「ご無理申し上げますが」について、意味と上司や目上への正しい使い方、注意点をビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まず簡単にまとめを。
「ご無理申し上げますが」の意味は「無理を言いますが」。
使い方はとくに上司なり社内目上・取引先に何かしら無理なお願いをするとき。
「無理を言ってすみませんが…」のようなニュアンスでつかうと、相手への配慮があらわれていて好感がもてます。
たとえば。
「ご無理申し上げますが宜しくお願い致します」とシンプルにお願いする使い方のほかにも、
- 【例文】ご無理申し上げますが、何卒ご対応の程お願い申し上げます
- 【例文】ご無理申し上げますが、どうかご検討いただきますようお願い致します
- 【例文】ご無理申し上げますが、お取り計らいくださいますようお願い致します
- 【例文】ご無理申し上げますが、ご検討いただけますと幸いです
- 【例文】ご無理申し上げますが、ご教示いただけましたら幸いです
といように具体的にお願いしたい内容をあらわす語とくみあわせても丁寧。
どの例文も社内メールで目上(上司や先輩)につかっても、社外のビジネスメールにつかってもよい丁寧な敬語表現です。
なお。
等しくつかえる言い換えとしては…
「無理なお願いとは存じますが」「不躾なお願いとは存じますが」「勝手を申し上げますが」などあり。
ざっくりとした解説はこれにて終了。
くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。
意味
「ご無理申し上げますが」の意味は直訳すると「無理を言いますが」となります。
上司なり目上・取引先に「無理を言ってすみませんが…」というニュアンスでつかわれます。
たとえば「ご無理申し上げますがご対応の程よろしくお願い致します」とすれば、「無理を言いますが、対応してくれるようお願いします」となります。
- ご無理 =「①実現するのが難しいこと」or「②道理に合わないこと、理不尽」の意味
- 申し上げますが=「言いますが」の意味の敬語(謙譲語)
これらの言葉をあわせているだけなのですが念のため、それぞれの語についてくわしく解説しておきます。
“無理”の意味
無理(読み:むり)の意味は・・・
- 物事の筋道が立たず道理に合わないこと。また、そのさま。理不尽。「客が怒るのも無理はない」
- 実現するのがむずかしいこと。行いにくいこと。また、そのさま。「無理を承知で仕事を引き受けた」「下請企業に無理な要求をする」「1000億円調達するのはそもそも無理がある」
- しいて行うこと。押しきってすること。また、そのさま。「お腹いっぱいなのにデザートを無理に詰め込んだ」
“お(ご)〜申し上げます”の意味と敬語
「お(ご)〜申し上げます」は「〜を言う・〜する」という意味の敬語。
謙譲語「お(ご)〜申し上げる」に丁寧語「ます」をくっつけて敬語にしています。
使い方はたとえば、
- 例文①それでは申し上げます。→「言う」の意味の敬語(謙譲語)
- 例文②申し上げるまでもない事ですが…→「言う」の意味
- 例文③祝辞を申し上げます。→「言う」の意味
というように「〜を言う」の意味としてつかいます。
また。
このほかにも「〜する」のかしこまった敬語として、
- 例文④ご報告申し上げます。→「報告する」の意味
- 例文⑤ご案内申し上げます。→「案内する」の意味
- 例文⑥ご挨拶申し上げます。→「挨拶する」の意味
- 例文⑦お願い申し上げます。→「お願いする」の意味
としても使います。
さらに。
例文④⑤⑥の使い方は謙譲語「お(ご)〜致します」「お(ご)〜します」にも言い換えOK。
「お(ご)〜申し上げます」とするとより堅苦しい文章になりますので、公式な挨拶などのビジネスメールにおおく用います。
使い方
つづいて「ご無理申し上げますが」の使い方について。
「無理を言いますが」という意味ですので、何かしら無理なお願いをするとき。
上司なり目上・取引先に「無理を言ってすみませんが…」というニュアンスで、相手を気づかうフレーズに使われます。
使えるシーンはたくさんありますが代表的なものを箇条書きにしてまとめます。
使い方①仕事のお願いビジネスメール他(結びに使う)
「ご無理申し上げますが」の使い方、まずは基本。
上司なり社内目上・社外取引先に何かしら仕事の依頼・お願いをしたり対応してほしいとき。
「無理を言ってすみませんが…」というニュアンスでビジネスメールの文末・結び・締めくくりとしてつかうと丁寧です。
たとえば、
- 【例文】ご無理申し上げますが宜しくお願い致します。
とすれば「無理を言いますがよろしく!」の意味となります。
もちろんメール結びでなくてもつかえますが、圧倒的に文末・結び・締めくくりにつかうことの多い敬語フレーズです。
使い方②ご無理申し上げますが+何かしらのお願い
「ご無理申し上げますが」の使い方、つづいて応用。
「ご無理申し上げますが宜しくお願い致します」とシンプルにお願いする使い方のほかにも、「ご無理申し上げますが+何かしらのお願い」の形でつかうと丁寧です。
たとえば、
- 「ご無理申し上げますが、ご対応の程よろしくお願い致します」とすれば「無理を言いますが、対応してくれるようお願いします」の意味。
- 「ご無理申し上げますが、お取り計らいの程よろしくお願い致します」とすれば「無理を言いますが、うまく進めてくれるようお願いします」の意味。
- 「ご無理申し上げますが、ご検討いただけますと幸いです」とすれば「無理を言いますが、検討してもらえると嬉しいです」の意味。
といように具体的にお願いしたい内容をあらわす語とくみあわせても丁寧。
あとは後半部分をシーンごとにいろんなフレーズに置き換えて応用しましょう。
【例文】ビジネスメール全文
こうして長々と読んでいてもイメージがつかみにくいかと思いますので、より実践的に。
ここでは「ご無理申し上げますが」の使い方をビジネスメール例文とともにご紹介。
どれも目上・上司・取引先にふさわしい丁寧な敬語にしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文①納期を早めてほしい(to社外)
メール件名: 製品A納期・前倒しのお願い(注文No.123)
ビジネス株式会社
営業部 ○○ 課長(社外ビジネス取引先)
お世話になっております。
(株)転職・ノマドでございます。
さて、先般ご注文しておりました製品A(注文No.123)に関して、納期を4月20日でお願いしておりましたが諸事情により、4月15日に前倒して納入いただきたく存じます。
貴社製品Aの使用量が増加しており原材料が4月16日には不足する見込みであり、1日でも早くお手配いただけると大変助かります。
ご無理申し上げますが、
何卒お取り計らいの程お願い申し上げます。
************
メール署名
************
ビジネスメール例文②面談のお願い(to社外)
メール件名: キャリア面談のお願い(転職・ノマド)
○○ 様
突然のご連絡、大変失礼いたします。
私、株式会社転職にて営業を担当しております、ノマドと申します。このたびは弊社転職サービスにお申し込みいただき誠にありがとうございます。
さて早速ではございますが、○○ 様にベストな転職サポートをご提供するための第一ステップとして、キャリア面談をお願いしたく存じます。
具体的には以下の点につきお話を伺えればと考えております。
①転職条件のご希望
・年収条件
・待遇条件
・その他
②現在のご状況
・現職について
③これまでのご経歴
・職務経歴など
もしよろしければ1時間ほど面談のお時間を頂戴したく、今週~来週のどこかでいくつか候補日程をいただければ幸いです。
ご無理申し上げますが、
ご検討のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
************
メール署名
************
ビジネスメール例文③打合せ日程変更のお願い(to社内上司)
メール件名①: 返信Re:【日程変更】●●打合せのお願い
メール件名②: 新規: ●●打合せ日程変更のお願い
●●部長 (社内上司・目上など)
大変申し訳ございません。
先般お願いしておりました●●打合せの件、急遽顧客とのアポイントが入り、日程変更をお願いしたく連絡いたしました。
日程調整いただいたにも関わらず、ご迷惑をおかけしますこと深くお詫び申し上げます。
なお、以下の通りに新たな候補日につき連絡いたします。
たびたび恐れ入りますが再度ご都合を伺えればと存じます。
・11月3日 AM
・11月6日 AM
・11月7日 PM
ご無理申し上げますがご連絡いただけますと幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
************
メール署名
************
※「勝手を申し上げますが」に言い換えても丁寧。
ビジネスメール例文④値上げのお願い(to社外)
メール件名:エチレン価格改定のお願い(転職・ノマド)
株式会社ビジネス
資材部 ●● 様 (社外取引先)
平素はお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
このたび、○月×日付けの弊社プレスリリースにてエチレン価格改定の発表をいたしました。昨今の原材料価格高騰およびユーティリティーコストの上昇がおもな背景となっております。
つきまして、貴社にてご使用いただいております「製品名:エチレンAB」につきましても下記のとおり価格を改定させていただきたく存じます。
記
現行価格:1000円/トン
改定価格:1050円/トン
※+50円/トンの価格改定をお願いいたします
※なお発表内容に関しましては以下URLをご参照ください
URL~~~
以上
ご無理申し上げますが、どうか事情をご高察の上、
ご了承いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
*********
メール署名
*********
※「誠に勝手を申し上げますが」に言い換えても丁寧。
【注意点】”ご無理申し上げますが”はこう使う
つづいて「ご無理申し上げますが、~」を使うときの注意点をすこし。
①無茶なお願いでなければ言い換えする
すでに解説したとおり「ご無理申し上げますが」は「無理を言いますが」の意味であるため、シーンを選んでつかう必要あり。
無理なお願いでないにもかかわらず「ご無理申し上げます」では少々無理があります。
そんなときには、
- ご多忙のところ恐縮ですが(=とても忙しい最中に申し訳ないと思いますが)
【例文】ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご対応いただければ幸いです。
【例文】ご多忙のところ恐縮ですが、ご確認いただきますようお願い致します。 - お忙しいところ恐れ入りますが(=忙しい最中に申し訳ないと思いますが)
【例文】お忙しいところ恐れ入りますが、ご参加(ご出席)くださいますようお願い申し上げます。
【例文】お忙しいところ恐れ入りますが、ご連絡(ご返信・お返事)いただければ幸いです。
【例文】お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただきますようお願い致します。 - お手数+お願い(=手間をかけますが)
【例文】お手数お掛けしますが、ご確認いただけましたら幸いです。
【例文】お手数ではございますが、ご教示いただければ幸いです。
【例文】お手数お掛け致しますが、ご査収の程よろしくお願い致します。 - 勝手を申し上げますが+お願い(=勝手を言いますが)
【例文】誠に勝手を申し上げますが、ご対応いただけましたら幸いです。
【例文】誠に勝手を申し上げますが、お取り計らいいただければ幸いです。
【例文】勝手を申し上げますが、ご対応の程よろしくお願い致します。
などに言い換えすると丁寧です。
記事の最後に言い換え例文をまとめておきます。
②”ご無理を申し上げますが vs ご無理申し上げますが”はどちらでもよい
敬語の使い方でよくある質問。
「ご無理を申し上げますが vs ご無理申し上げますが」はどっちを使う?
というのがあります。
助詞「を」をつけるのか外すのか、というだけの違いです。
結論としては、
- 日本語として正しいのは「ご無理を申し上げますが」
- でも実際のビジネスメールには「ご無理申し上げますが」もよく使われる
したがって「どちらを用いてもOK」です。
根拠について、くわしくは以下の記事をご参考にどうぞ。