「①いる」「②来る」の尊敬語「いらっしゃる」をつかった敬語フレーズと、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
「いらっしゃる」は「①いる」「②来る」の尊敬語
※「②来る」の尊敬語には他にも「来られる」「お見えになる」「お越しになる」がある。使い分け方は本文にて。
尊敬語は相手の行為につかうことが基本となるため、
- 例文①部長はあちらにいらっしゃいます
原文「部長はあちらにいる」
- 例文②営業ご担当の〇〇様はいらっしゃいますか?
原文「担当の〇〇さんはいる?」 - 例文③展示会には部長もいらっしゃる予定です
原文「展示会には部長も来る予定だ」
- 例文④展示会にはいらっしゃいますか?
原文「展示会には来る?」 - 例文⑤部長、今でも野球をしていらっしゃいますか?
原文「今でも野球している?」
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「いらっしゃいます・いらっしゃいました」とするのが一般的。
例文①②は…「(ある場所に)いる」の尊敬語として「いらっしゃる」を使い、
例文③④は…「来る」の尊敬語として「いらっしゃる」を使い、
例文⑤では…「〜している」の尊敬語として「〜していらっしゃる」を使っています。
また、
ここでは尊敬語だけを記載しましたが謙譲語は以下のようになります。
「①いる」の謙譲語は「おる」
※ 丁寧語「ます」と組み合わせて「おります」として使うのが一般的
「②来る」の謙譲語は「該当なし」
※「来る」ではなく「自分が行く」として考えると「伺う・参る・参上する」が謙譲語となる。
というようになります。くわしい解説は本文にて。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではいろいろな例文を紹介しながらビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について説明していきます。
この記事の目次
いる の尊敬語「いらっしゃる」使い方と例文
まずは「いる」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」のビジネスシーン(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
そもそも尊敬語とは?
念のため基本となる尊敬語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
尊敬語とは、相手を高めるときに使う敬語のことを言います。敬意を表したい相手の動作や行為を高めて使う敬語ですね。
注意点として、
社外のひとに社内のひとのことを話すときには尊敬語ではなく、謙譲語を使います。このシーンで尊敬語を使うと「社内のひと > 社外のひと」というようになってしまいますね。
社外の人の前で尊敬語「弊社の部長がおっしゃいました」ではおかしくって謙譲語「弊社の○○が申しておりました」とします。
高めるべき順番は「社外 > 社内」であり、この図式を守って使いましょう。
使い方
「いる」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手が〜していらっしゃる」「目上の相手がいらっしゃる」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 例文①部長はあちらにいらっしゃいます
原文「部長はあっちにいる」 - 例文②部長、例の会議にはいらっしゃいましたか?
原文「部長、例の会議にはいた?」 - 例文③部長、今でも野球をしていらっしゃいますか?
原文「部長、今でも野球をしてる?」
のような感じで「相手が〜している」あるいは「相手がいる」ときにつかいます。
ただし、
「来る」の尊敬語も「いらっしゃる」を使うため「上司がいらっしゃいました」だと「①上司がいました」「②上司が来ました」のどちらの意味にもとれます。
どちらの意味であるのかは文脈から判断するしかありません。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「部長、今でも野球をしておりますか?」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「〜している」「いる」としたいときには謙譲語「おる」ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが、
「いる」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「いらっしゃいます」「いらっしゃいました」として使うとより丁寧です。
例文・使い方
「いる」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- ビジネス電話で相手が「いるか?」と尋ねる
例文「営業ご担当の〇〇様はいらっしゃいますか?」
例文「〇〇部長はいらっしゃいますか?」 - ビジネス会話やメールで「いる」としたい
例文「部長は会議室にいらっしゃいます」
例文「〇〇様が受付までいらっしゃいました」
来る の尊敬語「いらっしゃる」使い方と例文
つづいて「来る」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」のビジネスシーン(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文と使い方を紹介します。
使い方
「来る」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」の使い方は先にのべたとおり、
「目上の相手がこちらに来る」のようにして相手の行為・行動に使う尊敬語です。
そうすると、
- 例文「〇〇様がいらっしゃいました」
原文「〇〇さんが来た」 - 例文「〇〇様はいらっしゃいましたか?」
原文「〇〇さんは来た?」 - 例文「部長がいらっしゃいました」
原文「部長が来た」
のような感じで「相手が来る」ときにつかいます。
ここでひとつ注意点を。
「いらっしゃる」は「いる」の尊敬語としても使われるため、「いる」なのか「来る」なのか意味が伝わりにくい敬語です。どっちなのかは文脈から判断するしかないのです…
で、
意味をはっきりさせるためには、
「来る」の尊敬語に「お越しになる」「お見えになる」を使うとよいでしょう。
一方でNGとなる使い方にはたとえば、
- NG例文「弊社の展示ブースに伺いましたか?」
のような例文はダメ。
目上のヒトが「来る」としたいときには謙譲語ではなく、相手の行為をうやまって高める敬語(尊敬語)を使います。
お越しになる・来られる・いらっしゃる・お見えになる どれ使う?
ここでひとつ注意点というか、まぎらわしいので少し解説を。
「来る」の尊敬語には、
①いらっしゃる②来られる③お見えになる④お越しになる
と4パターンあります。どれも正しい敬語なのですが「来られる」は受け身や可能形の「れる・られる」との混同をまねいてしまうため①いらっしゃる③お見えになる④お越しになる をつかうのが無難。
たとえば
「弊社の展示ブースには来られましたか?」
だと敬語なのかなんなのか、難しい表現になってしまいます。
そこで
「弊社の展示ブースにはお越しになりましたか?」
「弊社の展示ブースにはいらっしゃいましたか?」
のように「お・ご〜なる」という尊敬語を使うことをオススメします。
また繰り返しにはなりますが、
「いらっしゃる」は「いる」の尊敬語としても使われるため、「いる」なのか「来る」なのか意味が伝わりにくい敬語です。どっちなのかは文脈から判断するしかないのです…
で、
意味をはっきりさせるためには、
「来る」の尊敬語に「お越しになる」「お見えになる」を使うとよいでしょう。絶対という訳ではなく違和感があれば、という話です。
イロイロな敬語フレーズを知っておくと必ず役に立ちます。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
繰り返しにはなりますが重要なのでもう一度。
「来る」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」は、丁寧語「です・ます」を組み合わせるとより素晴らしい敬語になります。
すでに例文にはしていますが…
ビジネスシーンにおいては
「いらっしゃいます」「いらっしゃいました」として使うとより丁寧です。
例文・使い方
「来る」の意味で使う尊敬語「いらっしゃる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- ビジネスメールで相手に「来てください」とする
例文「弊社オフィスビル12階の総合受付までお越しください」
例文「ぜひお越しください」
例文「大変恐れ入りますが、弊社オフィスまでお越しくださいますようお願い申し上げます」 - ビジネスシーンで「相手が来る・来た」とする
例文「部長がいらっしゃいました」
例文「〇〇様がいらっしゃいました」「お見えになりました」
- ビジネスシーンで「来ましたか?」と質問する
例文「〇〇様はいらっしゃいましたか?」「お越しになりましたか?」
例文「弊社の工場にはいらっしゃいましたか?」「お越しになりましたか?」
・「ください」は尊敬語「くださる」の命令形
他にもよく使う敬語の変換表
尊敬語「いらっしゃる」のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
受け取る | 拝受する 拝受いたす |
お受け取りになる | 受け取ります |
来る | 伺う 参る |
いらっしゃる 来られる お見えになる お越しになる |
来ます |
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
行かれる お行きになる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |
尊敬語「いらっしゃる」はこう使う!
つづいて尊敬語「いらっしゃる」を使うときの注意点を解説します。
敬語を正しく使うことはもちろん、
ふさわしいビジネスシーンを考えて使いましょう。
×部長、今でも野球をしておりますか?
尊敬語「いらっしゃる」を使うときの注意点。
きわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文「部長、今でも野球をしておりますか?」
は間違い敬語です。
上司や目上のヒトが何かを「している」のであれば
- 正しい例文「部長、今でも野球をしていらっしゃいますか?」
とするのが正解。
他にも電話で「〇〇様はおりますか?」も間違い敬語。相手が「いる」ことを確認したいときには尊敬語を使い「〇〇様はいらっしゃいますか?」とします。
×(私が)お世話になっていらっしゃいます
尊敬語「いらっしゃる」を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
したがって、
- NG例文(私が)お世話になっていらっしゃいます
は間違い敬語です。
こうすると、あなたが自分で自分のことを高めてしまっています。あなたが「〜している」であれば、
- 正しい例文(私が)お世話になっております
とするのが正解。
×社外のヒトにたいして「上司はオフィスにいらっしゃいます」
尊敬語「いらっしゃる」を使うときの注意点。
こちらもきわめて初歩的ではありますが…
- NG例文(社外に対して)上司はオフィスにいらっしゃいます
だと、社外のヒトに対して上司を高めてしまっています。この敬語の使い方だと「上司 > 社外のヒト」となってしまうのですよね。
ということで、
上司を低めて社外の相手を高める謙譲語をつかい「社外のヒト > 上司」という本来あるべきポジションにします。
- 正しい例文(社外に対して)〇〇はオフィスにおります
とするのが正解。
丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より丁寧な敬語になる
尊敬語「いらっしゃる」を使うときの注意点。
何度もしつこいですが…
丁寧語「です・ます」を謙譲語や尊敬語と組み合わせると、より丁寧な敬語フレーズになります。むしろビジネスシーンでは必ずといっていいほど組み合わせて使いますね。
たとえば、
- 尊敬語「いらっしゃる」は「いらっしゃいます・いらっしゃいました」
のようにするとより丁寧な敬語となります。
いる/来る の謙譲語は?
ここまでは「①いる」「②来る」の尊敬語「いらっしゃる」について見てきました。
では「①いる」「②来る」の謙譲語は?
という点につき少しだけ。
いる の謙譲語は「おる」
いる の謙譲語は「おる」
※ 丁寧語「ます」と組み合わせて「おります」として使うのが一般的
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため、
- 例文「お世話になっております」
原文「お世話になっている」 - 例文「営業を担当しております」
原文「営業を担当している」
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「お渡しします・お渡しいたします」とするのが一般的。
→ 「いる」の敬語は?謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方
来る の謙譲語は「該当なし」
来る の謙譲語は「該当なし」
※「来る」ではなく「自分が行く」として考えると「伺う・参る・参上する」が謙譲語となる。
謙譲語は自分の行為につかうことが基本となるため「来る」の謙譲語はありません。「自分が来る」とは決して言わないので…
そこで「来る」ではなく「自分が行く」として考えると「伺う・参る・参上する」が謙譲語となります。
たとえば、
- 例文「明日に伺います」
原文「明日に行く・訪問する」 - 例文「明日に参ります」
原文「明日に行く・訪問する」
- 例文「よろしければ10月10日に貴社へ伺いたく存じます」
原文「よかったら相手の会社に訪問したいと思う」
として使います。もっと丁寧にするため丁寧語「ます」と組み合わせて「伺います・参ります・参上します」とするのが一般的。
→ 「来る」の敬語は?謙譲語と尊敬語、ビジネスメール例文、使い方