生命保険の営業はノルマが多いため家族や親戚、友達などにも生命保険をすすめなければならず。「生命保険の営業の仕事をすると友達をなくす」といわれることがあります。
そこで。
「生命保険の営業の仕事に興味があるけど、そんなウワサを聞いたことがあるから不安」という人のために。
今回は、そのウワサがウソか本当かを様々な職種ごとに検証をしたいと思います。
就職活動や転職活動の参考にどうぞ。
生命保険の営業って何するの?
この記事では「生命保険の営業」の定義を「個人の顧客をターゲットとして行う営業」としています。
そもそも生命保険の営業って何してるの?という方のために。
まず生命保険会社が個人顧客向けに取り扱っている生命保険商品と、その販売チャネルについて解説をしていきます。
1.生命保険会社ってそもそも何を売るの?
生命保険会社が取り扱う商品には色々なものがあります。
最も良く知られているものが、死亡したときに保険金が支払われる死亡保険です。
よくテレビなんかで出てくる「保険金目当ての殺人」に使われるアレです。
他にも、
- 病気で入院した場合に入院費用や通院費用、手術代等のための保険金が支払われる医療保険
- 毎月保険料を支払って、それを生命保険会社が運用して契約者が一定の年齢に到達したときに保険金が年金として支払われる年金保険
- 系列会社や親密先の損害保険会社が取り扱う自動車保険や火災保険などの損害保険
- 元本割れのリスクを説明できると会社から判断された営業だけが取り扱える投資信託
などを売ることもあります。
2.生命保険ってどうやって売るの?販売チャネル
生命保険会社は、こうした様々な商品を複数の販売チャネルで販売しています。
その中で最大の販売チャネルが、「生保レディ」です。
自社の内勤が営業を担当する一般的な会社と違って、生命保険会社では保険外務員と呼ばれる全国に約23万人いる営業担当者(その9割以上が女性)が生命保険を売ります。
最もメジャーな販売チャネルであり、世間で「生保の営業」といえばこの生保レディを指すことが一般的です。
しかし他にも以下のような販売チャネルあり。
- 保険代理店:自社の商品だけでなくいろいろな金融商品を扱う。各社の商品を比較検討できる保険ショップ。
- 銀行窓販:銀行の窓口で売っている保険。顧客の資産状況を踏まえたコンサルティングを強みとする銀行の窓口。
- インターネット販売:割安な保険料と手軽な手続きで生命保険をネットで提供する
などなど。いくつもの販売チャネルがあります。
これらの販売チャネルには通常、生保レディではなく、総合職からエリア総合職や一般職まで、幅広い職種の社員が携わることが多いです。
そのため、これらの職種の人たちも販売チャネルは違えど「生命保険の営業」なのです。
3.いろいろな職種があるため、必ず友達を無くすと言えない
このように生命保険会社の営業職といってもいろいろな職種があります。
したがって結論としては、
- 「いろいろな職種があるため、生保営業になったら必ず友達を無くすと言えない」
ということです。
でも確実に友達を無くす職種もあるため、この結論の根拠について。もうすこし詳しくひとつづつ紹介していきますね。
生命保険の営業は本当に友達をなくすのか?
それでは、職種ごとに「生命保険の営業の仕事をすると友達をなくす」というのが本当かどうかを見ていきたいと思います。
1.生保レディ(変動給)営業は友達なくすか?
生命保険、個人年金保険、企業福利厚生制度(企業年金・財形制度等)、損害保険の販売とアフターサービスを行う職種です。
先ほど述べたとおり、皆さんがイメージする一般的な生保レディはこれにあたります。
固定給部分が小さく、変動給部分が大きな割合を占めるという特徴があるため、売れば売るほど給料が高くなっていきます。
が、その裏返しで売れなければ給与はものすごく低くなってしまいます。
こうした給与体系や会社から与えられるノルマがあることによって、生保レディは貪欲に生命保険を売るのです。
生命保険が売れない生保レディは、給与を稼ぐため、あるいはノルマを達成するために、家族はもちろん、親戚や友達にも生命保険に加入するよう頼みます。
お願いをしてみて、実際に生命保険の加入や見直しをしている人に運よくあたればいいのですが、そういったことは極めてまれです。
そしてあまりにもガツガツ行き過ぎると親戚や友人からは「あの人に会ったら生命保険を売りつけられるから距離を置こう」と避けられてしまいます。
その結果、友達が離れていってしまうという話はよくあることです。
そして。
このような人は、普段の営業活動では顧客に生命保険に入ってもらうことができない人ということになるので、いずれは、まったく生命保険が売れなくなって、会社もクビになってしまいます。
悲しいことに。
生命保険の営業をきかっけに友達も仕事もなくしてしまう不幸すぎるケースもあるのです。
2.生保レディ(固定給)営業は友達なくすか?
大企業を中心とした法人・職域マーケットにて、高度な専門知識を駆使したコンサルティング営業を行う職種です。
個人の顧客を相手に生命保険を売るという点では生保レディ(変動給)と同じ。
変動給と違う点は、
- 給与の固定給部分が大きいこと、
- 会社の職場を訪問して営業に特化していること、
- 多くの場合大卒を要件としているため、コンサルティングの要素を取り入れた高度な営業が求められること
です。
社会人経験のある人であればイメージがつくかもしれませんが、職場にやってきたり、エレベーターホールに立っている若いおねえさんがこの職種にあたると考えていいでしょう。
この職種は、固定給部分が大きく変動給部分が小さい給与体系であるため、生保レディ(変動給)と違って売れなかっときの給与への影響はそこまで大きくありません。
しかし。
とはいっても生命保険を売れば売るほど給与は上がるので、ガンガン稼ぎたい人は、生保レディ(変動給)と同様に親戚や友達に生命保険に入ってもらうようアプローチをします。
当然、ガツガツ行き過ぎると周囲からは避けられ、友達が離れていってしまいます。
3.営業総合職はどう?
営業のスペシャリストとして、全国の営業拠点の管理者になって、生保レディのマネジメント業務を行う職種です。
自ら生命保険の営業をするというよりは、拠点長になって生保レディに売らせる、支社長になって管理する営業拠点の拠点長に売らせるというような仕事です。
実は…
この営業総合職こそが、すべての職種の中でもっとも友達をなくしやすい職種なのです。
というのも。
この営業総合職は、入社してから退職するまで営業の最前線で生きていかなければならないからです。
入社時から軍隊の様な教育を受け、生命保険が売れなければ、殴られる、蹴られる、暴言を吐かれる、恫喝される、無視されるなどの肉体的・精神的なパワハラを受けます。
そこにはパワハラなんていう概念は一切なく、すべて「教育・指導」の一環で行われます。
そうした戦前教育のようなものを受けて、将来的には拠点長や支社長になり、営業のスペシャリストとして活躍することを求められるのですが…
拠点長であれば支社長から、支社長であれば営業部門の担当役員から受けるプレッシャーは、生保レディやその他の職種の比ではありません。
売れている拠点長や支社長は会社で神様のような扱いを受ける一方、売れない人はごみ以下の扱いを受けることになります。
当然売れない人の人権なんて無視されます。
こうした職場環境で育つため、営業総合職の人たちは、常に強迫観念に駆られながら仕事をしている人が多いのです。
自分が管理する営業拠点の業績をあげるために、家族や知人に生命保険を加入させることを生保レディに強要したり、自分の知人にも強烈なアプローチをします。
遠い親戚や仲のいい友達はもちろん、疎遠になった友達や、友達の友達、飲み屋で知り合った人にいたるまで、見境なくえげつないアプローチをかけます。
逆にそこまでできないと、営業総合職としては1人前とはみなされないのです。
当然、こうしたことで友達はもちろん、親戚も遠ざかっていってしまいます。
4.エリア総合職は友達なくすか?
各部門における戦略の企画・執行、経営管理、フロント職務等、各分野において専門性を高め、広範なビジネスフィールドで多彩な職務の中核として活躍が求められる職種です。
「転勤を伴わない総合職」ともいえますが、会社によっては最初の数年間は生保レディ(固定給)同様、会社の職場を訪問して営業をすることもあります。
しかし、内勤の職種なのでどれだけたくさん売っても賞与に少し反映される程度で、給与に反映される度合いは大きくありませんし、ノルマも生保レディに比べて厳しくありません。
また。
ずっと営業をし続ける職種ではないため、そこまで営業に打ち込む人もほとんどいません。
そのため、この職種では生命保険の営業をしても友達をなくすことはまずありません。
5.一般職の場合
多様な職務経験に従事して、総合職や生保レディがスムーズに仕事をすすめられるようにサポートをする職種です。
総合職や生保レディのサポートをする仕事なので、本社にいればそもそも生命保険を売る機会がありません。
しかし、最近では一般職が全国の支社や代理店などに配属されて、営業の仕事をしなければならないケースも増えてきています。
そうしたところに配属された場合は、一定程度のノルマが課せられますが、エリア総合職同様、内勤の職種なので、売れても人事評価が少し良くなるだけで給与や賞与にもほとんど反映されません。
当然、売れなかったからといって強くとがめられたり、ましてやクビになることもありません。
そのため、生命保険の営業をしても、生保レディ(変動給)や営業総合職のように友達をなくすことはまず有り得ません。
6.総合職の場合
各部門における戦略の企画・執行、経営管理、フロント職務等、各分野において専門性を高め、広範なビジネスフィールドで多彩な職務の中核を担う職種です。
総合職自ら生命保険を売ることはほとんどありませんが、以下のような部門で営業をする場合は第三者に生命保険を売ってもらう働きかけをしなければなりません。
▼代理店営業の場合
「ほけんの窓口」のような保険ショップや、税理士・公認会計士に、自社の生命保険商品の販売をしてもらう必要があるため、自社の商品の特徴や、他社の商品との違い、セールストークなどを分かりやすく説明して伝える。
▼銀行窓販営業の場合
銀行の本社や本店に自社の商品を取扱ってもらうよう交渉を行い、銀行窓販での取扱いが決まった場合には、同銀行の各支店に赴き、行員がスムーズに販売できるように顧客への効果的な話法やアプローチ等に関する研修・教育を行う。
▼拠点長の場合
生保レディを束ねる営業拠点のトップとして、社会人の常識が必ずしも通用しない、「お母さん世代」の生保レディが保険を売れるようにマネジメントをすることが求められる。営業総合職と同様、数字が挙がらなければ支社の幹部から恫喝されることも当たり前にある。
以上をまとめると。
- ①代理店営業と銀行窓販営業であれば、生命保険が売れなくてもそこまで会社からとがめられることはないため、生命保険を親戚や友達に売ろうとする人はほとんどいません。
しかし。
- ②拠点長の場合は、営業総合職と同様に支社長からの激烈なプレッシャーやパワハラによって、「生命保険が売れないと殺される」という思いに駆られます。
そのため、生保レディが順調に売ってくれている場合はいいのですが、売れずに営業拠点の業績が悪くなると、家族や知人に生命保険を加入させることを生保レディに強要したり、自分の知人にも強烈なアプローチをします。
そのため当然、こうしたことで友達や親戚が遠ざかっていってしまいます。
まとめ
「生命保険の営業は友達なくす」がウソか本当か、という問いに対しては・・・
「半分ウソで半分本当」になります。
エリア総合職、一般職、総合職の拠点長以外の業務であれば、そこまでガチガチにノルマを求められることはなく、周囲の人に無理に生命保険をすすめることはないため、友達とも良好な関係を維持することができます。
一方で、ノルマが課せられている生保レディや営業総合職、総合職で拠点長の業務に就いている人の場合は、生命保険が売れないからといって周りの人にガツガツ行きすぎて生命保険をすすめると友達をなくす可能性があります。
しかし、そもそも普段の営業活動を通じてちゃんと生命保険が売れていれば友達にすすめる必要もないのです。
最近はノルマ至上主義ではなくなってきている
また。
過去にはどこの生命保険会社もノルマ至上主義の経営に傾倒しすぎていたために、業界全体が既存顧客を放ったらかしにして、新規顧客開拓に奔走し、いろいろな問題が起きました。
したがって。
最近ではどこの生命保険会社もノルマを過剰に求めることは少なくなってきています。
営業総合職や、ガンガン売って稼ぎたい人でないかぎり、そこまでガツガツいかなければならない状況は少なくなってきていますね。
「生命保険の営業をすると友達をなくすんじゃないかな…」と心配に思っている人は、「営業総合職にならない限り大丈夫」ですので、安心して生命保険業界に飛び込んできてください。
就職活動・転職活動の参考にしていただければ幸いです。