「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
居る の謙譲語は「おる」
※ 丁寧語「ます」と組み合わせて「おります」として使うのが一般的
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、
- 例文「明日はオフィスにおります」
として使います。もっと丁寧な敬語にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「おります」とするのが一般的。
居る の尊敬語は
①いらっしゃる
②おられる
※ 丁寧語「ます」と組み合わせて「いらっしゃいます」として使うのが一般的
※ 「いらっしゃられる」は間違い敬語
いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 例文「明日はオフィスにいらっしゃいますか?」
- 例文「○○様はいらっしゃいますか?」
として使います。
また、
「来る」の尊敬語も「いらっしゃる」を使うため「上司がいらっしゃいました」だと「①上司がいました」「②上司が来ました」のどちらの意味にもとれます。
どちらの意味で使っているかは、正直なところ文脈から判断するしか方法がありません。
居る の丁寧語は「居ます」
さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「居ます」とすればOKです。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。
居る の謙譲語「おる」使い方と例文
まずは「居る」の謙譲語「おる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
使い方
「居る」の謙譲語「おる」の使い方は先にのべたとおり、
「自分がある場所におります」あるいは「自分が~しております」のようにして自分の行為・行動に使う謙譲語です。
そうすると、
- 正しい例文①明日はオフィスにおります
- 正しい例文②はい、昨日はパーティー会場におりました
- 正しい例文③いつもお世話になっております
- 正しい例文④株式会社ビジネスにて営業担当をしております、ノマドと申します
のような感じで「自分がある場所におります」あるいは「自分が~しております」ときにつかいます。
例文①②は「自分がある場所に居る・居た」という意味で使い、例文③④は「~している・~していた」の意味で使います。
「居る」は「その場所に居る」という意味ですが、同音異義語で「〜している」のような現在進行形・現在形にも使われます。謙譲語「おる」はどちらにも使われます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長はおりますか?」
のような例文はダメ。
目上のひとなり第三者が「居る」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長はいらっしゃいますか?」とします。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「居る」の謙譲語「おる」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「おります」「おりました」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。
例文
「居る」の謙譲語「おる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。
- ビジネスメールや会話で「自分がある場所に居る」として使う
・例文「本日は打ち合わせのため取引先の事務所におります」
・例文「○○におります」
- ビジネスメールや会話で「~している」として使う
例文「○○は出社しておりますが、あいにく会議中でございます」
例文「キャッチボールをしております」
例文「食事をしております」
例文「はい、存じております」
例文「当店ではiphoneを取り扱いしております」
・「居る」は「その場所に居る」という意味。同音異義語に「~している」という意味の語もある。どちらも謙譲語は「おる」になる。
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くし話の受け手を高めている
・存じている は「知っている」の謙譲語
居る の尊敬語「いらっしゃる・おられる」使い方と例文
つづいて「居る」の尊敬語「いらっしゃる」「おられる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
使い方
「居る」の尊敬語「いらっしゃる」「おられる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手がいらっしゃる」あるいは「目上の相手が〜していらっしゃる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 正しい例文①部長、明日はオフィスにいらっしゃいますか?
- 正しい例文②部長、今でも野球をしていらっしゃいますか?
のような感じで「目上の相手が居る」あるいは「目上の相手が〜している」ときにつかいます。
例文①は「自分がある場所に居る・居た」という意味で使い、例文③は「~している・~していた」の意味で使います。
「居る」は「その場所に居る」という意味ですが、同音異義語で「〜している」のような現在進行形・現在形にも使われます。謙譲語「おる」はどちらにも使われます。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長、明日はオフィスにおりますか?」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「〜している」「居る」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。
「いらっしゃる・おられる」はどれを使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「居る」の尊敬語には、
①いらっしゃる
②おられる
と2パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが「おられる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため「①いらっしゃる」をつかうのが無難。
たとえば
「部長が私に手紙を送られました」
だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。
そこで
「部長が私に手紙をお送りになりました」
のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。まぁ組み合わせる語によっては「れる・られる」のほうが適切なシーンもありますが…
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「居る」の尊敬語「いらっしゃる」「おられる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「いらっしゃいます」「いらっしゃいました」として使うとより丁寧です。
例文
「居る」の尊敬語「いらっしゃる」「おられる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- ビジネスメールや会話で「相手がある場所に居る」として使う
・例文「部長は事務所にいらっしゃいます」
・例文「会議室にいらっしゃいます」
- ビジネスメールや会話で「~している」として使う
例文「○○は出社しておりますが、あいにく会議中でございます」
例文「キャッチボールをしております」
例文「食事をしております」
例文「はい、存じております」
例文「当店ではiphoneを取り扱いしております」 - ビジネスメールや会話で「居ますか?」として使う
・例文「営業ご担当の〇〇様はいらっしゃいますか?」
・例文「〇〇部長はいらっしゃいますか?」
他にもよく使う敬語の変換表
「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
見る | 拝見する | ご覧になる 見られる |
見ます |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
お行きになる 行かれる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
いる | おる | いらっしゃる | います |
送る | お送りする お送りいたす 送付いたす |
お送りになる 送られる |
送ります |
居る の謙譲語・尊敬語はこう使う!
つづいて「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
×部長、明日はオフィスにおりますか?
「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、明日はオフィスにおりますか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトがどこかに「居る」のであれば
- 正しい例文「部長、明日はオフィスにいらっしゃいますか?」
とするのが正解。
他にも電話で「〇〇様はおりますか?」も間違い敬語。相手が「居る」ことを確認したいときには尊敬語を使い「〇〇様はいらっしゃいますか?」とします。
×(私が)明日はオフィスにいらっしゃいます
「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)明日はオフィスにいらっしゃいます
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが「居る」であれば、
- 正しい例文(私が)明日はオフィスにおります
とするのが正解。
×社外のヒトにたいして「部長はオフィスにいらっしゃいます」
「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
- NG例文(社外に対して)部長はオフィスにいらっしゃいます
だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。
ということで、
上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。
- 正しい例文(社外に対して)〇〇はオフィスにおります
とするのが正解。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「居る」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 居る の謙譲語「おる」は「おります・おりました」
- 居る の尊敬語「いらっしゃる」は「いらっしゃいます・いらっしゃいました」
のようにするとより丁寧な敬語となります。