「伝える」の敬語変換｜謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方

「伝える」の敬語変換（謙譲語・尊敬語・丁寧語）と、

ビジネスシーン（メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職）にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

伝える　の謙譲語は

①お伝えする
②お伝えいたす
③申し伝える

※これに丁寧語「ます」を組み合わせて「お伝えします」「お伝えいたします」「申し伝えます」として使う。

※「③申し伝える」は聞き手を高めるために使う謙譲語（くわしくは本文で）

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

（自分が）取引先にお伝えします
（自分が）取引先にお伝えいたします
（自分が）弊社の〇〇に申し伝えます

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「お伝えします・お伝えいたします・申し伝えます」とするのが一般的。

例文1・2は情報の受け手である取引先を高めるために謙譲語を使っていますが、例文3だけは違っていて話の聞き手を高めるために使う謙譲語「申す」で敬語にしています。

ややこしいので詳しい解説は本文にて。

伝える　の尊敬語は

①お伝えになる
②伝えられる

いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、

人事異動の件、本人にはお伝えになりましたか？
人事異動の件、本人には伝えられましたか？

として使います。

ただし、

尊敬語の「～られる」は受身や可能の「～れる・られる」と間違われることもおおいため、「～なる」を使うほうが無難。そうすると尊敬語は「お伝えになる」を使うのがベター。

伝える　の丁寧語は「伝えます」

さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「伝えます」とすればOKです。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。

伝える　の謙譲語「お伝えする・お伝えいたす・申し伝える」使い方と例文

まずは「伝える」の謙譲語「お伝えする・お伝えいたす・申し伝える」のビジネスシーン（メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職）にふさわしい例文と使い方を紹介します。

【補足】
いたす　は「する」の謙譲語

そもそも謙譲語とは？

念のため基本となる謙譲語とはなにか？について簡単に復習しておきます。

謙譲語Ⅰ ＝自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
謙譲語Ⅱ ＝聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」

２種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

使い方

「伝える」の謙譲語「お伝えする・お伝えいたす・申し伝える」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が誰か対象となる目上のヒトへなにかをお伝えする」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。また、ここでは伝える相手を高めている点にご注意を。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して相手の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

正しい例文「かしこまりました。マージンカットの件、取引先にお伝えします」
正しい例文「納期遅延の件、取引先にお伝えいたします」
正しい例文「弊社の〇〇に申し伝えます」

のような感じで「自分が伝える」ときにつかいます。繰り返しにはなりますが、ここでは伝える相手を高めている点にご注意を。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

NG例文「納期遅延の件、取引先にお伝えしましたか？」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「伝える」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長、取引先にお伝えになりましたか？」とします。

申し伝える　は聞き手を高める謙譲語

ここでひとつ注意点というか、まぎわらしい「申し伝える」の使い方について少し。

まず、

「お伝えする・お伝えいたす」は伝える先の相手を高めるための謙譲語です。例文でみた方がわかりやすいため、先ほどの例文をもう一度。

例文「かしこまりました。マージンカットの件、取引先にお伝えします」
例文「納期遅延の件、取引先にお伝えいたします」

この2つの例文では社外の取引先を高めるために、自分側（自分と社内のひと）を低める謙譲語を使います。

情報の流れを図式化すると以下のとおり。

情報の入り口「社内の人」
↓
情報の仲介「自分」
↓
情報の出口「取引先」
・取引先を高めるために謙譲語を使う

こんな感じで、社内で情報を受け取った自分が高めるべき取引先に「伝える」とするとき。社外の取引先を高めるために謙譲語を使います。

ところが、

「申し伝える」は聞き手を高める謙譲語Ⅱを使います。

例文「弊社の〇〇に申し伝えます」

こんな感じで、社外の取引先に情報を受け取った自分が社内の〇〇に伝えるのですが…高めるべきなのは取引先であるため「お伝えします」ではおかしくなります。そこで社外の取引先を高めるために謙譲語Ⅱ「申す」を使います。

情報の流れをおなじように図式化すると以下のとおり。

情報の入り口「社外の取引先」
↓
情報の仲介「自分」
↓
情報の出口「社内の人」
・聞き手である社外の取引先を高めるために謙譲語Ⅱ「申す」を使う

ここで、

NGとなる例文（社外の人にたいして）弊社の〇〇にお伝えします
NGとなる例文（社外の人にたいして）弊社の〇〇にお伝えいたします

だと弊社の〇〇を高めていることになり「弊社の〇〇＞社外の人＞自分」というように社外の人が低い立場になってしまいます。

とりあえず「申し伝える」を使っていれば間違いない

ここで生じる問題として、

伝える　の謙譲語は「お伝えします」「お伝えします」「申し伝えます」のどれを使えばいいの？というのがあります。

結論としては、「申し伝えます」を使っておけば間違いないです。なぜなら「申し伝える」が聞き手にたいして敬意を示す謙譲語であるから。

たとえば、

例文「かしこまりました。マージンカットの件、取引先にお伝えします」
→ 話の聞き手ではなく、あくまでも取引先を高めている
例文「納期遅延の件、取引先にお伝えいたします」
→ 話の聞き手ではなく、あくまでも取引先を高めている

はいずれも「取引先に申し伝えます」としてもいいハズ。聞き手である、情報を提供するひとを高めていることになるからです。

例文「かしこまりました。マージンカットの件、取引先に申し伝えます」
→ この話の聞き手を高めている
例文「納期遅延の件、取引先に申し伝えます」
→ この話の聞き手を高めている

こんな感じで言い換えできます。

目上のひと、たとえば上司から情報を得てあなたが取引先に「伝えます」としたいときに、上司にたいして敬意を示すことは何もおかしくはありません。

むしろ当たり前と言えるでしょう。

ということですので、
迷ったら「申し伝える」を使いましょう。

ただし「先般お伝えしました件、その後いかがでしょうか？」のようなときに「先般申し伝えました件、」とするのは違和感あり。間違いではないのですが…

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「伝える」の謙譲語「お伝えする・お伝えいたす・申し伝える」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「お伝えします・お伝えいたします・申し伝えます」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100％こういった使い方をします。

※ いたす　は「する」の謙譲語

例文

「伝える」の謙譲語「お伝えする・お伝えいたす・申し伝える」のビジネスシーン（メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職）にふさわしい例文まとめ。

例文「承知いたしました、先方に申し伝えます」
・使い方は何かしらの情報を誰かに伝えるときのビジネスメールや会話
・意味はどれを使ってもおなじく「伝える」
・謙譲語を使うことで自分側の行為を低くし、伝える情報の受け手を高めている
例文「先日お伝えしました件、その後いかがでしょうか？」

伝える　の尊敬語「お伝えになる・伝えられる」使い方と例文

つづいて「伝える」の尊敬語「お伝えになる・伝えられる」のビジネスシーン（メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職）にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも尊敬語とは？

念のため基本となる尊敬語とはなにか？について簡単に復習しておきます。

尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。

注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと＞社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外＞社内」であり、この図式を守って使いましょう。

使い方

「伝える」の尊敬語「お伝えになる・伝えられる」の使い方は先にのべたとおり、

「目上の相手が何かをお伝えになる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。

相手を立てる・うやまう・高める敬語が尊敬語であるため、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

そうすると、

正しい例文「人事異動の件、本人にはお伝えになりましたか？」

のような感じで「相手へ伝える」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

NG例文「人事異動の件、本人にはお伝えしましたか？」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「伝える」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語（尊敬語）を使います。

お伝えになる・伝えられる　どっち使う？

ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。

「伝える」の尊敬語には、

①お伝えになる
②伝えられる

と２パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが「伝えられる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため①お伝えになる　をつかうのが無難。

たとえば

「部長が私に書類を渡されました」

だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。

そこで

「部長が私に書類をお渡しになりました」

のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

繰り返しにはなりますが、

「伝える」の尊敬語「お伝えになる・伝えられる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「お伝えになります」「お伝えになりました」として使うとより丁寧です。

例文

「伝える」の尊敬語「お伝えになる・伝えられる」のビジネスシーン（メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職）にふさわしい例文。

例文「部員逮捕の件、部長へはお伝えになりましたか？」
・使い方はビジネス会話やメールで「伝えましたか？」と質問するときに使えるフレーズ。
・話している相手を高めるために尊敬語を使う
例文「その件は〇〇部長が本人へお伝えになりました」
・使い方はビジネス会話やメールで「伝えました」と言いたいときに使えるフレーズ。
・話している相手を高めるために尊敬語を使う

他にもよく使う敬語の変換表

「伝える」の敬語変換（謙譲語・尊敬語・丁寧語）のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

	謙譲語	尊敬語	丁寧語
受け取る	拝受する拝受いたす	お受け取りになる	受け取ります
見る	拝見する	ご覧になる見られる	見ます
言う	申す申し上げる	おっしゃる言われる	言います
会う	お会いするお目にかかる	お会いになる会われる	会います
する	致す（いたす）	なさる	します
伝える	お伝えする申し伝える	お伝えになる伝えられる	伝えます
思う	存じる	お思いになる思われる	思います
行く	伺う参る参上する	お行きになる行かれる	行きます
もらう	いただく	くださる	もらいます
送る	お送りするお送りいたす送付いたす	お送りになる送られる	送ります