敬語「申し伝える」の意味と使い方|対上司・電話・メールetc

「申し伝える」は間違い敬語?

上司・目上に失礼?

とご心配のあなたへ。

「申し伝える」は敬語としては正しいものの、あやまった使い方をしてしまうと目上・上司・取引先にたいして失礼にあたります。

間違った使い方にはたとえば…

【NG例文×】

  • 社内上司のまえで…かしこまりました、社長に申し伝えます!
    → 社長に失礼にあたる
  • 先輩のまえで…承知しました、部長に申し伝えます!
    → 部長に失礼にあたる

※なぜ間違いなのかという解説は本文にて。

などがあります。

とくに電話対応でやってしまいがちなミスですね。

ちなみに上記のビジネスシーンでは、

【正しい例文】

  • 社内上司のまえで…かしこまりました、社長にお伝えします!
  • 先輩のまえで…承知しました、部長にお伝えします!

※なぜ正しいのかという解説は本文にて。

とするのが正しい敬語の使い方です。

それでは、

「申し伝える」のビジネスシーンにおける正しい使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、例文を紹介します。

“申し伝える”の敬語

まずは「申し伝える」の意味と敬語について間単に。

「申し伝える」は二重敬語ではありませんし、間違い敬語でもありません。

正しい敬語です。

敬語としては以下のように成り立ちます。

  • もとになる語”言う”に謙譲語「申す」
  • さらに”伝える”をくっつけて「申し伝える」

※さらに丁寧語”ます”をくっつけて「申し伝えます」として使います

もとになる単語「言う」に謙譲語「申す」を使って「申し伝える」という敬語にしており、正しいことがわかります。

したがって意味としては「言い伝える」の丁寧な敬語ということになります。

誰を立てているのか?

重要なのでココですこし。

「申し伝える」という敬語(謙譲語)はいったい誰を立てている(敬っている)のでしょうか?

答えは…いま話している相手です。

上司と話しているのなら上司

先輩と話しているのなら先輩

お客様と話しているのならお客様

をそれぞれ立てて(敬って)います。

したがってたとえば、

  • (客のまえで)上司に申し伝える → 客を立てていることになる
  • (上司の前で)同僚に申し伝える → 上司をたてている
  • (上司の前で)新人に申し伝える → 上司をたてている
  • (上司の前で)両親に申し伝える → 上司をたてている

※伝える先である見えない第三者を立てているわけではない

というような図式になります。

敬語って二人で完結しているときはいいのですけど、見えない第三者があらわれるとたちまち難しくなるのですよね…

ちなみに敬語「申し伝える」は自分が「伝える」ときにつかいます。

相手に「伝えてもらう」としたいときには…

「お伝えいただく=伝えてもらう」
「お伝えくださる=伝えてくれる」

という敬語をつかいます。

謙譲語”申す”の例

謙譲語「申す」はたとえば…

  • 【例文】(取引先にたいして)上司がぜひ●●様にご挨拶したいと申しておりました
  • 【例文】私、ノマドと申します
  • 【例文】母が残業を減らすべきだと申しておりました

のようにして使います。

注意点として…

お客様のまえではたとえ上司であろうとウチになるため、決して上司を立てないように。

上司が話していたことをお客様に伝えるときは、上司ではなくお客様を立てます。したがって上司の発言にたいして「申しておりました」のように謙譲語をつかいます。

たとえば「上司が●●様にご挨拶したいとおっしゃっていました」とするのは間違い。上司を立ててしまっています。

同様に自分の身内・家族もウチですので、ソトではなすときには家族は立てずに相手を立てます。

シーン別の正しい使い方

ここまでの解説で「申し伝える」が100%正しい敬語であることがわかりました。

ところが冒頭でものべたとおり、間違った使い方をすると目上・上司や取引先に失礼にあたるためご注意を。

そこでこの項目では「申し伝える」の正しい使い方をシーンごとにわかりやすく解説します。

まとめ

まずは結論。

考えるべきなのは誰を一番に立てるべきか?

ということなので非常にシンプルです。

  • いま話している相手 >> 伝える先の見えない第三者

→「申し伝えます」をつかう

vs.

  • いま話している相手 << 伝える先の見えない第三者

→「お伝えします」をつかう

①いま話している相手を立てる”申し伝える”

「申し伝える」の正しい使い方

これまで見てきたように敬語「申し伝える」は、いま話している相手をたてる敬語です。

決して伝える先を立てる敬語ではありません。

したがって、

「いま話している相手か vs 伝える先の見えない第三者か」

どちらを立てるべきかを考えるとすべて上手くいきます。

「いま話している相手 >> 伝える先の見えない第三者」

のシーンで敬語「申し伝える」をつかいます。

繰り返しになりますがたとえば、

  • (客のまえで)上司に申し伝える → 客を立てていることになる
  • (上司の前で)同僚に申し伝える → 上司をたてている
  • (上司の前で)新人に申し伝える → 上司をたてている
  • (上司の前で)両親に申し伝える → 上司をたてている

※伝える先である見えない第三者を立てているわけではない

というような使い方をしますね。

②上司 < 社長だから”社長に申し伝える”は間違い

ところが…

「申し伝える」はシーンによっては失礼にあたります。

失礼にあたる使い方にはたとえば…

上司のまえで「社長に申し伝えます」とした場合。

社長ではなく上司をたててしまっていますね。

ここで立てるべきなのは上司 << 社長なので社長であるハズ。

こんなときには「社長にお伝えします・お伝えいたします」という敬語をつかいます。

③先輩 < 上司だから「部長に申し伝える」は間違い

もうひとつ「申し伝える」の間違った使い方を紹介。

先輩のまえで「上司に申し伝えます」とした場合。

上司ではなく先輩をたててしまっていますね。

ここで立てるべきなのは先輩 << 上司なので上司であるハズ。

こんなときには「上司にお伝えします・お伝えいたします」という敬語をつかいます。

④伝える先の第三者を立てるときは”お伝えします”

では…

「いま話している相手か vs 伝える先の見えない第三者か」

どちらを立てるべきかを考えたときに、

「伝える先の見えない第三者 >> いま話している相手」だったら??

のシーンで敬語「お伝えします・お伝えいたします」をつかいます。

敬語「お伝えします・お伝えいたします」は、目に見えない伝える先をたてる敬語です。決していま話している相手ではありません。

したがって、

伝える先が目上やソト(社外取引先など)であれば「お伝えします」をつかいます。

たとえば、

  • 【例文】取引先にその旨お伝えします
    ※取引先を立てている
  • 【例文】お客さまにお伝えいたします
    ※お客さまを立てている

のようにして使うと素晴らしく丁寧な敬語になります。

⑤あなたに”お伝えします”は正しい

さいごに…

自分があなたに「お伝えします!」というのは正しい使い方ですね。

この場合、伝える先であるあなたを立てていることになります。

たとえば以下のようなビジネスシーンでつかいます。

  • 【例文】とっておきの情報をあなたにだけお伝えします
  • 【例文】お客様から伝言がありましたので、お伝えします

以上、

ここまで見てきた5つの使い方をマスターしておけばビジネスシーンで困ることはないでしょう。

【シーン別の例文】電話対応・ビジネスメール

こうして長々と解説してもわかりにくいため、より実践的に。

「申し伝える」の使い方をビジネスメール・電話対応の例文で紹介します。

シーンを考え「お伝えします・いたします」「申し伝えます」のいずれかを使いましょう。

目上・上司にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。

シーンごと例文①電話対応で取引先の伝言をうける

【客】
お世話になっております。
●●部長はいらっしゃいますか?

【あなた】
申し訳ございません。●●はあいにく外出しております。
よろしければご用件を賜りますがいかがでしょうか。

【客】
そうですね…
巨人vs阪神戦の件で電話しました、とお伝えいただけますか?

【あなた】
承知しました。
●●に申し伝えます。

シーンごと例文②上司からの質問ビジネスメールに返信

メール件名:返信Re:4月度売上提出のお願い

●●課長

お疲れ様です。
返答が遅くなり大変申し訳ありません。

さてご依頼の件、売上実績の取りまとめ作業は新人のxxさんへすべて引き継ぎいたしました。

つきましてxxさんに資料を提出する旨、申し伝えております。

本日中には完了するとのことですので、しばしお時間をいただければと存じます。

ご不便お掛けいたしますが、よろしくお願い致します。

**********
メール署名
**********

シーンごと例文③取引先からの問合せビジネスメールに返信

メール件名:返信Re:iPhone10に関するお問い合わせの件

○○株式会社
総務部 ●● 様

お世話になります。
(株)転職にて営業を担当しております、ノマドと申します。

このたびはお問い合わせいただき誠にありがとうございます。

さてご質問の件、幣部署ではiPhone10を取り扱っておらず、別部署でのお取り扱いとなります。お役に立てず誠に申し訳ございません。

つきまして下記担当へお問合せ内容を申し伝えております。

部署:iPhone営業部
担当:野間湖(のまこ)
TEL:xxx
Email:xxx

なお近日中に担当よりコンタクトがない場合、
大変お手数ではございますが、再度ご連絡いただければと存じます。

何卒よろしくお願い申し上げます。

**********
メール署名
**********

シーンごと例文④取引先からの問合せビジネスメールに返信

メール件名:返信Re:製品A見積のお願い

ビジネス株式会社
資材部 ●● 様

お世話になっております。
(株)転職・ノマドでございます。

このたびはお問い合わせいただき誠にありがとうございます。

さてご依頼の件、製品Aは別部署でのお取り扱いとなります。

つきまして下記担当より見積を送付いたします。

部署:A営業部
担当:野間湖(のまこ)
TEL:xxx
Email:xxx

なお、お問合せの内容は担当へ申し伝えておりますが、近日中に担当よりコンタクトがない場合には私までお申し付けください。

お役に立てず申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。

**********
メール署名
**********

“お伝えさせていただきます”は使わない

あとはよく目にする敬語フレーズには「お伝えさせていただきます」もあります。

「お伝えさせていただきます」は敬語としては正しいのですが…日本語としては100%正しいとは言い切れません。

したがってあまりオススメできない敬語フレーズです。

正しい日本語である気もするし、おかしい気もする…

「お伝えさせていただきます」は日本語として正しいような気もしますし、おかしい気もします。

なぜこう考えるのかというと…

敬語にする元の形「伝えさせてもらう」で考えてみると分かりやすいです。

「させてもらう」の意味は辞書によると「相手方の許しを求めて行動する意をこめ、相手への敬意を表す」です。

つまり、

許しが必要なときにつかう言葉です。

で、

「伝えさせてもらう」だと「伝えるために相手からの許しを得たい」という感じのニュアンスになります。

恐れ多くも伝えさせてもらうよ、許してね??

何かしら伝えるときに、はたして許しが必要なのでしょうか?

「No、必要ありません」

わたしはおかしいと思います…なぜなら「伝える」のはあなたの意思であり、相手の許しや許可など必要ないのですから。

ただしこれは受け手の感情次第であるため、なにが正解とは言えません…

参考記事

“伝えてほしい!”ときに使える敬語フレーズ