敬語「拝謝」の意味と使い方・ビジネスメール例文

拝謝(読み:はいしゃ)について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。

まず簡単にまとめを。

「拝謝」の意味は直訳すると「感謝すること・礼を言うこと」。

敬語(謙譲語)をつかっているため実際にはもっと丁寧で「心から感謝すること・つつしんで礼を言うこと」の意味になります。

ようはお礼フレーズ「ありがとう」よりもかしこまった感じの敬語とお考えください。

使い方はお礼をともなうビジネスメールで「ありがとう」言いたいとき。

  • 【例文】このたびの価格改定につきご了承いただき、拝謝いたします。誠にありがとうございました。※「了承=納得すること」の意味
  • 【例文】ご承諾いただき拝謝いたします。※「承諾=認め受け入れること」の意味
  • 【例文】ご快諾いただき拝謝申し上げます。※「快諾=快く承諾すること」の意味

たとえば上記のように「ありがとう」の代わりに、よりカチッとしたお礼フレーズとしてつかうと丁寧です。

どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現。

なお。

等しくつかえる丁寧な言い換えには「感謝する(かんしゃ)」「深謝する(しんしゃ)」「お礼申し上げます」などあり。どれをつかっても丁寧です。

ざっくりとした解説はこれにて終了。

くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。

※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。

“拝謝”の意味

拝謝(読み:はいしゃ)の意味は・・・

  • 礼を言うことをへりくだっていう語。心から感謝すること。

つまり「感謝すること」の謙譲語ですね。

「謝意」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。

※なお類語は「感謝(かんしゃ)」「深謝(しんしゃ)」「万謝(ばんしゃ)」などあり

「拝謝する」だと「感謝する」の意味となります。

結局のところ「ありがとう」という意味なのですが…

お礼や感謝するときに「ありがとう」ばかり使っていては敬語ビギナー。いろいろなお礼フレーズをつかいこなせるようになるとグッと表現の幅が広がります。お礼フレーズのひとつとして覚えておくとよいでしょう。

「拝謝」の使い方

なお「拝謝」の使い方として。

例文にもしましたが「拝謝」を単体でつかうことはほとんどなく。「感謝する」「礼を言う」の意味で「拝謝」としてつかうケースがほとんど。さらに「〜する」の部分を以下のようにもっと丁寧な敬語にしてつかいます。

  • 【丁寧】丁寧語”ます”をくっつけて「拝謝します
  • 【かなり丁寧】謙譲語”いたす”丁寧語”ます”で「拝謝いたします
  • 【さらに丁寧】謙譲語”申し上げる”丁寧語”ます”で「拝謝申し上げます

※「~いたす」は「~する」の謙譲語

※「~申し上げる」は「~する・言う」の謙譲語

“拝謝”の使い方・ビジネスメール例文

つづいて「拝謝」の使い方とビジネスメール例文を紹介します。

【基本の使い方】お礼ビジネスメール or 挨拶の定型文

ビジネスシーンにおける「拝謝」の丁寧な使い方、まず基本。

①お礼ビジネスメールあるいは②挨拶の定型文といった、ほとんど決まりきった場面でしかつかわれません。

たとえば。

使い方①お礼をともなうビジネスメールで「ありがとう」言いたいとき。

  • 【例文】このたびの価格改定につきご了承いただき、拝謝いたします。誠にありがとうございました。※「了承=納得すること」の意味

とすれば「価格改定を了解してもらい感謝します、ありがとう!」という意味になります。このように「ありがとう」の代わりに、よりカチッとしたお礼フレーズとしてつかうと丁寧です。

あるいは。

使い方②定型の挨拶文としてビジネスメールや文書の書き出し、または結びにつかうこともできます。

  • 【例文】平素は格別のご高配を賜り拝謝申し上げます。※ビジネス文書メールの書出し挨拶
  • 【例文】平素は格別のお引き立てを賜り拝謝いたします。※ビジネス文書メールの書出し挨拶
  • 【例文】旧年中のご厚情に拝謝いたしますとともに、本年も変わらぬご厚誼のほどお願い申し上げます。※年賀状

例文①ビジネス送付状

平成29年8月28日

株式会社ビジネス
ビジネス文書部 ビジネス太郎 様

〒123‐4567
東京都渋谷区○○1-1-1 渋谷ビル13F
株式会社レター文書
営業部
担当:転職 一郎
TEL/FAX:xxx-xxxx-xxxx/oooo
e-mail:shukatsu@shukatsu

送付のご案内

拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り拝謝申し上げます。
さて、表題の件につき下記のとおり送付いたします。ご査収のほど宜しくお願い申し上げます。

敬具

・iPhone6 製品カタログ     3部
・iPhone6 技術資料       3部
・iPhone6 品質規格書      3部

以上

※「ご高配を賜り厚くお礼申し上げます」とするのが一般的ですが「拝謝」としても丁寧です。

例文②年賀状(to取引先)

謹んで新年のお慶びを申し上げます
本年中に賜りましたご厚情に拝謝いたしますとともに
明年も変わらぬご愛顧のほどお願い申し上げます

※ご厚情(ごこうじょう)は「厚い情け」の意味

※ご愛顧(ごあいこ)は「ひいきにすること」の意味

ビジネスメール例文③承諾してくれたお礼返信(to社外)

メール件名:返信Re:Re:価格改定のお願い

株式会社ビジネス
営業部 ●● 様

いつもお世話になっております。
(株)転職・ノマドです。

この度は価格改定をご承諾いただき拝謝申し上げます。
誠にありがとうございました。

それでは見積書を添付ファイルにて送付いたしますので、ご査収のほどお願い致します。

以上

ご不明な点等ございましたらお申し付けください。
よろしくお願い致します。

***********
メール署名
***********

ビジネスメール例文④承諾してくれたお礼返信(to社内)

メール件名:返信Re:Re:新人研修 社内講師のお願い

xx部長 (社内上司・目上など)

いつもお世話になっております。
(株)転職・ノマドです。

ご無理を申し上げたにも関わらず、ご承諾いただき拝謝申し上げます。
誠にありがとうございました。

それでは下記の内容にて注文書を発行いたしたく、ご査収のほどお願い致します。

施工内容:
価  格:
お支払い:
納  期:
その他 :

以上

なお正式な注文書は上記ご確認いただいたのち、FAXにて送付いたします。併せてお願い申し上げます。

***********
メール署名
***********

ビジネスメール例文⑤社外あて転勤報告・挨拶

【to社外取引先・基本テンプレート】
・挨拶には行かず、メールだけで済ませるパターン
・社外取引先に転勤/移動報告をするビジネスメール例文
・営業や購買担当が取引先の商社マンに送るメール
・社外に報告するのは後任者が決まってからにする

メール件名:退職のご挨拶(転職・ノマド)

のまど商事株式会社
営業部 国内営業課 ●● 様 (社外取引先)

大変ご無沙汰しております。
転職・ノマドでございます。

私事ではございますが、このたび×月▲日付で大阪勤務を拝命しましたことをご報告申し上げます。

本来であれば直接伺いご挨拶すべきところメールでの連絡となりましたこと、深くお詫び申し上げます。

また、これまで何かとお力添えいただき心より拝謝いたしております。今後、何かの縁でご一緒させていただく機会がございましたら、その際には宜しくお願い申し上げます。

なお後任担当は下記のとおりとなります。
今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。

【後任営業担当】

・所属:(株)転職 リテール営業部 国内営業課
・氏名:野間子 オーエル(のまこ おーえる)
・Email:xxx
・電話:xxx

末筆ながら、貴社のますますのご発展と●● 様のご健勝ご多幸をお祈り申し上げます。

————–
メール署名
————–

社外取引先の挨拶メールには「ご支援ご鞭撻」「お引き立て」といったフレーズをつかい、社内上司などの挨拶メールには「ご指導ご鞭撻」といったフレーズをつかう。

【注意点】”拝謝”はこう使う!

つづいて「拝謝」の使い方というか注意点について簡単に。

①”拝謝”は二重敬語!

「拝謝」をつかうときの注意点その二。

もっとも初歩的な敬語の使い方なのですが…「拝謝」はNGです。

「拝謝」はすでに「感謝すること」の敬語(謙譲語)なのに、さらに謙譲語「ご」をくわえてしまっています…

結果として「感謝すること」に①謙譲語「拝謝」+②謙譲語「ご」としており二重敬語になりますね。※二重敬語とはひとつの単語におなじ種類の敬語を2回つかうことでありNGです。

あるいは。

「お(ご)~する」のひとかたまりを謙譲語として見たとき。「ご拝謝」でもいいんじゃないのか?とする意見もあります。ただ「~」の謙譲語が「お(ご)~する」だという解釈を適用した場合には「拝謝」が謙譲語であるため、そもそも二重敬語ということになります。

③”拝謝いたします”は二重敬語ではない!

あとは注意点というよりもよくある敬語の勘違いについて。

「拝謝いたします」は二重敬語だから誤りだという意見もあります。ただし答えは二重敬語ではなく100%正しい敬語です。

なぜ「拝謝いたします」が間違い敬語のように感じてしまうかというと…

「拝謝」はすでに謙譲語であり、さらに「する」の謙譲語「いたす」をつかって「拝謝いたす」としているから…

「拝謝=謙譲語」×「いたす=謙譲語」

「拝謝いたします」は「謙譲語 x 謙譲語」だから二重敬語??

このようなロジックで二重敬語だという意見がでてくるのかと。

ただし答えは…「二重敬語ではない」です。

二重敬語とは「ひとつの語におなじ敬語を二回つかうこと」であり敬語のマナー違反です。

たとえば「お伺いいたす」「お伺いする」などが二重敬語の例。「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」をつかっているのに、さらに「お〜いたす」「お〜する」という謙譲語をつかっているためです。

ところが。

「拝謝いたす」は以下のように「①感謝すること」「②する」という2つの異なる単語にそれぞれ謙譲語を用いているため二重敬語ではなく、正しい敬語の使い方をしているのですね。

①「拝謝」=「感謝すること」の意味の謙譲語(単体では名詞)

②「いたす」=「する」の意味の謙譲語

③お礼フレーズは「拝謝」や「ありがとう」だけじゃない!

「拝謝」はこれまで見てきたように「ありがとう」の代わりにつかえる、より堅苦しい(丁寧な)お礼フレーズです。とくにビジネスメールやビジネス文書・手紙といった文章でもちい、会話ではつかいません。

ただ。

お礼するときにいつも「ありがとうございます」や「拝謝いたします」を使っていてはビジネス敬語ビギナー。いろいろなお礼フレーズをつかえるようになると本当に表現の幅が広がります。

そこでほんの一部ですが、ほかにもあるお礼フレーズを紹介しておきます。

  • 『感謝申し上げます/感謝いたします/感謝いたしております』
  • 『深謝申し上げます/深謝いたします/深謝いたしております』
  • 『お礼申し上げます』
  • 『恐縮です/恐れ入ります/痛み入ります』※とくに申し訳なく思う気持ちをあらわすフレーズだが、お礼にもつかう

●参考記事:ビジネスシーンでの『お礼・感謝』敬語フレーズのすべて