ご教授の程(読み:ごきょうじゅ のほど)
の意味、敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
この記事の目次
ご教授の程 の意味
「ご教授のほど」の意味は「①(学問や技芸的なことを)教え授けてくれるよう」「②教え授けてもらうよう」の2通り考えられます。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
ご教授のほど〜意味は「(学問や技芸的なことを)教え授けてもらうよう・してくれるよう」
「ご教授のほど〜」の意味は「(学問や技芸的なことを)教え授けてもらうよう〜」あるいは「教え授けてくれるよう〜」
あとで解説しますが「のほど」に深い意味はありません。
また「ご教授」のもととなる単語は「教授」であり、尊敬語なのか謙譲語なのかイマイチはっきりとしない「ご」をつかって敬語にしています。
- 「(自分が相手に)教え授けてもらうよう」と考えるのであれば謙譲語の「ご」
- 「(相手が自分に)教え授けてくれるよう」と考えるのであれば尊敬語の「ご」
となります。これは語りはじめると長くなるためひとまず置いておき、細かくは補足①②をご参照ください。
「ご教授の程」というように漢字を用いてもOKですし、「ご教授のほど」と平仮名にしてもOK。
ご教授の程〜の「のほど」ってどんな意味?
ここで「ご教授の程」の「のほど」は限定を避ける言い方で、とくに深い意味はありません。
ここでの意味としては「①〜してもらうよう」「②〜してくれるよう」と2通り考えることができます。
断定をさけて表現をやわらげるのに用いる語です。
「〜のほど」はたとえば、
- ご査収のほどお願い申し上げます
意味「よく中身を確認して受け取ってくれるよう、お願い」 - お取り計らいのほどお願い申し上げます
意味「物事をうまく進めてくれるよう、お願い」 - ご検討のほどお願い申し上げます
意味「検討してくれるよう、お願い」 - ご了承のほどお願い申し上げます
意味「了解してくれるよう、お願い」
などのようにして使います。
これらはもともと「●●してください」という命令形なのですが、「〜のほど」を使うことによって相手に強制しないやんわ〜りとした表現となっています。
ビジネスでは下手(したて)に出ることが基本ですので、強い口調を避けるためにこのような使い方をするようになったのだと推測します。
補足①敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
補足②謙譲語にも「お・ご+名詞」という使い方がある
ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。
じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お・ご」の使い方があります。
謙譲語としての「お・ご」の使い方はたとえば、
「会議日程のご連絡」
「忘年会開催のお知らせ」
「販売状況のご報告」
「転勤のご挨拶」
「貴社ご訪問のお願い」
こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。
ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お・ご」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。
これは、
謙譲語「お・ご」の使い方を知らないためにくる勘違いです。尊敬語の「お・ご」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。
いっぽうで尊敬語の「お・ご」は、「●●部長がお戻りになりました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。
それでは次項より使い方についても見ておきましょう。
ご教授の程 の使い方
つづいて「ご教授の程」の使い方について。
おもに何か技芸的なこと(専門的なこと)を教えてもらいたいときのビジネスメール結び締めに使うフレーズであり、決まりきった使い方のみ。
使い方「問い合わせビジネスメール結び締め」
「ご教授の程よろしくお願い致します」の使い方
おもに何か技芸的なこと(専門的なこと)を教えてもらいたいときのビジネスメール結び締めとして使います。取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使えます。
たとえば、
- 例文「ご教授の程よろしくお願い致します」
- 例文「ご教授のほど何卒よろしくお願い申し上げます」
- 例文「ご教授のほど何卒よろしくお願い致します」
のようにして質問すると丁寧です。
まぁ、ようするに「(学問や技芸的なことを)教え授けてね!よろしく」という意味なのです。
後ろに「お願い致します・お願い申し上げます」を続ける
「ご教授の程」の使い方
さきほど例文にしたとおり「ご教授の程」のあとには「お願い申し上げます」「お願い致します」などの敬語を続けます。
「お願い申し上げます」「お願い致します」の意味はどちらも「お願いします」
敬語の種類は以下のとおり。
▼「お願い申し上げます」敬語の種類
- もととなる単語は「願う+言う」であり、
- 「●●を言う」の謙譲語「お〜申し上げる」で「お願い申し上げる」とし、
- さらに丁寧語「ます」を使って「お願い申し上げます」という敬語にしています
▼「お願い致します」敬語の種類
- もとになる単語は「願う」であり、
- 謙譲語「お〜いたす」で「お願い致す」
- さらに丁寧語「ます」を使って「お願い致します」という敬語にしています
あとは何かを頼んだりするときに添える語「よろしく」を使い
「ご教授の程よろしくお願い致します・お願い申し上げます」
としても丁寧ですし、
あるいは「どうか」という意味の「何卒(なにとぞ)」を使い「ご教授のほど何卒よろしくお願い申し上げます」としても丁寧。
前置きに気づかいのフレーズを!
ビジネスメールの結び締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご教授の程」の前置きに気づかいのフレーズを使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがご教授の程〜」
「お忙しいところ大変恐縮ではございますがご教授の程〜」
「たびたび恐縮ではございますがご教授の程〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがご教授の程〜」
「お忙しいところ大変恐れ入りますがご教授の程〜」
「たびたび恐れ入りますがご教授の程〜」 - お手数=お手間
「大変お手数ではございますがご教授の程〜」
「お忙しいところお手数お掛けしますがご教授の程〜」
「お忙しいところ大変お手数ではございますがご教授の程〜」 - 不躾な質問とは存じますが=失礼な質問とは思うのですけど
「不躾な質問とは存じますがご教授の程〜」
ビジネスメールに使える例文まとめ
ここで「ご教授の程」を使った例文をまとめます。
目上・上司にはもちろんのこと、社外の取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。
ご教授の程お願い申し上げます
例文「ご教授の程お願い申し上げます」
例文「ご教授のほど宜しくお願い申し上げます」
例文「ご教授のほど何卒よろしくお願い申し上げます」
※何卒(なにとぞ)は「どうか・どうぞ」の意味
※「宜しく」は「よろしく」と平仮名にしてもOK
ご教授の程お願い致します
例文「ご教授の程お願い致します」
例文「ご教授のほど宜しくお願い致します」
例文「ご教授のほど何卒よろしくお願い致します」
+気づかいのフレーズ
例文「お忙しいところお手数お掛けしますがご教授の程〜」
例文「お忙しいところ大変お手数ではございますがご教授の程〜」
例文「お忙しいところ大変恐れ入りますがご教授の程〜」
例文「お忙しいところ恐縮ではございますがご教授の程〜」
ご教授のほど・ご教授くださいますよう・ご教授頂きますよう・ご教授いただければ幸いです の違い
ところで「ご教授」の使い方というか続くフレーズには、
「ご教授くださいますようお願い致します」
「ご教授のほどお願い致します」
「ご教授頂きますようお願い致します」
「ご教授いただければ幸いです」
というように主に4つあります。これって何が違うのでしょうか?
「ご教授くださいますようお願い致します」
の意味は「(学問や技芸的なことを)教え授けてくれるようお願い」
※「くれる」の尊敬語が「くださる」
「ご教授のほどお願い致します」
の意味は「(学問や技芸的なことを)教え授けてくれるようお願い」「(学問や技芸的なことを)教え授けてもらうようお願い」
のどちらの意味にも取れる。
「ご教授頂きますようお願い」
の意味は「(学問や技芸的なことを)教え授けてもらうようお願い」
※「もらう」の謙譲語が「賜る・いただく」
「ご教授いただければ幸いです」
の意味は「(学問や技芸的なことを)教え授けてもらえたら嬉しいなぁ・幸せだなぁ」
となり「ご教授くださる」なのか「ご教授いただく」なのか「ご教授のほど」なのか「ご教授いただければ〜」なのかでニュアンスが違います。
どれを使っても丁寧ではありますが使い分けについても考えてみます。
もっとも丁寧なのは「ご教授いただければ幸いです」
いろいろと考えてはみましたがこれまで示した例文はどれも丁寧であり、使い分けする必要性はありません。
強いて言うのであれば「ご教授いただければ幸いです」がもっとも丁寧なお願い・依頼のフレーズ。
これまでと同じようにビジネスメール結び締めとして使います。以下の例文をご参考にどうぞ。
- 例文「ご教授いただければ幸いです。何卒よろしくお願い致します」
- 例文「再度ご教授いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます」
- 例文「お忙しいところ大変恐れ入りますが、ご教授いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます」
「いただく」vs「くださる」の使い分けは難しい
せっかくですので「ご教授いただきますようお願い」「ご教授くださいますようお願い」の違いを考えてみます。
たとえば結び・締めに使う「お願い」するときのシーンを考えましょう
すると…
「ご容赦くださいますようお願い申し上げます」
「ご容赦いただきますようお願い申し上げます」
「ご了承くださいますようお願い申し上げます」
「ご了承いただきますようお願い申し上げます」
「ご検討くださいますようお願い申し上げます」
「ご検討いただきますようお願い申し上げます」
こんな敬語フレーズをよく使います。
実はこれらは「くださる」を使うのが一般的です…
「いただく」としても丁寧ではありますが…
ところが、たとえば何かをもらった時のお礼のシーンを考えます。
「たいそうなお品をくださりありがとうございました」
「たいそうなお品をいただきありがとうございました」
もうひとつ、
「いつもご利用くださりありがとうございます」
「いつもご利用いただきありがとうございます」
上記の例文はどれも敬語としては正しい使い方。
ただ圧倒的に「いただき〜」とするほうが多いですね。
で結論としては使う語によって「くださる」がよいのか「いただく」がよいのか、相性がありなんとも言えません。
結び・締めに使うフレーズとしては「くださいますよう」のほうが一般的で、お礼に使うフレーズとしては「いただきありがとう」を使うのが一般的です。
本来でしたらどれも丁寧な敬語であり同じように使えます。
「ご教授」「ご教示」の意味と違い
ふたたび横道にそれます。
「ご教授」と似たようなフレーズには「ご教示」がありますが…これって何が違うのでしょうか?
それぞれの基本となる意味をまとめると、
- 「ご教示」の意味:(何かを)教え、示すこと
- 「ご教授」の意味:(学問など専門的なことを)伝え、教えること
となりますので、教えることの内容によって「ご教授」と「ご教授」とを使い分けます。
たとえば、
- 敬語の使い方を専門的に教えてほしい時には「ご教授ください」
- 東京駅までの行き方を尋ねたければ「ご教示ください」
を使えばいいということになります。
ビジネスシーンでは「ご教示」をよく使う
ビジネスメールでよく使われるのは「ご教示」の方ですね。これはビジネスシーンで知りたい内容が芸術や学問ではないためです。
ちなみに「ご教授」はビジネスメールで使われることがほとんどで、会話ではもっとシンプルな表現「教えて頂きたいのですが…」「教えていただけますか?」などを使います。
いっぽうで学生が先生に質問するのであれば「ご教授」を使うのが正しい、ということになります。
参考記事
➡︎ ビジネス挨拶文の例文50選(文書・メール・年賀状・時候ほか)
➡︎ ビジネスメールでの「拝啓・敬具」の書き方と位置
➡︎「ご厚誼」「ご交誼」「ご高配」「ご厚情」の意味と違い、使い分け
➡︎「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
➡︎「ご教示」「ご教授」の意味と違い、使い方・メール例文
➡︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
➡︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方