「お戻りいただけますと幸いです」は「戻ってもらえると嬉しいです」という意味。
ようは「戻ってほしい!」「戻ってください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら戻ってほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
まずは「お戻りいただけますと幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“戻る”の意味
戻る(もどる)の意味は・・・
- もとの場所に帰る。【例文】ホテルに戻る
- 進んだ方向と逆の方向へ引き返す。【例文】坂道を戻る
- もとの状態にかえる。旧に復す。【例文】プロジェクトは振り出しに戻った
- 本来の持ち主のもとに返る。【例文】貸した本が戻った
“お戻りいただけますと”の意味は「戻ってもらえると」
まずは前半部分。
「お戻りいただけますと〜」の意味は…
「戻ってもらえると〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけますと」は「〜してもらえると」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「お戻り頂けますと」vs. ひらがな表記「お戻りいただけますと」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「戻ってもらえると嬉しいです」
- お戻り = 戻ること
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえると」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お戻りいただけますと幸いです」の意味は…
「戻ってもらえると嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「戻ってほしい!」「戻ってください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえると嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「お戻りいただけますと幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「戻る」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お戻りいただく」
- 可能形にして「お戻りいただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お戻りいただけます」
- 接続助詞”と”をくっつけて「お戻りいただけますと」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「お戻りいただけますと幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「戻る」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「お戻りしていただけますと幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「戻っていただけますと幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「お戻り頂けますと」vs. ひらがな表記「お戻りいただけますと」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
- 接続助詞「と」は助詞の一類。用言・助動詞について、それよりまえの語句をあとの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係をしめすはたらきをする。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がお戻りする」「相手にお戻りいただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がお戻りくださる・お戻りになる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】戻ってほしい時の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「お戻りいただけますと幸いです」の使い方について。
ようは「戻ってほしい!」「戻ってください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】お戻りいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お戻りいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「戻ってもらえると嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お戻りいただけますと幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「お戻りくださいませ」
② 丁寧「お戻りいただければと存じます」
③ かなり丁寧「お戻りいただけますと幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「お戻り頂きますようお願い申し上げます」
「お戻りくださいますようお願い致します」
ビジネスメール例文①オフィスに戻ってきてほしい
メール件名:【国内営業チーム】懇親会開催のご案内
営業部の皆さま (社内上司・目上など)
お疲れ様です。
さて標記の件、日頃のご慰労をかねて下記のとおりに懇親会を開催いたします。
なお本メールは事前に出席のご連絡をいただいた方のみに送付しております。
もし急用などでご欠席される際は幹事(ノマド:内線1234)までお申し付けください。
またレストランの場所がわかりにくいため、当日はオフィスに集合とさせていただきます。
外出などの予定がおありの方も一旦オフィスまでお戻りいただけますと幸いです。
どうぞ宜しくお願い致します。
記
①日時:1月20日(木)18:30~
※本社1階に18:00集合 → 移動
②場所:●●●
※地図を別途添付いたします
③会費:目安5000円/人(後日精算)
④緊急連絡先:
・xxx(幹事・ノマド)
・xxx(副幹事・野間子)
以上
***********
メール署名
***********
ビジネスメール例文②門限までに戻ってきてほしい
メール件名:社員旅行のご案内
営業部の皆さま
お疲れ様です。
幹事・ノマドです。
さて、4月10日〜13日に予定しております社員旅行の旅程につき、下記のとおりご案内申し上げます。
記
①日程:
②旅程:
③宿泊:
④ご留意事項など
・宿泊施設の門限は深夜0:00となります。門限までに必ずお戻りくださいませ。
・外部の皆さまもいらっしゃいます。ご配慮をお願いします。
以上
ご不明な点等がございましたらお気軽にお申し付けください。
よろしくお願いいたします。
***********
メール署名
***********
ビジネスメール例文③研修の案内
メール件名:営業研修のご案内
営業部の皆さま
お疲れ様です。
幹事・ノマドです。
さて、4月10日〜13日に予定しております営業研修の仔細につき、下記のとおりご案内申し上げます。
記
①日程:
②スケジュール:
③宿泊施設:
④ご留意事項など
・宿泊施設の門限は深夜0:00となります。門限までに必ずお戻りいただきますようお願い致します。
・外部の皆さまもいらっしゃいます。くれぐれもご配慮をお願いします。
以上
ご不明な点等がございましたらお気軽にお申し付けください。
よろしくお願いいたします。
***********
メール署名
***********
“お戻り頂けましたら幸いです”としても丁寧
「お戻りいただけますと幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】お戻りいただけましたら幸いです
もあります。言いたいことは「戻ってほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“お戻り頂けますと vs. お戻り頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「戻ってほしい!」「戻ってください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「お戻りいただけますと」だと意味は「戻ってもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「お戻りいただけましたら」だと意味は「戻ってもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
となります。
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」という敬語になります。
なお「お戻りをいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どちらも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
どちらかお好きな方を使えばよく、使い分けする必要はありません。
“お戻り頂けますと幸甚に存じます”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】お戻り頂けますと幸甚に存じます
→ 意味は「戻ってもらえると、この上なく嬉しく思います」 - 【例文】お戻り頂けますと幸甚です
→ 意味は「戻ってもらえると、この上なく嬉しいです」
とするともう、本当に死ぬほど丁寧になります。
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 存じる(ぞんじる)は「思う」の敬語(謙譲語)
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、幸甚(こうじん)というフレーズのほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールなど本当に堅苦しい文章にしたいときにオススメです。
普段づかいのメールであれば「幸い」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“幸いです vs. 幸甚です”の意味と違い
どちらも結局のところ「嬉しいです!」「幸せです!」という意味になるのですが…
幸甚(こうじん)のほうがより、嬉しさや幸福度合いを強調したフレーズになります。
つまり「幸甚です」とすると意味は・・・
「とてつもなく嬉しいです!」「大変ありがたいです!」「この上なく幸せです!」という感じになりますね。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「幸甚(こうじん)」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「戻ってほしい!」「戻ってください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『お戻りいただければ幸いです』
「お戻り頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「お戻りいただければ幸いです」
意味は『戻ってもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『戻ってもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『お戻り頂けますと幸甚に存じます』など
「お戻り頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 【例文】お戻りいただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「戻ってもらえたら、とても有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お戻りいただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「戻ってもらえると、この上なく有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お戻りいただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「戻ってもらえたら、この上なく有り難く思います/有り難いです」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『お戻り賜れますと幸甚に存じます』など
「お戻り頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】お戻り賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「戻ってもらえると、この上なく有り難く思います」 - 【例文】お戻り賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「戻ってもらえたら、とても有り難く思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お戻り」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「お戻りいただけますと幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】お戻りいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お戻りいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】お戻りいただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+お戻り
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お戻り」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかお戻りくださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかお戻りくださいますようお願い致します」
例文「どうかお戻りいただけますと幸いです」
例文「どうかお戻りいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒お戻りくださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒お戻りくださいますようお願い致します」
例文「何卒お戻りいただけますと幸いです」
例文「何卒お戻りいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+お戻り
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お戻り」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお戻り〜」
「大変恐縮ではございますがお戻り〜」
「たびたび恐縮ではございますがお戻り〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお戻り〜」
「大変恐れ入りますがお戻り〜」
「たびたび恐れ入りますがお戻り〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお戻り〜」
「大変お手数ではございますがお戻り〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお戻り〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お戻りのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお戻り〜」