3分でわかるOLEDディスプレイ|構造・メーカー・メリット&デメリット

OLED(オーレッド)とはOrganic Light Emitting Diodeの略。日本語に直訳すると有機発光ダイオードとなる。OLEDディスプレイはOLEDを使って作られたディスプレイであり、LCD液晶ディスプレイでは実現できなかった「曲げられるデザイン」がメリット。韓LG、韓Samsungのテレビを中心に使われている。

またOLEDディスプレイの一種であるAMOLED(アモレッド)ディスプレイは韓国Samsungの2010年発売以降の「Galaxy Sモデル」に全面的に採用されている。

そこで今回はOLEDディスプレイとは何か、その構造・メーカー・メリット&デメリットを解説する。

前回の記事と重複する部分が多いですが、ご了承ください。

そもそも有機ELとOLEDディスプレイの違いって何?

答え:有機EL=現象を指す、OLED=製品を指す

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有機ELというのは光を発する現象につけられた名前であり、商品名ではない。いっぽうOLEDは有機ELの仕組みを使って作られた製品(化合物が光を発するライト)のことを指す。LEDの進化バージョン。そしてOLEDを使って作られたディスプレイがOLEDディスプレイということになる。さらにはOLEDの中にもAMOLEDとPMOLEDという二つの製品が存在する。

図式化するとこんなイメージ。

有機EL(現象)> OLED(ライト)> OLEDディプレイ(画面)> PMOLEDパネル(画面)、AMOLEDパネル(画面)

OLEDディスプレイとLCD液晶ディスプレイの違い:構造・原理

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画像左:LCD(液晶ディスプレイ)の構造・原理
画像右:OLEDディスプレイの構造・原理

違い①色を出す仕組み

OLEDディスプレイと液晶ディスプレイの違いは、どうやって色を出すかにある。OLEDディスプレイの場合は自分で光を出す化学品(=OLED)を使う。いっぽうの液晶ディスプレイは自分で光を出せないため、色をだすにはバックライトと液晶(Liquid Crystal)が必要になる。※色とは光の種類のこと。光の種類=光の波長が違っているため青に見えたり赤に見えたりする。

  • OLEDディスプレイ=発光体にOLED(有機発光ダイオード)を使う
  • 液晶ディスプレイ=発光体にバックライトと液晶の組み合わせを使う

違い②構造がシンプルになる

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画像左:LCD(液晶ディスプレイ)の構造・原理
画像中央:OLEDディスプレイの構造・原理(ガラス基板)
画像右:OLEDディスプレイの構造・原理(フィルム基板)

色を出す仕組みを変えたことで、いらなくなる材料・部材があるため構造がシンプルにできる。液晶ディスプレイとOLEDディスプレイでは、構造が以下のように違ってくる。

  • 画像左:液晶ディスプレイの構造
    ①バックライト②偏光板③基板ガラス④液晶⑤保護ガラス⑥偏光板
  • 画像中央:OLEDディスプレイの構造(ガラス基板)
    ①基板ガラス②OLED③保護ガラス④偏光板
  • 画像右:OLEDディスプレイの構造(フィルム基板)
    ①基板フィルム②OLED③ガスバリア封止材④偏光板
    ▼本当はもっとややこしいが重要な構成だけをまとめている

OLEDは2種類の構成が記されているが、変更点はガラス→フィルム。ガラスは固くて曲げると折れてしまうが、フィルムなら曲げられる。このガラス→フィルムへの変更でOLEDは曲げられるようになった(本当はもっとややこしい)。

結論は、液晶パネルよりもOLEDパネルのほうが構造がシンプルだから、薄くできるし、応答速度も速くなるし、電池も食わないし、コストも安くなる。ハズ…

OLEDディスプレイとLCD液晶ディスプレイのメリット・デメリット

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Source: LED Net

液晶ディスプレイとの比較でOLEDディスプレイのメリット、デメリットを比較する。これは語りつくされているため、一般論にツッコミを入れていく。

メリット(一般論)

  1. 薄くできる
  2. 応答速度が速くなる
  3. 消費電力が少ない
  4. 色彩がキレイ
  5. 曲げられる(AMOLEDパネル、フィルム基板のOLEDパネル)
    ▼現時点では技術が未完成で理想的な性能がでていない

デメリット(一般論)

  1. 値段が高い
  2. 焼き付きがおきる
  3. 小型ディスプレイはできるが大型化すると不良品ばかりになる
    ▼すべて本当

液晶パネルよりもOLEDパネルのほうが構造がシンプルだから、薄くできるし、応答速度も速くなるし、電池も食わないし、コストも安くなる。というのが一般論。

でも本当は今の液晶ディスプレイ技術を考えるとOLEDパネルのメリットは⑤曲げられることだけ。①~④は実際には液晶ディスプレイのほうが上か、同じくらいの性能である。デメリットは全て本当のこと。

だから価格が最重要になっているテレビのディスプレイには採用できない。で、仕方なく高値で売れて利益もとれるスマホ分野で拡大することにした。最終的にはご存知の通り、iPhoneとの違いを出そうとSamsung/Galaxyが無理やりデザイン性をPRし採用して今に至る。

だが今後、技術が進めば課題を解決できるかもしれない。

OLEDディスプレイのメーカー

世界市場シェアの高い順にOLEDディスプレイ・メーカーを並べていく。世界の2大メーカーがSamsungとLGで、他は弱小もしくは投資段階で成果がない。そもそもディスプレイ市場の95%~99%が液晶パネルであり、有機ELはまだまだこれから。売れなければ期待はずれに終わる可能性も十分にある。

  1. 韓国Samsung電子(サムスン)
    ▼いろいろなメーカーから事業を買収して今に至る。液晶ディスプレイも作っている。
  2. 韓国LG Display(エルジー・ディスプレイ)
    ▼液晶ディスプレイの大手でもある。
  3. 中国勢(投資段階で2018年以降に本格化か?)
    ▼中国は液晶ディスプレイの一大生産拠点でもある。
  4. 日本勢:シャープ・ジャパンディスプレイ。投資検討段階。
  5. 日本勢:ジェイオーレッド(JOLED)
    ▼産業革新機構、ソニー、パナソニック、ジャパンディスプレイが出資する合弁会社。次世代OLEDの開発を進めている。

OLEDディスプレイの動向

LG Display(韓国)の動向

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Source: LG

上の画像はLG Displayが2016年11月に発表したOLEDディスプレイの開発・上市スケジュールである。これによるとフレキシブルOLEDを2017年に上市し、折りたためるテレビ・パソコンなどに適用していくとある。まぁ単なるロードマップだから何の保証もないのだけど…

Samsung(韓国)の動向

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いっぽう、スマホむけのAMOLEDでそれなりの成功を納めている世界トップのSamsungはどう動くか?最近のロードマップは公式にはまだ発表されていないため、詳細については控える。方向性としてはLG Displayと同じだろう。開発・上市でLGを一歩リードしている形となっているため現実的かも。

JOLED(ジェイオーレッド)の動向

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Source: JOLED

唯一の日系メーカーであるジェイオーレッド。上記はジェイオーレッドのターゲットを示している。狙っている方向は他のメーカーと何も変わらない。OLEDディスプレイを売ってはいるが赤字垂れ流しの状態で黒字化のめどは立っていない。開発会社の宿命だろう、OLEDは赤字であってもやっていることに意味があると考える。

OLEDに関連する用語一覧

  • LCD(Liquid Crystal Display)パネル=液晶ディスプレイ
  • LED(Light Emitting Diode)=発光ダイオード、有機ELを生み出すきっかけとなった
  • 有機EL(Organic Electro-Luminescence)=有機エレクトロルミネッサンス
  • OLED(Organic Light Emitting Diode)=有機発光ダイオード
    • AMOLED(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)=アモレッド、有機ELの一種。
    • PMOLED(Passive Matrix Organic Light Emitting Diode)=名称なし、有機ELの一種。AMOLEDと方式が違う
    • FAMOLED(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)=フレキシブル・アモレッド、曲げられるディスプレイ

まとめ

前回の記事の繰り返しになるが…

OLEDディスプレイ(AMOLED含む)はスマホやスマートウォッチといった小さいディスプレイでの採用がメイン。テレビむけはSamsungやLGが取り組んでいるが、何が液晶と違うのかまったく分からない。自社で設備をもっているため何とかして使わないとダメなのだろう。

なぜAMOLEDやOLEDが小型のディスプレイにしか適さないかというと、欠点は生産性の悪さにある。小型であれば比較的作りやすいが、大型にすると生産性が極端に落ちる。大きいパネルだとムラができやすい。結果、生産性が悪くなりコストが高くなる。

いっぽう小型パネルは生産の課題はそれなりにクリアし、さらには液晶と同じくらいのコストでいけるようになってきたらしいが…中国・台湾メーカーが液晶パネルの値段を下げればそれで終わる。結局は「デザインの自由度」で押していくしかないのである。

だが今後、技術が進めばすべての課題を解決して液晶ディスプレイを置き換えることができるかもしれない。それが10年後になるのか100年後になるのか、誰にもわからない。

『3分でわかるOLEDディスプレイ|構造・メーカー・メリット&デメリット』へのコメント

  1. 名前:m.k 投稿日:2016/12/01(木) 07:42:19 ID:71e777e1b 返信

    はじめまして。大変参考になる記事ばかりで助かっております。
    旭硝子、富士フイルム、東レ、日産化学、コニカミノルタ、昭和電工でしたら、どの企業が最も安定していると思われますでしょうか?(10年以上は大丈夫そう)
    そして、オススメはどちらになりますでしようか?
    リストラがない企業はございますでしょうか?

    • 名前:のまどサラリーマン 投稿日:2016/12/02(金) 02:20:47 ID:5e336a9cb 返信

      お問い合わせありがとうございます!
      さてご質問の件、以下のとおりに回答をいたしますのでご査収ください。

      ①6社の中でどの企業が最も安定しているか?
      10~20年くらいの期間でみると、この6社は潰れる心配ありません。問題があるとしたらそれ以降ですね。
      化学業界は変化に乏しいゆっくりな業界なのです。コニカは化学メーカーではありませんが、こんな順位になります。
      1. 日産化学工業(安定感抜群、リストラなし)
      2. 東レ(安定感抜群、リストラなし)
      3. 旭硝子(かつての勢いはない、リストラあり)
      4. 昭和電工(低位安定。現時点でリストラなし、将来的にリストラの可能性あり)
      5. 富士フィルム(リストラあり)
      6. コニカミノルタ(リストラあり)
      →リストラなしの企業でも本当にまったく使えない人材は50歳前後で「追い出し部屋」に送られます。

      ②おすすめの企業
      もし仮に全部の企業に内定したら、私なら以下の順番にしますかねぇ。。。
      1. 日産化学工業(ぬるま湯、それなりの給料、安定感抜群)
      2. 旭硝子(業績悪くても高給)
      3. 東レ(仕事量の割に給料が低い)
      4. 昭和電工(会社の20年後に不安、何かの保険をかけておく)
      5. コニカミノルタ(会社の20年後に不安、何かの保険をかけておく)
      6. 富士フィルム(会社は存続するも自分のキャリアに不安。私は言いたい放題・やりたい放題のタイプなので間違いなくリストラされます。)

      ちなみに給料だけでみるのでしたら旭硝子がトップになります。
      以上、ご参考になりましたら幸いです。

      管理人

  2. 名前:m.k 投稿日:2016/12/02(金) 05:24:34 ID:04a9d2aef 返信

    ご返信頂きありがとうございます。
    規模は大きくなくても、日産化学社は安定しているのですね。
    私も言いたい放題の性格でございますので、東レ以上のところにしたいと思っております。
    規模ではないんですね。

    • 名前:のまどサラリーマン 投稿日:2016/12/04(日) 00:41:40 ID:019eeb0e3 返信

      そうですね。
      化学メーカーにおいて規模はそれほど重要ではなく、どんなビジネスを展開しているかが最も重要です。

      規模の大きいメーカーは得てして汎用品の売り上げ比率が高く、グローバル競争の中で生き残るのは難しいと考えます。
      そこで、中堅でもニッチ分野で圧倒的に強い立場にいるメーカーへの就職をおすすめします。

      ご参考になりましたら幸いです。

      管理人