「お知らせいたします」は二重敬語?使い方・ビジネスメール例文

「お知らせいたします」は間違い敬語?二重敬語?

とご心配のあなたへ。

「お知らせいたします」は完璧に正しい敬語でありビジネスシーンではよく使われます。

たとえば、

  • 【例文】4月1日付の人事異動につき、下記のとおりお知らせいたします
  • 【例文】3月の営業日につき、下記のとおりお知らせいたします

などとして使われます。

くわしい解説は本文にて。

それでは、

「お知らせいたします」が正しい敬語である理由と、ビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、メール例文を紹介します。

「お知らせいたします」は間違い敬語・二重敬語ではない

まずは敬語の復習をすこし。

「お知らせいたします」は二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。正しい敬語です。

なぜなら、もとになる単語「知らせる」に「(お・ご)〜いたす」という謙譲語の基本形をつかっているから。

「お知らせいたします」の意味

「お知らせいたします」のそもそもの意味は敬語にする前のもとになる語「知らせる」の意味を考えるとわかります。

辞書によると「知らせる」の意味はざっくり以下のとおり。

  1. 他の人が知るようにする。言葉やその他の手段で伝える。
    【例】このたび本社を移転する運びとなりましたので、下記のとおりお知らせいたします
    【例】年末年始の休業期間につき、下記のとおりお知らせいたします
  2. 身にしみて分からせる。思い知らせる。
    【例】この恨みを知らせずにおくものか

ちなみに敬語「お知らせいたします」は自分が「知らせる」ときにつかいます。

相手に「お知らせしてもらう」としたいときには…

「お知らせいただく=知らせてもらう」
「お知らせくださる=知らせてくれる」

という敬語をつかいます。

これだけですべてを物語っているのですが説明不足かもしれませんので、

  • なぜ「お知らせいたします」を間違い敬語とおもってしまうのか?
  • なぜ正しい敬語なのか?
  • そもそも謙譲語とか尊敬語って何?
  • そもそも二重敬語って何?

という部分についてもくわしく解説していきます。

間違い敬語と感じる理由は「尊敬語」と判断しているから

なぜ「お知らせいたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…

「お知らせ」の「お(ご)」の部分にあります。

この「お知らせ」は尊敬語「お(ご)」をつかって敬語にしているかのように見えます。

尊敬語は相手の行為につかうため「お知らせ」が尊敬語であればたしかに「お知らせいたします」は間違い敬語です。

尊敬語「お(ご)」の使い方

尊敬語とはたとえば、

「お客様、お忘れものはございませんか?」
「部長はお戻りになりましたか?」

などとしてつかう「お・ご」のこと。これらはいずれも尊敬語であり、目上の行為をうやまってつかう敬語。

ところが「お知らせいたします」は自分が「知らせする」という意味であるハズ。したがって尊敬語ではおかしいのです。

でも実際には「お知らせいたします」は尊敬語ではなく、謙譲語をつかっています。

謙譲語「ご(お)〜いたす」を使っているから正しい

ここではなぜ「お知らせいたします」が敬語として正しいのか?という部分について順をおって解説していきます。

「お知らせいたします」敬語の種類

繰り返しにはなりますが「お知らせいたします」を敬語としてみると、以下のように成り立ちます。

▼敬語の解釈 ①

  1. もとになる単語「知らせ」
  2. 「〜する」の謙譲語「(お・ご)〜いたす」を使い、
  3. 丁寧語「ます」をくっつけた敬語

あるいはもっと細かくすると以下のような敬語の解釈もできます。

▼敬語の解釈 ②

  1. もとになる単語「知らせ」に謙譲語「お・ご」で「お知らせ」
  2. さらに「〜する」の謙譲語「〜いたす」で「お知らせいたす」
  3. さらに丁寧語「ます」をくっつけて「お知らせいたします」

本来あるべきなのは解釈②なのですが…

ややこしくなるため「(お・ご)〜いたす」「(お・ご)〜いたします」のセットで謙譲語とし解釈①で考えたほうがシンプルでわかりやすくなります。

ここで(お・ご)と(  )にしたのは「お・ご」があっても無くても敬語としては丁寧だからです。

とにかく敬語としては全くおかしいところは見当たりません。間違い敬語でもなく二重敬語でもなく、正しい敬語です。

謙譲語の「お(ご)●●する」「お(ご)●●いたす」の使い方

ご参考までに謙譲語には「お・ご〜する」「お・ご〜いたす」という使い方があります。

代表的な例としては以下のような敬語フレーズがありますね。

  • 「ご連絡する」「(ご)連絡いたす」
    ➡︎「ご連絡します」「(ご)連絡いたします」
  • 「ご確認する」「(ご)確認いたす」
    ➡︎「ご確認します」「(ご)確認いたします」
  • 「ご挨拶する」「(ご)挨拶いたす」
    ➡︎「ご挨拶します」「(ご)挨拶いたします」
  • 「お願いする」「お願いいたす」
    ➡︎「お願いします」「お願いいたします」

こんな感じでつかう敬語です。ちなみに丁寧語「ます」をくっつけて「お・ご〜します」「お・ご〜いたします」とするのが一般的。

補足①敬語の種類(ざっくり復習)

① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。

敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある

② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。

③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。

補足②謙譲語にも「お・ご+名詞」という使い方がある

ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。

じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お・ご」の使い方があります。

謙譲語としての「お・ご」の使い方はたとえば、

「会議日程のご連絡
「忘年会開催のお知らせ
「販売状況のご報告
「転勤のご挨拶
「貴社ご訪問のお願い

こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。

ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お・ご」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。

これは、

謙譲語「お・ご」の使い方を知らないためにくる勘違いです。尊敬語の「お・ご」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。

いっぽうで尊敬語の「お・ご」は、「●●部長からご連絡がありました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。

ただし謙譲語にも「お・ご」を使い始めると文章が「お・ご」だらけになって読みにくくなります。文章のバランスを考えて使い分けしましょう。

「お知らせいたします」は二重敬語ではない

「お知らせいたします」は二重敬語だという意見があります。

「お知らせする」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「お知らせいたす」としているから…

「お知らせする=謙譲語」×「いたす=謙譲語」

「お知らせいたす」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??

このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。

ただし答えは「二重敬語ではない」です。

二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。

たとえば「お伺いいたします」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。

ところが、

「お知らせいたします」は「知らせ」+「する」という2つの単語から成り立ちます。「知らせ」を謙譲語には変換せず「お・ご〜いたす」という謙譲語を適用しているため、謙譲語は一回しかつかっていません。

したがって二重敬語ではありません。

よくよく考えてみると…

「お知らせいたします」が二重敬語になるのでしたら、ビジネスメールの結びで必ずといっていいほど使う「お願いいたします」も二重敬語になるはずですよね。

そもそも二重敬語とは?よくある間違い敬語

で先ほど、

よくある二重敬語のたとえとして「お伺いする」「お伺いいたす」があるとしました。

なぜ二重敬語といえるのか?これらのもとになる文章を考えてみましょう。

「伺う」は「行く・聞く・たずねる」の謙譲語ですので、これらが原文となります。

  • 「お伺いする」の元になる文章は「行く・聞く・たずねる」
  • 謙譲語「伺う」
  • さらに謙譲語「お~する」「お~いたす」

もとになる語「行く・聞く・たずねる」に謙譲語を2回つかっていますね。ひとつの語に同じ種類の敬語を2回つかうことが二重敬語であり、敬語のマナー違反になります。

➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方

➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!

よく使う謙譲語の「お(ご)」

謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。

ただ謙譲語で使われる「お・ご」はパターンが限られます。ざっくりと以下の使い方をマスターしておけばビジネスシーンでは困らないでしょう。

  1. お・ご●●する
    お・ご●●します
  2. (お・ご)●●いたす
    (お・ご)●●いたします
  3. お・ご●●いただく
    お・ご●●いただきます
  4. (お・ご)●●させていただく
    (お・ご)●●させていただきます
    ※ただし「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない

●●の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「連絡」「確認」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。

ここで(お・ご)と(  )書きにしているフレーズは「お・ご」があってもなくても敬語としては丁寧。

この謙譲語の「お・ご」を使いすぎると文章が「お・ご」ばかりになるため要注意。バランスを考えて使いましょう。

また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。

“お知らせさせていただきます”敬語は正しいけど…

「(ご)知らせさせていただきます」という表現を使うビジネスパーソンをよく見かけます。

「〜させていただく」は「させてもらう」の謙譲語なので敬語としては正しいです。

ちなみに「させてもらう」の意味は辞書によると「相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す」

つまり、

許しが必要なときにつかう言葉です。

で、

「お知らせさせてもらう」だと「お知らせするために相手からの許しを得たい」という感じのニュアンスになります。

お知らせするとき、相手からの許可って要る?

ビジネスシーンで上司・目上や取引先にお知らせするとき、はたして相手からの許しが必要でしょうか?

答えは「No、必要ありません」

ただまぁ「恐れ多くもお知らせさせてもらうよ」と解釈するのであれば正しいような気もします。

わたしは必要ないと思いますけど実際によく使われているのは事実。使うかどうかは、あなたの考えにお任せいたします。

➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!

➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた

これにて全ての疑問を解決しました。

あとは「お知らせいたします」のビジネスシーンにおける使い方について、メール例文とともにくわしく見ていきます。

「お知らせいたします」ビジネスメール例文

より実践的に敬語をまなぶために、ビジネスメールでの「お知らせいたします」の使い方を例文でおさらいしておきましょう。

ようは目上や上司・取引先に、あなたがなにかしら「お知らせします!」と言いたいきに使います。

年末年始休業お知らせビジネスメール例文 for 社外取引先

【社外ビジネス・テンプレート】
・社外取引先への年末年始 営業日、休業お知らせビジネスメール例文
・テンプレートとして使えるもっともシンプルな例文

メール件名: 年末年始休業のお知らせ

お客様各位

拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。

さて、誠に勝手ながら下記のとおり、年末年始を休業とさせて頂きます。期間中、お客様には大変ご不便をお掛けいたしますが、どうかご了承くださいますようお願い申し上げます。

来年も、本年同様お客様にご満足いただけるサービスの提供を目指し、より一層精進して参ります。今後とも変わらぬご愛顧のほど、宜しくお願い申し上げます。 敬具

休業期間 :12月31日(日)~1月3日(水)

※1月4日(木)より通常通りに営業を再開いたします。

以上

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株式会社ケミカル
国内営業部
ノマド サラリーマン
〒xxx-xxxx
●●県●●市●●Δ-Δ-Δ
電話:xxxx
FAX:xxxx
E-mail:xxx@xxx
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・公式なメールで箇条書きを使うときには「記~箇条書き~以上」のようにする。「記」は中央ぞろえ、「以上」は右寄せだが、ビジネスメールでは相手のメール環境によってレイアウトが崩れるのでどちらも左寄せでよい
・「拝啓~敬具」もビジネスメールでは例文のような書き方でOK
・結び「本年も、~」は無くてもOK

日程変更お知らせメール(出欠確認が必要)

【社外ビジネス・テンプレート】
・社外の取引先に日程の変更をお願いするビジネスメール例文
・テンプレートとして使えるもっともシンプルな例文
・あえて新規メールを作成する必要はないが、どちらでもよい

メール件名①: 返信Re:【日程変更】●●のお知らせ
メール件名②: 新規: ●●日程変更のお知らせ

株式会社ビジネス
営業部 ●● 様

たびたび失礼いたします。
(株)転職・ノマドでございます。

さて、先般お知らせしておりました●●の件、▲▲により日程変更をさせていただきます。

日程調整いただいたにも関わらず、ご迷惑をおかけしますこと深くお詫び申し上げます。

なお、以下の通りに変更後の日程につきご案内いたします。
たびたび恐れ入りますが再度、関係する皆さまのご都合を伺えればと存じます。

【変更前日程】
・11月3日 10:00-12:00

【変更後日程】
・11月5日 10:00-12:00

誠に勝手を申し上げますが今週中に出欠のご連絡をいただければ幸いです。

どうかご容赦くださいますようお願い申し上げます。

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株式会社ケミカル
国内営業部
ノマド サラリーマン
〒xxx-xxxx
●●県●●市●●Δ-Δ-Δ
電話:xxxx
FAX:xxxx
E-mail:xxx@xxx
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・●●の部分には「会議」「打合せ」「面談」「訪問」「イベント」などが入る
・▲▲の部分には「会場の都合」「会議室の都合」「急遽出張予定が入り」などの理由がくる。理由は簡単なものでよく、くわしくは説明しなくてよい

他にも使える案内・お知らせの敬語フレーズ

あとは「お知らせいたします」だけでなく、他にも使える案内・お知らせの敬語フレーズを例文で紹介しておきます。

どの例文も上司や目上・取引先などのビジネスメールに使える丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。

「ご案内」

「お知らせいたします」だけじゃない案内・お知らせの敬語フレーズ

  • 例文「ご案内申し上げます」
  • 例文「ご案内いたします」

意味は「ご案内する」

「お(ご)●●申し上げる」「お(ご)●●いたす」はどちらも謙譲語。

実はビジネスシーンで何かをお知らせするときには「お知らせ」よりも「ご案内」をつかうのが一般的です(ケースbyケースですが…)

「ご連絡」

「お知らせいたします」だけじゃない案内・お知らせの敬語フレーズ

  • 例文「ご連絡申し上げます」
  • 例文「ご連絡いたします」

意味は「ご連絡する」

「お(ご)●●申し上げる」「お(ご)●●いたす」はどちらも謙譲語。

「お知らせ」の言い換えにはなりませんが、文字どおり何かを連絡したいときに使いますね。

「ご報告」

「お知らせいたします」だけじゃない案内・お知らせの敬語フレーズ

  • 例文「ご報告申し上げます」
  • 例文「ご報告いたします」

意味は「ご報告する」

「お(ご)●●申し上げる」「お(ご)●●いたす」はどちらも謙譲語。

「お知らせ」の言い換えにはなりませんが、文字どおり何かを報告したいときに使いますね。

参考記事

➡︎「お伺いいたします」が間違い敬語である理由、正しい使い方
➡︎「お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます」すべて間違い敬語!
➡︎ 誤用の多い「させていただく」症候群には「いたします」が効く!
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた