2017年4月に迫った都市ガス自由化。ガス業界は完全自由化になります。どんな企業が新規参入するのでしょうか?競争相手が増える中、ガス会社は今後どうしたら生き残っていけるのでしょうか?
これまで地域独占だった家庭むけの都市ガス。自由化で競争が生まれ値段が下がるハズ。これって客にとってはいいけど渦中の東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガス・その他の企業側には苦しい。
ガス会社・電力会社・インフラ業界を志望する就活生転職者は必見です。
最終面接あたりで「電力・ガス自由化時代に生き残るにはどうするべきか?」質問される可能性あり。それか最終面接で役員に逆質問しても面白いかもしれません。
※客目線ではなく参入企業目線での記事です。
ガス自由化による新規参入企業一覧(予測ふくむ)
自由化によって参入できる領域は①製造、②販売があります。それぞれどんな企業が参入できるだろうか?
①都市ガスの製造
まずは最も重要な製造元。以下の業界・企業が新たな製造元として想定される。
- 電力会社(東京電力、関西電力、中部電力、四国電力、九州電力、表明済み)
火力発電用にLNG(都市ガスの原料)を大量に輸入している - 石油元売会社(JX、出光興産、昭和シェル石油、他予測)
LNGを輸入していて大口むけは参入済み - 5大総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、双日、予測)
LNGの権益を持ち輸入している - エネルギー商社(岩谷産業、5大総合商社の子会社、予測)
同上。すでに自由化された大口の都市ガスとLPガスでは実績あり
②都市ガスの販売
作る方ではなく、売るだけなら誰でも参入できる。一介のサラリーマンである私にすらできてしまう…消費者と接点のある企業であれば誰でも良いが、例としてまとめておく。
- 電力会社(上述)
- 石油元売会社(上述)
- 総合商社、専門商社(誰でも)
- 携帯電話会社(ソフトバンク、ドコモ、au)
- 家電量販店(ヤマダ電機、ビッグカメラ、他)
- 生命保険会社(日本生命、住友生命、明治安田生命、他)
- 損保会社(東京海上、日本興亜、ソニー損保、他)
- 銀行リテール(メガバンク、地銀)
- 証券会社リテール(野村證券、SBI証券、他)
- 不動産販売会社(三井不動産、住友不動産販売、野村不動産、三菱UFJ不動産販売、他多数)
- 訪問販売系の会社(誰でも)
- アフィリエイター(誰でも)
正直、こんなに新規参入が多ければ価格崩壊するのは目に見えている…そんな中で生き残りのためにガス大手4社が実行している作戦を見ていく。
ガス業界大手4社のやり方は100%間違っている
ガス・電力自由化にともなってガス業界大手4社が実施している、拡大戦略を簡潔にまとめる。
ガス業界大手4社の取り組み
- 大阪ガス
火力発電所に共同出資して電力とガスのセット販売を開始。
LNG上流権益に投資(総合商社と同じ)
エネファームなどもセット販売 - 東京ガス
火力発電所を建設、電力とガスのセット販売を開始
LNG上流権益に投資(総合商社と同じ)
エネファームなどもセット販売 - 東邦ガス
火力発電所の建設計画、ガスと電気のセット販売
水素ステーション建設(トヨタの水素自動車事業のあとおし)
リフォームなどもセット販売 - 西部ガス
火力発電所を建設計画するも延期中。ガスと電気のセット販売を計画。
LNG上流権益に投資(総合商社と同じ)
電気を新たに作るか他から引いてきてガスとセット販売する、という小学生でも考えるくだらない事業構想。くわえてLNG上流権益に投資するといっても遅すぎる。権益投資なんて既に総合商社によってやりつくされているのに、今さらやって何か意味があるのだろうか?
西部ガスの発電所投資延期は正しい。一方、もう動き出している大阪ガス・東京ガスは手を引けない状況。原子力発電所はいずれすべて再稼働される。そのうえ、化学メーカー、製紙メーカー、鉄鋼メーカーも自家発電設備を持っており余った電気を売れる。
したがって長期トレンドでは電気は間違いなく供給過剰になる。
新たな発電所は日本には全く必要ない。無理やり感がありすぎる計画で、方向性としては100%間違っている。供給過剰になって電気の値段が下がれば、投資したお金を回収できない。
単純に「ガスも電気も売ります」と言ったって、売上は伸びるが利益はまったく出ないだろう。だって値段を下げないと商売をとれないのだから…
安く作って、安く売るのが汎用商品におけるモノつくりの基本である。ガス会社大手4社は安売りはできても、安く作る工夫がまるでない。これではダメダメだ。
そこで私の考える生き残りアイディアを述べていく。
ガス業界大手4社と地域ガス会社が今後、生き残る5つの方法
私がもし、ガス大手4社・地域ガス会社の経営者なら以下5つの方法のいずれかを実施する。おもしろいと思うアイディアほど上位にしている。いくつか組み合わせて実行してもおもしろい。
①ガス製造工場・営業所をすべて売却。ガス管だけ残して事業継続
ガスは誰でも作れるため、新規参入企業が増えれば必ず供給過剰になって価格崩壊する。したがってガス会社が自前で設備を持つことにはリスクしかない。だから供給過剰になる前にすべて新規参入企業に売却してしまう。
売却するものには製造設備、営業所、営業マン、顧客情報、をすべて含む。
そしてガス会社は一番おいしい部分である、ガス管(ガスを各家庭に届ける管)だけを持つ。なぜガス管が最もおいしいかというと、新規参入企業には作れないから。投資金額がとんでもないことになるし、そもそも既存のガス管があるのに作るのは無駄でしかない。
ガス管をレンタルするだけの会社として存続すれば日本に人がいる限り、会社は永続する。なぜならガス管を持つ会社は地域に1社ずつしか存在せず、競争が生まれないから。
②営業所をすべて閉鎖、営業マンをすべてリストラ。営業は代理店を起用する
消費者を相手にする場合、従来の顧客直接型の営業スタイルは手間だけかかって何もいいことがない。
したがってガス・電力会社は営業機能を無くしてしまい、すべて外注化。「つまらない汎用商品 = 電気・ガス」の営業は誰にでもできるため営業代理店として手を挙げる人、企業は無数にいるだろう。たとえばソフトバンクを始めとする携帯電話会社、パナソニックを始めとする家電会社、生命保険会社、銀行などなど…
消費者との接点を直接持っている企業であれば誰でも営業できる。そして自前の営業を持つより、他の商品と一緒に片手間で売ってもらう方が営業にかかるコストが低くて済む。不要になった営業所、営業マンは全員リストラする。(リストラ対象者には退職金を十分に支払う)
③新規参入企業と戦わない、手を組む
私が経営者なら新規参入が予想される電力会社や石油会社とのバトルは極力避ける。理由はガスの売値が下がってロクなことにならないから。
それではどうするか?
新規参入企業を敵としてみるのではなく、仲間として取り込む。
具体的には電力会社とアライアンス(=業務提携)して以下の業務効率化、リストラを実施する。今の状態は非効率すぎる。
- 電力・ガス会社で50%ずつ株を持ち合い営業機能だけを持つ別会社を作り電気とガスの両方を売る。電力・ガス会社の本体には営業機能を持たない。
▼ガス会社・電力会社の営業は同じ客に違う商品を売るだけなので2つの会社で別々に営業する意味がない
↓ - 各社、営業マン半分をクビにする、地域営業所を統合する
▼1人の営業マンが電気とガスの両方を売るので半分の人数で済む
↓ - 浮いた人件費を料金の値下げに充てる
▼これは官僚・政治家に花を持たせるため。「自由化したのに値段は変わりませんでした」では官僚も政治家も立場がない
↓ - 顧客は料金が下がって満足。官僚、政治家は自由化がうまくいって満足。電力、ガス会社はこれまで通りの利益が確保されて満足。
電力 & ガス会社がアライアンスを組んでコストを極限まで抑えて運営すれば、どんな敵が現れようと一瞬で蹴散らせる。何も問題ない。
④ガス管事業を別会社化(2022年4月~?)
ガス管の別会社化は2022年4月から実施されることがほぼ決定されている。←法案の成立待ち。
①のマイルドバージョンです。既存の製造設備や営業所を売却せずに、ガス管事業だけを別会社にする。ロジックは同じ。こうした場合、ガスの販売は儲からなくなることが目に見えている。一方で新たに作ったガス管事業は大儲けできる。
最終的には儲からなくなった本体の製造設備・営業所をすべて他社に売却して、ガス管の別会社だけが生き残ることになるだろう。
作戦①と結果自体は変わらない。
⑤電力会社・ガス会社・石油会社のM&A
本来、日本という狭い国に電力会社とガス会社と石油会社が別々に存在することがおかしい。非効率すぎる。電力会社とガス会社、石油会社は一つになって被っている仕事をすべて一本化、営業所も半分閉鎖、全社員の半分をリストラするべきだ。
そうするとコストが下がり、電力とガスを値下げする余地が十分に出てくる。これが利害関係者の満足度を最大化する方法だ。(リストラ対象者には退職金を十分に支払う)
総まとめ
ガス・電力会社の従業員は公務員レベル。ビジネスというものをまるで分かっていない、経営陣も含めて全員が無能すぎる。
誰にでもわかりやすく新規参入し、誰にでもわかりやすく消耗戦を繰り広げるだけなら小学生でもできる。でもそんなことは長続きしない。ガス・電力会社の無能な経営者には「もっと頭を使って真剣にビジネスに取り組め!!」と言いたい。
ひとつだけ確実なことは、私が社長になってガス・電力会社を経営したら劇的な成果を生み出すということだ。
ありがとうございます