「お気遣いなく」は目上に失礼?意味と敬語の正しい使い方・例文

お気遣いなく(読み:おきづかいなく)を目上の人に使うと失礼?

と心配されているあなたへ。

「お気遣いなく」のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)にふさわしい敬語を例文で紹介する記事。

まずは要点のまとめから。

お気遣いなく の意味は

・気を配ることなく、心配りすることなく、配慮することなく

  • 「気=きもち」
  • 「遣う=気を遣う、神経を遣う」

との組み合わせで成り立つフレーズ。

「どうぞお気遣いなく」とすると

  • どうぞ気を遣わないで!

の意味となります。

お気遣いなく の使い方は4つ

① プレゼントのお返しには「お気遣いなく」

② 私へのおもてなし には「お気遣いなく」

③ 「お気遣いなく」先に食べてください

④ その他、なんでも「お気遣いなく」

というように、
結構いろいろなビジネスシーンで使われます。

ここでひとつ注意点を。

お気遣いなく は目上の人に失礼!

※会話ならOK、メールはもっと丁寧に!

お気遣いなく を単体で使うと「失礼だ」と感じる目上のひともいることでしょう。

なぜなら、
「お気遣いなく」には動詞が省略されているから。

目上の人への言葉づかいとしては、完全な文章にするのが礼儀です。

よくある間違いとして、
以下の表現もおなじように目上のひとに失礼となりますのでご注意を。

  • NG例×「お大事に~!」
    ・どうかお大事になさってください などとする
  • NG例×「よいお年を!」
    ・よいお年をお迎えください とする

ということなので
ビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)でつかうときには、

  • 例文(どうぞ・どうか)お気遣いなくお願いします

というように完全な文章にしましょう。

こうすると目上の人(上司)はもちろんのこと、社外の取引先にたいするビジネスメールにも使えるすばらしい敬語になります。

ほかにもビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)で使える丁寧なフレーズには、以下のような敬語があります。

  • 例文「どうぞお気遣いなさらないよう お願い申し上げます」
  • 例文「どうかお気遣いなさいませんよう お願い申し上げます」
  • 例文「どうかお気遣いなどなさいませんよう お願い申し上げます

※どうか は どうぞ・くれぐれも に言い換えできる。

【補足】
「どうぞ」「どうか」「くれぐれも」といった言葉を前におくと、より柔らかい印象になります。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、

それぞれの言い換え表現について、意味と敬語の解説、注意点を詳しくみていきましょう。

※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へお願いします。

お気遣いなくどうぞ でOKなシーン

先ほど「お気遣いなくどうぞ」が目上のひとに失礼にあたる!

としましたが…

使っても差し支えないビジネスシーンもあります。

それが会話シーン。

会話ではテンポを重視し、丁寧さはあなたの態度であらわすことができます。

そこで
「お気遣いなくどうぞ、先にお召し上がりください」
「お気遣いなくどうぞ」

などと使っても違和感はありません。

むしろ
「お気遣いなさらないようお願い申し上げます」みたいな形式ばった表現を会話で使うと、いちじるしく違和感をおぼえるためご注意を。

いっぽうでビジネスメールでは
堅苦しい表現、形式ばったフレーズが好まれます。

なぜかというと、
メールは態度で敬意をあらわすことができないから。

文章で敬意をあらわそうとすると、どうしてもこれから紹介するような堅苦しい表現になるのですよね…

では本題にはいります。

【例文①】どうぞお気遣いなくお願いします

お気遣いなく のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「どうぞお気遣いなくお願いします」

あるいは

「どうかお気遣いなくお願いします」
「くれぐれもお気遣いなくお願いします」

意味は
「お気づかいのないようにお願い!」
「気配りするようなことのないようにお願い」

使い方

使い方は
相手に何かしらの贈り物をするときに「(お返しなどに)気遣わないでね」という、相手を気遣うためのフレーズ。

冒頭で解説したように、ほかにも色々とありますが…

贈り物をされるケースで考えましょう。

贈り物って、
受け取ったほうがぎゃくに気を遣ってしまうことがあります。

たとえばダイソンの掃除機(7万円くらい?)とかをプレゼントでもらったら…

「やべぇ…さすがに何かお返しが必要かな?」

と思ってしまうことでしょう。

そんなとき、

「いえいえ、どうかお気遣いなくお願いします」と相手に言えばよく、

そうするとなんとな~く

「あっ、お返しは要らないのね」と相手も考えます。

お気遣いなく と言われたとしても、
実際にはお返しを送ったほうがいいのは言うまでもありませんが…これが日本式の奥ゆかしいところなのですよね…

【例文②】どうかお気遣いなさらないよう お願い申し上げます

お気遣いなく のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「どうかお気遣いなさらないよう お願い申し上げます」

あるいは

「どうぞ・くれぐれもお気遣いなさらないよう お願い申し上げます」

意味は例文①とおなじく
「お気づかいのないようにお願い!」
「気配りするようなことのないようにお願い」

使い方は例文①とおなじく
相手に何かしらの贈り物をするときに「(お返しなどに)気遣わないでね」という、相手を気遣うためのフレーズ。

ほかの使い方には
お気遣いなく、どうぞお召し上がりください といった具合に「気配りしないで先に食べてね」というようなシーンでも使われます。

もちろん、もっといろんな使い方も想定できますが省略。

ここで「なさらないよう」は尊敬語「お~なさる」+否定「ないように」をつかって敬語にしています。

使い方の違い

例文①どうぞお気遣いなくお願いします との違いは…

形式ばったフレーズかどうか。

ややカジュアルな印象の「①お気遣いなくお願いします」。

尊敬語「お~なさる」をちゃんとした形でつかっているのが「②お気遣いなさらないよう」。

ということで
ビジネス会話であればサラッと言える「①お気遣いなくお願いします」を使います。

いっぽうで
ビジネスメールなど、よりかしこまったフレーズが好まれるシーンでは「②お気遣いなさらないよう~」を使うとよいでしょう。

【敬語の補足】
・尊敬語「お、ご~なさる」を使い「お気遣いなさる」
・否定「ない」+ように で「ないよう」
・言う の謙譲語「申す」+丁寧表現「上げる」
・丁寧語「です・ます」

【例文③】どうかお気遣いなどなさいませんよう お願い申し上げます

お気遣いなく のビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上)にふさわしい使い方と、敬語フレーズを使った例文。

「どうかお気遣いなどなさいませんよう お願い申し上げます」

あるいは

「どうか・どうぞ・くれぐれも お気遣いなさいませんよう お願い申し上げます」

意味は例文①とおなじく
「お気づかいのないようにお願い!」
「気配りするようなことのないようにお願い」

使い方は例文①とおなじく
相手に何かしらの贈り物をするときに「(お返しなどに)気遣わないでね」という、相手を気遣うためのフレーズ。

ここで「なさいませんよう」は尊敬語「お~なさる」+丁寧語「ます」+否定「ないように」をつかって敬語にしています。

使い方の違い

例文①お気遣いなくお願いします との違いは先ほど説明したため省略。

例文②お気遣いなさらないようお願いします との違いは…

丁寧レベルの違い。

尊敬語「お~なさる」をつかっているのが「②お気遣いなさらないよう」。

例文③ではこれにくわえて
丁寧語「ます」をつかい「お~なさいます」としています。

例文②③ともに素晴らしく丁寧な敬語ではありますが、より高い丁寧レベルは例文③お気遣いなさいませんよう~ だと言えます。

ということで、
「どうかお気遣いなどなさいませんよう お願い申し上げます」はホントにかしこまった表現が必要なビジネスメールで使いましょう。

取引先の平社員レベルや上司に使うには、ちょっと丁寧すぎる気がします。

【敬語の補足】
・尊敬語「お、ご~なさる」を使い「お気遣いなさる」
・さらに丁寧語「ます」を使い「お気遣いなさいます」
・否定「ない」+ように で「ないよう」
・言う の謙譲語「申す」+丁寧表現「上げる」

お気遣いなく の類語・言い換え

お気遣いなく の類語・言い換えとして考えうる限りのフレーズを紹介。

  1. お気になさらず
  2. お気持ちだけ頂戴します
  3. お構いなく

①お気になさらず は「お気になさらないようお願い申し上げます」など、そのまま言い換えして使えそうですね。

お気持ちだけ頂きます・頂戴します のほうは…

完全に意味が変わっちゃいます。

②お気持ちだけ頂きます は「贈り物を断る・相手の厚意を断る」というビジネスシーンで使われます。

したがって「お気遣いなく~」の言い換えとしては不適切。

③お構いなく は「○○しましょうか?」と相手に言われたときの返事であるため、「お気遣いなく~」とはちょっと意味合いが違います。

ただ、部分的には置き換え可能。

これらをまとめると以下のとおり。

① プレゼントのお返しには「お気遣いなく」
→ お構いなく・お気になさらず で言い換えOK

② 私へのおもてなし には「お気遣いなく」
→ お構いなく・お気になさらず・お気持ちだけ頂戴します で言い換えOK

③ 「お気遣いなく」先に食べてください
→ お構いなく・お気になさらず で言い換えOK

④ その他、なんでも「お気遣いなく」
→ 状況によるが「お気になさらず」であれば言い換えOK

ということで、
お気になさらず がもっとも類語としてふさわしいフレーズとなります。

【注意点】お気遣いなく はこう使う!

つづいて「お気遣いなく」を使うときの注意点を解説します。

敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。

お気遣いしてください はNG!

きわめて初歩的な敬語の使い方なのですが…

お気遣い するのはあくまでも相手の厚意であるため、相手に「お気遣いしてください=気配りしてください」と要求するのは間違い。

どんなお気遣いに対して「ありがとう」なのか?

お気遣い の意味は「気配り」

したがって、

どんな気配りにたいしてのお礼なのか?
を明確にしてあると、よりよい文章になります。

「お気遣いを頂きありがとうございます」を単体で使うと、いったい何に対するお礼なのか、あいまいなのですよね。

そこでたとえば

「たいそうなお品を頂きありがとうございました。お気遣い痛み入ります」
「就任に際し、色々とお気遣いを頂きまして厚くお礼申し上げます」

などのようにすると良いでしょう。

お心遣い・お気遣い の違い

お気遣い の類語としてよくつかわれる他のフレーズとの違い。

「お心遣い」との違いについて少し。

お心遣い の意味は「配慮、気配り」

お気遣い の意味は「気をつかうこと、心遣い」

意味における違いは…
ほとんど無視できるレベルであり、どちらを使っても

「配慮、気配り」

という意味の言葉になります。

ただしニュアンスとしてはちょっと違っているため、使い方も違います。

  • お気遣い だと「意識して気をつかう」
  • お心遣い だと「意識せず心から気を配る」

といった感じでニュアンスの違いあり。

したがって、

  • ◎どうぞお気遣いなく=気配りは必要ないよ

とは言っても

  • ×どうぞお心遣いなく=心配りは必要ないよ

とは使いません。

なぜなら、

気遣い は厚意でなく意図的であるいっぽう、
心遣い は相手の純粋な厚意であるため。

相手の厚意をさえぎるような発言をしてはいけないのですよね。

(たとえホントは違っても・・・)

【例文】お気遣いなく のビジネスメール全文

さいごに「お気遣いなく」を使ったビジネスメールの例文を紹介します。

繰り返しにはなりますが、相手の負担をへらすためのビジネスシーン(目上・手紙・メール・上司など)でよく使われる表現となります。

【例文】お土産のお礼メールに返信(社外メール)

件名:Re: お品の御礼

就活株式会社
営業部 ○○様

ご丁寧にご連絡をいただきありがとうございます。
皆さんでお召し上がりになったとのこと、とても嬉しく思います。

なお お返しに関しましては
どうかお気遣いなどなさいませんよう、お願い申し上げます。

今後とも何卒宜しくお願いいたします。

メール署名

【敬語の補足】
・お礼メールをもらったときの返信例文
・お礼をいただき ではオカシイので「ご連絡」とする

【例文】ビジネス会話(お土産を渡すとき)

【あなた】
つまらないものですが、どうぞ

【相手】
とんでもございません。
お気遣いいただき恐れ入ります…。
今度、お返しの品をお持ちします。

【あなた】
いえいえ、どうかお気遣いなくお願いします。