拝命(読み:はいめい)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まず簡単にまとめを。
「拝命」の意味は直訳すると「任命されること」「命ぜられること」「任命を受けること」。敬語をつかっているため実際にはもっと丁寧で「謹んで命令を受けること」の意味になります。
使い方はとくに転勤や異動・着任の挨拶ビジネスメールで「任命されました」としたいとき。
- 【例文】さて私こと4月1日付で法人営業部 部長を拝命いたしました。
- 【例文】さて私こと4月1日付にて大阪支店長を拝命し、過日着任いたしました。
- 【例文】国連大使を拝命しました。
たとえば上記のように「xxという職を任命されました」という意味でビジネスメールにつかうと丁寧です。もちろん転勤や異動・着任の挨拶メールでなくてもつかってOKですが…ほとんど見たことがありません。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかえる丁寧な敬語表現。
ただし注意点として。
謙譲語「拝命」は任命するヒトなり組織を立てるためにつかう敬語であり、目の前にいる相手を立てる訳ではありません。
たとえばお客さんの前で「大阪勤務を拝命しました」とするのは間違い。お客さんではなく任命したヒトなり自分の会社を立ててしまうことになります。
また。
等しくつかえる丁寧な言い換えには「xx勤務を命ぜられ」「xx部長を命ぜられ」などあり。どれをつかっても丁寧です。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
“拝命”の意味と敬語
拝命(読み:はいめい)の意味は・・・
- 任命されることをへりくだっていう語。命令を謹んで受けること。
つまり「任命されること」の謙譲語ですね。
「命ぜられる」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。
※なお類語は「命ぜられる」「任命される」などあり
「拝命する」だと「任命される」「命ぜられる」の意味となります。
なお「任命する」と「拝命する」の違いは…
自分が命令を受けることを「拝命する」、相手に役目や任務を命ずることを「任命する」と言います。根本的に意味が違いますのでご注意を。
身近な「拝命する」のたとえ・例文
日常シーンではほとんど使うことのない「拝命する」ですが…
「拝命する」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…
- キャプテンに任命された
というとき「東京大学野球部キャプテンを拝命しました」or「拝命いたしました」 - 会社から転勤を命じられた
というときに「大阪支店勤務を拝命し、過日着任いたしました。」 - 会社から部長職を任命された
というときに「営業部 部長を拝命しました」or「拝命いたしました」
こんなシーンでつかいます。
「拝命」のより丁寧な敬語
なお「拝命」の使い方として。
例文にもしましたが「拝命」を単体でつかうことはほとんどなく。「命ぜられた」「任命された」と過去のことを言うケースがほとんど。したがって過去形「拝命した」をつかい「〜した」の部分を以下のようにもっと丁寧な敬語にしてつかいます。
- 【丁寧】丁寧語”ます”をくっつけて「拝命しました」
- 【かなり丁寧】謙譲語”いたす”丁寧語”ます”で「拝命いたしました」
“拝命”の使い方・ビジネスメール例文
つづいて「拝命」の使い方とビジネスメール例文を紹介します。
【基本の使い方】挨拶ビジネスメール
ビジネスシーンにおける「拝命」の丁寧な使い方、まず基本。
転勤や異動・着任の挨拶ビジネスメールといった、ほとんど決まりきった場面でしかつかわれません。
たとえば転勤の挨拶・着任の挨拶・異動の挨拶メールにおいて。
- 【例文】さて私こと4月1日付で法人営業部 部長を拝命いたしました。
とすれば「さて私は4月1日付けで法人営業部 部長に任命されました」という意味になります。
ビジネスメール例文①赴任・着任後の異動挨拶メール(to社内)
メール件名:着任のご挨拶
拝啓 春暖の候、皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて私こと、4月1日付でxx支社■■営業部部長を拝命し、過日着任いたしました。zz支社▲▲営業部在任期間中は、多大なご厚情とご指導を賜り、厚くお礼申し上げます。
これまでの経験を活かし、今後は■■営業部において●●事業の発展に力を尽くして参る所存でございます。
今後とも変わらぬご指導のほどお願い申し上げます。
甚だ略儀ではございますが、
まずはメールをもちましてご挨拶申し上げます。 敬具
——————————-
メール署名
——————————-
ビジネスメール例文②社外あて転勤報告・挨拶
【to社外取引先・基本テンプレート】
・挨拶には行かず、メールだけで済ませるパターン
・社外取引先に転勤/移動報告をするビジネスメール例文
・営業や購買担当が取引先の商社マンに送るメール
・社外に報告するのは後任者が決まってからにする
メール件名:退職のご挨拶(転職・ノマド)
のまど商事株式会社
営業部 国内営業課 ●● 様 (社外取引先)
大変ご無沙汰しております。
転職・ノマドでございます。
私事ではございますが、このたび×月▲日付で大阪へ転勤する運びとなりましたことをご報告申し上げます。
本来であれば直接伺いご挨拶すべきところメールでの連絡となりましたこと、深くお詫び申し上げます。
また、これまで何かとお力添えいただき心より感謝いたしております。今後、何かの縁でご一緒させていただく機会がございましたら、その際には宜しくお願い申し上げます。
なお、後任担当は下記のとおりとなります。
今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
【後任営業担当】
・所属:(株)転職 リテール営業部 国内営業課
・氏名:野間子 オーエル(のまこ おーえる)
・Email:xxx
・電話:xxx
末筆ながら、貴社のますますのご発展と●● 様のご健勝ご多幸をお祈り申し上げます。
————–
メール署名
————–
ビジネスメール例文③異動先の上司へ挨拶する(to社内)
【社内上司・基本テンプレート】
・異動先の上司への挨拶ビジネスメール例文
・異動先の直属の上司にメールなり、電話で挨拶をする※必要に応じて上司の上司にもメールする
・内示があり、初出勤日が決まった段階で挨拶メールをする※ただし会社の文化による
・テンプレートとして使えるもっともシンプルな例文
メール件名:異動のご挨拶
xx部
山本 部長 (社内上司)
お疲れ様です。
このたび、4月1日付で東京本社xx部■■グループ課長を拝命しました、▲▲xxと申します。
入社以来、大阪支社●●営業部で3年、▲▲営業部で3年と営業を担当し、■■ビジネスに携わるのは初めてとなります。
不慣れゆえ何かとお手間をお掛けすることと存じますが、一刻も早く■■ビジネスの発展に貢献できるよう、尽力して参る所存でございます。ご指導ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
甚だ略儀ではございますが、
まずはメールにてご挨拶申し上げます。
——————————-
リテール営業部 国内営業課
のまど サラリーマン
——————————-
【言い換えOK】”拝命”の類語
最後に「拝命」の類語を例文でまとめます。
ビジネスメールではこれらの表現に言い換えすることもできますので、お好みの表現を用いてください。
どれも目上の人(社内上司・先輩)にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
類語『命ぜられました』など
「拝命」は「命ぜられる」をつかった敬語に言い換えできます。
拝命(はいめい)の意味は「任命されること」ですので同じように使えます。
使い方もおなじく上司なり社内目上・取引先に何かしら任命されたい、あるいは任命されたとき。
- 【例文】私こと4月1日付で法人営業部 部長を命ぜられました。
- 【例文】私こと4月1日付で大阪支店長を命ぜられ、過日着任いたしました。
- 【例文】私こと4月1日付にて法人営業部 大阪勤務を命ぜられ過日着任いたしました。
- 【例文】国連大使を命ぜられました。
たとえば上記のようにビジネスメールにつかうと丁寧です。どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現ですね。
あとは「任命されました」などもありますが、ビジネスメールにつかうにはちょっとはばかられます。無難に「命ぜられました」あるいは「拝命しました」としましょう。
【注意点】”拝命”はこう使う!
つづいて「拝命」の使い方というか注意点について簡単に。転勤や異動・着任の挨拶ビジネスメールでよくつかいますが、以下の点には十分にご注意ください。
①顧客に異動の挨拶をするときに”拝命”は使わない
「拝命」をつかうときの注意点その一。
謙譲語「拝命」は社内の相手を前にしてつかうのはOKですが、顧客(社外)を前にしてつかうと違和感のある敬語になります。
なぜなら。
謙譲語「拝命」は任命するヒトなり組織を立てるためにつかう敬語であり、目の前にいる相手を立てる訳ではないから。
たとえばお客さんの前で「大阪勤務を拝命しました」とするのは間違い。お客さんではなく任命したヒトなり自分の会社を立ててしまうことになります。
そこで社外の相手への挨拶メールにはたとえば、
- 転勤「xx勤務を命ぜられました」「東京に転勤する運びとなりました」
- 異動「異動を命ぜられました」「異動する運びとなりました」
- 昇進「支店長を命ぜられました」
というように「拝命」を言い換えてつかいます。
②”ご拝命”は二重敬語!
「拝命」をつかうときの注意点その二。
もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「ご拝命」はNGです。
「拝命」はすでに「任命されること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…
結果として「任命されること」に①謙譲語「拝命」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。
あるいは。
「お(ご)~する」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝命する」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~」の謙譲語が「お(ご)~する」だという解釈を適用した場合には「拝命」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。
③”拝命しましたか?””拝命していただく”は間違い敬語!
「拝命」をつかうときの注意点その三。
こちらも初歩的な敬語の使い方なのですが…
×「任命されましたか?」と言いたいときに「拝命しましたか?」は間違い敬語です。
×「任命されました」と言いたいときに「拝命していただく」も間違い敬語。
「拝命」は謙譲語であるため自分の行為につかい相手の行為にはつかいません。
たとえば以下の使い方は間違い敬語となりNGです。十分にお気をつけください。
- NG例×上司なり目上・取引先が拝命しましたか?「部長を拝命しましたか?」
- NG例×上司なり目上・取引先に拝命していただく「拝命していただきありがとうございました」
相手の行為には基本的に謙譲語ではなく尊敬語をつかいます。※例外あり
したがってこんな時には…
- 正しい例◎「任命しましたか?」「ご任命いただけましたか?」
- 正しい例◎「ご任命いただき、至極光栄に存じます。」「承りました」
いずれも上司なり目上・取引先に「任命してください・任命してほしい」といいたいときに使える敬語になります。
④”拝命いたします”は二重敬語ではない!
あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。
「拝命いたします」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
なぜ「拝命いたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…
「拝命」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「拝命いたす」としているから…
「拝命=謙譲語」×「いたす=謙譲語」
「拝命いたします」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??
このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。
ただし答えは…「二重敬語ではない」です。
二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。
たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。
ところが。
「拝命いたす」は以下のように「①任命されること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
①「拝命」=「任命されること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「いたす」=「する」の意味の謙譲語
⑤”拝命させていただく”は敬語として正しいが日本語としては変
あとはこちらもよくある敬語の勘違い。
「拝命させていただく」「拝命させて頂きました」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。
「拝聴させていただく」は以下のように「①任命されること」「②させてもらう」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。
①「拝命」=「任命されること」の意味の謙譲語(単体では名詞)
②「させていただく」=「させてもらう」の意味の謙譲語
ただし。
日本語としてヘンテコなので結論としてはつかえません。
「拝命させていただく」の意味は直訳すると「任命されることをさせてもらう」あるいは「命ぜられさせてもらう」となります。
単純に「任命されることをさせてもらう」では日本語として意味不明であるため間違いと言えますね。