「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
行く の謙譲語は
①伺う
②参る
③参上する
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、
- (自分が)明日に伺います
- (自分が)明日に参ります
- (自分が)よろしければ10月10日に貴社へ伺いたく存じます
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「伺います・参ります・参上します」とするのが一般的。
行く の尊敬語は
①行かれる
②お行きになる
※「お行きになられる」は間違い敬語
いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 展示会には部長も行かれますか?
- 展示会には部長もお行きになりますか?
として使います。
尊敬語の「~られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なる」を使うほうが一般的には無難なのですが…
「お行きになる」だとなんだかエロいシーンを想像してしまうため、尊敬語は「行かれる」とするほうがベター。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。
行く の謙譲語「伺う・参る・参上する」使い方と例文
まずは「行く」の謙譲語「伺う・参る・参上する」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
使い方
「行く」の謙譲語「伺う・参る・参上する」の使い方は先にのべたとおり、
「自分が誰か対象となる目上のヒトのところへ行く」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。
そうすると、
- 正しい例文「明日に伺います」
- 正しい例文「明日に参ります」
のような感じで「自分が行く」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「取引先が当社に伺いました」
のような例文はダメ。
目上のヒトなり社外の相手が「来る」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「取引先が当社にいらっしゃいました」とします。
お伺いいたします・お伺いする は二重敬語だから間違い!
「行く」の謙譲語「伺う」にさらに謙譲語「お~いたす」「お~する」をつかうと「お伺いいたす」「お伺いする」という謙譲語になります。
ここでひとつ問題が…
おなじように以下の謙譲語も二重敬語となりNG。
- 間違い敬語「お伺いしたい」
→ 正しくは「伺いたい」 - 間違い敬語「お伺い」
→ 正しくは「伺い」
でも、これらの敬語はビジネスシーンではどの表現もフツーに使われます。ビジネスパーソンのつかう敬語って実は、わたしも含めてBroken敬語なのです。
ということで、
間違っていても突っ込まれることは少ないとは思いますがお気をつけください。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「行く」の謙譲語「伺う・参る・参上する」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「伺います」「参ります」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。
「参る・参上する」よりも「伺う」をよく使う
「行く」の謙譲語「伺う・参る・参上する」の違いについて少し。
参る・参上する と 伺う はどちらも「行く」の謙譲語です。
ただ「参る・参上する」のほうがよりかしこまったというか、古めかしい敬語フレーズとなります。昔のヒトは「明日に参ります」というような表現を好みますが最近は「明日に伺います」というようにすることが一般的。
まぁ、あくまでも感覚的な話とはなりますが…
例文
「行く」の謙譲語「伺う・参る・参上する」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。
ホントに色々と使えます。
- 例文「よろしければ10月10日に貴社へ伺いたく存じます」
例文「よろしければご挨拶かたがた伺いたく存じます」
例文「承知しました。それでは明日14時に伺います」
・使い方はアポイントなどのビジネスメール、会話
・意味はどれを使ってもおなじく「いきます」
・存じる は「思う」の謙譲語でビジネスメールなどかしこまった表現が好まれるシーンで使われる敬語。
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている - 例文「明日に伺ってもよろしいでしょうか?」
・使い方はアポイントのビジネスシーン
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている
行く の尊敬語「行かれる」使い方と例文
つづいて「行く」の尊敬語「行かれる・お行きになる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
※「お行きになる」はひわいなシーンを想像してしまうため「行かれる」を使うほうが無難。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
使い方
「行く」の尊敬語「行かれる・お行きになる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手がどこかに行かれる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 正しい例文「部長が旅行に行かれました」
- 正しい例文「部長は本日、展示会に行かれますか?」
のような感じで「相手が行く」ときにつかいます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長は本日、展示会に伺いますか?」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「行く」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。
お行きになる・行かれる どっち使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「行く」の尊敬語には、
- お行きになる
- 行かれる
と2パターンあります。どれも正しい敬語なのですが「行かれる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまいます。
いっぽうで「お行きになる」はなんだかエロいシーンかのような言葉になってしまいます。
ということでホントはどちらもイマイチな尊敬語なのですが、エロい「お行きになる」よりは「行かれる」のほうがまとも。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「行く」の尊敬語「行かれる・お行きになる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「行かれます」「行かれました」として使うとより丁寧です。
例文
「行く」の尊敬語「行かれる・お行きになる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- 例文「部長が出張に行かれました」
・使い方はビジネス会話やメールで「行きました」と言いたいときに使えるフレーズ。 - 例文「取引先の結婚式には行かれますか?」
例文「今月はいつ出張に行かれますか?」
例文「新商品の展示会には行かれましたか?」
「来る」の尊敬語「いらっしゃる・お越しになる・お見えになる・来られる」を使う。
他にもよく使う敬語の変換表
「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
来る | 伺う 参る 参上する |
いらっしゃる 来られる お見えになる お越しになる |
来ます |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
行かれる お行きになる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
行く の謙譲語・尊敬語はこう使う!
つづいて「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
×部長、A社に伺いましたか?
「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、A社に伺いましたか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトが行くのであれば
- 正しい例文「部長、A社に訪問なさいましたか?」
- 正しい例文「部長、A社に行かれましたか?」
とするのが正解。
×(私が)A社に行かれた
「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)A社に行かれた
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが行くのであれば、
- 正しい例文(私が)A社に伺った
×社外のヒトにたいして「上司は出張に行かれて ご不在です」
「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
- NG例文(社外に対して)上司は出張に行かれて ご不在です
だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。
ということで、
上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。
- 正しい例文(社外に対して)上司は出張のため不在にしております
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「行く」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 行く の謙譲語「伺う・参る」は「伺います」「伺いました」
- 行く の尊敬語「お越しになる・いらっしゃる」は「お越しになりました・いらっしゃいました」
のようにするとより丁寧な敬語となります。