頂きたいものです。それでは前置きはここまでにして本題に入っていきますね!
【誤】中国、韓国勢の技術コピーで追いつかれる
【正】↑技術力の無い化学素材メーカーの言い訳
「中国、韓国勢に押されてビジネスが上手くいきませんでした」こんなのは技術力のない化学素材メーカーの単なる言い訳。シャープやソニー、パナソニックのテレビと化学素材メーカーの技術を一緒にしてもらったら困る。
分かりやすく、各社のコアビジネスがどれだけ苦労して今のポジションを獲得しているか例に出します。
- 日東電工:今の偏光板ビジネスを軌道に載せるのに20年
- 積水化学工業:PVB関連事業で今の地位を確立するのに20年
- 日本ゼオン・日本合成化学工業・クラレ・JSR・富士フィルム:液晶パネルむけ特殊フィルムを開発するのに20年以上
- 東レ:20年以上前からコツコツと炭素繊維を開発
日本の優秀な研究員、工場ワーカー、営業マンの力を集結しても開発・生産に20年以上かかるのです。中国人にはこんなこと不可能ですし、日本から技術者をヘッドハントするなら工場の現場オペレーターと研究開発担当を全員引き抜かないとダメ。
それを実施したとしても特許に守られている。つまり付加価値の高い化学素材は簡単にコピーできません。
「有機化学は、あいまいの科学」と言われている通り、実はなぜAという商品ができるのか誰も分からないのです。全ては想像の世界。
作っている本人が分かっていないのですから、コピーのしようがないという言い方が正しい。気の遠くなるほどの試行錯誤を重ねた上でようやく商品が完成するのです。中国人や韓国人には液晶テレビのような「AとBとCを組み立てたら出来上がり」という単純な商品しか作れません。
【誤】中国の製造コストには太刀打ちできない
【正】中国は世界で最も製造コストの高い場所
中国勢は赤字垂れ流し。一見コストが安いから安売りできると思われがちだが、中国の石油化学品製造コストは世界で最も高い。こちらも例を出して証明しましょう。
- 信越化学工業が中国に塩ビ工場を作らないのはなぜ?
- 積水化学工業が中国にPVB樹脂工場を作らないのはなぜ?
- 旭硝子が中国に化学品プラントを作らないのはなぜ?
- クラレが中国に化学品プラントを作らないのはなぜ?
- 日東電工が組み立て工程の工場しか作らないのはなぜ?
現場たたき上げの経営者はみんな分かっているのです。中国に石油化学プラントを作ってもコストが高くてペイしないということを。これを知らず中国に進出した頭の悪い韓国大手化学メーカー、LG化学と韓火化学は現地で赤字垂れ流し状態。
どことは言いませんが日系化学メーカーも当てはまる企業あり。
中国は製造コストが高い上に品質も悪いとあってはどうしようもない。住宅、株バブルと同じく崩壊したら手をつけられないほどの負債が残る。
中国うんぬんは業績の悪い化学メーカーが使う単なる言い訳です。
結局、安い人件費で加工だけやらせれば後は用無し。肝心な原料やノウハウが必要な部分は日本や法律が通用する先進国で作っている。*ただし商品の性質によります。
【誤】中国需要に頼る日本の化学メーカー
【正】アメリカ需要に頼る日本
もともと日系メーカーは中国などまるで眼中にない。売れるだけ売って稼げるだけ稼いだら良し。中国メーカーがどれだけ潰れようが知ったことではない。中国が終わったら需要の中心がインドや東南アジア、アフリカに移るだけの話。
中国で消費される化学素材はその後、iphoneなどの形となってアメリカや日本などの先進国に再輸出されるのです。つまり最終的には先進国の需要に頼っているということ。中国の内需は安かろう・悪かろうで日系企業は入り込む余地がない。
それに中国が頭打ちになることなんて10年前から分かっていた。決算数字が悪い企業の言い訳に使われているだけ、その間にインドや他の伸びる地域で営業活動をしてこなかった企業側の怠慢です。
【誤】新規商品・新規事業が出ない
【正】新規商品は出ているが目立たないだけ
日系化学素材メーカーは既存事業であっても改良と開発を真面目にやる会社が多い。そうした日々の積み重ねによって付加価値の高い商品を生み出してきた結果が今の好業績です。
既存の改良品も立派な新商品。BtoBのビジネスなので単に目立たないだけでiphone級の発明は至るところにあります。
ただし本当に新しい素材・新規材料は出なくて当たり前。既に完成された学問と言われている有機、無機化学の世界において真新しい発明など期待してはダメ。
日系化学素材メーカーは既存ポリマーの改良と新規用途開拓、途上国での拡販によってこれからも伸びていく産業でしょう。
石油化学業界だけに当てはまる事項です。
他の業界は分かりませんが、少なくとも化学業界の実態はこういった感じです。
化学素材メーカーは日本の全産業で最も将来性がある
最後に結論です。
化学業界は他産業と比べてグローバルに展開しているので世界のGDP成長率と同じように伸びます。つまり将来性あり。信憑性を出すために他の産業が抱える弱点をざっくり箇条書きにします。
- 商社業界;資源ビジネスに頼りすぎ。専門商社は日系メーカーが儲からなくなってきたら真っ先に切られる運命。
- IT業界;日本だけのドメスティックなビジネス。人口減少で市場は縮小していく運命、すぐに頭打ちとなる。
- ゲーム業界;上記と同じ
- 各種サービス業界;上記と同じ
- アパレル業界;上記と同じ
- 金融、証券業界;グローバル展開が遅すぎてダメ
- 電機メーカー業界;中国、韓国メーカーに真似されて終わり
- 部品メーカー、部材メーカー;将来性あり。化学メーカーと似たような部分がある。
- 医療機器メーカー業界;不明
- 医薬業界;グローバル展開が課題。日系は規模が小さすぎて話にならない。
- 機械メーカー;日系企業にべったりついていけば生き残る
- 自動車メーカー;将来性あり。
大学3年、就活間近の旧帝大生です。
いつも「この人すごいなあ」と思いながら記事読んでます。
とても参考にしているので、これからもがんばってください。