「ご注意いただけますと幸いです」は「注意してもらえると嬉しいです」という意味。
ようは「注意してほしい!」「注意してください!」と言いたいわけですが・・・丁寧な敬語にするとこんな風にややこしい表現になります。
使い方は何かしら注意してほしいときのお願い・依頼ビジネスメール。社内上司や目上にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧なフレーズです。
くわしくは本文にて意味や敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方、ビジネスメール例文、注意点を解説していきます。
※長文になりますので「見出し」より目的部分へどうぞ
意味
まずは「ご注意いただけますと幸いです」の意味と敬語について順をおって解説します。
“注意”の意味
注意(ちゅうい)の意味は…
- 気をつけること。気をくばること。「足元に注意して歩く」「健康に注意する」
- 悪いことが起こらないように警戒すること。用心すること。「痴漢に注意する」「セクハラに注意する」
- 気をつけるように傍らから言うこと。忠告。「部下の言動を注意した」
“ご注意いただけますと”の意味は「注意してもらえると」
まずは前半部分。
「ご注意いただけますと〜」の意味は…
「注意してもらえると〜」
このように解釈できます。
「お(ご)〜いただけますと」は「〜してもらえると」という意味の敬語(謙譲語+丁寧語)
「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
おなじような可能の表現にはたとえば、
「泳ぐ → 泳げる」
「書く → 書ける」
「聞く → 聞ける」
などあり。どれも「〜できる」という意味になりますね。
こまかい敬語の解説は長くなるため次項にて。
なお表記は、
漢字表記「ご注意頂けますと」vs. ひらがな表記「ご注意いただけますと」の両方ともOK。どちらをつかっても正しい敬語です。
“幸いです”の意味は「嬉しいです、幸せです」
つづいて後半部分。
「幸いです」の意味は…
「嬉しいです」
「幸せです」
このように解釈できます。
もととなる単語は「幸い(さいわい)」であり、丁寧語「です」を使って敬語にしています。
あわせると意味は「注意してもらえると嬉しいです」
- ご注意 = 注意すること
- ご・お~いただけますと = 「〜してもらえると」の意味の敬語
- 幸いです= 「幸せです、嬉しいです」の意味
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「ご注意いただけますと幸いです」の意味は…
「注意してもらえると嬉しいです」
のように解釈できます。
ようは「注意してほしい!」「注意してください!」ということなのですが、このままではあまりにストレートすぎて目上や上司・取引先につかうにはイマイチです。
そこで「~してもらえると嬉しいです」というように遠回しにして、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズにしています。
そんなに丁寧にお願いする必要あるの?って思うくらい。
目上・上司にはもちろんのこと社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズですね。
敬語の解説
「ご注意いただけますと幸いです」を敬語としてみていくと以下のとおりに成り立ちます。
難しいので敬語についてくわしく学ぶ必要のない方はスキップしてください。
- もとになる単語「注意」
- “〜してもらう”の謙譲語”お(ご)〜いただく”で「ご注意いただく」
- 可能形にして「ご注意いただける」
- 丁寧語”ます”をくっつけて「ご注意いただけます」
- 接続助詞”と”をくっつけて「ご注意いただけますと」
- “嬉しい”の意味である”幸い”に丁寧語”です”をくっつけて「幸いです」
→ すべてあわせると「ご注意いただけますと幸いです」という敬語の完成
このようにして元になる語「注意」を敬語にしています。つまり敬語としては何もおかしいところはありません。間違いではなく正しい敬語です。
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズになります。
なお「ご注意していただけますと幸いです」は間違い敬語となりますのでご注意を。「注意していただけますと幸いです」とすれば正しい敬語ではありますが…長くなるため理由は省略。
補足
- 漢字表記「ご注意頂けますと」vs. ひらがな表記「ご注意いただけますと」の両方ともOK。
- 「〜いただける」は謙譲語「いただく」の可能表現。可能の表現をつかっているので意味としては「〜してもらえる」となります。
- 接続助詞「と」は助詞の一類。用言・助動詞について、それよりまえの語句をあとの語句に接続し、前後の語句の意味上の関係をしめすはたらきをする。
ちなみに敬語「お(ご)」は…
- 「自分がご注意する」「相手にご注意いただく」のであれば謙譲語としての使い方。
- 上司・目上・取引先などの「相手がご注意くださる・ご注意になる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
難しく感じるかたは「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。
【使い方】注意の依頼・お願いビジネスメール
つづいて「ご注意いただけますと幸いです」の使い方について。
ようは「注意してほしい!」「注意してください!」という意味なので、そのような依頼・お願いビジネスメールに使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧なフレーズですね。
例文
たとえば、
- 【例文】ご注意いただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】ご注意いただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
※ 意味は「注意してもらえると嬉しいです。よろしく」
のようにして何かの依頼・お願いをともなうビジネス文書やビジネスメールで結び・締めくくりとして使われます。
もちろん結びでなく文章の途中でつかっても丁寧です。
なお「ご了承をいただけますと幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
ビジネスメール例文(全文)
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「ご注意いただけますと幸いです」の使い方をビジネスメール例文でご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
なおビジネスメールにおいては以下の敬語もオススメです。
① それなりに丁寧「ご注意くださいませ」
② 丁寧「ご注意いただければと存じます」
③ かなり丁寧「ご注意いただけますと幸いです」など
④ ↓とくにビジネスメール結び/文末につかう↓
「ご注意頂きますようお願い申し上げます」
「ご注意くださいますようお願い致します」
「ご注意のほど宜しくお願い致します」
ビジネスメール例文①安全に注意してほしい
メール件名:工場見学における安全上の注意
営業部 各位(社内上司・部下など)
お疲れ様です。
生産部・xxです。
さて首記の件、4/10に予定しております工場見学にあたり、下記のとおり安全上の注意事項をご連絡いたします。
記
①安全メガネ着用
②ヘルメット着用
③場内での安全確認
上記の事項に関しまして、ご注意いただけますと幸いです。
以上
当日はよろしくお願い致します。
**************
営業部 ノマド
**************
※「ご留意=気をつけること」に言い換えても丁寧
ビジネスメール例文②資料作成にあたってxxに注意してほしい
メール件名:担当報告資料・作成のお願い
営業部 各位(社内上司・部下など)
お疲れ様です。
さて首記の件、4月10日に予定しております予算会議につき、各担当の報告資料を下記の要領で作成いただきたく存じます。
①資料フォーマット:添付エクセルシートのフォーマットに基づき作成ください
②期日:大変恐れ入りますが、4月8日までにご提出をお願いいたします。
③注意事項:
資料作成にあたり以下の点にご注意くださいませ。
・数字の正確性
・昨年の予算との変化点を明確に
ご多忙のところ大変お手数ではございますが、
お取り計らいの程よろしくお願い致します。
**************
営業部 ノマド
**************
※「ご留意=気をつけること」に言い換えても丁寧
“ご注意いただけましたら幸いです”としても丁寧
「ご注意いただけますと幸いです」と似たような敬語には・・・
- 【例文】ご注意いただけましたら幸いです
もあります。言いたいことは「注意してほしい」であり、どちらも丁寧な敬語なので使い分ける必要はありませんが…
いちおう意味と違いについて考えてみます。
“ご注意頂けますと vs. ご注意頂けましたら”の意味と違い
どちらも結局のところ「注意してほしい!」「注意してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「ご注意いただけますと」だと意味は「注意してもらえると」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「ご注意いただけましたら」だと意味は「注意してもらえたら」
→ 敬語は”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+仮定”たら”
となります。
「いただけますと」に仮定の「たら」をくっつけると「いただけましたら」という敬語になります。
なお「ご注意をいただけましたら幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
どちらも丁寧であり使い分けの必要はない
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
どちらかお好きな方を使えばよく、使い分けする必要はありません。
“ご注意賜れますと幸いです”だとなお丁寧
さらに死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときには・・・
「いただく」ではなく「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】ご注意賜れますと幸いです
- 【例文】ご注意賜れましたら幸いです
とします。
これまで紹介した敬語と言いたいことはおなじ。
ただ、賜る(たまわる)という敬語のほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールでは「賜る」をよく使います。
普段づかいのメールであれば「いただく」で十分に丁寧です。
いちおう意味と違いについて簡単に解説しておきます。
“ご注意頂けますと vs. ご注意賜れますと”の意味と違い
どちらも結局のところ「注意してほしい!」「注意してください!」という意味になるのですが…こまかくは以下のとおり意味と敬語の違いあり。
- 「ご注意いただけますと」だと意味は「注意してもらえると」
→ 敬語は謙譲語”お(ご)~いただく”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
いっぽうで、
- 「ご注意賜れますと」だと意味は「注意してもらえると」
→ 敬語は謙譲語“お(ご)~賜る”+可能形+丁寧語”ます”+接続助詞”と”
となります。
「お(ご)〜賜る」「お(ご)〜いただく」はどちらも「〜してもらう」の敬語(謙譲語)。
したがって意味としてはどちらも同じです。
ただし「賜る」のほうがよりカチッとした表現になりますので、文書や手紙・公式なビジネスメールでは「賜る」をよく使います。
なお「ご注意を賜れますと幸いです」というように「を」を入れるケースもあります。どちらを使っても正しい敬語です。
手紙や公式なビジネスメールにおすすめ
これまで見てきたように、どちらの敬語もこのうえなく丁寧なフレーズです。上司など社内の目上はもちろんのこと、社外取引先にもつかえる素晴らしく丁寧な敬語です。
ただ、より堅苦しいというかビジネス文書や手紙むけというか・・・
カチッとした表現は「賜る」のほうです。
本当に死ぬほど丁寧なメールや文書にしたいときに使いましょう。
ほかにも使える丁寧な敬語
これまで紹介した例文のほかにも・・・
似たような言い換え敬語で、おなじように丁寧なフレーズをまとめておきます。
どれも「注意してほしい!」「注意してください!」と依頼・お願いしたいときのビジネスメールに使えます。
『ご注意いただければ幸いです』
「ご注意頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 例文「ご注意いただければ幸いです」
意味は『注意してもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ』
つまり『注意してもらえたら嬉しいです』
相手に強制しない、とてもやわらか~いお願いの敬語フレーズですね。
「いただければ」は「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」+可能形+仮定の「~れば」
「幸いです」は「幸い」+丁寧語「です」
というように敬語にしており、目上のひとや上司・社外取引先につかえるとても丁寧なビジネスフレーズです。
『ご注意いただけますと幸甚に存じます』など
「ご注意頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
- 【例文】ご注意いただければ幸甚に存じます
※意味は「注意してもらえたら、とても嬉しく思います」 - 【例文】ご注意いただけますと幸甚に存じます
※意味は「注意してもらえると、とても嬉しく思います」 - 【例文】ご注意いただけましたら幸甚に存じます
※意味は「注意してもらえたら、とても嬉しく思います」
なども似たような意味であり、とても丁寧な敬語です。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「いただければ」は謙譲語「いただく」+可能形+仮定「たら・れば」
「いただけましたら」は謙譲語「いただく」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
『ご注意賜れますと幸甚に存じます』など
「ご注意頂けますと幸いです」だけじゃない丁寧なビジネス敬語
「いただく」よりもカチッとした敬語「賜る(たまわる)」をつかい、
- 【例文】ご注意賜れますと幸甚に存じます
※意味は「注意してもらえると、とても嬉しく思います」 - 【例文】ご注意賜れましたら幸甚に存じます
※意味は「注意してもらえたら、とても嬉しく思います」
とするとより丁寧な敬語になります。
幸甚(こうじん)の意味は「この上もない幸せ。大変ありがたいこと。また、そのさま」
「存じる」は「思う」の謙譲語
「賜れますと」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+接続助詞”と”
「賜れましたら」は謙譲語「賜る」+可能形+丁寧語「ます」+仮定「たら・れば」
ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ
あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。
ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「ご注意」
ここでは、
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。
①メール結びに使うときは「よろしく!」を加えると丁寧
ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツ。
「ご注意いただけますと幸いです」はそれだけではビジネスメール結び締めとしてイマイチ。
そこで結びにつかう時にはうしろに「よろしく!」的なフレーズを組み合わせて、セットで使うとより丁寧なメール結びになります。
すでに例文にはしましたが…
- 【例文】ご注意いただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
- 【例文】ご注意いただけますと幸いです。よろしくお願い致します。
- 【例文】ご注意いただけますと幸いです。よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールの結び締めに使うときにはこんな感じにするとよいでしょう。
②どうか・何卒+ご注意
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご注意」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。
たとえば以下のようなフレーズがあります。
- どうか/どうぞ
例文「どうかご注意くださいますようお願い申し上げます」
例文「どうかご注意くださいますようお願い致します」
例文「どうかご注意いただけますと幸いです」
例文「どうかご注意いただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」 - 何卒(なにとぞ)
例文「何卒ご注意くださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒ご注意くださいますようお願い致します」
例文「何卒ご注意いただけますと幸いです」
例文「何卒ご注意いただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」
③恐縮・お手数+ご注意
ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。
「ご注意」の前置きには強調するフレーズ「どうか」「何卒(なにとぞ)」だけでなく、申し訳なく思う気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
たとえば「誠に勝手を申し上げますが」などと組み合わせ、以下例文のようにすると好感がもてますね。上司や目上にはもちろんのこと、取引先のメールにも使える丁寧な例文にしています。
- 恐縮=申し訳なく思うこと
「お忙しいところ恐縮ではございますがご注意〜」
「大変恐縮ではございますがご注意〜」
「たびたび恐縮ではございますがご注意〜」 - 恐れ入る=申し訳なく思う
「お忙しいところ恐れ入りますがご注意〜」
「大変恐れ入りますがご注意〜」
「たびたび恐れ入りますがご注意〜」 - お手数=お手間
「お忙しいところお手数お掛けしますがご注意〜」
「大変お手数ではございますがご注意〜」 - 勝手を申し上げる=自分勝手を言う
「誠に勝手を申し上げますがご注意〜」 - ご無理申し上げる = 無理を言う
「ご無理申し上げますが、何卒ご注意のほどお願い申し上げます」 - ご多忙とは存じますが=忙しいとは思うけど
「ご多忙とは存じますがご注意〜」