「向かう」の敬語|謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方

「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

向かう の謙譲語は「該当なし

向かっている の謙譲語であれば「向かっておる」

ビジネスシーンで「向かう」としたいときには「行く」の謙譲語「伺う」を使うか、あるいは丁寧語を使って「向かいます」を使うのが一般的。

※「おる」は「いる」の謙譲語

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

  • 例文「いま向かっております」
    原文「いま向かっている」

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「向かっております」とするのが一般的。

ただし、

厳密には「向かっている」は「向かう」とは意味が異なります。「向かっている」は「今まさに向かっている」の意味であり、「向かう」は「これから向かう」の意味です。

したがって、

「向かう」の謙譲語をすべて「向かっておる」とするのは無理があります。また「行く」と「向かう」は意味が違うため何でもかんでも「行く」の謙譲語「伺う」にしてもダメ。

→ 「行く」の敬語は?謙譲語と尊敬語、使い方、ビジネスメール例文

向かう の尊敬語は「該当なし

向かっている の尊敬語は「向かっていらっしゃる」「向かっておられる」

※「いらっしゃる・おられる」は「いる」の尊敬語

いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、「向かう」の尊敬語はありません。「相手が向かう」とは決して言わないので…

「相手が向かう」ではなく「相手が来る」と考えて「来る」の尊敬語をつかいます。

すると、

  1. いらっしゃる
  2. 来られる
  3. お見えになる
  4. お越しになる

こんな感じの尊敬語が使えます。

さらに丁寧語「です・ます」をつかい「①いらっしゃいます」「②来られます」「③お見えになります」「④お越しになります」とするとより丁寧な敬語になります。

→ 「来る」の敬語は?謙譲語と尊敬語、使い方、ビジネスメール例文

向かう の丁寧語は「向かいます」

さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「向かいます」とすればOKです。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。

向かう の謙譲語は「該当なし」

そもそも謙譲語とは?

念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

向かっている の謙譲語は「向かっておる」

向かう の謙譲語はビジネスにふさわしいフレーズがありません。

ただ、

「向かっている」であれば「向かっておる」を謙譲語として使います。ここで「おる」は「いる」の謙譲語であり、丁寧語「ます」とくみあわせて「向かっています」として使うと丁寧な敬語となります。

したがって、

  • いま向かっている
    →謙譲語は「いま向かっています」
  • これから向かう
    →丁寧語「これから向かいます」をつかう

というような感じで敬語に変換することができますね。

「向かっている」と「向かう」の違いってそもそもなに?

ということですが…
これはすごく簡単。

  • 「向かっている」は「今まさに向かっている」の意味であり、
  • 「向かう」は「これから向かう」の意味

向かう を謙譲語にしたいときにはどうする?

ということで「向かう」の謙譲語は「該当なし」です。

とは言ったものの、やっぱり「向かう」を使うビジネスシーンはもちろんあるわけで…

じゃあどうしたら謙譲語の代わりに使える丁寧な敬語になるのか、というと。

  1. 「今まさに向かっている」ときには…謙譲語「いま向かっております」
  2. 「これから向かう」の意味で使うときには…
    ①「これから向かいます」とシンプルに丁寧語を使って敬語にするか、
    ②「行く」の謙譲語「伺う」を使って「これから伺います」のような謙譲語にする

決して、

「これから向かう」と言いたいときに「これから向かっております!」を使わないようにご注意を。完全に違う意味になってしまいます。

→ 「行く」の敬語は?謙譲語と尊敬語、使い方、ビジネスメール例文

使い方・例文

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して対象の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  • 正しい例文「はい、いま御社へ向かっております」
  • 正しい例文「はい、これから御社へ向かいます」「これから御社へ伺います」

のような感じで使えますね。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「部長、取引先に向かっておりますか?」

のような例文はダメ。

目上のひとなり第三者が「〜向かっている」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長、取引先に向かっていらっしゃいますか?」などとします。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「向かっている」の謙譲語「向かっておる」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「向かっております」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

向かう の尊敬語は「該当なし」

そもそも尊敬語とは?

念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。

注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。

向かっている の尊敬語は「向かっていらっしゃる」

向かう の謙譲語はビジネスにふさわしいフレーズがありません。

ただ、

「向かっている」であれば「向かっていらっしゃる」「向かっておられる」を尊敬語として使います。

ここで「おられる・いらっしゃる」はいずれも「いる」の尊敬語であり、丁寧語「ます」とくみあわせて「向かっていらっしゃいます」として使うと丁寧な敬語となります。

したがって、

  • 部長がいま向かっている
    →尊敬語は「部長がいま向かっていらっしゃいます」「部長がいま向かっておられます」
  • 部長がこれから向かう
    →丁寧語「部長がこれから向かいます」をつかう

というような感じで敬語に変換することができますね。

向かう を尊敬語にしたいときにはどうする?

ということで「向かう」の尊敬語は「該当なし」です。

とは言ったものの、やっぱり「向かう」を使うビジネスシーンはもちろんあるわけで…

じゃあどうしたら尊敬語の代わりに使える丁寧な敬語になるのか、というと。

  1. 「今まさに向かっている」ときには…尊敬語「部長が今向かっていらっしゃいます」
  2. 「これから向かう」の意味で使うときには…
    ①「部長がこれから向かいます」とシンプルに丁寧語を使って敬語にするか、
    ②「来る」の尊敬語「いらっしゃる」を使って「部長がいらっしゃいます」のような尊敬語にする

決して、

「これから向かう」と言いたいときに「部長がこれから向かっていらっしゃいます!」を使わないようにご注意を。完全に違う意味になってしまいます。

→ 「来る」の敬語は?謙譲語と尊敬語、使い方、ビジネスメール例文

使い方・例文

「向かっている」の尊敬語「向かっていらっしゃる」「向かっておられる」の使い方は先にのべたとおり、

「目上の相手が向かっていらっしゃる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。

相手を立てる・うやまう・高める敬語が尊敬語であるため、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

そうすると、

  • 正しい例文「取引先は今、こちらへ向かっていらっしゃいます」
  • 正しい例文「取引先がお見えになります」「お越しになります」「来られます」「いらっしゃいます」

のような感じで「相手が向かう」ときにつかいます。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

繰り返しにはなりますが、

「向かっている」の尊敬語「向かっていらっしゃる」「向かっておられる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「向かっていらっしゃいます」「向かっておられます」として使うとより丁寧です。

他にもよく使う敬語の変換表

「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

謙譲語 尊敬語 丁寧語
受け取る  拝受する
拝受いたす
 お受け取りになる  受け取ります
見る  拝見する  ご覧になる
見られる
見ます
言う  申す
申し上げる
 おっしゃる
言われる
 言います
会う  お会いする
お目にかかる
 お会いになる
会われる
 会います
する  致す
(いたす)
 なさる  します
伝える  お伝えする
申し伝える
 お伝えになる
伝えられる
 伝えます
思う  存じる  お思いになる
思われる
 思います
行く  伺う
参る
参上する
 お行きになる
行かれる
 行きます
もらう  いただく  くださる  もらいます
いる  おる  いらっしゃる  います
考える  該当なし  お考えになる
考えられる
 考えます
送る  お送りする
お送りいたす
送付いたす
 お送りになる
送られる
 送ります
「~れる」という尊敬語は受身や可能の「れる・られる」と混同しやすいため「お~なる」を使うほうがベター。

向かう の謙譲語・尊敬語はこう使う!

つづいて「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

×部長、今こちらへ向かっておりますか?

「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

きわめて初歩的ではありますが…

謙譲語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「向かっております」は謙譲語であるため、自分の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「部長、今こちらへ向かっておりますか?」

は間違い敬語です。

上司や目上のヒトが何かを「向かっている」のであれば

  • 正しい例文「部長、今こちらへ向かっていらっしゃいますか?」

とするのが正解。

蛇足ですが電話で「〇〇様はおりますか?」も間違い敬語。相手が「いる」ことを確認したいときには尊敬語を使い「〇〇様はいらっしゃいますか?」とします。

×私が○○へ向かっていらっしゃいます

「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

尊敬語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「向かっていらっしゃる」は尊敬語であるため、相手の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「私が○○へ向かっていらっしゃいます」

は間違い敬語です。

こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが「向かう」であれば、

  • 正しい例文「私が○○へ向かっております」

とするのが正解。

×社外のヒトにたいして「上司はいまコチラへ向かっていらっしゃいます」

「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

ウチ・ソトが逆転している敬語はダメ。社内のヒトのことを社外に伝えるときには、たとえ上司であっても高めてはいけません。ウチを低める謙譲語を使います。
  • NG例文(社外に対して)上司はいまコチラへ向かっていらっしゃいます

だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。

ということで、

上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。

  • 正しい例文(社外に対して)○○はいまコチラへ向かっております

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「向かう」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

何度もしつこいですが…

丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。

たとえば、

  • 向かっている の謙譲語「向かっておる」は「向かっております」
  • 向かっている の尊敬語「向かっていらっしゃる」は「向かっていらっしゃいます」

のようにするとより丁寧な敬語となります。