「思う」の敬語|謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方

「思う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、

ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。

まずは要点のまとめから。

思う の謙譲語は「存じる」

謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、

  • 今週末の試合は延期したく存じます
  • 価格改定をお願いしたく存じます

として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「存じます」とするのが一般的。

思う の尊敬語は…

①お思いになる
②思われる

いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、

  • (上司は)どのようにお思いになりますか?
  • (上司は)どのように思われますか?

として使います。

尊敬語の「~れる・られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいので「お思いになる」を使いたいところですが…「お思いになる」は「お」の発音が2つ重なっていて発音しにくい敬語フレーズです。

したがって「②思われる」のほうがよく使われますね。

思う の丁寧語は「思います」

さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「思います」とすればOKです。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。

思う の謙譲語「存じる」使い方と例文

まずは「思う」の謙譲語「存じる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも謙譲語とは?

念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

  • 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
    例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」
  • 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
    例文「母に申します」「海へ参ります」

2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。

【出典】文化庁「敬語の指針」

使い方

「思う」の謙譲語「存じる」の使い方は先にのべたとおり、

「自分が誰か対象となる目上のヒトに何かを存じる」のようにして自分の考え・行為・行動に使う謙譲語です。

自分を低くすることで対象を立てる・うやまう・高める敬語が謙譲語であるため、決して相手の行為にたいして謙譲語を使ってはいけません。

そうすると、

  • 正しい例文「~していただきたく存じます」
  • 正しい例文「誤りかと存じます」
  • 正しい例文「一度 ご挨拶かたがた伺いたく存じます」

のような感じで「自分が何かを思う」ときにつかいます。「~していただきたく存じます」だと「~してほしいと思う」の謙譲語となります。ここで「~していただきたく」は「~してもらいたく」の謙譲語。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「部長、○○社との企業合併はどのように存じますか?」

のような例文はダメ。

目上のひとなり第三者が「〜について思う」としたいときには謙譲語ではなく尊敬語を使い「部長、○○社との企業合併はどのように思われますか?」とします。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「思う」の謙譲語「存じる」を使うときには、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「存じます」として使うとより丁寧です。というより、ほぼ100%こういった使い方をします。

思う の謙譲語はなぜ「お思いする・お思いいたす」ではないのか?

ここでひとつ注意点を。

思う の謙譲語って「お思いする」あるいは「お思いいたす」であってもいいはず。謙譲語の基本が「お~する」「お~いたす」であるからです。

ただ、

このようなフレーズはビジネスシーンで使うことはありません。正直なところ理由は不明。せっかく「存じる」という素晴らしい謙譲語があるのですから、そちらを使いましょう。

例文

「思う」の謙譲語「存じる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。

  1. ビジネスメールで「~だと思う」としたいとき
    ・例文「お忙しいとは存じますが、ご連絡のほど何卒よろしくお願い申し上げます」
    ・例文「いただいたスケジュールですと、かなりタイトになるかと存じます」
    ・例文「ご対応いただければと存じます」
    ・例文「貴社訪問いたしたく存じます」
  2. ビジネス会話で「~だと思う」としたいとき
    ・例文「すばらしいアイディアと存じます」
【敬語の補足】
・使い方は「~と思う」としたいときのビジネスメールや会話
・謙譲語を使うことで自分の行為を低くしメールの受け手を高めている
・貴社 は「会社」を丁寧にした言いまわし
・いただく は「もらう」の謙譲語

思う の尊敬語「お思いになる・思われる」使い方と例文

つづいて「思う」の尊敬語「お思いになる・思われる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。

そもそも尊敬語とは?

念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。

尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。

注意点として、

社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。

社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。

高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。

使い方

「思う」の尊敬語「お思いになる・思われる」の使い方は先にのべたとおり、

「目上の相手が何かをお思いになる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。

相手を立てる・うやまう・高める敬語が尊敬語であるため、決して自分の行為にたいして尊敬語を使ってはいけません。尊敬語を自分の行為に使うと、自分で自分をうやまうことになってしまいます。

そうすると、

  • 正しい例文「部長、○○社との企業合併はどう思われますか?
  • 正しい例文「部長、○○社との企業合併はどうお思いになりますか?」

のような感じで「相手が~と思う」ときにつかいます。

一方でNGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例文「部長、○○社との企業合併はどう存じますか?」

のような例文はダメ。

目上のヒトが「思う」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。

【補足】
何かしらの感想を相手に求めるときは「思う」なのか「考える」なのか難しいところ。「思う」と考えるのであれば「思われる・お思いになる」を使い、「考える」とするのであれば「お考えになる」を使う。

お思いになる・思われる どっち使う?

ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。

「思う」の尊敬語には、

  1. お思いになる
  2. 思われる

と2パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが尊敬語の「~れる・られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいので「お思いになる」を使いたいところです。

が、

「お思いになる」は「お」の発音が2つ重なっていて発音しにくい敬語フレーズ。

そこで「思われる」を使うことのほうが多いです。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

繰り返しにはなりますが、

「思う」の尊敬語「お思いになる・思われる」、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。

すでに例文にはしていますが…

ビジネスシーンにおいては
「思われます」「思われました」として使うとより丁寧です。

例文

「思う」の尊敬語「お思いになる・思われる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。

  1. 相手の意見や感想を聞くビジネスシーン
    ・例文「今回の人事について部長はどう思われますか?」
    ・例文「イチロー選手の引退について部長はどう思われますか?」
【補足】
・何かしらの感想を相手に求めるときは「思う」なのか「考える」なのか難しいところ。「思う」と考えるのであれば「思われる・お思いになる」を使い、「考える」とするのであれば「お考えになる」を使う。
・話の受け手を立てるために尊敬語をつかう。

他にもよく使う敬語のまとめ表

「思う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。

謙譲語 尊敬語 丁寧語
受け取る  拝受する
拝受いたす
 お受け取りになる  受け取ります
見る  拝見する  ご覧になる
見られる
見ます
言う  申す
申し上げる
 おっしゃる
言われる
 言います
会う  お会いする
お目にかかる
 お会いになる
会われる
 会います
する  致す
(いたす)
 なさる  します
伝える  お伝えする
申し伝える
 お伝えになる
伝えられる
 伝えます
思う  存じる  お思いになる
思われる
 思います
行く  伺う
参る
参上する
 お行きになる
行かれる
 行きます
もらう  いただく  くださる  もらいます
いる  おる  いらっしゃる  います
読む  拝読する  お読みになる
読まれる
 読みます
考える  該当なし  お考えになる
考えられる
 考えます
送る  お送りする
お送りいたす
送付いたす
 お送りになる
送られる
 送ります
「~れる」という尊敬語は受身や可能の「れる・られる」と混同しやすいため「お~なる」を使うほうがベター。

思う の謙譲語・尊敬語はこう使う!

つづいて「思う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

×部長、イチロー選手の引退についてどう存じますか?

「思う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

きわめて初歩的ではありますが…

謙譲語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「存じます」は謙譲語であるため、自分の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文「部長、イチロー選手の引退についてどう存じますか?」

は間違い敬語です。

上司や目上のヒトが何かを思うのであれば、

  • 正しい例文「部長、イチロー選手の引退についてどう思われますか?」
  • 正しい例文「部長、イチロー選手の引退についてどう思われますでしょうか?」
  • 正しい例文「部長、イチロー選手の引退についてどうお思いになりましたか?」
  • 正しい例文「部長、イチロー選手の引退についてどのようにお考えでしょうか?」

とするのが正解。

×(私が)お思いになります

「思う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

こちらもきわめて初歩的ではありますが…

尊敬語を使うべき対象がおかしいのはダメ。「お思いになる」は尊敬語であるため、相手の行為にたいして使います。

したがって、

  • NG例文(私が)お思いになります

は間違い敬語です。

こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが「思う」であれば、

  • 正しい例文(私が)~かと存じます

とするのが正解。

丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる

「思う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。

何度もしつこいですが…

丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。

たとえば、

  • 思う の謙譲語「存じる」は「存じます」
  • 思う の尊敬語「思われる」は「思われます」

のようにするとより丁寧な敬語となります。

思う の謙譲語・尊敬語を使ったビジネスメール全文