拝見(はいけん)と拝読(はいどく)の意味と違い・使い分けについて。100%完璧な答えを提示する記事。
まずは結論。
「拝見 vs 拝読」はどちらも敬語(謙譲語)ですがそもそもの意味が違います。
●「拝見する」は「見る」の意味。
「見る」に「拝」をくっつけた敬語(謙譲語)であるため、ニュアンスとしてはもっと丁寧で「つつしんで見る」の意味となります。「見る」よりもかしこまった感じの敬語とお考えください。
いっぽう。
●「拝読する」は「読む」の意味。
「読む」に「拝」をくっつけた敬語(謙譲語)であるため、ニュアンスとしてはもっと丁寧で「つつしんで読む」の意味となります。「読む」よりもかしこまった感じの敬語とお考えください。
したがって使い方としては…
ホームページや広告などを「見ました!」とするときには「拝見しました/拝見いたしました」というように「拝見」をつかいます。
いっぽうで。
本や資料・メールなどを「読みました!」とするときには「拝読しました/拝読いたしました」というように「拝読」をつかいます。
なお使い分けは…
「見ること=拝見」と「読むこと=拝読」のどっちが日本語としてふさわしいのかをまず考えましょう。そうすれば自ずと答えにたどり着けるでしょう(くわしくは本文にて)。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
ここからはより詳しく「拝見」「拝読」それぞれの意味と違い、使い分け、正しい使い方についてビジネスメールの例文つきで解説していきます。
※長文になりますので時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
“拝見と拝読”の違いまとめ
すでに冒頭で「拝見」と「拝読」の違いについて解説しましたので、ここではまとめとして①意味の違い、②使い方の違い、③使い分け方について表をつかって整理しておきます。
①意味の違い
意味の違い | |
---|---|
拝見 はいけん |
・見ることをへりくだっていう語。
・つまり「見ること」の意味の謙譲語であり |
拝読 はいどく |
・読むことを、その筆者を敬っていう謙譲語。
・つまり「読むこと」の謙譲語であり ・本や資料の筆者を立てるためにつかう |
【注意点】
※「拝見」は送り主を立てるためにつかいますので、送り主を立てる必要のないときにはつかいません。
※「拝読」は著者を立てるためにつかう敬語です。たとえばお客さんの前で自分の上司が書いた本を「拝読しました」とするのは間違い。お客さんではなく上司を立ててしまうことになります。
②使い方の違い・使い分け
使い分けは「見ること=拝見」と「読むこと=拝読」のどっちが日本語としてふさわしいのかをまず考えましょう。
たとえば。
テレビは見るものであって読むものではなく、本は読むものであって見るものではなく…といった具合に考えましょう。
どちらも使えそうであればあえて使い分けする必要はありません。以下まとめとなりますので、ご参考にどうぞ。
①「拝見・拝読」のどちらをつかっても違和感のない例
- メール『メール拝読しました or メール拝見しました』
- 新聞『新聞で拝読しました or 新聞で拝見しました』
- 資料『資料を拝読しました or 資料を拝見しました』
- カタログ『カタログを拝読しました or カタログを拝見しました』
- 書類(見積など)『契約書を拝読しました or お見積もりを拝見しました』
②「拝見」あるいは「拝読」どちらかだけ適用する例
- ホームページ/WEBサイト『ホームページを拝見しました』
- 広告『求人広告を拝見しました』
- テレビ『テレビで拝見しました』
- 本『本を拝読する』
- 論文『論文を拝読しました』
- 記事『記事を拝読しました』
③ただし「論文で拝見しました」「記事で拝見しました」は正しい
●ただし!ひとつ重要な追記を。
論文なりブログ記事で知りました!というときには「拝見=見ること」を用いて「論文(記事)で拝見しました」としても正しい日本語となります。
なぜなら。
「見る」は「視覚的に見る」という意味以外にも「読んで知る」の意味もあるから。論文で読んで知りました、という意味で「論文(記事)で拝見しました」とするのはなんら問題ありません。
【補足】
※メールや資料は拝読なのか拝見なのか?という点についての考察は次項にて。
※ 「~いたしました」は「~する」の謙譲語”いたす”に丁寧語”ます”の過去形「ました」をくっつけた敬語。「~しました」とするよりも丁寧です。
③拝見しましたか?拝読しましたか?は間違い敬語
「拝見」「拝読」はどちらも謙譲語であるため基本的には自分の行為につかい、上司なり目上・取引先など相手の行為にはつかいません。
「資料を拝見しましたか?」「本は拝読しましたか?」のような使い方は間違い敬語ですのでご注意を。
こんなときには。
「資料はお受け取りになりましたか?/お読みになりましたか?」というような敬語をつかうのが正解です。
メールや資料は「拝見・拝読」どっちを使う?
繰り返しにはなりますが…重要なので掘り下げます。
「拝見」「拝読」の使い分けがややこしく感じるのは…たとえばメールや資料は「読んだ=拝読した」のか「見た=拝見した」のかどっち!?
のようなどっちつかずのケースが多々あるからです。
この問いに対する結論としては「ビジネスシーンによる」ということになります。
メールのときは「拝見」で資料のときは「拝読」をつかう、というような使い分けをするのではなく。状況におうじてふさわしい語を選択します。
以降でビジネスシーン別にふわさしい使い分け方を紹介します。
①返信メールの書き出しに「メール拝見・拝読しました」はOK?
「拝見」「拝読」の使い分け方。
まずは上司なり目上・取引先からのメールに返信するとき。
- 「メール拝見しました/拝見いたしました」はOK?
あるいは、
- 「メール拝読しました/拝読いたしました」はOK?ということですが…
◎結論としてこの使い方はいずれもまったく違和感がなく丁寧な「拝見」「拝読」の使い方といえます。
意味は「メールを見ました」「メールを読みました」であり「拝見・拝読」はメールの送り主である上司なり目上・取引先を立てるためにつかっています。
メールは読むものなのか、見るものなのかを考えたとき。なんとなく「読む」とするほうが正しいような気もしますが…「見る」でも日本語としては正しいです。
なぜなら。
メールというのは文章ではあるものの電子的な何かであり、携帯なりPCのディスプレイに表示されていますよね。「画面を見る」というのと同じであるため日本語的には「メールを拝見する」という使い方もOKなのです。
なお返信メールではたとえば。
- 【例文】メール拝見しました。早々にお返事いただき誠にありがとうございます。
- 【例文】資料を拝読いたしました。早速ご対応いただきありがとうございます。
というように「拝見しました+相手がしてくれた事にたいするお礼」とすると丁寧です。これらはビジネスメール返信の書き出しにつかえるフレーズですね。
また。
メールを受け取ったことを報告すると考え、
- 【例文】メール拝受しました。早々にお返事いただき誠にありがとうございます。
- 【例文】資料を拝受いたしました。早速ご対応いただきありがとうございます。
というように「拝受=受け取ること」をつかっても丁寧です。
※こんなシーンでもっともよく目にするのは「拝受」ですが「拝見・拝読」でも差し支えありません。
②メールの途中で「資料を拝見or拝読しましたところ、いくつか修正をお願いしたい箇所が見つかりました」はOK?
「拝見」「拝読」の使い分け方。
つづいて上司なり目上・取引先からのメールに返信するとき。
たとえば取引先にお願いした資料(見積書や契約書をふくむ)をメールで読んだあと。何かしら修正が必要になったとき。
- 例文「資料を拝見しましたところ、いくつか修正をお願いしたい箇所が見つかりました」
- 例文「資料を拝読しましたところ、いくつか修正をお願いしたい箇所が見つかりました」
とした場合はどうでしょうか?
◎結論としてこの使い方はいずれもまったく違和感がなく丁寧な「拝見」「拝読」の使い方といえます。
資料は読むものなのか、見るものなのかを考えたとき。なんとなく「読む」とするほうが正しいような気もしますが…「見る」でも正しい日本語です。
なぜなら。
資料には100%文字で構成されているものもあれば、グラフや写真を多くつかったようなものもあるからです。そう考えると「拝見・拝読」はいずれも問題ないことがわかります。
③「ホームページを拝読しました」はOK?
「拝受」「拝読」の使い分け方。
つづいて企業のホームページなりWEBサイトをみて問い合わせするとき。
- 例文「ホームページを拝読し連絡いたしました」
とした場合はどうでしょうか?
×結論としてこの使い方は違和感のある日本語になります。
意味は「ホームページを読み連絡しました」となりますが、ホームページは常識的に読むというよりも見るということのほうが多いですよね。
なぜならホームページは100%文章で構成されていることはほとんどなく…見やすさを重視して画像や無駄なキャラクターなどをおおく用いているからです。
そう考えると「拝読」ではなく「拝見」をつかうのが妥当だといえます。
したがってこんなシーンでは「拝見」をつかい、
- 例文「ホームページを拝見し連絡いたしました」
というようにするのが日本語の使い方としてシックリきます。
敬語はまず、もとの意味に直して考えてみよう!
こうして例をあげていくとキリがないためまとめます。
「拝見」「拝読」にかぎらず敬語の使い分けでつまずいた場合。
敬語をつかう前のもとの意味にもどって考えるとたいてい上手くいきます。
たとえば「拝見」「拝読」の使い分けについて悩んだとき。
こういうときには「見ること」と「読むこと」のどっちが日本語としてふさわしいのか?をまず考えましょう。
そうすると日本語ネイティレベルの皆さまでしょうから自ずと答えはでてきます。
どちらも使えそうであればどちらを使っても差し支えありません。
敬語ってわからない英単語みたいに意味不明だから悩ましいのですが、いったん意味がわかるとドンドン応用できるようになります。わからない敬語がでてきたらその都度、意味をチェックすることをオススメします。
タイトルに対する結論は以上。
ここからは「拝見」「拝読」の正しい使い方について、ビジネスメール例文とともに解説していきます。ご興味あるかたのみどうぞ。