「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
使う の謙譲語は「該当なし」
使う の謙譲語にはビジネスにふさわしいフレーズがありません。無理やり「お使いする」「お使いいたす」とできますが一般的ではありません。
では、
ビジネスシーンで「自分が使う」としたいときには、どうしたらいいのでしょうか?
- 例文「トイレを使ってもいいですか?」
みたいな質問をしたいのであれば…
「借りる」の謙譲語「お借りする」「お借りいたす」「拝借する」を使い、
- 例文「トイレをお借りしてもよろしいでしょうか?」
- 例文「トイレをお借りいたします」
などと類語で敬語変換するとよいでしょう。
使う の尊敬語は
①お使いになる
②使われる
※ 丁寧語「ます」と組み合わせて「お使いになります」として使うのが一般的
※「お使いになられる」は間違い敬語
いっぽうで尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 例文「部長、ボールペンはお使いになりますか?」
- 例文「部長、ボールペンは使われますか?」
として使います。
ただし、
尊敬語の「~られる」は受身や可能の「~れる・られる」と間違われることもおおいため、「~なる」を使うほうが無難。そうすると尊敬語は「お使いになる」を使うのがベター。
使う の丁寧語は「使います」
さいごに丁寧語は「です・ます」を使うだけ。「使います」とすればOKです。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながら使い方、注意点について説明していきます。
使う の謙譲語は「該当なし」
冒頭でも説明したとおり「使う」の謙譲語は「該当なし」です。
したがって、
「自分が使う」としたいときには類語を考えて謙譲語に変換します。
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ = 自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
例文「お伝えします」「お土産をいただく」「貴社へ伺う」 - 謙譲語Ⅱ = 聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
例文「母に申します」「海へ参ります」
2種類ありややこしく感じるかもしれませんが「①自分側を低めて相手を高める」か「②話し手に敬意を示すために使う」だと理解しておきましょう。
【出典】文化庁「敬語の指針」
お使いする?お使いいたす?
謙譲語の変換にこまったら…
まずは「お・ご~する」「お・ご~いたす」という謙譲語の基本フレーズをつかえばOK。
ところが「使う」と組み合わせてみると「お使いする」「お使いいたす」のように、これまで聞いたことのない敬語フレーズとなってしまいます。
繰り返しにはなりますが、こういうときには謙譲語を使うのをあきらめて①丁寧語「使います」をつかって敬語にするか、②類語を考えて謙譲語にするか、の2パターンあります。
使う の代わりとなる謙譲語フレーズ「お借りする・拝借する」
使う の代わりにつかえる謙譲語フレーズにはたとえば「お借りする・お借りいたす・拝借する」があります。
具体的に、
以下の「使う」の例文について「お借りする」で言い換えしていきましょう。
- 例文①トイレを使ってもいいですか?
- 例文②このボールペンは使ってもいいですか?
- 例文③ホワイトボードを使ってもいいですか?
- 例文④機内で携帯電話は使えますか?
これを言い換えすると…
- 例文①トイレをお借りしてもよろしいでしょうか?
- 例文②このボールペンをお借りしてもよろしいでしょうか?
- 例文③ホワイトボード、お借りしてもよろしいでしょうか?
- 例文④機内で携帯電話をお借りしてもよろしいでしょうか?
ということで例文①~③は「お借りする」でOK。
例文④の「~は使えますか?」だけが日本語としておかしくなりました。こういうときはもう丁寧語「使えます」としましょう。無理やりに謙譲語にする必要はありません。
使う の尊敬語「お使いになる・使われる」使い方と例文
つづいて「使う」の尊敬語「お使いになる・使われる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
「お使いになる・使われる」 どっち使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「使う」の尊敬語には、
①お使いになる
②使われる
と2パターンあります。どちらとも正しい敬語なのですが「使われる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため①お使いになる をつかうのが無難。
たとえば
「部長が私に手紙を送られました」
だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。
そこで
「部長が私に手紙をお送りになりました」
のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。
使い方
「使う」の尊敬語「お使いになる・使われる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手がお使いになる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 正しい例文「修正テープはお使いになりますか?」
- 正しい例文「ナイフはお使いになりますか?」
のような感じで「相手が使う」ときにつかいます。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「使う」の尊敬語「お使いになる・使われる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「お使いになります」「お使いになりました」として使うとより丁寧です。
例文
「使う」の尊敬語「お使いになる・使われる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- ビジネスメールで「相手が使う」とするシーン
・例文「新しい化粧品をお使いになったご感想はいかがでしょうか」
・例文「弊社ではゴールドクラスの会員様限定でラウンジサービスをご提供しております。お使いになる際には小職までお申し付けください」
・例文「工作器具をお使いになる際には、受付にて弊社スタッフにお申し付けください」 - ビジネスシーンで「使いますか?」と質問するシーン
・例文「○○はお使いになりますか?」
・使い方はビジネス会話やメールで「相手が使う」としたいときに使えるフレーズ
・相手を高めるために尊敬語を使う
使う の丁寧語は「使います」
最後に「使う」の丁寧語。
シンプルに「です・ます」とくみあわせて「使います」とすればOK。
ビジネス会話だと丁寧語だけでもいいのですが、ビジネスメール・文書や手紙ではかしこまった敬語が好まれるため「謙譲語・尊敬語」をつかいましょう。
他にもよく使う敬語の変換表
「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
見る | 拝見する | ご覧になる 見られる |
見ます |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
お行きになる 行かれる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
いる | おる | いらっしゃる | います |
考える | 該当なし | お考えになる 考えられる |
考えます |
送る | お送りする お送りいたす 送付いたす |
お送りになる 送られる |
送ります |
使う の謙譲語・尊敬語はこう使う!
つづいて「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
×部長、結婚式のスピーチは考えておりますか?
「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、結婚式のスピーチは考えておりますか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトが何かを「考えている」のであれば
- 正しい例文「部長、結婚式のスピーチはお考えになりましたか?」
とするのが正解。
蛇足ですが電話で「〇〇様はおりますか?」も間違い敬語。相手が「いる」ことを確認したいときには尊敬語を使い「〇〇様はいらっしゃいますか?」とします。
×トイレをお使いになりたいのですが…
「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)トイレをお使いになりたいのですが…
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが「考える」であれば、
- 正しい例文(私が)トイレをお借りしたいのですが…
- 正しい例文(私が)トイレをお借りしてもよろしいでしょうか?
- 正しい例文(私が)トイレをお借りします。
とするのが正解。
×社外のヒトにたいして「弊社の上司がお使いになります」
「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
- NG例文(社外に対して)弊社の上司がお使いになります
だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。
ということで、
上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。
- 正しい例文(社外に対して)弊社の○○が使うかと存じます
- 正しい例文(社外に対して)弊社の○○が使います
とするのが正解。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
「使う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 使う の謙譲語は該当なし
- 使う の尊敬語「お使いになる」は「お使いになります・お使いになりました」
のようにするとより丁寧な敬語となります。