「拝啓・敬具」「記」について意味とビジネス文書・メールでの正しい使い方を、例文つきで誰よりもわかりやすく解説していく記事。
まずは基本となる意味、使い方としては…
- 「拝啓」の意味は「つつしんで申し上げます」「うやまって申し上げます」
・使い方はビジネス文書や手紙の挨拶で冒頭につかう
・拝啓 (文章) 敬具 でひとつのセットとなる - 「敬具」の意味は「うやまって(最後に)添え申します」
・ビジネス文書や手紙の挨拶で結びにつかう
・拝啓 (文章) 敬具 でひとつのセット - 「記」の意味は「ここから本題をしるします」
・使い方はビジネス文書やメールの本文に入る前につかう
・記 (文章) 以上 でひとつのセット
言葉で説明するとややこしいため、
よく使われるビジネス文書の例文で見るとこんな感じ。
▼例文「ビジネス文書での拝啓・敬具・記」
(カンパニー レターヘッド)
本社移転のお知らせ
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
さて このたび弊社は業務拡大に伴い 9月1日より本社を下記に移転することになりましたので 謹んでご案内を申し上げます
これを機に 皆様の信頼にお応えできるよう倍旧の努力をしてまいる所存でございます
今度とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます
まずは略儀ながら 書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬 具
平成29年8月吉日
株式会社就活
代表取締役 就 活 一 郎
記
- 業務開始日 平成29年9月1日(金)
- 新 住 所 〒123-4567 東京都ー
- T E L 03-xxxx-xxxx
- F A X 03-xxxx-xxxx
- ア ク セ ス JR東京駅・八重洲北口より徒歩5分
以 上
こんな感じでつかうと素晴らしいビジネス文書となります。
ここで使い方のポイントは大きく以下7つ。
- 正式なビジネス文書には句読点を使わないが…
よこ書きの場合にはどちらでもよい
たて書きでは使わないのが一般的 - 「拝啓」のあとは改行せずだが…
よこ書きの場合は実際にはどちらでもよい
たて書きでは改行しないのが普通
位置は縦書き=上寄せ、横書き=左寄せ - 「敬 具 」として空白をつかうが…
よこ書きの場合はどちらでもよい
たて書きでは改行しないのが普通
位置は縦書き=下寄せ、横書き=右寄せ - 「記」は中央ぞろえにする
- 「拝啓・敬具」はセットでつかう
- 「記・以上」はセットでつかう
- 「以 上 」として空白をつかうとよい
ここで補足をひとつ。
もともとビジネス文書というか公式なレターは縦書きだったこともあり、よこ書きには正式な決まりがありません。
ポイントを挙げましたがたんなる目安であったり、見やすくするための工夫であったりするため柔軟にご対応ください。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、くわしくは本文中にて解説していきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
拝啓・敬具 の意味
拝啓 (文章) 敬具 ってそもそもどんな意味?
という点について詳しく解説します。
拝啓 の意味は「つつしんで申し上げます」
拝啓 の意味は「つつしんで申し上げます」
拝啓 (文章) 敬具 でひとつのセットになり、ビジネス文書や公式な手紙に使われることの多い表現。
たとえば以下のようなビジネスシーンで使われます。
- 本社移転の案内文書
- 就任、退任の挨拶
- 会社設立の案内文書
- 社名変更の挨拶
- お礼状、お礼メール
・インターンシップお礼状(就活)
・取材協力のお礼状
・発表会参加のお礼状 - 退職、転勤、異動の挨拶ビジネス文書
- 見積書などほか多数
何かしらの「お知らせ」に使われることがほとんどですね。
「拝啓」という言葉は「拝む(おがむ)」「啓す(もうす)」からなります。
「啓」という言葉は今でこそ「啓発・啓蒙」などのような熟語に使われますが、もともとの由来には「言う」の謙譲語「啓す(もうす)」という意味もあります。
したがって拝啓を直訳すると「(相手のことを)拝んで申す」「(相手のことを)うやまって申す」という意味になります。
「つつしんで申す」は少し意訳しています。
敬具 の意味は「うやまって添え申します」
敬具 の意味は「うやまって(最後に)添え申します」
使い方は
拝啓 (文章) 敬具 でひとつのセットになり、ビジネス文書や公式な手紙に使われることの多い表現。ビジネスシーンはさきほどの例と重複するため省略します。
なぜこのような意味となるのか?
「敬具」の由来を考えてみましょう。
「敬」は「相手のことを敬う(うやまう)」
「具」という言葉は今でこそ「家具・道具・寝具」などのような熟語に使われますが、もともとの由来には「具す(ぐす)= 添える」という意味もあります。
これらのことを考えると
「うやまって(最後に)添えます」という意味として解釈できますね。
言葉の由来なんてホントは知らなくても構いません。情報を発信する立場としてすべての疑問を解消できるようにしたいがために、こんなことまで書きました。
拝啓・敬具 の使い方と書き方、位置
「拝啓」の使い方というか、書き方と位置について。
「たて書き」と「よこ書き」のビジネス文書とで書き方が違うため、それぞれ画像で解説します。
【よこ書き】拝啓・敬具 の書き方と位置
よこ書きの「拝啓・敬具」の書き方は画像のとおり。
注意点・ポイントを以下にまとめておきます。
厳密に決められているわけではないので、柔軟にご対応ください。
▼書き方のコツ
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
【拝啓の書き方と位置】
「拝啓 ○○」として改行をせず
拝啓の後ろに1文字ぶんのスペースを入れて書き始める。
拝啓の前にはなにも必要なし
句読点を使わないのが正式な書き方であるが、 【挨拶の書き方】
横書きの書式ではほとんどのヒトが句読点を使っている。
挨拶には他にも例えば
「時下ますますご清栄〜」などいろいろな表現が使える。
さて このたび (中略・後略)
敬 具
【敬具の位置】
「敬具」は改行して右寄せにする
改行せず右寄せにしてもいいが…
パソコンのワード機能だと改行した方がラク
「敬○具○」は○の部分にスペースを入れる。
【敬具の書き方】理由は読みやすくするため。
全体の文字バランスを考慮する
(ルールというわけではなくちょっとした工夫)
【たて書き】拝啓・敬具 の書き方と位置
たて書きの「拝啓・敬具」の書き方は画像のとおり。
注意点・ポイントを以下にまとめておきます。
こちらも厳密に決められているわけではないので、柔軟にご対応ください。
- 拝啓 ○○〜は改行なし+1文字スペース
- 句読点を使わないのが正式な書き方
- 敬具は改行+位置は下寄せ
・ルールというわけではなく改行せずに下寄せにしてもいいが…
・Word機能だとそろえるのが難しいため改行した方がよい - 敬○具○ は○の部分に1~2文字スペース
・理由は読みやすくするため。全体の文字バランスを考慮する
・ルールというわけではなくちょっとした工夫 - 日付の位置は上寄せ+1文字スペース
- 氏名の位置は下寄せ
- 会社名は氏名のすこし上に書く
【類語】謹啓〜謹白 もおなじように使える
拝啓 (文章) 敬具 と同じく使える類語として
謹啓 (文章) 謹白 があります。
意味としては同じなのでくわしくは解説しません。使い分けする必要もありません。どちらかお気に入りの方をお使いください。
【補足】
1) 謹白 に使われる「白」は「ホワイト」の意味ではなく「白す(もうす)」であり、「言う」の謙譲語「申す」との解釈。
2) 古語では「申す・白す・啓す」をすべておなじく「もうす」として使っていました。今は「申す」しか使いませんが…
記〜以上 の意味
ビジネス文書における「記(文章)以上」の意味は…
記(ここから本題がはじまりますよ〜)
以上(ここで文章が終わりますよ〜)
という意味で使われます。
公式なビジネス文書やビジネスメールで使われることの多い表現。公式な文書はさいしょに時候の挨拶とか、いろいろ前置きが長くなりがち。
そこで「本題はここからですよ〜」
という意味の「記」が必要になってくるのですね。
ビジネスメールだと最近はあまり使わなくなりましたが、ビジネス文書にはかならずと言っていいほど登場する書き方。
記〜以上 の使い方・書き方・位置
書き方は以下のルールに従いましょう。
記
書き方・位置
中央ぞろえにし文字フォントをすこし大きくする
ここから文章がはじまりますよ
(文章)
ここで文章が終わりますよ
以 上
書き方・位置
右ぞろえにし「以○上○」というように、
○の部分にスペースを入れるとよい
位置は右寄せにする
【まとめ】「拝啓・敬具」「記」の書き方
いろいろと話が散らかってきたのでまとめます。
先ほどまで使用した例文をつかって書き方について総復習しましょう。
▼ ビジネス文書の例文・書き方
(カンパニー レターヘッド)
位置は左上もしくは中央ぞろえ
カンパニーレターヘッドとは、会社ロゴなどの画像のこと。
日本語の文章では無いことが多い
英語の文章では必須アイテム 【レターヘッドの書き方】
本社移転のお知らせ
かならず文書の件名を入れる
メールであればメール件名の部分となる
「就任のご挨拶」「退任のご挨拶」etc
【件名の書き方】
拝啓 貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます
拝啓 ○○として改行をせず、 【本文冒頭の書き方と位置】
拝啓の後ろに1文字ぶんのスペースを入れて書き始める。
拝啓の前にはなにも必要なし
拝啓の位置は左寄せ
本文は正式には句読点を使わない
【挨拶の書き方】
企業・団体宛であればこれでいいが個人宛であれば「○○の候 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」などを使う。
さて このたび弊社は業務拡大に伴い 9月1日より本社を下記に移転することになりましたので 謹んでご案内を申し上げます
これを機に 皆様の信頼にお応えできるよう倍旧の努力をしてまいる所存でございます
今度とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます
まずは略儀ながら 書中をもちましてご挨拶申し上げます
【本文の書き方】
ここは定型文の組み合わせでなりたつ
とくに工夫する必要はない
ビジネスシーンごとに書式を検索のこと
解説のために改行と段落変更を入れたが改行のみでよい
敬 具
【敬具の位置】
「敬具」の位置は改行して右寄せ
改行せず右寄せにしてもいいが…
パソコンのワード機能だと改行した方がラク
【敬具の書き方】
「敬○具○」は○の部分にスペースを入れる
理由は読みやすくするため
全体の文字バランスを考慮する
(ルールというわけではなくちょっとした工夫)
平成29年8月吉日
左寄せ+1文字スペース
数字は半角でも全角でもよいが、日本語だと全角を使うのが一般的 【日付の書き方】
株式会社就活
代表取締役 就 活 一 郎
会社名+改行+役職+氏名の順番で書く
役職名は長くなりがちなので小さいフォント推奨
氏名は全角もしくは半角スペースを1文字おきに入れると見やすい
【署名の位置】
会社名・氏名は右寄せ+「敬具」の位置にそろえる
【署名の書き方】
記
中央ぞろえにし文字フォントをすこし大きくする
【記の書き方】
- 業務開始日 平成29年9月1日(金)
- 新 住 所 〒123-4567 東京都ーーー
- T E L 03-1234-5678
- F A X 03-1234-5689
- ア ク セ ス JR東京駅・八重洲北口より徒歩5分
箇条書きスタイルにするのがよい
全体のバランスを考えスペースをうまく使う 【本文の書き方】
以 上
【以上の書き方・位置】
位置は右ぞろえ
「以○上○」というように、
○の部分にスペースを入れるとよい
【注意点】拝啓〜敬具 はこう使う!
「拝啓〜敬具・記」の使い方と、使うときの注意点を解説します。
ふさわしくない使い方をすると恥ずかしいので気をつけましょう。
【使い方・注意】拝啓・敬具はかならず1セットで使う
かなり初歩的な使い方ではありますが…
ひょっとしたら「拝啓(文章)以上」のように使ってしまう人もいるのかも。これは論外でNGとなる使い方ですので気をつけましょう。
「拝啓・敬具」「謹啓・謹白」は1セットとして使います。
【使い方・注意】ビジネスメールで「拝啓〜敬具」を使うシーンはほとんどない
ビジネス文書ではなく、ビジネスメールで「拝啓・敬具」を使うシーンって実はほとんどありません。
転職・退職・転勤の挨拶で、かな〜りかしこまった感じのメールをしたいときぐらいでしょうか…そのようなメールを見たことありませんが…
あとはほぼ100%に近い形でちゃんとした「ビジネス文書」にします。
ちなみにこういったビジネス文書って、営業マンの私ですらもはや自分では作りません。
専門の業者にほぼ丸投げにして終わりっていう…
【使い方・注意】普段のビジネス文書であれば「句読点あり」でよい
例文では公式なビジネスシーンを想定し、もっとも丁寧に作りました。
でも例えばサンプルを送付するときの「送り状」とか、そういうビジネス文書では句読点をなくす必要はありません。
- 句読点なし:公式な文書
・就任の挨拶レターなど - 句読点あり:普段づかいの文書
・送り状など
こんな感じで使い分けるとよいでしょう。