ビジネスシーンで「存じ上げます」を使わない理由、正しい使い方

ビジネスシーンで「存じ上げます・存じ上げますが・存じ上げますので」を使わない理由と、正しい使い方について(もちろんビジネスメールの例文つき)。

だれとは言いませんが、間違った解説をしているWEBサイトをよく見かけるので情報を修正していきます。

まずは要点のまとめから。

存じ上げます の意味は「思う」

①「思う・知る」の謙譲語「存じる」
②丁寧表現「上げる」
③丁寧語「ます」

①②③を組み合わせた敬語「存じ上げます」

使い方にはたとえば、

「お忙しいとは存じ上げますが、ご返信のほどお願い申し上げます」とすると、

  • 忙しいとは思うのだけど…メール返信してほしい

の意味となります。

ただし、

存じ上げます をビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)で使うのは、あまりオススメできません。

その理由と正しい使い方について、本文中にて解説していきます。

存じ上げます をビジネスで使わない理由

繰り返しにはなりますが、

「存じ上げます・存じ上げますが・存じ上げますので」は、ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)で使うにはイマイチな表現。

まず誤解のないように、

存じ上げます は敬語としては正しいです。なぜなら謙譲語「存じます」を丁寧表現の「上げる」と組み合わせて敬語にしているから。

何も間違いではなく、むしろ丁寧なフレーズです。

ところがビジネスで使わない理由はおもに以下2つ。

  1. 存じます で十分に丁寧な敬語である
  2. 存じ上げております=知っています との混同

存じます だけで十分に丁寧な敬語

存じ上げます・存じ上げますが・存じ上げますので の問題点その一。

わざわざ丁寧表現の「上げる」を使わなくても「存じます」で十分に丁寧なフレーズなのですよね。

たとえば、

「お忙しいとは存じ上げますが、ご返信のほど何卒よろしくお願い申し上げます」ってするとバカ丁寧だし、「上げる」を重複してつかっていてなんか気持ち悪い文章になります。

ただ、

「差し出がましいとは存じ上げますが、お見舞いの品をお送りいたしました」などのように重複して使わなければ問題はありませんが…

この場合も「差し出がましいとは存じますが~」としたほうがシンプルな文章でわたしは好きです。

絶対にNGというわけでなく、「上げる」が重複しないのであれば「存じ上げますが~」「存じ上げますので」として使ってもOK。

存じ上げます ≠ 存じ上げております

存じ上げます の問題点その二。

「存じ上げております=知っている の意味で使う」

「存じ上げます=思う の意味で使う」

この2つと混同しやすいフレーズであることもあまり好ましくない理由。

もうこれは例文でみたほうが分かりやすいでしょう。

ご高名はかねてより存じ上げます?

  1. NG×「イチロー選手のご高名はかねてより存じ上げます」
  2. NG×「教授の画期的な発明は、よく存じ上げます」
  3. 正◎「イチロー選手のご高名はかねてより存じ上げております」
  4. 正◎「教授の画期的な発明は、よく存じ上げております」
  5. 正◎「お忙しいとは存じますが~」
  6. 正◎「差し出がましいとは存じますが~」
  7. 正◎「~して頂ければと存じます」

「ご高名」の意味:高い評価を受け、広く一般の人々に名前を知られていること
「差し出がましい」の意味:余計なこと・でしゃばり・出すぎたマネ

なぜ例文①②存じ上げます がダメなのかというと、ここでは過去から「イチロー選手の評判を知っている」という意味で「存じる」を使いたいのです。

それなのに、

例文①②だと「思います」の意味になってしまうのですよね。

直訳すると「イチロー選手の評判を思います」「教授の発明を思います」となり、かなりヘンテコな日本語になります。

これは現在形~未来をあらわす「ます」を使っていることにも問題あり。むかしから「知っている」のですから「おります」を使うのが正解です。

  • 現在から未来:ます
  • 過去から現在:おります(原形は います)

イチロー選手の評判は昔から存じ上げます!?

仮に「存じ上げます」を「知る」の意味でとったとしても…

  • NG×「イチロー選手のご高名はかねてより存じ上げます」

という文章を直訳していくと、

「イチロー選手の評判を昔から知り、さらにこれから知ります」となってこれまたヘンテコな日本語になります。

いずれにせよ、

現在から未来をあらわす「ます」を使っていることが問題ですね。

【補足】
ここで使う「上げる」にはとくに意味はなく、より丁寧な表現を心がけるときに使われます。

たとえば、

  • ご挨拶申し上げます
  • お詫び申し上げます
  • ご報告申し上げます

といった感じに使われますね。

「上げる」は「ご挨拶申します・お詫び申します・ご報告申します」という敬語より、もっと丁寧なニュアンスになります。

存じます・存じ上げております の2つを使いこなそう

以上のことより、

「存じ上げます・存じ上げますが・存じ上げますので」はビジネスシーンで使う必要のないフレーズであると言えます。

では、

どうしたら正しい使い方になるのかというと…

謙譲語「存じる」で使いこなすべきフレーズは2つ。

  1. 存じます=思う の意味で使う
  2. 存じ上げております=知っている の意味で使う

これだけです。

ほかにも「存じております・存じています」などありますが、「存じ上げます」とおなじように使う必要のないフレーズ。

そこで、

残りの部分は「存じ上げます」の代わりにつかう「存じます・存じ上げております」の意味、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点についてくわしく解説していきます。

ご興味のある方だけどうぞ。

存じます・存じ上げております 意味と違い、使い方

意味における違い

存じます は「思う」の意味が強い

存じ上げております は「知る」の意味が強い

まずは意味の違いから。

  • 存じます=「思う」
  • 存じ上げております=「知っている」

というように違いあり。

使い方は、

とくにビジネスメールやビジネス文書・手紙などのかしこまった敬語が好まれるシーンで使われます。

たとえば、

「お忙しいとは存じますが(存じ上げますが)、ご返信のほどお願い申し上げます」とすると、

  • 忙しいとは思うのだけど…メール返信してほしい

の意味となります。

また、

「イチロー選手のご高名はかねてより存じ上げております」とすると、

「高い評価はむかしから知っています」という意味の丁寧な敬語フレーズになります。

敬語の使い方の違い

①存じます は謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」

②存じ上げております は謙譲語「存じる」+丁寧表現「上げる」+謙譲語「おる」+丁寧語「ます」

つづいて敬語の使い方における違い。上の箇条書きにまとめたとおりに違いあり。

また「ます」と「おります」の違いは以下のとおり。

  • 現在から未来:ます
  • 過去から現在:おります(原形は います)

思います の文章はシックリこない

上司にたいするメールで「忙しいとは思うのですが、ご返信ください」みたいに使うとな~んかイマイチなのですよね。

※会話であればこれで構いません。

そして、

社内のヒトや上司ならまだいいですが、社外の取引先にこんなメールをしているとあなたのビジネス敬語レベルを疑われてしまいます。

そこで、

「存じます」という敬語をサラッと使い、好感のもてる文章にしましょう。

例文①お忙しいとは存じますが

存じます・存じ上げます のビジネスシーン(メール/手紙/文書/社内上司/社外取引先/目上/就活/転職)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「お忙しいとは存じますが」

あるいは、

「お忙しいことと存じますが」
「ご多用とは存じますが」
「ご多忙とは存じますが」

意味は
「忙しいとは思うのだけど…」

「存じます」のもっともオーソドックスな使い方となります。

とくにビジネスメールに使われる、相手を気づかうクッションフレーズです。あとに続けて、何かしらの「お願い・許可をもとめる文章」がつづきますね。

使い方にはたとえば、以下のような表現があります。

ビジネス例文

  • 例文(ビジネスメール結び)
    ~前中略~
    お忙しいとは存じますが、ご返信いただければ幸いです。
    何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 例文(ビジネスメール結び)
    ~前中略~
    お忙しいこととは存じますが、ご連絡くださいますようお願い申し上げます。
  • 例文(ビジネスメール結び)
    ~前中略~
    大変恐れ入りますが、弊社オフィスまでお越しいただければと存じます。
    何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 例文(ビジネスメール結び)
    ~前中略~
    お忙しいとは存じますが、
    ご検討のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
お取り計らい=ものごとを上手くすすめること
ご査収=中身をよく確認して受け取ること

使い方の注意

ここで注意点をひとつ。

「お忙しいとは存じますが」と似たようなフレーズでもっと丁寧というか、申し訳ない気持ちがあらわれる表現には以下のような例文あり。

  1. お忙しいところ恐れ入りますが〜
  2. お忙しいところ恐縮ではございますが〜
  3. お忙しいところ申し訳ありませんが〜

「お忙しいとは存じますが=忙しいとは思うのだけど…」を使うと、ひょっとしたら相手は「忙しいの分かってるんだったら仕事を押し付けないでほしい」と感じてしまうかもしれません。

そこで、

相手に何かお願いごとをするときには上記3つの例文「恐れ入ります・恐縮です」をつかって、申し訳なく思う気持ちを表すほうがいいかもしれません。

ひとつの文章で同じフレーズの重複を避けるためにも「お忙しいとは存じますが」「お忙しいところ恐れ入りますが」の2つを覚えておくと便利。なんでもかんでも同じフレーズで攻めるのはビジネス敬語ビギナーのやることです。

例文②~いただければと存じます

存じます・存じ上げます のビジネスシーン(メール/手紙/文書/社内上司/社外取引先/目上/就活/転職)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「~いただければと存じます」

意味は
「~してもらえたら、と思います」

ここで「いただく」は「もらう」の謙譲語。仮定の「れば」を使い「いただければ」としています。

たとえば、

「ご確認いただければと存じます」のようにすると意味は…「確認してもらえればと思います」となります。

とくにビジネスメールの結びに使われる、お願いのフレーズです。

使い方にはたとえば、以下のような表現があります。

ビジネスメール例文

  • 例文(ビジネスメール結び)
    ~前中略~
    お忙しいところ大変恐れ入りますが、
    10月2日までにご返信いただければと存じます。
    何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 例文(ビジネスメール結び)
    ~前中略~
    お忙しいところ大変恐れ入りますが、今一度ご確認いただければと存じます。
    何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 例文(ビジネスメール本文)
    ~前中略~
    お忙しいところ大変恐れ入りますが、弊社オフィスまでお越しいただければと存じます。
    何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 例文(ビジネスメール本文)
    ~前中略~
    三菱化学むけ値上げの件、交渉が難航しております。
    つきまして部長のご意見を伺いたく、本日どこかでお時間をいただければと存じます。
    ご検討のほど宜しくお願いいたします。

例文③~に伺いたく存じます

存じます・存じ上げます のビジネスシーン(メール/手紙/文書/社内上司/社外取引先/目上/就活/転職)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「~に伺いたく存じます」

意味は
「訪問したいと思います」
「お聞きしたく思います」

ここで「伺う」は「行く・聞く・訪問する」の謙譲語。「お伺い」だと二重敬語でNGなのですが、フツーに使われているため問題にはならないでしょう。

たとえば、

「部長のご意見を伺いたく存じます」とすれば意味は「部長の意見を聞きたいと思う」の丁寧な敬語フレーズ。

「新製品の紹介に伺いたく存じます」とすれば意味は「新製品の紹介に訪問したいと思う」の丁寧な敬語フレーズ。

使い方にはたとえば、以下例文のようなフレーズがあります。

ビジネスメール例文

  • 例文(アポイントメール)
    ~前中略~
    このたび、新製品iPhone8のリリースにともない、製品紹介に伺いたく存じます。
    よろしければ以下、ご都合いかがでしょうか。
    10月2日14時~
    10月3日14時~
  • 例文(アポイントメール)
    ~前中略~
    このたび、営業担当の変更にともない、ご挨拶かたがた伺いたく存じます。
    よろしければ以下、ご都合いかがでしょうか。
    10月2日14時~
    10月3日14時~
  • 例文(上司へのメール)
    ~前中略~
    三菱化学むけ値上げの件、交渉が難航しております。
    つきまして部長のご意見を伺いたく存じます。
    本日ご都合いかがでしょうか。

例文④ありがたく存じます

存じます・存じ上げます のビジネスシーン(メール/手紙/文書/社内上司/社外取引先/目上/就活/転職)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「ありがたく存じます」

意味は
「ありがたいと思います」

時代劇にでてきそうなフレーズですが…

ビジネス文書や手紙などの、かしこまった表現が好まれるシーンで挨拶として使われることのあるフレーズ。

たとえば、

「平素は格別のご厚情を賜り、誠にありがたく存じます」とすれば意味は…

「日ごろはヒイキにしてくれてありがたいと思う」の丁寧な敬語フレーズ。

ビジネス文書の挨拶文では「平素は格別のご厚情をたまわり厚くお礼申し上げます」を使うことがフツーですが、そうじゃなきゃダメだということではありません。

使い方にはたとえば、以下例文のようなフレーズがあります。

ビジネス例文

  • 例文(ビジネス文書の挨拶文)
    貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
    平素は格別のご厚情を賜り、誠にありがたく存じます。
  • 例文(ビジネス文書の挨拶文)
    時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
    平素は並々ならぬご厚情を賜り、誠にありがたく存じます。
「貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご厚情をたまわり厚くお礼申し上げます」のほうが一般的な挨拶文です。

例文⑤差し出がましいとは存じますが~

存じます・存じ上げます のビジネスシーン(メール/手紙/文書/社内上司/社外取引先/目上/就活/転職)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「差し出がましいとは存じますが~」

意味は
「余計だとは思うのですが~」

ここで「差し出がましい」は「余計なこと・でしゃばり・出すぎたマネ」の意味。自分のした行為にたいして「余計なんだけど…」と謙って(へりくだって)使う言葉です。

たとえば、

「差し出がましいとは存じますが、お見舞いの品を送付いたしました」とすれば意味は…

「余計とは思うのだけどお見舞いをおくったよ」の丁寧な敬語フレーズ。

使い方にはたとえば、以下例文のようなフレーズがあります。

ビジネスメール例文

  • 例文(お願いメール結び)
    ~前中略~
    差し出がましいお願いとは存じますが、ご了承いただければ幸いです。
    何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 例文(メール本文)
    ~前中略~
    差し出がましいとは存じますが、お礼の品をお送りいたしました。
「お礼のお品」「お見舞いのお品」はダメ。「お礼の品」「お見舞いの品」とすること。自分が送る品にたいして尊敬語「お」を使うのはおかしい。相手から品をもらったのであれば「たいそうなお品をいただき〜」というようにする。

例文:その他いろいろ

その他にもイロイロ使える「存じます」の例文と使い方を紹介しておきます。とくに手紙で使うようなかしこまったフレーズを中心に。

~のことと存じます

「~のことと存じます」は「~だと思います」という意味で使うため、どんな表現にも使えます。

~とは存じますが、

「~とは存じますが、」は「~とは思うのですけど、」という意味で使うため、どんな表現にも使えます。先ほども例文につかった「お忙しいとは存じますが」などあり。

ご快復のごようす、なによりのことと存じます

相手が退院して「よかったね」と喜びを伝えるビジネスメール・手紙・文書で使えるフレーズです。

ご清栄のごようす、なによりのことと存じます

相手のビジネスなり健康を気づかうフレーズ。「すべて上手くいっているようでよかったね」と喜びを伝えるビジネスメール・手紙・文書で使えるフレーズです。

「ご清栄」の意味は文字どおり「清く栄える」。

お健やかに初春をお迎えのことと存じます

時候の挨拶(初春=正月~3月ころまで)。正月の挨拶としてビジネスメール・手紙・文書で使えるフレーズです。

存じております・存じ上げております

意味は「知っています」。「おります」は「いる」の謙譲語。

「存じております」は文章というよりも、会話で使われることの多いフレーズ。

たとえば、
「キミ、これ知ってるか?」と目上のヒトに質問されたとき。

「はい、存じております」などと返事をすると丁寧です。ただし使い方をあやまるとバカ丁寧になりますので、相手がホントにハイクラスの人だった場合にだけ使いましょう。

【注意点】存じます・存じ上げております はこう使う!