命令形「~してください」をビジネスシーンで使うと失礼?
とご心配のあなたへ。
命令形「~してください」の代わりにビジネスシーン(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)で使える敬語を紹介。
まずは要点のまとめから。
「~してください」は失礼?
①電話/ビジネス会話/社内対応であればまぁOK
②ビジネスメールでは不適切。よりかしこまった敬語フレーズが好まれる
命令形「~してください」は敬語としては成り立つものの丁寧レベルは低いです。
ビジネス会話や電話・社内で上司に使えるくらいの丁寧レベルであり、よりかしこまった敬語が好まれる社外のビジネスメール・文書・手紙のシーンでは不適切。
「~してください」が不適切である理由は2つ
①もっと丁寧な敬語がある
②命令形であるため言い方が強い
③一般の小学生から大人まで使う言葉であり、幼稚な感じがする
ということなので、
かしこまった敬語が好まれるビジネスメール・手紙・文書で使うときにはもっと丁寧な敬語に言い換えましょう。
敬語・類語での言い換えにはたとえば…
- 言い換え①~願います
- 言い換え②~のほどお願い申し上げます
- 言い換え③~くださいますようお願い申し上げます
- 言い換え④~いただきますようお願い申し上げます
- 言い換え⑤~いただければと存じます
- 言い換え⑥~いただければ幸いです
こんな感じのフレーズあり。
言い換え①は…ビジネス電話/社内メール/社内上司に使えるくらいの丁寧レベルであり、「~しててください」と大差はありません。
言い換え②③④⑤は…丁寧レベルとしては高く、社外ビジネスメール/手紙/文書などのかしこまった敬語が好まれるシーンで使います。
言い換え⑥は…丁寧レベルとしては最上級です。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、それぞれの言い換え表現について、意味と敬語の解説、注意点を詳しくみていきましょう。
~してください は敬語としてはOK
「~してください」を敬語としてみていくと…
~する
+
命令形「〜してくれ」
+
くれる の尊敬語「くださる」
=
尊敬語の命令形「~してください」
このように敬語(尊敬語)としては成り立ちます。
ただし、
敬語であれば何でも使えるのか?
というと決してそうではありません。
言葉の意味がふさわしくなかったり、受け手の気持ちの問題でつかうと失礼に感じられてしまう敬語もあるのです。
~してください が失礼だと感じる理由
「~してください」と言われた方の立場で考えてみると…
たとえば「教えてください!」であれば、相手にとっては「こっちはモーレツに忙しくて、あなたに教えているヒマなどない」
というときもある訳で…
そんなときに「教えてください」を使われると、
カチンときてしまうビジネスパーソンもいることでしょう。
なぜなら
「教えてください」は相手の状況を考えることなく「もちろん教えてくれるよね?」
と言われているような気持ちになるためです。
これでは相手への配慮が足りません。
まぁ半分は受け手の気持ちの問題であり、わたしは「教えてください」と部下に言われても「イイよ」と快く引き受けますが…ヒマで心にゆとりがあるからだと思います。
で、やっぱり、
何かを教えてもらったり、お願いする立場としては丁寧な敬語を心がけたいものですね。
「~してください」と言いたい時の敬語、基本は「~していただく」
ビジネスシーンで上司や取引先・目上のヒトに依頼・頼むとき。
もっとも基本となる敬語は「~していただく」です。
~していただく は「~してもらう」の謙譲語。
これに、あぁだこうだと色々なフレーズを組み合わせて何となくそれっぽいお願いの敬語フレーズをつくります。
たとえば「ご連絡」と合体させれば「ご連絡いただく」となりますし、「ご対応」と合体させれば「ご対応いただく」、「ご教示」と合体させれば「ご教示いただく」というフレーズの完成です。
ただし、
「~していただく」だけでは「ご連絡してもらう」「ご対応してもらう」「ご教示してもらう」となり意味不明なフレーズとなります。
やんわりとしたフレーズを使い「丁寧なお願い」にする
そこで、
やんわ~りとした表現を使い「丁寧な依頼・お願い」にしていく必要あり。
たとえば以下のように「~してほしいと思う」「~してくれたら嬉しいなぁ」といった、やんわりフレーズを「いただく」と組み合わせてみましょう。
- いただく に「~してほしいと思う」を組み合わせて敬語にすると「~いただきたく存じます」
- さらに仮定形「~れば」を組み合わせると「~していただければと存じます」
- さらに「~してくれたら嬉しい」を組み合わせて敬語にすると「~いただければ幸いです」
- 後ろに文章を続けるなら接続詞「ますよう」を組み合わせて「~していただきますよう、」
- ~してもらえませんか? と相手に尋ねるには「~していただけますか?」「~していただけますでしょうか?」
こんな感じにすると素晴らしいお願いフレーズのできあがり。あとは「~」の部分に「ご連絡・ご確認・ご承認・ご了承・ご容赦・ご教示・ご教授…」などの言葉をいれるだけでOKです。
→ 頂く(いただく)は間違い敬語?おかしい謙譲語に感じる理由、使い方
なぜ「くださる」ではなく「いただく」なのか?
何かをお願い・依頼するときの敬語フレーズに「いただく」を使うようになった背景は正直なところよくわかりません。
(相手が)~してくれる の尊敬語「~してくださる」をつかってもいいような気もします。
なんとな〜くの考察ですが、
「相手がしてくれる=してくださる」
だと、相手に頼むというよりも「相手が相手の意思でやってくれた」みたいなニュアンスになるからだと思われます。これでは頼みごとをする立場としてはなんともビミョ~な依頼のやり方になってしまいますね。
いっぽうで、
「自分がしてもらう=していただく」
とすれば「自分が相手に~してもらう」という意味であり、本来あるべき依頼の姿となります。
すみません…前置きが長くなりました…
ビジネスメールで「~してください」としたい時の言い換え敬語
命令形「~してください」の代わりにビジネスシーン(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)で使える敬語フレーズ。
まずは、ビジネスメールや手紙などの文書で「~してください」としたい時の敬語フレーズを紹介します。
①~いただければと存じます
命令形「~してください」の代わりに社内外のビジネスメールで使える敬語フレーズ。
- 例文『~いただければと存じます』
敬語は以下のように成り立ちます。
- 「いただければ」は「もらう」の謙譲語「いただく」+仮定の「れば」
- 「存じます」は「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」
使い方はたとえば、「ご承認いただければと存じます」とすれば「承認してもらえたらと思います」の意味になりますし、「ご連絡いただければと存じます」とすれば「連絡してもらえたらと思います」の意味になります。
他にもビジネスシーンで使える例文は以下のとおり。
– 使い方・例文 –
- 何かを頼むときのビジネスメール結び
・例文『ご連絡(を)いただければと存じます』
・例文『ご確認(を)いただければと存じます』
・例文『ご教示(を)いただければと存じます』
・例文『ご意見(を)いただければと存じます』
・例文『ご指示(を)いただければと存じます』
・例文『お力添え頂ければと存じます』 - 電話で取引先・上司に伝言を頼むときのビジネスシーン
・例文『○○様に外出から戻った旨、お伝えいただければと存じます』
・例文『○○様に転職会社・ノマドから電話があった旨、お伝えいただければと存じます』
・例文『○○様に~~とお伝えいただければと存じます』
②~いただきたく存じます
命令形「~してください」の代わりに社内外のビジネスメールで使える敬語フレーズ。
- 『~いただきたく存じます』
敬語は以下のように成り立ちます。
- 「いただきたく」は「もらう」の謙譲語「いただく」+願望の「~たい」
- 「存じます」は「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」
使い方はたとえば、
「ご承認いただきたく存じます」とすれば「承認してもらいたいと思います」の意味になりますし、「ご連絡いただきたく存じます」とすれば「連絡してほしいと思います」の意味になります。
他にもビジネスシーンで使える例文は以下のとおり。
– 使い方・例文 –
- 何かを頼むときのビジネスメール結び
例文『ご連絡いただきたく存じます』
例文『ご確認いただきたく存じます』
例文『ご教示いただきたく存じます』
例文『ご意見いただきたく存じます』
例文『ご指示いただきたく存じます』
例文『お力添えいただきたく存じます』 - 電話で取引先・上司に伝言を頼むときのビジネスシーン
例文『○○様に外出から戻った旨、お伝えいただきたく存じます』
例文『○○様に転職会社・ノマドから電話があった旨、お伝えいただきたく存じます』
例文『○○様に~~とお伝えいただきたく存じます』
「いただければと存じます」との違いは、仮定「れば」をつかうか、願望「たい」をつかうかにありますが、ニュアンスとしては大差ありません。
どちらかと言うと「いただければと存じます」のほうが丁寧かもしれないですが、いずれにせよ、どちらを使っても丁寧な敬語です。
③~いただければ幸いです
命令形「~してください」の代わりに社内外のビジネスメールで使える敬語フレーズ。
- 『~いただければ幸いです』
敬語は以下のように成り立ちます。
- 「いただければ」は「もらう」の謙譲語「いただく」+可能形+仮定の「~れば」
- 「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
使い方はたとえば、
「ご承認いただければ幸いです」とすれば「承認してもらえれば嬉しいなぁ」の意味になりますし、「ご連絡いただければ幸いです」とすれば「連絡してもらえれば嬉しいなぁ」の意味になります。
お願いに使うフレーズとしてはもっとも丁寧な敬語です。
他にもビジネスシーンで使える例文は以下のとおり。
– 使い方・例文 –
- 何かを頼むときのビジネスメール結び
例文『ご連絡いただければ幸いです』
例文『ご確認いただければ幸いです』
例文『ご教示いただければ幸いです』
例文『ご意見いただければ幸いです』
例文『ご指示いただければ幸いです』
例文『お力添えいただければ幸いです』 - 電話で取引先・上司に伝言を頼むときのビジネスシーン
例文『○○様に外出から戻った旨、お伝えいただければ幸いです』
例文『○○様に転職会社・ノマドから電話があった旨、お伝えいただければ幸いです』
例文『○○様に~~とお伝えいただければ幸いです』
「いただければと存じます」「いただきたく存じます」との違いは、「幸いです」をつかうかどうかにあります。「いただければ幸いです」がもっとも丁寧な敬語となりますが、上司に使うにはちょっと大げさな表現かもしれません。
いずれにせよ、何を使っても丁寧な敬語です。
④~いただきますよう/~くださいますよう
命令形「~してください」の代わりに社内外のビジネスメールで使える敬語フレーズ。
- 『~いただきますよう
- 『~くださいますよう』
それぞれの違いは以下のとおり。
- 「いただく」の意味は「(自分が)もらう」であり、「もらう」の謙譲語
- 「くださる」の意味は「(相手が)与える・くれる」であり、「くれる」の尊敬語
これ以上に語ると長くなるため省略しますが、ビジネス敬語としては謙譲語「いただく」をつかうのが一般的です。ただしホントは尊敬語「くださいますよう」が正しい使い方であるのは冒頭で述べたとおり。
どうしても気になる方は以下の参考記事をご確認くださいますよう、お願いいたします。
→ 頂く(いただく)は間違い敬語?おかしい謙譲語に感じる理由、使い方
話が逸れましたが使い方は以下例文のとおりです。この表現にしっくりとこない方は、これまで紹介した別の敬語を使いましょう。
– 使い方・例文 –
- 何かを頼むときのビジネスメール結び
例文『ご連絡いただきますよう、(何卒よろしく)お願いいたします』
例文『ご確認いただきますよう、(何卒よろしく)お願いいたします』
例文『ご教示いただきますよう、(何卒よろしく)お願いいたします』
例文『ご意見いただきますよう、(何卒よろしく)お願いいたします』
例文『ご指示いただきますよう、(何卒よろしく)お願いいたします』
例文『お力添えいただきますよう、(何卒よろしく)お願いいたします』 - 電話で取引先・上司に伝言を頼むときのビジネスシーン
例文『○○様に外出から戻った旨、お伝えいただきますようお願いします』
例文『○○様に転職会社・ノマドから電話があった旨、お伝えいただきますようお願いします』
例文『○○様に~~とお伝えいただきますようお願いします』
・お願いいたします は「お願い申し上げます」で言い換えできる
・いただきますよう は「くださいますよう」で言い換えできる
・何卒(なにとぞ) は「どうか」の意味
ビジネス電話で「~してください」と言いたい時に使える敬語フレーズ
ここまではビジネスメール・文書でよく使う依頼の敬語フレーズを紹介してきました。ただ、これをそのまま会話や電話で使うと堅苦しい敬語となってしまいます。
そこで、社内外のビジネス会話や電話で「~してください」とお願いするときのフレーズもまとめておきます。
⑤~していただけますか?
ビジネス会話や電話で何かを「してください」とするときの敬語。
- 例文「~していただけますか?」
使い方はたとえば、上司に何かをしてもらいたいとき。「顧客Aにご同行いただけますか?」とすれば「顧客Aの訪問に同行してほしい」という意味の丁寧な敬語となります。
ほかにもたとえば、以下のような使い方をします。
– 使い方・例文 –
- 商談で取引先に「〜してもらえますか?」と質問する
例文「よろしければ、価格改定を打ち出す背景につきご教示いただけますか?」
例文「よろしければ、お手元の資料をいただけますか?」
例文「○○様に~~の旨お伝えいただけますか?」 - 電話で取引先・上司に伝言を頼むときのビジネスシーン
例文『○○様に外出から戻った旨、お伝えいただけますか?』
例文『○○様に転職会社・ノマドから電話があった旨、お伝えいただけますか?』
例文『○○様に~~とお伝えいただけますか?』
・いただけますか? は「いただけますでしょうか?」とするとより丁寧。ただしバカ丁寧となるリスクあり。
・お伝え願えますか? も伝言する際によく使われる。
⑥~していただけますでしょうか?
ビジネス会話や電話で何かを「してください」とするときの敬語。
- 例文「~していただけますでしょうか?」
「~していただけますか?」とおなじ意味ですが、こちらのほうがよりかしこまった敬語となります。使い方もおなじため省略します。
⑦~してください/~願います
ビジネス会話や電話で何かを「してください」とするときの敬語。
- 例文「~してください」
- 例文「~願います」
としてもまぁOKです。
〜してください は「〜してくれる」の尊敬語「〜してくださる」の命令形です。命令形は強い口調になるため、ビジネスシーンではできるだけ避ける方が丁寧ではあります。
が、
ビジネス会話や電話であれば使ってもよいでしょう。
ただし、
ビジネスメールや手紙・文書などではかしこまった敬語フレーズが好まれます。そんなときにはこれまで紹介してきた例文をご使用ください。
こんなときどうする?最適な敬語フレーズをシーンごとに
いろいろと情報が散らかってきたのでここで中間まとめ。
ビジネスシーンごとにどの敬語フレーズを使うべきか、という点につき整理しておきます。
社内上司や先輩に「~しててください!」
- 電話や会話であれば…
「すみません、○○につきご教示ください」
「○○の件につきご確認ください」
「○○の件につきご容赦願います」
「○○の件につきご対応ください」
「○○の件につきご連絡ください」 - メールであれば…
「大変お手数おかけいたしますが、○○につきご対応のほどお願い申し上げます」
「大変お手数おかけいたしますが、○○につきご確認くださいますようお願い申し上げます」
「大変お手数おかけいたしますが、○○につきご連絡いただきますようお願い申し上げます」
「恐れ入りますが、○○につきご了承いただければと存じます」
社外取引先に「教えてください!」
- 電話や会話であれば…
「すみません、○○につきご教示ください」
「○○の件につきご確認ください」
「○○の件につきご確認願います」
「○○の件につきご対応ください」
「○○の件につきご連絡ください」
「つかぬことを伺いますが…」
「つかぬことをお尋ねしますが…」 - ビジネスメールであれば…
「○○につきご教示のほどお願い申し上げます」
「○○につきご対応くださいますようお願い申し上げます」
「○○につきご連絡いただきますようお願い申し上げます」
「○○につきご確認いただければと存じます」
「○○につきご容赦いただければ幸いです」