「お受け取りいただけますと幸いです」は「受け取ってもらえると嬉しいです」という意味。
ようは「受け取ってほしい!」「受け取ってください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら受け取ってほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
なお…
ビジネスシーンで上司・目上・取引先になにかしら受け取ってもらいたいときには「ご査収」「ご笑納」をつかった言い換えもできます。
ご査収(ごさしゅう)はとくに資料などを「受け取ってほしい」ときにつかう敬語。
ご笑納(しょうのう)はお土産などを「つまらないものですが受け取ってほしい」というときにつかいます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
まずは「お受け取りいただけますと幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“受け取る”の意味
受け取る(うけとる)の意味は…
- 受けて取る。渡されたものを受け収める。「Amazonから商品を受け取った」
- 人の言葉や行動などを自分なりの判断で解釈する。また、納得する。「上司の話をそのまま受け取る」「彼の言動を悪意に受け取る」
- 責任をもって引き受ける。担当する。
“お受け取りいただけますと”の意味は「受け取ってもらえると」
まずは前半部分。
「お受け取りいただけますと〜」の意味は…
「受け取ってもらえると〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけますと」は「〜してもらえると」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「お受け取り頂けますと」vs. ひらがな表記「お受け取りいただけますと」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「受け取ってもらえると嬉しいです」
- お受け取り = 受け取ること
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえると」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お受け取りいただけますと幸いです」の意味は…
「受け取ってもらえると嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「受け取ってほしい!」「受け取ってください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえると嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「お受け取りいただけますと幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「受け取る」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「お受け取りいただく」
- 可能形にして「お受け取りいただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「お受け取りいただけます」
- 接続助詞”と”をくっつけて「お受け取りいただけますと」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「お受け取りいただけますと幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「受け取る」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「お受け取りしていただけますと幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「受け取っていただけますと幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「お受け取り頂けますと」vs. ひらがな表記「お受け取りいただけますと」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
- 接続助詞「と」は助詞の一類。用言・助動詞について、それよりまえの語句をあとの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係をしめすはたらきをする。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がお受け取りする」「相手にお受け取りいただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がお受け取りくださる・お受け取りになる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】受け取ってほしい時の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「お受け取りいただけますと幸いです」の使い方について。
ようは「受け取ってほしい!」「受け取ってください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】お受け取りいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お受け取りいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「受け取ってもらえると嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「お受け取りいただけますと幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「お受け取りくださいませ」
② 丁寧「お受け取りいただければと存じます」
③ かなり丁寧「お受け取りいただけますと幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「お受け取り頂きますようお願い申し上げます」
「お受け取りくださいますようお願い致します」
ビジネスメール例文①郵送物を受け取ってほしい(社内)
メール件名:郵送物お受け取りのお願い
業務部 xxさん (社内上司・目上など)
大変申し訳ありません。
本日、信越化学というメーカーより小職あてにサンプルが到着する予定なのですが、あいにく出張にて出払っており受け取りできそうにありません。
そこでよろしければ代わりにお受け取りいただけますと幸いです。
お忙しいところ大変恐縮ではございますが、
よろしくお願い致します。
——————
メール署名
——————
※「お引き受け」「お引き取り」に言い換えても丁寧です。
ビジネスメール例文②サンプルを受け取ってほしい(社外)
メール件名:サンプル送付のご案内
株式会社ビジネス
営業部 xx課長 (社外取引先)
いつもお世話になっております。
(株)転職・ノマドでございます。
さてご依頼サンプルの件、昨日発送が完了いたしましたので、以下のとおりご案内申し上げます。
①納期:
②商品:
③その他:
今週中にはお届けできるかと存じますので、お受け取りいただきますようお願い致します。
ご不明な点等ございましたらお申し付けください。
どうぞ宜しくお願い致します。
——————
メール署名
——————
※「ご査収=資料などをよく確認して受け取ること」に言い換えても丁寧です。
ビジネスメール例文③見積もりを送付するので受け取ってほしい
メール件名:見積送付の件
転職株式会社
転職 様
平素はお世話になっております。
株式会社就活の就活です。
さて、先ほどお問い合わせ頂きました見積もりの件、
添付ファイルにて送付いたします。
ご査収のほど何卒よろしくお願い致します。
——————
メール署名
——————
“お受け取り頂けましたら幸いです”としても丁寧
「お受け取りいただけますと幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】お受け取りいただけましたら幸いです
もあります。言いたいことは「受け取ってほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“お受け取り頂けますと vs. お受け取り頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「受け取ってほしい!」「受け取ってください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「お受け取りいただけますと」だと意味は「受け取ってもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「お受け取りいただけましたら」だと意味は「受け取ってもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
となります。
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」という敬語になります。
なお「お受け取りをいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どちらも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
どちらかお好きな方を使えばよく、使い分けする必要はありません。
“お受け取り頂けますと幸甚に存じます”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「幸い」ではなく「幸甚(こうじん)」をつかい、
- 【例文】お受け取り頂けますと幸甚に存じます
→ 意味は「受け取ってもらえると、この上なく嬉しく思います」 - 【例文】お受け取り頂けますと幸甚です
→ 意味は「受け取ってもらえると、この上なく嬉しいです」
とするともう、本当に死ぬほど丁寧になります。
※ 幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
※ 存じる(ぞんじる)は「思う」の敬語(謙譲語)
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、幸甚(こうじん)というフレーズのほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールなど本当に堅苦しい文章にしたいときにオススメです。
普段づかいのメールであれば「幸い」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“幸いです vs. 幸甚です”の意味と違い
どちらも結局のところ「嬉しいです!」「幸せです!」という意味になるのですが…
幸甚(こうじん)のほうがより、嬉しさや幸福度合いを強調したフレーズになります。
つまり「幸甚です」とすると意味は・・・
「とてつもなく嬉しいです!」「大変ありがたいです!」「この上なく幸せです!」という感じになりますね。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「幸甚(こうじん)」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「受け取ってほしい!」「受け取ってください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『お受け取りいただければ幸いです』
「お受け取り頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「お受け取りいただければ幸いです」
意味は『受け取ってもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『受け取ってもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『お受け取り頂けますと幸甚に存じます』など
「お受け取り頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 【例文】お受け取りいただければ幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「受け取ってもらえたら、とても有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お受け取りいただけますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「受け取ってもらえると、この上なく有り難く思います/有り難いです」 - 【例文】お受け取りいただけましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「受け取ってもらえたら、この上なく有り難く思います/有り難いです」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『お受け取り賜れますと幸甚に存じます』など
「お受け取り頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】お受け取り賜れますと幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「受け取ってもらえると、この上なく有り難く思います」 - 【例文】お受け取り賜れましたら幸甚に存じます/幸甚です
※意味は「受け取ってもらえたら、とても有り難く思います/です」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「お受け取り」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「お受け取りいただけますと幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】お受け取りいただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】お受け取りいただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】お受け取りいただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+お受け取り
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お受け取り」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかお受け取りくださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかお受け取りくださいますようお願い致します」
例文「どうかお受け取りいただけますと幸いです」
例文「どうかお受け取りいただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒お受け取りくださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒お受け取りくださいますようお願い致します」
例文「何卒お受け取りいただけますと幸いです」
例文「何卒お受け取りいただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+お受け取り
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「お受け取り」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがお受け取り〜」
「大変恐縮ではございますがお受け取り〜」
「たびたび恐縮ではございますがお受け取り〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがお受け取り〜」
「大変恐れ入りますがお受け取り〜」
「たびたび恐れ入りますがお受け取り〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがお受け取り〜」
「大変お手数ではございますがお受け取り〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがお受け取り〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒お受け取りのほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがお受け取り〜」