拝辞申し上げます(読み:はいじもうしあげます)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まず簡単にまとめを。
「拝辞申し上げます」の意味は直訳すると「辞退する」。
敬語(謙譲語)をつかっているため実際にはもっと丁寧で「つつしんで辞退します」の意味になります。ようは断りのフレーズ「辞退します」よりもかしこまった感じの敬語とお考えください。
使い方は就職・転職の内定や面接を「辞退します」と断りたいとき。
- 【例文】大変申し訳ありませんが内定を拝辞申し上げます。
- 【例文】せっかくのご指名ですが拝辞申し上げます。
- 【例文】拝辞いたします。/拝辞させていただきます。
たとえば上記のように「辞退します」の代わりに、よりカチッとした断りフレーズとしてつかうと丁寧です。どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現。
なお。
等しくつかえる言い換えには「辞退する」「見送る」などあり。あえて「拝辞」という謙譲語をつかわずとも言い換えできます。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
“拝辞申し上げます”の意味と使い方
拝辞(読み:はいじ)の意味は・・・
- いとまごいすることをへりくだっていう語。
- 辞退することをへりくだっていう語。
ビジネスシーンで使われるときには「辞退すること」の謙譲語として用いられることが多いです。
「辞す」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。
※なお類語は「辞退(じたい)」「見送る」などあり
「拝辞申し上げます」だと「辞退する」の意味となります。
結局のところ断りのフレーズなのですが…「拝辞」をつかうとより大げさな(丁寧な)印象となります。
●参考記事:ビジネスメールにおける断り方のすべて
身近な「拝辞」のたとえ・例文
「拝辞申し上げます」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…
- キャプテンに任命されたけど辞退する
というとき「大変申し訳ありませんが、拝辞申し上げます」or「拝辞させていただきます」or「拝辞いたします」 - PTA会長に任命されたけど辞退する
というときに「せっかくのご指名ではございますが、拝辞申し上げます」or「拝辞させていただきます」or「拝辞いたします」 - 就職の企業への内定を辞退する
というときに「大変失礼ながら、貴社の内定を拝辞申し上げます」or「拝辞させていただきます」or「拝辞いたします」
こんなシーンでつかいます。
「拝辞する」のより丁寧な敬語
なお「拝辞」の使い方として。
例文にもしましたが「拝辞」を単体でつかうことはほとんどなく。「辞退する」の意味で「拝辞する」としてつかうケースがほとんど。さらに「〜する」の部分を以下のようにもっと丁寧な敬語にしてつかいます。
- 【丁寧】丁寧語”ます”をくっつけて「拝辞します」
- 【かなり丁寧】謙譲語”いたす”丁寧語”ます”で「拝辞いたします」
- 【さらに丁寧】謙譲語”申し上げる”丁寧語”ます”で「拝辞申し上げます」
- 【バカ丁寧】謙譲語”させていただく”丁寧語”ます”で「拝辞させて頂きます」※相手の許しを請うようなニュアンスでつかう。
【例文】ビジネスメール・文書
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「拝辞申し上げます」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文①選考を辞退する(転職メール)
メール件名:選考辞退のお詫び(氏名)
転職株式会社
人事部
◯◯ 様
お世話になっております。
転職ノマドです。
さて標記の件、先日貴社より次回選考のご案内をいただいておりましたが、
諸事情により選考を拝辞申し上げます。
貴重なお時間をいただいておきながら、このような返事となり誠に申し訳ございません。
また、本来であれば直接伺いお詫びするべきところ、
メールでの連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
今後、何かのご縁でご一緒させて頂く機会がありましたら、
その際にはどうぞ宜しくお願い致します。
************************************
転職のまど
〒xxx-xxxx
●●県●●市●●Δ-Δ-Δ
電話番号:00-0000-0000
携帯電話:090-0000-0000
E-mail:nomad@gmail.com
************************************
ビジネスメール例文②内定を辞退する(就活メール)
メール件名:内定辞退のご連絡(就活大学・就活)
転職株式会社
人事部 ◯◯ 様
お世話になっております。
就活大学の就活太郎です。
さて、先日貴社より内定のご連絡をいただいておりましたが、
私事都合により内定を拝辞申し上げます。
貴重なお時間をいただいておきながら、このような返事となり誠に申し訳ございません。
また、本来であれば直接伺いお詫びするべきところ、メールでのご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
今後、何かのご縁でご一緒させて頂く機会がありましたら、
どうぞよろしくお願いいたします。
**********
メール署名
**********
ビジネスメール例文③面接を辞退する(転職メール)
メール件名:面接辞退のお詫び(転職一浪)
転職株式会社
人事部 ◯◯ 様
お世話になっております。
転職一郎です。
標記の件、5月15日13:00より貴社の二次面接に参加予定でしたが、
私事都合により面接を拝辞いたします。
お時間を頂いておきながら、このような返事となり誠に申し訳ございません。
また本来であれば直接伺い謝罪するべきところ、
メールでの連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
今後、何かのご縁でご一緒させて頂く機会がありましたら、
何卒よろしくお願い致します。
***********
メール署名
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【注意点】”拝辞申し上げます”はこう使う!
つづいて「拝辞申し上げます」の使い方というか注意点について簡単に。
①”ご拝辞申し上げます”は二重敬語!
「拝辞申し上げます」をつかうときの注意点その一。
もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「ご拝辞申し上げます」はNGです。
「拝辞」はすでに「辞退すること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…
結果として「辞退すること」に①謙譲語「拝辞」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。
あるいは。
「お(ご)~する」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝辞申し上げます」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~」の謙譲語が「お(ご)~する」だという解釈を適用した場合には「拝辞」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。
②”拝辞申し上げます”は二重敬語ではない!
あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。
「拝辞申し上げます」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
なぜ「拝辞申し上げます」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…
「拝辞」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「申し上げる」をつかって「拝辞申し上げる」としているから…
「拝辞=謙譲語」×「申し上げる=謙譲語」
「拝辞申し上げます」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??
このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。
ただし答えは…「二重敬語ではない」です。
二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。
たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。
ところが。
「拝辞申し上げる」は以下のように「①辞退すること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
① 「拝辞」=「辞退すること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「申し上げる」=「する」の意味の謙譲語
③断りのフレーズは「拝辞」や「辞退」だけじゃない!
「拝辞」はこれまで見てきたように「辞退します!」の代わりにつかえる、より堅苦しい(丁寧な)お礼フレーズです。とくにビジネスメールやビジネス文書・手紙といった文章でもちい、会話ではつかいません。
ただ。
辞退するときにいつも「辞退します」や「拝辞申し上げます」を使っていてはビジネス敬語ビギナー。シーンに応じていろいろな断りフレーズをつかえるようになると本当に表現の幅が広がります。
そこでほんの一部ですが、ほかにもある断りフレーズを紹介しておきます。
- 『お見送りいたします/見送らせていただきます』
- 『遠慮いたします/遠慮させていただきます』
- 『お気持ちだけ頂戴します』
- 『お受けいたしかねます』
●参考記事:ビジネスメールにおける断り方のすべて