「お貸しいただく vs くださる」意味と敬語・使い分け

① お貸しいただく

vs.

② お貸しくださる

の敬語、意味と違い、目上・上司・取引先への使い方、注意点についてビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説していく記事。

まずは基本。

「お貸しいただく vs お貸しくださる」の意味はそれぞれ

  1. お貸しいただく → 貸してもらう
  2. お貸しくださる → 貸してくれる

どちらも正しい敬語であり使い方はたとえば…

① お礼「貸してくれてありがとう」

  • 例文「傘をお貸しいただきありがとうございます」
  • 例文「お金をお貸しいただきましてありがとうございます」
  • 例文「トイレをお貸しくださいましてありがとうございます」

② 希望・依頼・お願い「貸してほしい」

  • 例文「お金をお貸しいただきたく存じます」
  • 例文「お貸しいただければと存じます」
  • 例文「お貸しいただければ幸いです」
  • 例文「お貸しいただけますか?
  • 例文「お貸しいただけますでしょうか?
  • 例文「お貸しくださいますようお願い申し上げます」

※「貸していただく・貸してくださる」に言い換えOK

※または「お借りしたく・お借りいたしたく~」と言い換えもOK

③ 貸してもらえる●●/貸してもらった●●

  • 例文「お貸しいただけるようでしたらお願いいたします」
  • 例文「お貸しいただいたお金は、マネーロンダリングしました」
  • 例文「お貸しくださいました1000億円は、大切にギャンブルに使わせて頂きます」

※「貸していただく・貸してくださる」に言い換えOK

※または「お借りした・お借りしました~」と言い換えもOK

のようにしてメールに使うと、上司・目上やビジネスパートナーに使えるすばらしい敬語フレーズになります。

使い方は依頼・お礼メールなどいろいろあり。

どちらをつかっても丁寧な敬語であり使い分けの必要はありません。

その根拠については本文にて。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではメール例文をまじえながらくわしく進めていきます。

※長文になりますので時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。

意味・敬語の違い

まずは「お貸しいただく vs お貸しくださる」の意味と敬語における違いについて簡単に。

ようは「貸してもらう vs 貸してくれる」ということなのですが、あまりに乱暴なのでもう少しくわしく解説します。

“お貸しいただく”の意味・敬語

「お貸しいただく vs お貸しくださる」の違い

まず

「お貸しいただく」の辞書的な意味は…

「貸してもらう」であり、おもにビジネスシーンでなにかしら貸してほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです。もちろんお礼などにも使えます。

「お貸しいただく」の敬語を細かくみていくと、以下のような成り立ちです。

  1. 元になる語は“貸す”
  2. “〜してもらう”の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「お貸しいただく」

※「貸していただく」に言い換えOK

謙譲語をつかい、この上なく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。

こうすると「ありがたくも貸してもらう」というようなニュアンスになります。

したがって上司・目上やビジネスメールで使うのにふさわしい表現、と言えるでしょう。

ちなみに「お貸し」の「お(ご)」は謙譲語と尊敬語の使い方があります。ここでは「自分が〜してもらう」というように自分を主語にしているため謙譲語としての使い方です。

“お貸しくださる”の意味・敬語

「お貸しいただく vs お貸しくださる」の違い

つづいて

「お貸しくださる」の辞書的な意味は…

「貸してくれる」であり、ビジネスシーンでなにかしら貸してほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです。もちろんお礼などにも使えます。

「お貸しくださる」の敬語を細かくみていくと、以下のような成り立ちです。

  1. 元になる語は“貸す”
  2. “〜してくれる”の尊敬語「お(ご)〜くださる」で「お貸しくださる」

※「貸してくださる」に言い換えOK

尊敬語をうまくつかい、この上なく丁寧な敬語表現となっていることがわかります。

こうすると「ありがたくも貸してくれる」というようなニュアンスになります。

ちなみに「お貸し」の「お(ご)」は謙譲語と尊敬語の使い方があります。ここでは「相手が〜してくれる」というように相手を主語にしているため尊敬語としての使い方です。

違いと使い分け

ここまで意味と敬語についてみてきました。

さて「お貸しいただく vs お貸しくださる」の違いにお気づきでしょうか?

どちらも結局のところ言いたいことは同じ。

「貸してもらう・貸してくれる」

と言いたいわけですが…

  • “お貸しいただく“だと意味は「貸してもらう」
    →敬語は謙譲語「お(ご)〜いただく」

vs.

  • “お貸しくださる“だと意味は「貸してくれる」
    →敬語は尊敬語「お(ご)〜くださる」

というように意味と敬語の使い方が違います。

いい加減しつこいのですが、だからといって言いたいことは全く同じなわけです。

したがって、

敬語の使い方には違いはあれど、どちらもひとしく丁寧な敬語であり目上・上司・社外取引先につかえるフレーズです。

ただ少しニュアンスの違いというか敬語の使い方が違うよ、ということですね。

ちなみにビジネスメール結びとして一般的なのは「お貸しくださる」のほうですが、心底どちらでも差し支えありません。

“お貸しいただく vs お貸しくださる”の使い方

つづいて「お貸しいただく vs お貸しくださる」の使い方について。

代表的なパターンを表にまとめておきます。

こまかく解説していくとそれだけで記事がおわってしまいますので、目的にあわせてお使いください。

▼「お貸しいただく」の使い方まとめ(すべて敬語)

①基本 ②+丁寧語”ます” ③その他
現 在  お貸しいただく -いただきます -頂くよう
-頂きますよう
過 去  お貸しいただいた -いただきました ×
進行形  お貸しいただいている -いただいています -頂いております
過去~現在  お貸しいただいていた -いただいていました -頂いておりました
希 望
依 頼
 お貸しいただきたい
お貸しいただきたく
お貸しいただくよう
-いただきたいです

-いただきますよう

-頂きたく思います
-頂きたく存じます
-頂ければと存じます
可 能  お貸しいただける -いただけます -頂けるよう
-頂けますよう
仮 定  お貸しいただければ -いただけましたら ×
疑 問  お貸しいただけるか? -いただけますか? -頂けますでしょうか
否 定  お貸しいただけない -いただけません ×
命 令 × × ×

※ ②+丁寧語”ます”をつかうとより丁寧な敬語になります。

※「×」としたのは一般的につかわない

▼「お貸しくださる」の使い方まとめ(すべて敬語)

①基本 ②+丁寧語”ます” ③その他
現 在  お貸しくださる -くださいます -くださるよう
-くださいますよう
過 去  お貸しくださった -くださいました ×
進行形  お貸しくださっている -くださっています -くださっております
過去~現在  お貸しくださっていた -くださっていました -くださっておりました
希 望
 お貸しくださるよう -くださいますよう ×
可 能 × × ×
仮 定 × × ×
疑 問  お貸しくださるか? -くださいますか? ×
否 定  お貸しくださらない -くださいません ×
命 令  お貸しください -くださいませ ×

※ ②+丁寧語”ます”をつかうとより丁寧な敬語になります。

※「×」としたのは一般的につかわない

【補足】敬語の種類(ざっくり復習)

① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。

敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある

② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。

③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。

使い方

つづいて「お貸しくださる vs お貸しいただく」の使い方を例文で紹介します。

目上・上司にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。

使い方①相手に貸してほしい時

相手に「貸してほしい・貸してもらいたい」ときは…

  • 【例文】お金をお貸しいただきたく存じます
  • 【例文】傘をお貸しいただきたく、お願い致します
  • 【例文】お貸しいただければと存じます
  • 【例文】お貸しいただきますようお願い申し上げます
  • 【例文】お貸しくださいますようお願い申し上げます
  • 【例文】お貸しいただければ幸いです
  • 【例文】お貸しいただけましたら幸いです
  • 【例文】お貸しいただけますか/ますでしょうか?

※「貸していただく・貸してくださる」に言い換えOK

※または「お借りしたく・お借りいたしたく~」と言い換えもOK

▼敬語の補足

・「存じる」は「思う」の謙譲語
・「いただきたく」は謙譲語「いただく」+希望”~したい”
・「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定”たら・れば”
・「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+丁寧語”ます”+仮定”たら・れば”
・「幸いです」は「幸い」+丁寧語”です”
・「ますよう」は丁寧語”ます”+”ように”

使い方②相手に「貸してくれてありがとう!」とお礼するとき

相手に「お貸しありがとう!」とお礼するときは…

  • 【例文】トイレをお貸しいただけるとのことありがとうございます
  • 【例文】お金をお貸しいただきありがとうございます
  • 【例文】傘をお貸しいただきましてありがとうございます
  • 【例文】お貸しくださいましてありがとうございます

※「貸していただき・貸してくださいまして」に言い換えOK

使い方③貸すことができません!と断るとき

①上司なり取引先・目上の相手が「貸すことができません!」とするときは…

  • 【例文】お貸しいただけません
  • 【例文】お貸しいただくことはできません

②自分が「貸すことができません!」とするときは…

  • 【例文】お貸しいたしかねます
  • 【例文】お貸ししかねます
  • 【例文】●●のためお貸しすることが叶いません
  • 【例文】お貸しすることが大変困難でございます

無理やり感のある例文になってしまいました…すみません。

こんなときには「ご対応いたしかねます」「お受けいたしかねます」などの敬語をつかいますね。

使い方④貸してもらえる●●/貸してもらった●●

貸してもらえる●●/貸してもらった●●

  • 例文「お貸しいただけるようでしたらお願いいたします」
  • 例文「お貸しいただいたお金は、すべてパチンコに使いました」

※「貸していただく・貸してくださる」に言い換えOK

※または「お借りした・お借りしました~」と言い換えもOK

使い方⑤自分が「貸します!」とするとき

ついでに自分が「貸します!」と言いたいときには…

  • 【現在形】お貸しします/お貸しいたします
  • 【過去形】お貸ししました/お貸しいたしました
  • 【進行形】お貸ししております/お貸しいたしております
  • 【希望①】お貸ししたく思います/お貸しいたしたく思います
  • 【希望②】お貸ししたく存じます/お貸しいたしたく存じます

▼敬語の補足

・「存じる」は「思う」の謙譲語
・(ご)とした例文は省略可
・「お(ご)~します」は謙譲語「お(ご)~する」+丁寧語”ます”
・「お(ご)~いたします」は謙譲語「お(ご)~いたす」+丁寧語”ます”

おもにはこんな感じの使い方があります。

それぞれの意味や敬語の使い方など、くわしい解説は本文の一番最後にあります。

本当はもっといろいろありますが、すべての使い方を例文で紹介しているとそれだけで日が暮れるため、少しだけにしておきますね。

ビジネスメール例文【全文】

ここでは「お貸しくださる vs お貸しいただく」のビジネスメール例文を紹介します。

目上・上司にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。

ビジネスメール例文①依頼・お願い

メール件名: プロジェクター拝借のお願い

営業部 ○○様 (社内メール)

お疲れ様です。

さて首記の件、総務部のプロジェクターが足りておらず、宜しければ貴部署のプロジェクターを拝借したく存じます。

大変恐縮ではございますが、4月10日13:00-17:00でお貸しいただけますでしょうか。

ご確認いただければ幸いです。

よろしくお願い致します。

————-
メール署名
————-

ビジネスメール例文②お礼

メール件名: 融資のお礼

株式会社ビジネス
融資部 課長 ●●様

いつもお世話になっております。
(株)転職・ノマドでございます

このたびはご融資いただき誠にありがとうございます。

お貸しくださった100億円は、大切にギャンブルに使わせていただきます。

今後とも何卒よろしくお願い致します。

略儀ながら、お礼かたがたご挨拶申し上げます。

————-
メール署名
————-

「お借りしました100億円は~」に言い換えできる

“お貸しいただく”は間違い敬語?

少し話はそれますが「いただく」が謙譲語として誤りだという指摘があります。

間違いだという指摘の根拠は、

  1. “いただく”は「もらう」の謙譲語
  2. 謙譲語は自分の動作を低めて相手を敬うため、基本は自分の行為にしか使えない
  3. “お貸しする”のは相手だから…
  4. “お貸しいただく”は相手の行為に謙譲語を使うことになり、おかしい?

ということです。

正しい敬語である根拠

まずは結論だけ述べますが「お貸しいただく」は間違った謙譲語ではありません。

「お貸しいただく」は 「私が相手に貸してもらう」という意味。

もっとかみ砕くと

「ありがたくも私が相手に貸してもらう」というようなニュアンスになります。

自分が上司・目上・取引先など相手に「〜してもらう」の主語は自分であるハズ。したがって自分を低めて上司・目上・取引先をたてる謙譲語「いただく」をつかいます。

ちなみに尊敬語をつかって相手の行為をたてるのであれば…

「お貸しくださる=相手が貸してくださる」をつかえばOK。

謙譲語にも”お(ご)”という使い方がある

ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。

じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お(ご)」の使い方があります。

謙譲語としての「お(ご)」の使い方はたとえば、

  • 会議日程のご連絡
  • 忘年会開催のお知らせ
  • 販売状況のご報告
  • 転勤のご挨拶
  • 貴社ご訪問のお願い

こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。

ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お(ご)」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。

これは、

謙譲語「お(ご)」の使い方を知らないためにくる勘違いです。

尊敬語の「お(ご)」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。

いっぽうで尊敬語の「お(ご)」は、「部長が戻りになりました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。

謙譲語の一般形まとめ

謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。

他にもセットで謙譲語として覚えておくと役に立つフレーズを以下にまとめます。

  1. お(ご)〜する
    お(ご)〜します
  2. お(ご)〜いたす
    お(ご)〜いたします
  3. お(ご)〜いただく
    お(ご)〜いただきます
  4. お(ご)〜差し上げる
    お(ご)〜差し上げます
  5. お(ご)〜申し上げる
    お(ご)〜申し上げます
  6. お(ご)〜させていただく
    お(ご)〜させていただきます

※「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない

「〜」の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「教示」「承諾」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。

また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。

ちなみに、これは文化庁の「敬語の指針」においても解説されています。私のような頭の悪い人には難しいのですが、ご興味ありましたら以下のリンクよりどうぞ。

ビジネス会話・電話では”お貸しいただけますか?”

ビジネスメールではなく会話や電話シーンであれば…

「お貸しくださいますようお願い申し上げます」などは絶対につかいません。

長いうえに丁寧すぎて気持ち悪いですからね。

そこでビジネス会話・電話では…

  • 【例文】傘をお貸しいただけますか?
  • 【例文】お金をお貸しいただけますでしょうか?
  • 【例文】お貸し願えますでしょうか?

※もちろん「お貸しください」としてもOK

といった質問フレーズをつかいましょう。

意味としては「貸してもらえますか?」であり、敬語をつかって丁寧な表現にしています。

「〜いただけますか?」サラッと言えるためビジネスシーンで重宝するフレーズです。

敬語の解説

お貸しいただけますか?」「お貸しいただけますでしょうか?

の敬語の成り立ちとしては…

  • “貸す”に「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「お貸しいただく」
  • 可能形にして「お貸しいただける」
  • さらに丁寧語”ます”で「お貸しいただけます」
  • 疑問形にして「お貸しいただけますか?」

“〜だろうか”の丁寧語「〜でしょうか」を使うと「お貸しいただけますでしょうか?」

どちらの表現も謙譲語をうまくつかい、このうえなく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。

したがって上司・目上・社外取引先につかえる素晴らしい敬語、と言えるでしょう。

どちらかというと「〜いただけますでしょうか?」のほうが丁寧なのですが…バカ丁寧だという意見もあるため「〜いただけますか?」を使うのをオススメします。

参考記事

ビジネスシーン別”お貸し”の使い方・例文