建設業界について知識ゼロの状態から、社員と話ができるレベルまで持っていくための記事。
建設業界の現状・課題・今後の動向・将来性のまとめとなります。
就活・転職のご参考にどうぞ。
※2017年4月|就活生(2018卒/19卒)のために情報を更新
建設業界の基礎知識
まずは基礎の復習から。
ゼネコンとは何か?
まず建設業界といえば思いつくのが「ゼネコン」という単語。
ゼネコンとは何か?をわかりやすく説明すると「ダムや道路、土木工事、ビルなどの大きい工事を請け負う会社」のことを指す。
ゼネコンという名前の由来は、ゼネラル・コントラクター(英語:General Contractor)の略称である。ゼネコンの下請け業者のことをサブコンという(英語:Sub Contractor)。
また「ゼネコンがなにをやっているのか?」簡単に図式化してみると以下のとおり。
●オフィスビルを作るとき
- 顧客
⇅ - 不動産販売会社
⇅ - ディベロッパー
↓ - ゼネコン → 2次下請け → 3次下請け…
・ディベロッパーは企画
・実際の工事はゼネコンが請け負い、下請けに仕事を割り振る
●ダムや道路を作るとき
- 政府、地方自治体、あるいは企業などのクライアント
⇅ 入札 - ゼネコン
↓ - 下請け → さらに下請け…
・実際の工事はゼネコンが請け負い、下請けに仕事を割り振る
つまりゼネコンの仕事とは、請け負った工事に対してどのように進めるのか?を考えて下請けに割り振りするのがメインとなる。実際に手を動かして工事するのは下請け、孫請けの会社となるのである。もちろん工事を請け負っているのはゼネコンであるため、現場監督・施工管理などはゼネコンの仕事になる。
建設業界にいる企業の違い
「建設業界」とひとことにしても実に多くの企業がある。そこで、ざっくりとカテゴリーごとに企業をわけてみる(売上ランキングは後ほど)。
「なにを作っているか? – 住宅なのか、ダム・ビル・土木なのか、工場なのか」で以下のように大きく4つに分けられる。
●ゼネコン大手5社
大林組、鹿島建設、清水建設、竹中工務店、大成建設
ゼネコンの中でもとくに規模の大きい会社のこと。どの企業も売上1兆円ごえ。
●ゼネコン準大手〜中堅以下クラス
長谷工コーポレーション、戸田建設、五洋建設、安藤・間、前田建設工業、三井住友建設、フジタ、西松建設、東急建設、熊谷組、奥村組、鴻池組、ほか多数
規模が準大手〜中堅以下クラスのゼネコン。
●ハウスメーカー
大和ハウス工業、積水ハウス、住友林業、ミサワホーム、パナホーム、三井ホーム、タマホーム、一条工務店、トヨタホーム、ほか多数
私たちが住む住宅を作るメーカーのこと。「○○ホーム、○○ハウス」のような名称が多くてわかりやすいが、そうでない企業もある。
●プラントエンジニアリング・メーカー
日揮、千代田化工建設、東洋エンジニアリング、東芝プラントシステム、ほか多数
プラント(化学工場など)を作るメーカーのこと。名称が長いため「プラントエンジ会社」と省略される。大企業は自社でエンジニアリングの子会社を持っているが、工場新設などのでかい工事は結局、プラントエンジ会社に発注する。
●その他(道路舗装、電気通信などに特化した会社)
前田道路、NIPPO(旧:日本舗道)、九電工、関電工、ほか多数
建設業界の現状
つづいて建設業界の現状のはなし。
建設業界・売上ランキングTOP20
2017年時点での建設業界の売上ランキングをまとめる。「建設業」となっている企業のみ集計している。「不動産業界」については別でまとめる。
- 売上3.1兆円|大和ハウス工業
- 売上1.8兆円|積水ハウス
- 売上1.7兆円|大林組
- 売上1.7兆円|鹿島建設
- 売上1.6兆円|清水建設
- 売上1.5兆円|大成建設
- 売上1.4兆円|大東建託
- 売上1.3兆円|竹中工務店(非上場)
- 売上1.0兆円|住友林業
- 売上8799億円|日揮
- 売上7873億円|長谷工コーポレーション
- 売上6115億円|千代田化工建設
- 売上4926億円|戸田建設
- 売上4915億円|五洋建設
- 売上4753億円|きんでん
- 売上4476億円|関電工
- 売上4417億円|前田建設工業
- 売上4149億円|三井住友建設
- 売上4074億円|NIPPO
- 売上3993億円|ミサワホーム
- 売上3792億円|安藤・間
市場規模57兆円は、ピーク時から半減
建設業界の市場規模は元請のみの建設工事・受注高を参考にした(海外受注分も含む)。
2015年度は前年比+6.2%増の57兆円(民間41兆円、政府関連16兆円)となった。これは6年連続の増加。東京オリンピックにむけた投資が伸びているためと推測。
ただし念のために述べておくが、この数字は全盛期の半分程度にしか満たない。
歴史をご存じない就活生のために、建設大手50社の過去の流れを振り返ってまとめておく。
《建設大手50社のみの累計であるため上記の数字と異なる》
- 1990年度:建設工事受注高25兆円
- バブル期
↓
- バブル期
- 1991〜2000年度:15~19兆円
- バブル崩壊〜失われた10年
↓
- バブル崩壊〜失われた10年
- 2001~2008年度:11~14兆円
- いざなみ景気
↓
- いざなみ景気
- 2009~2012年度:10兆円
- リーマンショック
↓
- リーマンショック
- 2015年度:13.7兆円
- 現在
これは大手50社のみの集計なので、市場全体を表すことはできていない。しかし、建設工事がピーク時の半分になっていることだけは見てとれる。バブル崩壊後、建設業者がことごとく潰れていったのも納得の数字である。
※国土交通省しらべ。調査対象は12,000業者、ダブルカウントになるため下請けの受注額は除除外した。
国内住宅着工件数92万戸も、ピーク時から半減
国内住宅着工件数とは、日本でどれだけ新しい住宅が建てられたか?という統計である。分譲マンション、賃貸マンション、戸建住宅、などすべてを含んでいる。
住宅を建てるお金が誰にいくかというと、
ディベロッパー(三井不動産など)などといったマンション開発者、ゼネコン(鹿島など)などの施工主、住宅メーカー(大和ハウスなど)などの戸建メーカーである。そして、最終的には材料を供給する化学素材メーカーや下請け業者も潤う。
したがって建設業界の現状と今後を知る上で、とても重要な指標である。
※建設業界用語がわからない就活生は、まずこちらの記事(「ディベロッパー」「ゼネコン」の違いとは?建設業界の用語まとめ)でご確認を。
国内住宅着工件数(新設)は2015年度の統計によると約92万戸で、2014年度対比、4.6%増であった。消費増税後の2013年度、2014年度は落ち込んだが、2015年度は大きく回復。消費増税前の2012年度89万戸よりも高い数字となった。
ただし全盛期と比べて半減しており、住宅メーカーにすると手放しで喜べる状況ではない。
こちらも昔話にはなるが、住宅着工件数の要所でのポイントをまとめる。
- 1986~1990年度:住宅着工件数は170万戸が普通のラインだった
- バブル期
↓
- バブル期
- 1991〜2000年度:120万戸を割ったことは一度もなかった
- バブル崩壊〜失われた10年
↓
- バブル崩壊〜失われた10年
- 2001~2008年度:100万戸を割ったことはなかった。
- いざなみ景気
↓
- いざなみ景気
- 2009~2012年度:100万戸を初めて下回る!
- リーマンショック
↓
- リーマンショック
- 2015年度:じわじわと回復するも安定の100万戸われ…
- 現在
まとめると、リーマンショック後(2009年度)に初めて100万戸を下回り、低位安定して今にいたる。当時より回復はしているものの、建設業界にとってはまったく面白くない状況。
公共事業国家予算6兆円も、ピーク時から半減
公共事業国家予算とは、道路などを作るために国が割り振る予算である。
このお金は主にゼネコン(鹿島・清水建設など)へ流れ、最終的にはセメントメーカーや化学素材メーカー、下請け会社に流れる。したがって、建設業界の今後の動向を知る上で重要な指標である。
財務省によると、2016年度の公共事業予算は6兆円。
ここ数年は似たような予算であるが、ピーク時の15兆円(1998年度・バブル崩壊後の景気対策)からなんと半減。今後も増やすことは期待できず、厳しい状況におかれている。
こちらも昔話にはなるが、要所でのポイントをまとめる。
- 1986~1990年度:10~15兆円
- バブル期
↓
- バブル期
- 1991〜2000年度:10~15兆円
- バブル崩壊〜失われた10年
↓
- バブル崩壊〜失われた10年
- 2001~2008年度:7~11兆円(年々カット)
- いざなみ景気
↓
- いざなみ景気
- 2009~2012年度:6~10兆円
- リーマンショック
↓
- リーマンショック
- 2016年度予算:6兆円
- 現在